そろそろサクランボの季節。ってことはそろそろガトーバスクも旬の時期を迎えますので、久々にガトーバスクの話題を! 今回は“フィリング”についてです。
ガトーバスクは言わずと知れたバスクの郷土菓子です。フランスのお菓子の世界での立場を日本のものに例えるとしたら、「バスク饅頭」としてしまうのがいちばんしっくり来るのでは? っていうのが私の極論。もちろんベースは全く違いますが、皮で餡を包んだ素朴なお菓子という意味合いにおいて。
日本各地でさまざまなお饅頭が作られているように、フランスにも皮のパートと餡のフィリングで出来たシンプルなお菓子はガトーバスク以外にもたくさんあります。

マルシェのガトーバスク・スタンドで。ご覧のように本場のガトーバスクは、背を低く平べったく仕上げることによって、生地よりもフィリングを楽しむような作りになっています。
では「バスクのお饅頭」の特徴は何?って言うと、包んでいる餡の種類がはっきり限定されていること。バスクで実際に作られてるガトーバスクのフィリングは、「カスタードクリーム」か「イッツァス産黒さくらんぼジャム」の2種類のみ。「この2種類しか認めないからね!」という暗黙の了解みたいな空気が現地にはあります。
日本でもガトーバスクを置いてるお店は結構ありますよね。私は日本帰国時は他に食べたいものがありすぎて、ガトーバスクを食べてるお腹の余裕なんて全くないのですが、「日本のパティスリーでは何のフィリングを入れているのかしら?」ということだけはとても興味があります。
今回手元にある日本のお菓子本(いずれも有名パティシエやお菓子研究家の方々の本)をざっと見回したところ、7冊の本でガトーバスクが紹介されてました。そのうちカスタード派は2つ、あとは栗のペースト、ナッツ類、さくらんぼ以外の果物のジャムを使ったアレンジ版です。

地元のほとんどのお菓子屋さんでは自家製ジャムで作っています。ジャムも一緒に販売しているお店も多い。
保守的なバスクの人がアレンジ版を見たら「これはガトーバスクじゃないわよ!」と小言を言ってきそう……。でもこれは他国の食文化を紹介しあうときはお互い様。作る人と食べる人がバスクの人ではなく日本の人なのだから、そっくり同じものをつくる必要もないし、自分達がおいしいって思う感覚で再現して当然だと思います(もちろん本場の味を知っておくことも大切だと思いますが)。
かく言う私も拙著『甘い香りの幸せデザート』の中ではカスタードでもなく、黒さくらんぼジャムでもなく、「くるみといちじく」のアレンジ版でご紹介しました。
これは私自身がカスタードよりも果物入りの方が好きだからと、「材料は日本で手に入りやすいもので」という編集者の方のアドバイスがあったから!