更新日:2008年2月06日



ゴミの分別、私がいちばん燃えるのは!

カテゴリ:ロンドンカテゴリ:地球温暖化  2008 2月06日

  できるだけ余計な二酸化炭素を出さない生活。というとかなり地味〜に、つまらなそうに響くかもしれないけれど、私はけっこう楽しんでいます。

  食事を作るとき、ゴミを捨てるとき、仕事をしているとき、植木に水をやるとき、お風呂に入るとき、ベッドに潜り込むとき……暮らしのあらゆる選択の場面で余分なエネルギー、とくに化石燃料や原子力から来るエネルギーを使わないようにできるかな? と考えるのは、ゲームのような感覚です。こういったことを実践するようになって20年ほどが経ちますが、今でももっといい方法を発見したり、小さな驚きやナルホドという納得に満足することはしばしばです。

  自分にすぐできる範囲で環境のためにすぐできることの代表が、ゴミを減らすことですよね。お菓子の空箱まで徹底的に分別していますが、その中でも私が燃えるのが、生ゴミの堆肥化です。


ロンドンでは、地区にもよりますが、生ゴミの回収が始まっています。キッチンの中ではこのような小さめの蓋付箱に集め、ふたまわり大きな蓋付バケツに移して回収の日に出すのです。でも今住んでいる家は幸い庭があるので、庭のコンポスト容器に持って行くまでの容器として使っています。

  生ゴミは水分が多いので、運ぶにしても燃やすにしてもかなりの燃料を使います。臭うし、処理の方たちにとっても負担が大きいはず。でも、自宅で堆肥にまでできれば、フードマイルならぬ“ゴミマイル”ゼロ、ハーブや野菜が喜ぶ栄養たっぷりの土まで手に入ってしまう。オーガニックの食材を多く使って料理しているなら、堆肥もオーガニックに近くなります。オーガニックの堆肥は、買えばけっこう高いです。

  というわけで、日々野菜屑から揚げ物をしたてんぷら油まで、どんどこコンポスト容器に放り込んでは、土になっていくのを想像してほくほくしている次第です。


庭の隅に置いてあるコンポスト容器。日本のとほぼ同じで、上から生ゴミを放り込む式で、底はなし。底があるタイプもあるようですが、ミミズやダンゴムシなど土の中の生き物たちの力を借りられる底なしタイプのほうが分解はだいぶ早いようです。また、庭にコンポストを置くと、ゴミを食べる虫たちが増えるので、虫を食べるハリネズミや小さなヘビ、鳥などの小動物が増え、生態系が豊かになるのだとか。ウチにもハリネズミが居着いてくれないだろうかと首を長くして待っています。


コンポスト容器を先月移動させて、堆肥を “収穫”した跡。近所で借りている市民農園にほとんど持って行ってしまったのでちょっとしか残っていませんが、4ヶ月ほど放置したら見事に土になっていました。でもアボカドの皮はなかなか分解しないみたい。木みたいな堅い皮ですからね。時間があれば皮だけ刻んでからコンポストに入れれば分解しやすいかも。

  とはいえ失敗もしています。だいぶ昔、庭いらずというふれこみに惹かれて東京のマンションで挑戦したEMぼかし方式の生ゴミ処理器では大失敗。何度やり直してもうまく発酵しないし、いつもハエのウジが湧いてしまって、ルームメイトには恐怖体験をさせてしまうし、大変な思いをしました(EMぼかしをうまく使いこなせている方いらしたら、ぜひコツを教えてください!)。

  以前この欄でご紹介したミミズ方式コンポストは、いちおう上手くいっています。1年経った頃、30リットルくらいの美しいミミズ土を収穫。これは本当に匂いも何もしなくて、水はけもいいし、目をみはるほどキレイな土で感激しました。でもミミズたちの食べるスピードは期待したほどではなくて、これだけではすぐ生ゴミが余ってしまうので、上記の据え置きコンポストと併用しています。


ミミズ方式で収穫した土を乾かしているところ。これが黒いクスクスのように粒ぞろい、匂いなし、ベタつきなしの優等生土で驚きました。植物にとってはごちそう土です。もっとミミズが早く食べてくれるとベストなのですが!

  東京などの都市部に暮らしていると、電気式の生ゴミ処理機以外ではなかなか難しいとは思います(夏場に直射日光の当たらないベランダがあればミミズ方式は問題なくできるとは思います)。でも、ちょっとでも庭があるラッキーな人は、ぜひ挑戦してみてください。缶瓶や紙を分別し、生ゴミを除くと、自分の家から処理場に出て行くゴミはプラスティックの包装くらいで、お隣さんの1/3か1/4くらいになります。運動をして体重が減った!ときのような、そんな爽快感ですよ。


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世界最大のオーガニック・スーパーは……おいしかった

カテゴリ:ロンドンカテゴリ:地球温暖化  2008 1月24日

  みなさま、COOL!カテゴリは楽しんでいただけてますでしょうか。スタートしたはいいものの、今度は記事の更新で大わらわの日々です(>_<)

  さて、今回は去年ロンドンにオープンしたWhole Foods Market(WFM)を遅まきながらやっと覗いてきたのでご報告です。

  WFMは、アメリカとカナダに270店舗を持つ世界最大のオーガニックスーパー。N.Y.などではすでに有名だったこのWFMがロンドンで選んだのは、ノッティング・ヒルなどの高級住宅街にも近いケンジントン・ハイストリート。しばらく前まで、冴えなーい感じのデパートが入っていた大きなビルの地上地下3階にドカンと入っていました。


スーパーというよりは高級デパートの趣のWhole Foods Market。もともとはアメリカテキサス州オースチンで25年前にスタート、現在は年商4700億円!

  その広さや品揃えのすごさはWikipediaAllAboutにおまかせするとして、私が最も「すごー!」と感心したのは、サラダコーナーでした。緑色の、どんぶりのように大きなプラスティックのボウルを抱え、合計50メートルくらいありそうなアイランド型の冷蔵ディスプレイを巡って好きな葉っぱ、ナッツ、豆、もやし、キノコ、フルーツ、パスタ、チーズ……などなどをボウルに放り込んでいき、最後にドレッシングをかけ、レジで計量してお勘定。


私が選んだのは、ほうれん草(生)、ズッキーニ(生)、レンズ豆のモヤシ(生)、ブロッコリー(生)、地中海風豆のマリネ、豆腐のマリネ、紫芋、モロッコ風クスクス、ポテトウェッジ(これだけ体に悪い感じだけど、どうしても一口ガツンとした炭水化物が欲しかったのです)。見るだけで血液サラサラになりそう。でも、計量してショック。これで2000円弱でした……。でも、驚くほどおいしかったのも事実。

  おそらく50種くらいあるお総菜(というか洗った葉っぱ?)のうち、3分の1くらいはローフード、リビングフードでした。ブロッコリーやズッキーニ、トウモロコシ、豆もやしなども当然のごとく生。チーズ以外の動物性タンパク質はなし。やっぱり野菜中心のローフードは西洋の食・コンシャスの間ではもう定番になっているだなぁと痛感しました。そうそう、渡辺葉さんがニャニャム嬢たち(猫)にローフードをあげてましたね。山祥ショウコさんも実践されてます。

  歩き疲れるほどのお店の広さ、売れ残ったらどうなるんだろうと心配になるほどたっぷりと気前のいい生鮮食料品ディスプレイ、イギリス発で人気を博していたナチュラルデリ「Fresh & Wild」の買収と、アメリカ式(?)なスケールの大きいビジネスっぷりに少し抵抗感を覚えつつあったのだけれど、先日のWFMのCEOジョン・マッケイさんの講演記事にはにはとても共感しました。

  長い記事なので要点だけかいつまむと、
“近代的な「工業化された農業」のおかげで食料生産は効率化され、家庭のエンゲル係数も下がった。でも、工業化農業は大量の化石燃料を消費しているし、動物の虐待もひどい。消費者も、食卓に登っている動物がどんな目に遭っているか、また食品業界の嘘にも喜んで気づかないふりをしている。たとえば、スーパーで食品ラベルに「ナチュラル」と書いてあったら、まず怪しむべきなほどだ。でも、近年のオーガニックやローカルな食材などサステイナブルな食に対する人気の高まりは、人々が長らくかかっていた催眠から目覚め始めている証拠。工業化農業の次の「エコロジカルな時代」の夜明けが始まっているのだ”
といったところです。

  大きな会社なので、いろいろな批判もありそうだけれど、とりあえずこの記事を読む限りでは、しっかりしているのかなと思います。WFMの店頭に並んでいた商品の値段はどれも驚くほど高くて首をすくめてしまったけれど、本当に正しく生産された食べ物は今の私たちの感覚よりだいぶ高くて当然だろうし、そういう食べ物を丁寧にきちんと噛んで食べきることがこれからは必要なのだろうなと、緑のボウルを抱えて思った一日でした。


ハイストリート・ケンジントン駅からハイドパーク側(東)に向かって徒歩30秒ほどの大きなビルにWFMは入っている。ちなみにこのビルは、1920年代のイギリス式アールデコとして名高いThe Barkers Building。タワーのガラス窓や、その1〜2階部分にほどこされたレリーフがとてもきれいなので、建築好きさんも満足のはず。


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2008年01月24日 16:24

ロンドンのコレクションでピープル・ツリーに大注目

カテゴリ:ロンドンカテゴリ:地球温暖化  2007 10月03日

  先日、4大コレクションのひとつであるLondon Fashion Week(以降LFW)を覗いてきました。


ロンドン・ファッション・ウィークは、サウスケンジントンにある自然史博物館(Natural History Museum)で開かれる。ふだんは動物の進化の展示とかティラノサウルスの化石なんかがお目当ての家族連れでにぎわう場所に、いきなりキメキメなバイヤーやエディターが大量に発生。

  私のお目当ては、LFWの一部門「estethica(エステティカ)」。「esthetic(美的)」と「ethic(倫理・正しいこと)」を組み合わせた造語からわかるように、エコ&サステイナブルなファッションを盛り上げるための試みで、去年からスタートしています。

  cafeglobeでこれまで何度もご紹介をしてきた、サフィア・ミニーさんが代表を務める日本生まれのフェアトレードブランド「ピープル・ツリー」が、このエステティカのいわば牽引役、筆頭ブランドとして出展しているのです。

    サフィアさんは最近はロンドンに少し軸足を移して、イギリスでピープル・ツリーを展開しています。で、これが、ちょっとすごいことになりつつあるのです!

  イギリスではフェアトレードに関する人々の意識が日本より少し先行してすでにだいぶ高くなっていることもあり、セルフリッジでの扱いがあっという間に決まったのが数年前、去年からはTOPSHOPでの取り扱いもスタート。今年(2007年)の春夏からは、モードを意識したラインや、有名デザイナーとのコラボラインも登場し、『VOGUE NIPPON』では、モデルのリリー・コールやヘレナ・クリステンセンが着ての特集も組まれました。


現在イギリスで発売中の「カプセルコレクション」(日本では「ロンドン・セレクション」として10月中旬以降に発売予定)。デザイナーは舞台衣装などで活躍中のアイルランド人女性Olwen Bourkeさん。「フェアトレード・ファッションは退屈なんかじゃないことを示したくて、モダンで時流に乗ったシルエットにこだわった」。


ブースで、「あなたのその服、誰が作っているか知ってる?」というメッセージボードを掲げたピープル・ツリーのスタッフちゃんたち。洋服も、彼女たちもかわいい。


マークス&スペンサーの大物なども訪れて、テレビの取材クルーもいて、上へ下への大騒ぎになったピープル・ツリーのブース。白いチュニックを着ているのは、8月にデザイン部門長に就任したキャロルさん。以前はMonsoonやWAREHOUSEなど大手ハイストリート・ブランドのデザイナーだったキャリアを持つ。

  しかしなんといってもすごいニュースだったのが、ジェーン・シェパードソンさんのピープル・ツリーへの参画。ジェーンさんは今日のTOPSHOPを創り上げた女性で、イギリスのリテール業界ではスーパー大物。日本で言うなら伊勢丹やバーニーズでその名を轟かせた藤巻幸夫さんのような感じでしょうか。


「フェアトレード市場がどこまで伸びるかは、私も正直わからない。でも、地球のことを考えたらもうこういう道(フェアトレードやオーガニック)しかないのは明らかよね」とジェーン・シェパードソンさん(写真左)。
サフィアさんが着ているのも、カプセルコレクションのパフスリーブ・ブラウス。

  デザイナーによるラインは当面英国を中心に展開されますが、日本でも限定販売は予定中とか。人にも地球にもやさしいフェアトレードがいいなと思っていても、ことファッションに関してはやっぱりデザインは生命線。これまでは納得のいくものを見つけられなかった人でも、新しいピープル・ツリーなら見つかる可能性は高いです。ぜひご注目を!

●ピープル・ツリー(オンラインショップもこちらから)
http://www.peopletree.co.jp/

●People Tree UK
http://www.peopletree.co.uk/

●London Fashion Week
http://www.londonfashionweek.co.uk/

【cafeglobeバックナンバー】
●“社会貢献するビジネス”を確立させた女性パイオニア
http://www.cafeglobe.com/cafe/eco/ec070425.html

●フェアトレードの価値観をみんなのライフスタイルに浸透させたい!
http://www.cafeglobe.com/news/frillme/ft050428.html

●展示会報告 おしゃれ魂と勇気を刺激! エコスタイル in UK
http://www.cafeglobe.com/cafe/eco/ec060529.html

●TOPSHOPとは? イギリスのハイストリート・ブランド事情
http://blog.cafeglobe.com/archives/fromeditor/
2007/05/post_35.html



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あなたの心を駆り立てるものがあるなら、
それを追いかけなさい

カテゴリ:フェミニズムというかヒューマニズムカテゴリ:ロンドンカテゴリ:地球温暖化  2007 9月11日

  昨晩遅く、ラジオのニュースで「ザ・ボディショップ」の創業者アニタ・ロディックさんが脳内出血で亡くなったという一報が伝えられました。

  私がcafeglobeを始めようと思ったきっかけをくれたのが、アニタでした。大学の夏休みに訪ねたロンドンでモスグリーンの門構えのボディショップに出会い、その後、ボトルのリユースや動物実験反対などを声高に掲げていたことに衝撃を受けたのを覚えています。ホームレスの人たちに収入の機会を与える雑誌『ザ・ビッグイシュー』に最初に資金を提供したのがアニタと夫のゴードンと知ったときも、鳥肌が立ちました。


昨年、「STOP VIOLENCE IN THE HOME(家庭内暴力の根絶)」キャンペーンで来日した際に撮影した写真。子どものようにはしゃいでみせたり毒舌も相変わらずだったけれど、新幹線の窓の外を見る横顔は、体調もあり、“残り時間”をより強く意識していたのかもと思わせる。

  元祖ヒッピー世代。でもただのヒッピーなら、平和や環境を叫んで資本とぶつかったり(それも必要なこと!ですが)、隠遁してしまったり。アニタはむしろ事業家として会社を成功させ、そのブランド力や得た資本の力で、いわば経済界の内側から、世の中の利益最優先の企業に「稼ぐだけでいいの?」と挑戦状を突きつけた人。「ありもしない効果を宣伝して儲ける化粧品産業なんて大嫌い」といった歯に衣着せぬ名言は集めればきりがないほどです。フェアトレードの概念をいち早く取り入れたのもボディショップでした。


手元にあった「STOP VIOLENCE IN THE HOME(家庭内暴力の根絶)」キャンペーンのリップ。ほかに、ボディショップのキャンペーンで面白かったのが、90年代の「スーパーモデルと呼ばれる女性は世界に8人しかいないけれど、スーパーモデルのような体型でない女性は世界に30億人います」というセルフ・エスティームを高めようという呼びかけ。毎日広告や雑誌記事などで何十何百というモデルの姿にさらされているうちに、あれがあるべき姿と思い込まされてしまっていることに気づこう、リアルな女性はあんなプロポーションじゃない、というメッセージに勇気付けられた人は多いはず。

  10年前の雑誌編集者時代、そのアニタにインタビューをする機会を得ました。世界では超のつく人気起業家・環境&人権の活動家。分刻みのスケジュールで合同インタビューしか予定のない中、日本のボディショップ広報の方に粘りに粘っていただいて、プレスディナーの途中で通訳なしで30分だけならという条件でなんとか枠を確保。

  南イタリアはカラブリア州で開かれた国際プレスディナーの席、ふたりで抜けてレストラン裏口の階段に座り込んでの30分は、今思い出しても胸が熱くなる経験でした。環境問題をどうしたらより多くの人に伝えられるか、女性がもっと自由に生きられる社会にするためにはどうしたらいいか……私にとっては、記事のためのインタビューというより、個人的な希望や不安にこたえてもらう人生相談だったといえそうです。

  いくつもの宝石のような言葉をもらったのですが、ひとつが「社会を変えたいなら女性のネットワークを作りなさい」というアドバイスでした。「日本の女性は世界中を旅行していて視野も広い。彼女たちの潜在的なパワーはすごいわ。まず女性が変われば男性はすぐ変わるから」。この言葉が、私の中でcafeglobeの構想に繋がっていったことは言うまでもありません。そして、じつは一緒に創業をした社長の矢野とも、この国際プレス発表会で記者同士として知り合ったのでした。何か運命的なものもあったのかもしれません。

  アニタの言葉でもうひとつ深く心に刻まれているのが、「あなたの心を駆り立てるものがあるなら、それを追いかけなさい」というものでした。

 「あなたの持ち時間はこうしている間にも刻一刻と減っているのよ。心を駆り立てるものがあるなら、躊躇せずに追いかけなさい。私も、私の残り時間は一瞬でも無駄にしたくないと思ってる。どうやって最大限に使い尽くそうか、いつも考えてるわ」。笑顔で腕を広げて、がっしりとハグしてくれたアニタ。私と大差ない小柄なからだなのに、とても大きくて温かかった。


ボディショップの経営から退いてからは、環境・人権キャンペーナーとして忙しく活動していた。画像は彼女自身のキャンペーンサイト。アニタからの更新は、9月6日のアムネスティ・インターナショナルの活動に関する投稿が最後になっている。

  36年前に次女を出産したときに受けた輸血でC型肝炎ウィルスに感染していたことが2年前にわかった、と彼女は今年2月に発表をしていました。最近は軽い心臓発作があったり、肝硬変も進んでいることも公言。日曜日に頭痛を訴えて入院、月曜日の夕方に夫とふたりの娘に看取られて亡くなったそうです。64歳。晩年は家族や友人に包まれて過ごしたいと言っていたアニタ、きっと満足して旅立っていったのではないかな。いや、「あの世なんてないと思う。あっても知ったこっちゃないわ」とも言っていたから、「ちょっと短かったけど、まぁ我ながらよくやったわ」と満足して人生の幕を下ろしたのでしょうか。

  図らずも、更新2回続けて偉大な女性が亡くなった話になってしまいました。でも、メメント・モリ。残り時間をあらためて意識する、いいきっかけにしたいと思っています。


●AnitaRoddick.com
http://www.anitaroddick.com/

●The Body Shop バリューズのページ(日本)
http://www.the-body-shop.co.jp/values/index.html


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» ボディショップのアニタ・ロディックさんが亡くなる from MIZO生活
カフェグローブの青木陽子の東京-ロンドン編集後記で、ボディショップのアニタ・ロディックさんが亡くなったことを知りました。 青木さんが心に残... [続きを読む]

2007年09月13日 21:36

余命半年と言われたら

カテゴリ:ロンドン  2007 9月05日

  ジェーン・トムリンソンさんというイギリスの女性が亡くなりました。7年前に転移性の乳がんで余命半年と宣告されてから、最後の力を振り絞ってロンドンマラソン、トライアスロン、イギリス自転車縦走、ついにはアメリカ大陸自転車横断などを次々に成し遂げ、それらの応援として4億円超のチャリティ募金を集めたのですが、おとといの夜、ついに亡くなったことが報じられました。43歳。


ジェーンさんが中心になって立ち上げた、イギリス中部の都市リーズで行われる10kmラン「THE LEEDS 10K」のサイト。参加費はガン治療研究や重病の子どもたちのための福祉団体に寄付される。ジェーンさんは成人した娘ふたりと10歳の息子のお母さんでもあった。宣告後も小児科のレントゲン技師として仕事を続けていたという。

  イギリスでは、個人が長距離走や一定時間内の山登りなど、難しいチャレンジをするよと宣言し、それを成し遂げたら寄付をしてもらう約束を友だち(や知らない人でも)から募り、集まったお金を何らかのNGOや福祉団体などに寄付する習慣があります。最近では『Little Britain』で一躍スターになったお笑いのデビッド・ウィリアムズ氏がドーバー海峡を泳いだりしていました。私も友人から「来月トライアスロンやるから、完走できたら募金よろしく」と頼まれたことがあります。

  ジェーンさんは、余命半年の宣告を受けてから、痛みをおして次々にチャレンジをし、寄付集め、そして何より完走したときの笑顔などで多くの人を勇気付けてきました。イギリス縦走、アメリカ横断は、途中で何度も化学療法のためにストップしながらだったとか。余命半年が何年も頑張っているので、もしやこのままポジティブなエネルギーで完治したりして?とひそかに私も期待していたんですが、やっぱり病には勝てなかった……。

  でも、きっとご本人はすごく充実した7年間だったのではないかと思います。余命半年とか言われたら、私なら贅の限りを尽くして遊ぶぞーなんて以前は思っていましたが、こういう時間の使い方のほうが、「生きててよかった度」は高まるんだろうなぁ。世の中には強い人がいて、いいエネルギーを分けてくれる、自分も少しでもそうありたいと殊勝に思う一日でした。

●THE LEEDS 10K

●ジェーン・トムリンソンさんの訃報を伝えるBBCの記事


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デトックスブームで人気の水だけど

カテゴリ:ロンドンカテゴリ:地球温暖化  2007 8月26日

  今日更新のローマ発の記事「World News Cafe」でも紹介されていますが、「ミネラルウォーターを買うのをやめて、水道水を飲もう」という動きがじわじわと広がり始めているようです。

  7月上旬にN.Y.市長が「N.Y.の水は清潔で何の問題もなく飲める。環境に悪いボトル入りのミネラルウォーターをレストランで頼むのをやめましょう」と呼びかけたのに応えるように、ロンドン市も「レストランのメニューからボトル入り水を外そう」「水道水を頼むのは、ケチじゃない、環境を考えた知的でファッショナブルな行為」と市民に呼びかけをしました。

  ご存知の通り、欧米では一般的にレストランでテーブルについてもお冷やは出てきません。ロンドンも出てこないのですが、「tap water(水道水)をください」と言えばジャグ入りの水を持ってきてくれます。もちろんタダ。でも、なんとなく「ミネラルウォーターって言わないと、ケチっぽい?」「水道水だとおいしくないかも」と躊躇してしまう雰囲気があるのは確か。そこで、市政などがイニシアチブをとって、人々の意識を変えようということなのです。

  もっとも、このキャンペーンを待たずとも、ボトル入りミネラルウォーターの環境負荷を指摘する声は以前からずっと続いています。World News Cafeの記事で紹介されているように、まずはペットボトルの生産に石油が消費されます。重たい水をボトルに詰めて、掘削地から船やトラックで消費地まで運搬し、お店やコンビニではキンキンに冷やして……水というより石油やウランを飲んでいるようなものという指摘です。とくに海外からの水は、フードマイルならぬウォーターマイルが気になります。

  自分の生活を考えても、とくにデトックスブーム、モデルの誰それがミネラルウォーターの2リットルボトルを持ち歩いている……と言われ始めた頃から水を飲んだり持ち歩いたりのが常識のようにもなってきて(それ自体はいいことですが)、ペットボトル入りの水がますます身近になってきたような気がします。最近では、水がバッグに入っていないとちょっと不安になりさえします。機能を謳った水の宣伝も、はなやかですし。そういうスペシャルな水を飲むと、なにやらまるで体が浄化されるかのような、すがすがしい気分を味わえるし。


普段使っている水筒です。左はアウトドア用のプラスティックの水筒で、軽くて広口で洗いやすい。右はSIGGボトルのベビーサイズ。小さいので、大抵のバッグに忍ばせておくことが可。自宅でフィルターをかけた水を詰めて出かけます。

  でも、やっぱり環境のことを考えると、いつもミネラルウォーターを買っているわけにはいかないと思います。さらに言えば、ペットボトルの水はものすごく高いのです。東京でも水道水のざっと200~500倍の値段がついています。考えてみれば、ガソリンよりも高い液体ってことにもなる。

  というわけで、私はしばらく前から水筒人生です。冬場は温かいお茶を魔法瓶で持ち歩くことも多いのですが、最近はアウトドア用の水筒に、フィルターを通した水を詰めて出かけます。冷たい水が飲みたいナーと思うことも正直ありますが、アーユルヴェーダや漢方的には冷たい水は消化不良などを招いて体の中の毒素を増やすとか。コレが体にも地球にもいいんだワ、と納得しつつ、チビチビと飲んでいます。

●水筒のススメ(バックナンバー)
※わずか5年前に書いた記事ですが、読み直してみて、環境に対する社会の認識がだいぶ変わったなぁと我ながら感じます。


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» ぼくの本棚 149:ウオーター・ビジネス by 中村靖彦 from 社長TVブログ
世界中の砂漠化が進行している。とりわけ中国では人口増加や森林破壊により黄河流域が... [続きを読む]

2007年09月14日 16:31

イギリスで大ブーム、プチ農業

カテゴリ:ロンドンカテゴリ:地球温暖化  2007 8月08日

  去年、ロンドンから少し郊外に引っ越したのをきっかけに、十年来の夢だったアロットメント(市民農園)を借りました。広さはざっと20坪くらい、年間15ポンド(約3500円)。それまで借りていた人があまり手を入れていなかったので雑草畑だったのを、1年かけてようやくそれらしい姿にまで持って来ました。


ジャガイモ、ズッキーニ、青シソ、ビーツ(赤カブ)、サヤインゲン、大豆などを育てています。完全オーガニックなので、雑草と虫との体力精神力消耗戦……といった趣の一年でした。さらに去年は30年ぶりの渇水、今年7月は記録を塗り替える大雨と、早くもお天道様に振り回されています。

  イギリスでは、2003年頃からこのアロットメントや庭・ベランダ菜園のブームがじわじわと始まり、いまやガーデニングと並んで一大国民的趣味の座を占めた感じです。北ロンドンではアロットメントの空き待ちが10年!という地区もあるとか。昨日テレビを見ていたら、例のセレブシェフのジェイミー・オリバーが野菜づくりに密着するテレビ番組もスタートしていました。


ジェイミー・オリバーの新番組「ジェイミー・アット・ホーム」。毎回1種類の野菜を取り上げ、育て方のコツから料理レシピまでを紹介する。


アロットメントに人気殺到、と伝えるタイムズの記事。このタイムズのほか、BBCも大きなアロットメントサイトを運営している。「野菜を作ろう!」といった専門誌も続々創刊。これまでもガーデニング大国ではあったけれど、それは花中心。それが去年初めて野菜の種の出荷数が花の種を上回ったとか。

  この「プチ農業ブーム」が突然沸き起こったのは、イギリスで起きた90年代半ばからのグルメブームで食の楽しみに人々が目覚めていたこと、オーガニック野菜人気が高まっていたこと、温暖化対策としてフードマイル(地産地消)を心がけようという意識の広まり……などなどいろいろな下地がうまいぐあいに「野菜づくり」でクロスしたから。とくに20~40代の女性やカップルがブームの先頭を切っているというのも納得。

  8月は夏の盛りですが、今年は7月の大雨と低温で季節が少し遅れたので、収穫が早い葉もの野菜や、霜が下りるまで大丈夫な豆類を大急ぎで育てています。その後は秋と冬に向けてダイコン、春キャベツ、ネギなどを蒔く予定。アロットメントを始めて、常に数ヶ月~半年先を見据えて暮らすようにもなってきました。

  いろいろ発見や驚きの多い土いじり生活、またレポートしたいと思います。

前の前に借りていた人が丹精していた、ブラックカラント(カシス)やレッドカラント、ラズベリーなどフルーツの低木を一緒に引き継ぎました。雑草だらけですが、こんなに鈴なり!


宝石みたいにきれいなレッドカラント。多すぎて去年は半分も収穫しきれず、それでもジャムを作ったら40瓶ほどになってしまった。じつはまだ去年のジャムが残っている……。アロットメントは食べきる闘いでもあります。

●Jamie at Home (Channel 4)

●Allotment Central (Times Online)


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「早い、安い、うまい」ファッション

カテゴリ:ロンドンカテゴリ:地球温暖化  2007 5月09日

  原宿にも去年登場したTOPSHOPをはじめ、ZARA、H&Mなど、イギリスで「ロー・コスト、ハイ・ファッション」と言われるショップの大箱旗艦店が建ち並ぶロンドンのオックスフォード・ストリート。東京に強いて例えれば明治神宮前か渋谷のような存在でしょうか。いつ行っても観光客と買い物客でハイな雰囲気に満ち満ちてます。

  そのオックスフォード・ストリートに、このところメキメキと業績を伸ばしている激安トレンドショップ「プライマーク」が満を持して登場、先月のオープニングではあまりの混雑に失神する人も出る騒ぎになっていたので、どれほどのものなのか、覗きに行ってみました。


老舗百貨店セルフリッジからそう遠くない一角にドドーンと登場した「プライマーク」旗艦店。数年前までは、ロンドン郊外の移民や低所得者層が多い町角で見かける激安カジュアル店だったのに、あっというまにオックスフォード・ストリートまでのし上がってきた。

スーツのインナーによさそうなTシャツが600円

  高級百貨店セルフリッジからもそう遠くない大きなビルの1階と2階を使った店内は、平日だというのに人だらけ。レジはざっと40人(!)待ち。それもそのはず、値段がすごいのです……。

  スーツのインナーにちょうどよさそうなベーシックなTシャツなら2.5ポンド(約600円)。今ロンドン中の女の子が着ている、70sプリントのチュニックなどが5ポンド(約1200円)。オジー・クラーク風ワンピースで10ポンド(約2500円)。今は円安なので、ロンドナーにとってはさらにこの2/3くらいの値段実感だと思っていただければ、この値段のショックさがわかるはず。


洗濯籠かのように洋服満載の買い物籠を持った人たちも少なくない。ちょっぴり、ユニクロが日本に登場したときのフィーバーを思い出した。

  たしかにチュニックやワンピは生地がかなりペラペラ。でも「流行りものだしワンシーズン着れればOK!」という需要にバッチリ応えている。まさに、ファーストフードならぬファーストファッション。「早い、安い、うまい」ではなくて「(トレンドアイテムの展開が)早い、安い、おしゃれ」。

ケイト・モスコラボラインのTOPSHOP

  人いきれでフラフラになりながら店を出て、職業的使命感から(?)TOPSHOPへ。先週公開された「ケイト・モス」コラボラインをチェックしようと思ったのです。


「ケイト・モス」ラインのショー・ウィンドウ。タグには「ケイトのワードローブにインスパイアされたデザイン」とありました。シグネチャー・アイテムはウェストコート(前開きのベスト)。そういえば、ケイト・モスはH&Mのイメージモデルを務めているときに例のドラッグ問題が発覚し、H&Mはすぐに彼女をクビにしたという経緯がある。そのケイトをライバルのTOPSHOPが採用したのは、イケイケなビジネス姿勢で有名なオーナー社長フィリップ・グリーン氏ならでは。でもケイトはまたコカインをやっているという噂が流れているので大丈夫かな?

  TOPSHOPもプライマークほどではないにせよ、あきれるほど安い。「こんなにかわいくて、まさに旬のデザインで、このお値段なら買っちゃうわ~」とつい手にとってしまう。でも同時にやっぱり、この値段じゃぁ綿花栽培者や縫製工場の人たちはどんな収入を得ているのかしらと心配にもなります。ペラペラでもワンシーズン着倒せば十分という考え方も、環境負荷を考えると絶対にやめるべきなのも確実(ファッションと環境についてはぜひこちらの記事を!>)。

  「欲しい! 」という気持ちと「これでいいのだろうか」という気持ちが激しく交錯するまま歩きつかれるほど広い店内をうろついていたところ、サフィア・ミニーさんの「ピープル・ツリー」コーナーも発見(ピープル・ツリーについてはぜひこちらの記事を>)。同じようにかわいいアイテムを、作り手の人たちにもきちんとした報酬をとってもらって作っているピープル・ツリーがTOPSHOPに入っているのは、皮肉なようでもあるけれど、TOPSHOPの良心なのかもしれないなぁと思いつつ、文字通り棒のようになった足で自転車のペダルを踏み踏み、家路に向かったのでした。


TOPSHOPオックスフォード・ストリート店にあるピープル・ツリーのコーナー。暗く写ってしまったけれど、お店の中ではけっこういい場所にあります。

●プライマークのサイト
http://www.primark.co.uk/index1.html

●TOPSHOPのサイト
http://www.topshop.com/

●ピープル・ツリーのサフィア・ミニーさんインタビュー
環境とか未来とか……通信(cafeglobe 2007年4月25日)
http://www.cafeglobe.com/cafe/eco/ec070425.html

●サフィアさんのインタビューはこちらでも
Frill Me, Thrill Me! (cafeglobe 2005年4月28日)
http://www.cafeglobe.com/beauty/frillme/
ft050428.html


【追記: 2007年9月3日】

今日の英紙『The Guardian』に、「早い、安い、うまい」系大手アパレル(通称ハイストリート・ブランド)に洋服を提供しているインドなどの工場で、とくに女性たちがひどい低賃金と労働環境で働かされているというレポートが掲載されていました。

●The sweatshop high street - more brands under fire
(スウェットショップ通り - さらに多くのブランドが批判の対象に)
http://business.guardian.co.uk/retail/story/
0,,2161302,00.html

ハイストリート・ブランドが直接経営する工場ではなく、あくまで現地の下請け法人ではありますが、あの低価格にはやはり相当の理由があると言わざるを得ません。
でも辛いのは、ある程度のお値段がついている洋服でも、スウェットショップで作られたものではないと言い切れないことですよね。でもそれを言い訳にしちゃいけないか。

何はともあれ、すでに持っている服を大切に、アクセサリーなどを工夫して、あるいはときには自分で作り変えたりして長く着倒していこうと思います。


──────────────────────────
★追伸です
しばらく前にご紹介した映画『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』(これが日本語公式タイトルになったのですね) がそろそろ日本でも公開になるとか。
ここでご紹介した後、観てみましたが、やっぱりキョーレツ、痛い笑いが好きな方向けです。かならずしも観た後にすべて気分爽快!とはいかないかもしれませんが、とりあえずオススメ申し上げておきます。自己責任映画ですね、いわば。苦情が好きな方は観ない方がいいでしょう。

●英米のエンタメ界を席巻している映画
(『ボラット 栄光ナル……』の紹介(2007年2月13日)


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» PRIMARK、う〜ん、安いから買うか? from ・・・London NK・・・
物価高のロンドン、本当に中心地のZone1の地下鉄の料金(ロンドンは 中心から郊外に向かって同心円状に6つのゾーンに分かれていて、中心地 のゾーン1は... [続きを読む]

2007年05月10日 05:47

英米のエンタメ界を席巻している映画

カテゴリ:ロンドン  2006 11月06日

  マジメなトピックについて書いたばかりですが、先々週イギリスで、先週アメリカで封切られた映画『Cultural Learnings of America for Make Benefit Glorious Nation of Kazakhstan(ボラット、栄光のカザフスタンのためにアメリカ文化を学ぶ)』が英・米・カザフスタンの3ヵ国で話題沸騰のようなので、ちょっとご紹介します。

  サーシャ・バロン・コーエンというイギリスの人気コメディアン扮する、カザフスタン人記者ボラットがアメリカを訪れて文化についてレポートする珍道中……という設定なのだけれど、一部紹介されている動画などを見る限り、このボラットがもう強烈にヤバい。人種差別主義者で性差別主義者で反ユダヤで、絵に描いたようにポリティカリー・インコレクト(反倫理的)。そして趣味もめちゃくちゃ悪い……。


「ボラット氏」はちゃんと自分のサイトも持っている。動画もあり。カザフスタンの人々に失礼なのを承知で言えば、たしかに、中央アジアあたりってこういうサイトがありそう……と思わせてしまうところが、そしてまた自分のそういう偏見に気づかされてしまうところが、本当になんというか、痛いというか痒いというか、くーっ、たまらないのです。●Official Borat Homesite >

  「えっ、あなたの国では女性は奴隷ではないのですか」とか、「私たちの国では犬を撃つのが国民的趣味」「私の11歳の息子に最近生まれた子どもは、マドンナっていう女装の歌手に売ろうと思っている」「私の故郷では障害者をいじめて遊ぶのが普通」とか、たどたどしい英語でしゃぁしゃぁとまくしたてる。エッジーな笑いが好きな人には大ウケのようで、CNNの記者は「笑いすぎて健康を害する人もいるかも。注意マークをつけたほうがいい」とまで賞賛。CNNやCBSのニュースやトークショーにもボラットとして登場してここでも差別ネタのオンパレードをしてます。

  このバロン・コーエン、出世作はテレビシリーズの『Ali G(アリ G)』。これまた倫理的に大問題で、ロンドン郊外の低所得者エリアに住むちょっと頭の弱いラッパー「アリ G」が、政治家や宗教指導者、CIA長官などをたずねて(相手には若者向けの番組の収録と嘘をついている)、「とか言っちゃって、マリアとヨゼフはヤッちゃってたんでしょ」「袖の下もらってるくせにィ」的なことを面と向かって聞いて相手の狼狽振りを楽しむという仕立て。くだらない質問の間に、ときどき誰もが聞きたいけれど聞けないようなことをアホの振りで聞くから痛快だったりするのです。微妙なユダヤ人ネタも、彼自身がユダヤ人で、ケンブリッジ大でユダヤ人の人権と歴史について勉強したという背景があってかろうじてクリア。

  ところで、いきなり笑いのネタとして世界のコメディ舞台に引っ張り出されたカザフスタン(バロン・コーエンとカザフスタンは何の関係もない)は、動揺してはじめは批判声明を出していたけれど、最近「“ボラット氏”をわが国に招待したい。わが国に差別がないことを見てほしい」と正式に招聘。観光客が増えるのではないかと好意的な意見も出ているようだけれど、いまのところこの映画の国内上映は禁止とか。


映画のオフィシャルサイト入り口。これも入るとカザフスタン政府のサイトのような作り。ボラット氏のサイトのほうだったか、怒ったカザフスタン政府は「.kz」ドメインをバロン・コーエンに使用しないように申し入れるという顛末もあったとか。●Cultural Learnings of America for Make Benefit Glorious Nation of Kazakhstan >

  日本で公開の予定があるのかまだわかりませんが、機会があったらぜひお試しください。腹が立っても私は責任とりませんが。YouTubeで「Borat」と検索すると大量に出てきます。


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昨年何かと話題を提供した‘Borat:Cultural Learnings of America for Make Benefit Glorious Na... [続きを読む]

2007年05月12日 08:48

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下品過ぎて発禁処分を受けていたという問題作「ボラット」が、 急転して全世界での公開が決まったそうです。 作品については、様々なメディアやブログ... [続きを読む]

2007年04月19日 20:25

» ボラット from 辛口だけれど映画が好きです
ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習Borat: Cultural Learnings of America for Make Be... [続きを読む]

2007年04月02日 17:06

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ボラット:栄光ある国家カザフスタンのためにアメリカ文化を学びに行く(『Borat [続きを読む]

2006年11月14日 11:09

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イギリスのコメディアン、ボラット(Borat)の主演映画が全米で公開されて大ヒットしているらしい。 前からYouTubeでお気に入りだったんだけど、このbora [続きを読む]

2006年11月13日 20:06

ニョロニョロの次は、ヌルヌルとの仁義なき戦い

カテゴリ:ロンドン  2006 5月11日

   とっぷりと日も暮れた夜の10時頃。キャンプ用の懐中電灯と割り箸、塩水を入れた瓶を手に、私はひとり庭に出る。夜露に塗れた芝生を踏んで、目指すはハーブや野菜の苗を並べた一角である。

   あーやっぱり今日もいる……。懐中電灯の明かりの中に、白っぽいの、黒っぽいの、大きいの、小さいの。キラキラと銀色の足跡も鮮やかに、ナメクジたちが芽を出したばかりの私の苗を狙って集まってくるのだ。おのれ我が子の敵……とばかり、敵意を込めて、見つける端からつまんでは塩水に落としていく。

   塩水に落とされたナメクジは「ギャー!」とばかりに身をくねらせて、そのうち静かになる。とっても気の毒なんだけれど、心を鬼にしてナメクジ狩りを続ける。彼らの数の多さ・旺盛な食欲はすさまじく、ほっておけば、せっかく育てた苗も数夜で全滅確実なのだ。


9割くらいの芽が食べつくされてしまったのは、中央の2列に蒔いた、垂れ下がるタイプのミニトマト。ナメクジは気に入った味を見つけると、何度でも戻ってきてその草だけを食べる。あのネットリとした足跡には自分の匂いがついていて、ちゃんと昨晩いた場所に戻ってこられるようになっているというからオドロキ。


大切な青しそもすでに半分くらい消えてしまった。ちなみに、青しその双葉はスイートバジルの双葉に瓜二つ。やっぱり近縁なんだなぁ。

   ロンドンは東京より寒いからナメクジは少なかろうと思っていたけれど、大間違いだった。この国のじめじめとした気候は彼らには天国なのだとか。日本より種類も多くて、以前は10cm近いのを捉まえたこともある。虫には強いつもりの私も恐怖で正視できなかったけれど……(当時の家の前を流れていたテムズ河にエイッと放り込んだ。ヤツが這い上がってきたかどうかは不明)。

   世界一のガーデニング大国なのにナメクジ天国。となればもちろんナメクジ対策製品は百花繚乱。一般的にはゴキブリ退治用のホウ酸団子のように、庭のそこここに撒く毒餌が売られている。でもこれには化学物質が含まれているから使いたくない。オーガニックな手段としては、ビールを入れた瓶を土に半分埋めて落とし穴にする方法もあるのだけれど、やっぱり夜な夜な箸でつまむ方法がいちばん効果的なのだとか。


一方、まったく素通りなのが、ルッコラ(写真左)やタイム(写真右)。あの苦味や香りがきっとイヤなんだろうな。ハーブの香りはこういう虫たちに食べられないための自衛だということがとってもよくわかる。

   あとは、まだ試していないけど、ナメクジにだけ宿る寄生虫も製品として売られている。目には見えないほどの小さな線虫で、粉状のそれを水に溶かしてジョウロで撒くと、ナメクジを見つけて体に入り込み、殺してくれるのだとか。人間はもとより、ナメクジを食べる鳥やハリネズミにも害はないとのことですばらしいー! でも1箱2000円強、しかも効果は6週間しかもたないとちょっと割高なので、まだ躊躇中。

   それにしても、今回はあまりに被害がひどいので、今晩からは家の中に苗を持ち込んで、監視することに。いや、家の中までヤツらが入ってくるわけではなくて、苗の土の中に潜って隠れているであろう残兵が出てきたところでヒットしようというわけだ。

   本当はナメクジが大好物なニワトリやハリネズミ、ヒキガエルなんかが庭にいてくれればいいのだけれどなーと願いつつ、今晩がひとつの関が原、張り切って臨みます。


葱坊主にそっくりのつぼみをたくわえたチャイブ(写真左)もナメクジはお嫌いの様子。栗によく似たホースチェスナッツ(フランス語はマロニエ)の実を拾って土に埋めておいたら、こんな芽が(写真右)! ナメクジに食べられないようにか、他の草との日光の奪い合いに勝つためか、芽を高く高く伸ばしてからやっと葉を開いた。賢いなぁーと心の中で褒めてやる。でもこの子たち、いずれは数十メートルの大木になる運命。ウチでは育てられないので、あまり大きくならないうちに、どこかの森にこっそり植えてこなければ……!


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紅茶の本場英国の、愛すべきリアルなお作法

カテゴリ:ロンドン  2006 4月20日

  「よく歩いたー、あつー。すっかり汗かいてのど渇いちゃった、○○ちょうだい」

   この○○にあなたなら何を入れますか? 私ならグラスになみなみと注がれた水、夏なら麦茶とか緑茶とかが欲しいところです。が、イギリスの友人たちは大抵「ティちょうだい」と言います。日本で言えば大サイズのマグカップ(スタバのTallくらい)にたっぷり入れたミルクティ(もちろんホット)をあっという間に飲み干し、「おかわりちょうだい」と来ます。


これが我が家のミルクティ。アールグレー+豆乳です。日本で紅茶のイメージの薄手&華奢なカップ+ソーサーも英国内にはもちろん存在するのですが、かなりお上流(ポッシュ)なオバサマが小指を立てて飲んでいるイメージで、どちらかといえばギャグネタ的扱い。

   紅茶やコーヒーはくつろぐひとときのための飲み物だと思っていたけれど、イギリスでは、のどが渇いたとき、人の家やオフィスを訪ねたとき、人が来たとき、朝食と、昼食と、簡単な夕食と、各食後と、おやつと、出かける前にのどが渇かないようにと、家に帰ってきたときと、仕事から逃避したいときと、暇なときと……のべつまくなしに飲みます。超勝手な個人的観察では、みなさん日に10杯超は飲んでいるのでは。

   そして、そのほとんどは牛乳を入れたミルクティ。お砂糖はお好みで。器はドカンと巨大なマグカップが主流。お客にもこれで勧めます。お客というか、人を見かけたら紅茶を飲まないかと勧めるのがエチケットになっている感もあり、うっかりしていると何杯も飲まされます。こっちの人に合わせて飲んでいると、お腹がガブガブになって目から紅茶がしみ出してきそうな気になります。

   フツーの家ではティバッグが主流なのですが、紐も紙のつまみもついていないお得用。お値段も安くて100バッグ入りで240円前後から。ミルクティにすることが前提なので、めちゃくちゃ濃く出ます。これをマグカップに放り込み、熱湯を注いだら、スプーンでかき回したりグイグイと突ついて絞ってできるだけ濃く出します。カップの底が見えなくなるくらいが適当。ここに牛乳(最近では豆乳の人も多い)をちょろりと入れて完成。


紅茶の種類は人によって好みはさまざま。いちばん安くて普及している濃~く出るタイプの紅茶(写真のティバッグ)のあだ名は「Builder's(ドカちゃん)」。肉体労働の人が飲みそうな、質実剛健な感じ、ガッツリ強い味……というニュアンス。「アールグレーとビルダーズ、どっちがいい?」とお客に聞いたりします。

   有名な、紅茶が先か牛乳が先かという議論については、2003年に王立化学会というところが「おいしさの点では牛乳が先が正解」という見解を出したのが話題になっていました。でも、フツーの人はマグカップの中に出た紅茶の濃さを目で確認してから牛乳の量を調節できる「紅茶先」がほとんどのようです。いちいち気にしてないというのが本当のところ。

   不思議な国のアリスのお茶会シーンなどで見るような、あるいはフォートナム&メイソンで見るようなお上流的・午後のハイティ的世界もあるにはあるけれど、リアルな英国の紅茶事情はそれとはだいぶ違うようです。書いていたらやっぱりのどが渇いてきたので、これから一杯入れてきます。ごくごくっと、やってきます。

●紅茶飲みならではの言い回しはこちらで↓
Phrase171
He is not my cup of tea.
(迷える女のとっさのひとこと)


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日本の中と外での温度差

カテゴリ:ロンドン  2006 4月13日

   先週のエントリーにコメントをつけてくださったみなさんありがとうございました! また時間を見つけてできるだけ個別にお返事もしていきたいと思っています。友人たちからも直接メールで感想をもらったりしたのですが、その一人も言っていましたが、見事にほとんどの方が海外在住か在住経験者というのが、このトピックの特徴そのものだなぁと思いました。

   ちょっとズレますが、日本とイギリスを行ったり来たりしていて痛感するのは、日本の中と外で情報に温度差があることが多いことです。日本はさすが1億2000万人の規模もあり、国内の日本語メディアだけでもかなり充実した世界ができあがっていて、それだけでも十分楽しめて、大抵のことは事足りてしまう。情報の自給自足が成り立っているのに、何も言葉の壁を乗り越えていく必要は少ないというのはあると思います。

   ちなみに、昨年11月にスタートした講談社の『クーリエ・ジャポン』は、ここの温度差の面白みに注目している点でちょっと面白い。とくに「外国メディアで日本はこう報道されている!」という記事が多いようです。原典はインターネットでも読める記事が多いけれど、日本語でまとめて読めるのはたしかに便利です。ときどき誘惑されます。

   さて。前回は第二次大戦というトピックでの温度差に疑問を感じたことがきっかけで、中谷孝さんという元陸軍特務機関員をしていた方の話を聞きに行ったと書きました。大勢の前、マイクを握りしめてカチカチに緊張した中谷さんは、85歳になるこれまでとくに戦争を語る活動などしてこなかったけれど、今こそ話していかなければいけないと思った、と話し始めました。最近の政治家の発言や、戦争を「かっこよかった」とする論調などは、まさに聞き覚えがある、いつか来た道だと恐ろしい思いがすると。


コチコチに緊張なさっていた中谷さん。「今の日本を動かしているのは皆戦争を知らない世代。その人たちが知ったかぶりで言うことを信じてしまう人が増えているのがとても怖い」。

   詳しくは、中谷さんのサイト「日中戦争の中の青春」の内容にほぼ重なるのでそちらをご覧ください。ただ、やっぱり南京大虐殺はあったと確信した体験、目の前で捕虜の首が切り落とされていくのを見ていた体験などは強い印象に残りました。

   中谷さんの話を聞くこの会は、神直子さんという28歳の女性が企画したものでした。神さんは元日本兵の方々のメッセージをビデオに撮り、フィリピンで上映会を行うという、地道な活動を続けています。


神直子さん。大学のスタディツアーで訪れたフィリピンで、日本人には会いたくなかったと泣く女性に会って驚き、一方で後悔の気持ちを飲み込んだまま亡くなっていく元日本兵の話を聞き、その橋渡しとなるべくビデオでのメッセージを届ける活動「Bridge for PEACE」を開始したのだそう。
神さんのブログ「フィリピンと日本をむすぶビデオメッセージ・プロジェクト」はこちら>
神さんがこの活動に至ったきっかけはこちら>

   神さんがこの活動に至ったきっかけを話してくださる中で、今回もうひとつ印象に残ったエピソードがありました。フィリピンでいろいろな人の日本兵から受けた経験や思い出を聞いている中で、日本兵がいかに残虐かということを示す逸話として、「赤ちゃんを宙に放り投げて落ちてくるところを銃剣で刺した」というものがいろいろな場所で出てきたのだそうです。誰もその場は見ていないこと、あまりにディテールまで一致していることから疑問に思い始めて確認をしたところ、それは反日本のためのプロパガンダらしいとわかったのだとか。……というところで隣にいた中谷さんが、「それは当時の中国がルーツではないか」と発言。日本兵はこんなにひどいということをわかりやすく示すため、同様のことをしている日本兵を描いたポスターを見かけたことがあるのだそうです。絵が与える疑似体験感は強いから、それが東南アジアにも流れていったのではないか、いくら当時の日本兵でもそんなことはしない、と断言されていたのが心に残っています。

   いただいたコメントにあった、そもそもあの戦争はよかったとか悪かったとか、判断することが必要なのではないというご意見は本当にそうだと思います。私たちがすべきなのは、何があったのかをできるだけ真実に近い形でつかんで、今後に同じような人災が起きないように教訓を学び取ることなんだろうと思います。もうひとつ感じるのはは、少し戦争自体とは方向性が違いますが、日本の内外の情報の温度差に敏感になり、内側なり外側なりに働きかけてその差を埋めていく作業もしなければということでしょうか。外に耳を貸さず、内側だけで連帯を強めて意固地になっていくのは避けないと……というようなことを国外にいてつらつらと考えています。

【お知らせ】
BRIDGE FOR PEACEによる、「フィリピンと日本を結ぶビデオメッセージ・プロジェクト写真展と上映・展示会」が明日4/14~23まで東京・代官山で開かれます。
●詳細はこちら>


<左>戦争について知らなくちゃ!と慌てて読んだのがこの本。タイトルの通り、あの戦争はどういう理由で起きたのか、実際の戦いはどうだったのか、どうして最後はあんなになるまでやってしまったのか、とてもわかりやすい入門書だと思います。陸軍と海軍の勢力争いなど、その人間模様はなかなか興味深く、歴史としての戦争が一大ジャンルであることを垣間見た気もします。『あの戦争は何だったのか―大人のための歴史教科書』保阪正康著 新潮選書 <右>当社の知恵袋、監査役Tが「これも読んでみれば」と貸してくれたのがこちら。戦後の大混乱を少年として体験した著者による、戦後のみじめさや異常な状態に置かれた人々の心理状態についてリアルに記録している。アフガニスタンやアフリカの最貧国などでは今もこんな目に遭っている人たちがいるんだろうなと想像……。『誰も「戦後」を覚えていない』鴨下信一著 文春新書


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有機農業・自給自足の共同体にお邪魔してきました その2

カテゴリ:ロンドン  2006 3月23日

<前回からつづく

   そう、「できてるじゃん」「そう、これよこれ!」「……ムキーッ!」と羨ましくて言葉を失って身悶えしてしまうような生活がそこにはあったのです。

   まず、食事の大半が自前の有機作物だから、素性が知れているし、フードマイレージも限りなく少なくて環境にもやさしい。みんなでブッフェ式の食事だから残飯自体あまり出ないけれど、残飯やお茶ガラ、野菜くずは農園の中にある豚や鶏のエサに。


元修道院の敷地を下がりきったところには川が流れている。オークや白樺がそこそこに生えている、いかにもイングランドらしい田園地帯。まだ水遊びをしたそうなセッター2匹と、「もう帰るから上がりなさい」とジェスチャーする飼い主。


大量にとれたリンゴを保管する倉庫。5頭いる乳牛からとれるミルクで、バターやチーズも自給。チェダーチーズの熟成庫まであった。


これも、ここで収穫された大量のジャガイモ。イギリス人の主食はじつはジャガイモだから、日本人がたくさんのお米を見ると安心するように、イギリス人もこれを見るとホッとするんだろうな。

   食費は安いということで、では住居費はというと、いちおうルールでは、入居するスペースをマンションのように購入することで仲間に加わるのだそう。お値段は広さなどもいろいろなのでご紹介できないけれど、驚くほど安いってことはなかったけれど、妥当ですね、という程度。普通の収入のシングルマザーでも頑張れば手が届く、という感じ。

   そういうわけで、食と住がおおむね安定しているから、ここにいる人たちはのんびりゆったり暮らしている。働き盛り世代は外で仕事を持っている人が多いけれど、ワークシェアリングで週3日だけとか、午後だけとか、そんな人が多いらしい。あとの時間はここで農作業をしたり、食事当番をしたり、食堂で新聞を読んだり、おしゃべりをしたりして過ごしている。


初夏の昼下がり。一緒にコミューンを訪問したコロンビア人のピリが、アルゼンチンかどこか南米出身という男性と何やら初対面でいきなりディープに話し込んでいた。スペイン語の人も、国境を越えて話せる人が多くてうらやましい。

   これまたすごくいいなと思ったのは、子どもたちがコミュニティの中で育っていること。親が外で働いている間も、子どもは他の子どもと敷地内で木登りをしたりガチョウをからかったりしてずっと遊んでいるから託児所いらず。食堂にいると、ときどき子どもの一人が「転んだー!!!」と泣きながら転がり込んできて、新聞を読んでいるそのへんの大人(親ではない)の脚にかじりついて、なぐさめてもらっている。ここで育ったトム(前出のスティーブの息子)は、親以外の大人もいる環境で育ったことは本当にラッキー、最高に幸せな子ども時代だったと言う。

   そして、ここには知的障害のある人も、車椅子の人も、かなりご高齢の人もいて、それぞれ自分のできる範囲の仕事を受け持って誇りを持って暮らしている。本当は人間の共同体ってこのくらいが自然なんだろうなぁと、きれいごとでなく納得する風景だった。


お母さんが大学に教えに行っている間、他の大人に教わって建物の修復を手伝う女の子。この子のお母さんは40代前半のシングルマザーで、ここには最近加わったとか。決断は正しかった?と聞いたら、「もちろんよ! 唯一後悔するとしたら、なんでもっと早くここに来なかったんだろうってことくらいね」。

   ほかにも、暖房をできるだけ薪でまかなっていること、自家用車が増えたとはいえ、カーシェアリングが当たり前に行われていることなど、エネルギーへの配慮もそこかしこにされている。ここのひとりあたりの非再生可能エネルギー消費量は、東京やロンドンの平均的な一人当たり量の半分とか1/3とか、もっと少ないかもしれない。


どっさりと積み上げられた薪は、これでひと冬と半分くらいあるのだそう。薪も燃やせば二酸化炭素が出るけれど、それは育つ過程で吸収したのと同じ量。だから、再生されている森でさえあれば、地底から化石燃料を掘り出して燃やすよりも温暖化防止という意味ではよいとされている。


イギリスの田舎は公共交通が絶望的に頼りないのでクルマが必需品。そこで、通勤や街に行く予定のある人は自分の予定を黒板に書いて、一緒に乗っていきたい人を募集する。

   ……とまぁ、いいことばかりを書きました。ま、いいことばかりなんです、ハイ。私ももちろん、「いつか仲間に入れてもらいたいって願い出ようかな」と思いながらの見学でした。だからネガティブポイントがあるなら、いまのうちに見つけておかなくちゃ、と。たしかに小さいことはいくつかありました。

   まず、正直やっぱり平均的イギリス人の味覚はちょっと……Hmmmmm……なので、自分が食事当番の日はいいけれど、中にはかなりキツい日もあるだろうということ。これがイタリアだったらなあ。やっぱりね。あと、半農になるわけなので、虫や大量の動物の糞などが苦手な人は厳しいでしょう。

   それから、このコミュニティはもう30年目なので、中心的な人たちが60前後。哲学者(職業という意味でなく)が多いから、話は面白いし人格者が多いけれど、同時に偏屈な人も多そう。相当刺激的なやりとりを覚悟しなければ。もっとも、彼らもイマドキの風の必要性は意識していて、今からは若いカップルを中心にリクルート?したいとのこと。ただし、希望をする人には事欠かないようで、そういう人たちからの手紙はびっしりと束になってまとめられていた。

   最後に、ここに行きたくなった方もいるかもしれないのですが、スティーブから場所などは書かないでと釘をさされているので、私からはお伝えできないことをご容赦ください。でも、イギリスにはこういったエココミューンをリストアップしたガイドブックもあるので、探してみると見つけられるかもしれません。そもそも、思うに、私たちもめいめい私たちらしい……たとえば日本の風土に合ったこういった暮らし方を模索するべきなんでしょう。すでに始めている人たちも少なくないようですし。世界中でいろいろな試みが増えることが、今の地球には必要なことなんじゃないかな、と思います。


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有機農業・自給自足の共同体にお邪魔してきました その1

カテゴリ:ロンドン  2006 3月16日

   友人のスティーブは、年齢を訊ねたことはないけれど、30過ぎの息子がいるからたぶん60ちょっと手前くらい。筋金入りのインテリヒッピーで、今でも小さなデイパック1つで1ヶ月くらいの貧乏旅行に出てしまう刺激的なおじさんだ。

   彼は70年代、当時の左翼仲間たちが人間と環境にやさしい暮らしのあり方を考え、有機農業・自給自足を目指して28ヘクタールの農地がついた古い修道院を購入して始めたこの共同体に参加した。以来30年弱、ゆっくりとメンバーの入れ替わりはありつつ、ずっとここで20前後の世帯が一緒に暮らしている。しばらく前のことだけれど、「そういう暮らしに興味があるなら遊びに来なさい」と誘われ、寝袋持参でお邪魔した。


ほんの40年ほど前くらいまでは数十人の修道女たちが暮らしていたという建物と敷地に約20世帯が暮らし、畑を耕したりチーズを作ったり、外に普通に通勤したりしている。

   ロンドンからクルマで1時間少々走った小さな町のそばに修道院はあった。晩秋の早い夜、とっぷり暮れた中、門を抜けて敷地に入る。ヘッドライトの中にほったらかしの三輪車、スケートボード。そして「Drive slowly, free range children.(徐行運転。放し飼いの子どもあり)」の手書き看板。


敷地を横切る私道には「Drive slowly, free range children.(徐行運転。放し飼いの子どもあり)」の看板。


食事の合図の鐘を鳴らすスティーブ。ブレアとブッシュのイラク侵攻に激怒、米英軍がイラクを離れるまで髭は剃らない!と決めたらこんなに伸びてしまった。

   ちょうど夕食時だったので、いきなりご相伴にあずかることに。鐘楼の鐘が鳴ると天井の高い食堂におなかをすかせた住人たちが続々と集まってくる。最初は挨拶したり握手したりしていたけれど、あまりに人数が多いので、途中から全員に挨拶するのはあきらめて、ニコニコとだけしておいた。今は大人45人、子ども15人が暮らしているという。

   世の中にはさまざまな目的のさまざまなコミューン(共同体)があるけれど、ここはかなり現実路線、平たく言えば最も「怖くない」部類に入ると思う。20家族が一緒に暮らすといっても、建物の中は日本のマンションのように区切られていて、世帯ごとの玄関がある。仕事を聞くと、大学講師をしている人、近所のスーパーのレジ係をしている人、年金生活の人などなど。子どもたちは地元の学校に通っているし、閉ざされたユートピアを目指しているわけではない。ただ、食事は基本的にみんな一緒にとり、大人は週9時間以上掃除や炊事などコミュニティのために働かなければいけない。そのほかに農作業の担当もある。SOHOで小さなNGOを営むスティーブの担当は、タマネギ畑約1アール。


修道院時代は集会場だったという大きな食堂兼キッチン。外から帰ってきた人はみんなここを通り、食事の準備をしている人やお茶を飲みながら新聞を読んでいる人たちとお喋りしたり、あとで羊をあっちの牧草地に移そうなどと相談したり。突っ立っていると、「あなた動物は好き? 牛の乳搾りやってみる?」と女性に声をかけられ、私は長靴を履いてにわかハイジに。


食事は基本的にベジタリアン。日曜日だけ、ここで育った豚を潰した自家製ベーコンなど肉料理が1~2品出るけれど、手をつける人は少ない。それにしても、食材の半分以上は自分たちで育てたものだから、食費は1食90円!

   70年代のスタート当初は、社会主義的理想も高く、できるだけ自給自足、クルマは持たない、電話も全員に1回線だけ、テレビなんてダメダメ……という方針だったとか。でも、みんなで話し合いながら少しずつ、電話を個別に引いたり、テレビを持ったりするのもいいことにルールを変えてきた。「今ではみんな部屋でインターネットもしてるしね。ごくフツーだよ。クルマの個人所有だけは僕は賛成じゃないけれど……」と渋い顔のスティーブ。

   でも私はもうずーっと、軽い興奮状態になっていた。現代社会に妥協しつつ、彼らが実現してみせている暮らしは、それでも私たちがブチ当たっている問題の多くに答えを出せているからだ。いや、むしろ妥協しているからちょうどいいくらい。食の問題、環境問題、ワーク・ライフ・バランス、少子化……ウウウウ! これは羨ましい!

   ……と、突然ですがそろそろ長くなってきたので、この続きは次回にします。来週をどうぞお楽しみに!


農業などのお手伝いを条件に、数週間ほど無料で滞在させてもらうこともできるから、いつも数人の学生が転がり込んでいる。彼らが泊まるのは、長い廊下に沿って並ぶ、修道女たちが修行をしたお祈りのための小部屋。


ここが修道院になる前、上流階級のお屋敷だったときのバンケット・ルーム。出窓がいくつもあって、ジョン・レノンのあれは「Imagine」でしたっけ、ヨーコと一緒に白装束のあの部屋を思い出す。2号前のこのコラムでご覧に入れた青い図書室はこのバンケットルームのすぐ隣。

●有機農業・自給自足の共同体にお邪魔してきました その2


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(今度は)ゴーゴー! 自転車♪

カテゴリ:ロンドン  2006 2月16日

   みなさん自転車、乗ってますか? これまでにも私が大の自転車党であることはこの欄やデジログ日誌などでたびたび書いてきましたので、覚えてくださっている方も多いかもしれません。

   健康にいいし(クルマにハネられない限りはネ)、お金もほとんどかからないし、環境にもいい。都心なら電車やタクシーより早く目的地につくこともしばしば。そして何より気持ちいい! 自由! ストレス雲散霧消! とゆーわけで、東京では自転車通勤、ロンドンでも自転車に乗る機会をいつも虎視眈々と伺っている日々です。

   で、最近のロンドンで凄まじく増加しているのが自転車通勤をする人の数なのです。ヨーロッパの国でありながら、これまでイギリスでは自転車はあまり人気がなく、大人で自転車に乗れない人が3割くらいいるのだとか。一説には、階級社会のため、自転車は貧しい階級の人々が仕方なく乗るものという偏見があったからと言われています。


仕事を終え、帰途につく人たち。朝9時前と午後6時前後は自転車が数珠繋ぎになっていたり、信号待ちでは車列の前に10台以上の自転車が陣取っていたり、ここはアムステルダム?と見まごう風景に。ほんの数年前はこんな現象はなかったのです。

   ところが、健康と環境問題への意識が高まってきたところへ、ロンドンを襲った例の爆弾テロ、そうでなくても頼りなくストの多い地下鉄という要素もあいまって、おととしあたりから自転車通勤ブームに火がついた模様。ロンドンの左翼市長が自転車振興のために年に50億円も予算をとるなど、市側の後押しもあります。先日の夕方、ホルボーン駅のそばで時間を潰した際に通る自転車を数えたところ、10分で150台弱が目の前を通っていきました。

   ひるがえって東京。もちろん東京は清潔・安全・正確なすばらしき地下鉄&鉄道網があるので自転車の必要性が低めということはあるけれど、自転車の人がもっと多くてもいいのではないかと思うのです(路駐されっぱなしのママチャリは山のようにあるけれど)。


ヘルメットの着用率は7割くらいかな。歩道は自転車は走ってはいけないことになっているので、みんなきちんと車道を走っています。自動車もちゃんと自転車を一人前のクルマとして扱ってくれるので走りやすい。大きな赤いバスも、どこかの都バスのように自転車に嫌がらせをしてきたりはしないので快適です。

   自転車なんて辛そう? それが逆で本当に気持ちいいんです。深夜まで残業をして頭がクラクラしていても、ペダルをひと漕ぎふた漕ぎして、夜の空気を吸い込めば、あっという間にすっきりしてきます。コンクリートだらけの都心でも空気の中には季節の香りがいつも混ざっていることにも気づきます。今の季節なら沈丁花のほのかな香りや、春を思わせる湿り気の匂い。走り始めこそ寒いけど、5分もすれば汗ばんできます。体中の血液をワーッとかき回して汗をかくから、冷えや肩こりにもいいようです。そういえば、編集部のKも感化されて自転車を購入、なんと環八のあたりから半蔵門まで来ては、「楽しい、楽しい」と言っています(いきなりかなりハードコアまで行ってます)。

   ただし最後にひとつだけ。自転車は