月曜日、ロンドンとイングランド南東部では18年ぶりの大雪が降りました。私が住んでいるのはサリー(Surrey)県というロンドンの南西隣で、このあたりは最も雪が多かったようで、30cm以上は積もりました。
ロンドンは緯度で言えば北海道のずっと上、カムチャッカ半島の南端のあたりになります。でもメキシコ湾流のおかげで冬場でも寒さは東京より気持ち寒いかなという程度で、それほど変わりません。なので雪も、年に1回積もるかどうか。

いつも人気のない空き地にも、老若男女問わず人がいっぱい。ソリで遊んだり、雪合戦をしたり、写真を撮ったり。うちの町って、こんなに人がいたのね、と思うほど。
そんなわけで、ロンドンも東京に負けず劣らず雪に弱く、今日はほとんどのバスが止まり、電車はごくわずかな運行、幹線道路も事故が相次いで首都の交通網はほぼ麻痺。子どもたちの学校もサリー県はすべて休校。イギリス全土でも今日は5人に1人が会社を休んだとか。もちろん我がご近所さんたちも全員仕事を休んで、朝から大人も子どもも雪合戦。昼には隣の集落のパブまで雪の中の散歩に行こうと誘いが来たので、私もしばしMacの電源を落として参加することにしました。

典型的なイギリス様式の雪だるまその1。

典型的なイギリス様式の雪だるまその2。
コキュコキュ音をさせながら膝下まである新雪を踏んででかけてみると、なんと、近所は人だらけ! もともと散歩好きのイギリス人、雪景色を見るためにみんな繰り出してきたようです。どう見ても笑顔の犬もクルクルと跳ね回っています。ふだん顔も見たことがない人が、子どもと楽しそうに歩いています。

散歩の途中、すれ違うたびにみんな一言二言交わします。このラブラドール君は完全笑顔。脚の毛に雪玉をびっしりつけて男性に抱きかかえられているコッカースパニエルちゃんは明らかにご機嫌斜め。
さらに驚いたのは、すれ違う人たちがみんな挨拶をすること。ほっぺたを赤くして、「いやー大変ですねぇ」「なんてきれいな景色なんでしょう」などと口々に。郊外と言ってもこのあたりはロンドン気質なので、ふだんは知り合いでなければなかなか口などきかない町が、一夜にしてフレンドリーな雰囲気の町になっていました。古いランドローバー(ジープ型の4駆)をオープンカーにして乗っていた作業服姿のお兄ちゃんたちに、買い物中の人たちがふざけて雪つぶてを投げると、お兄ちゃんたちも荷台の雪で応戦。たぶん知らない人同士です。

牧草地の向こうのオークにも雪がきれいにかかって神秘的な美しさ。ふだんは遠くに聞こえる幹線道路の音も、今日はまったくなし。
「これだけ降るとやっぱ違うね、生活がスローになって、数十年前みたいだ。歩くペースも遅くなって、知らない人同士がこんなに口をきくなんてね。もっと頻繁に雪が降ればいいね!」とうれしそうに声をかけてきたのは、買い物帰りの40代とおぼしき男性。ホントにそうです、とついこちらもニッコリ。
町の商店はほとんどが臨時休業。ワイン専門店の扉には、「悪天候につき、本日はすでに閉店いたしました。ご不便をおかけしまして申し訳ありません
(じゃ、スキーに行ってきま〜す♪)」というメッセージがありました。テレビなどのニュースは、ロンドンがいかに自然に弱く準備不足か、交通網の遮断でいったいいくらの損失に繋がったかを試算して嘆いています。でも、たしかにお金は増えなくても、人々は思いがけずスローで幸せな時間が代わりに手に入ったのですから、それはそれでいいのではと、きれいな景色を眺めながら、思わず早めに赤ワインのコルクを抜いた夕暮れでした。

ワイン専門店には「悪天候につき、本日はすでに閉店いたしました。ご不便をおかけしまして申し訳ありません(じゃ、スキーに行ってきま〜す♪)」という貼り紙。ウキウキ気分が伝わってきます。