更新日:2008年5月09日



あなたの心を駆り立てるものがあるなら、
それを追いかけなさい

カテゴリ:フェミニズムというかヒューマニズムカテゴリ:ロンドンカテゴリ:地球温暖化  2007年9月11日

  昨晩遅く、ラジオのニュースで「ザ・ボディショップ」の創業者アニタ・ロディックさんが脳内出血で亡くなったという一報が伝えられました。

  私がcafeglobeを始めようと思ったきっかけをくれたのが、アニタでした。大学の夏休みに訪ねたロンドンでモスグリーンの門構えのボディショップに出会い、その後、ボトルのリユースや動物実験反対などを声高に掲げていたことに衝撃を受けたのを覚えています。ホームレスの人たちに収入の機会を与える雑誌『ザ・ビッグイシュー』に最初に資金を提供したのがアニタと夫のゴードンと知ったときも、鳥肌が立ちました。


昨年、「STOP VIOLENCE IN THE HOME(家庭内暴力の根絶)」キャンペーンで来日した際に撮影した写真。子どものようにはしゃいでみせたり毒舌も相変わらずだったけれど、新幹線の窓の外を見る横顔は、体調もあり、“残り時間”をより強く意識していたのかもと思わせる。

  元祖ヒッピー世代。でもただのヒッピーなら、平和や環境を叫んで資本とぶつかったり(それも必要なこと!ですが)、隠遁してしまったり。アニタはむしろ事業家として会社を成功させ、そのブランド力や得た資本の力で、いわば経済界の内側から、世の中の利益最優先の企業に「稼ぐだけでいいの?」と挑戦状を突きつけた人。「ありもしない効果を宣伝して儲ける化粧品産業なんて大嫌い」といった歯に衣着せぬ名言は集めればきりがないほどです。フェアトレードの概念をいち早く取り入れたのもボディショップでした。


手元にあった「STOP VIOLENCE IN THE HOME(家庭内暴力の根絶)」キャンペーンのリップ。ほかに、ボディショップのキャンペーンで面白かったのが、90年代の「スーパーモデルと呼ばれる女性は世界に8人しかいないけれど、スーパーモデルのような体型でない女性は世界に30億人います」というセルフ・エスティームを高めようという呼びかけ。毎日広告や雑誌記事などで何十何百というモデルの姿にさらされているうちに、あれがあるべき姿と思い込まされてしまっていることに気づこう、リアルな女性はあんなプロポーションじゃない、というメッセージに勇気付けられた人は多いはず。

  10年前の雑誌編集者時代、そのアニタにインタビューをする機会を得ました。世界では超のつく人気起業家・環境&人権の活動家。分刻みのスケジュールで合同インタビューしか予定のない中、日本のボディショップ広報の方に粘りに粘っていただいて、プレスディナーの途中で通訳なしで30分だけならという条件でなんとか枠を確保。

  南イタリアはカラブリア州で開かれた国際プレスディナーの席、ふたりで抜けてレストラン裏口の階段に座り込んでの30分は、今思い出しても胸が熱くなる経験でした。環境問題をどうしたらより多くの人に伝えられるか、女性がもっと自由に生きられる社会にするためにはどうしたらいいか……私にとっては、記事のためのインタビューというより、個人的な希望や不安にこたえてもらう人生相談だったといえそうです。

  いくつもの宝石のような言葉をもらったのですが、ひとつが「社会を変えたいなら女性のネットワークを作りなさい」というアドバイスでした。「日本の女性は世界中を旅行していて視野も広い。彼女たちの潜在的なパワーはすごいわ。まず女性が変われば男性はすぐ変わるから」。この言葉が、私の中でcafeglobeの構想に繋がっていったことは言うまでもありません。そして、じつは一緒に創業をした社長の矢野とも、この国際プレス発表会で記者同士として知り合ったのでした。何か運命的なものもあったのかもしれません。

  アニタの言葉でもうひとつ深く心に刻まれているのが、「あなたの心を駆り立てるものがあるなら、それを追いかけなさい」というものでした。

 「あなたの持ち時間はこうしている間にも刻一刻と減っているのよ。心を駆り立てるものがあるなら、躊躇せずに追いかけなさい。私も、私の残り時間は一瞬でも無駄にしたくないと思ってる。どうやって最大限に使い尽くそうか、いつも考えてるわ」。笑顔で腕を広げて、がっしりとハグしてくれたアニタ。私と大差ない小柄なからだなのに、とても大きくて温かかった。


ボディショップの経営から退いてからは、環境・人権キャンペーナーとして忙しく活動していた。画像は彼女自身のキャンペーンサイト。アニタからの更新は、9月6日のアムネスティ・インターナショナルの活動に関する投稿が最後になっている。

  36年前に次女を出産したときに受けた輸血でC型肝炎ウィルスに感染していたことが2年前にわかった、と彼女は今年2月に発表をしていました。最近は軽い心臓発作があったり、肝硬変も進んでいることも公言。日曜日に頭痛を訴えて入院、月曜日の夕方に夫とふたりの娘に看取られて亡くなったそうです。64歳。晩年は家族や友人に包まれて過ごしたいと言っていたアニタ、きっと満足して旅立っていったのではないかな。いや、「あの世なんてないと思う。あっても知ったこっちゃないわ」とも言っていたから、「ちょっと短かったけど、まぁ我ながらよくやったわ」と満足して人生の幕を下ろしたのでしょうか。

  図らずも、更新2回続けて偉大な女性が亡くなった話になってしまいました。でも、メメント・モリ。残り時間をあらためて意識する、いいきっかけにしたいと思っています。


●AnitaRoddick.com
http://www.anitaroddick.com/

●The Body Shop バリューズのページ(日本)
http://www.the-body-shop.co.jp/values/index.html


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それを追いかけなさい

» ボディショップのアニタ・ロディックさんが亡くなる from MIZO生活
カフェグローブの青木陽子の東京-ロンドン編集後記で、ボディショップのアニタ・ロディックさんが亡くなったことを知りました。 青木さんが心に残... [続きを読む]

2007年09月13日 21:36


アメリカでカフェ・グローブを愛読しているものです。

アニタ・ロディックさんが亡くなったこと、非常に残念に思います。私たちはまた大切な人を失ってしまいました。彼女の環境、人権保護活動には私の興味に通じるところがあり、自分もそのようになりたいと考えています。BodyshopとAVEDAは私の中で一目をおく企業なのですが、アニタのような行動力のある人が今後も出てくることを願うばかりです。

青木様が授かった彼女からの言葉、「あなたの心を駆り立てるものがあるなら、それを追いかけなさい」は私の心にも深く響きました。たとえまわりから何かを言われても、自分には追いかけるべきものがあるのだという信念を持ち続けたいです。彼女の言葉は私の忘れていた想いに再び光を与えてくれました。現在就職先を探している身ですが、やはり環境保護活動、人権保護運動、フェア・トレードのような新しい形の経済活動などを実践している企業で働きたい、それが私の信念を形にする方法だと強く感じました。

投稿者 Minnesota AM : 2007年09月12日 15:32

カフェグローブを愛読している方の多くは、アニタの活動・考えに共感しているのではと思います。読者の多くはグローバルな考えを持ち、自分の生活を積極的に楽しみつつ、社会活動にも関心のある方々だと思うからです。

私が去年海外から数年ぶりに帰国する前、日本でどう生きていけばいいのかとても不安でした。でもそのとき通っていたビジネス学校の卒業プレゼンでボディショップを取り上げた際、アニタの活動や情熱を知り非常に共感しました。そして自分に自信を取り戻し、プレゼンも大成功させ、持っていた不安も吹き飛ばして帰国したのでした。

海外で英語教師の資格も取ってきたのですが、経験がないため職業としてではなくボランティアで英語を教えようと思っています。海外生活は楽しいことばかりではなく苦しいことも多かったのですが、その中で自分の存在とは?自分は社会に何を貢献することができるだろう?ということも真剣に考えることができました。

今後どこで何があっても大丈夫だと思えるようになったのはアニタ及びカフェグローブのおかげです。今後も私達にポジティブな影響を与えてください。応援してます。

投稿者 Kate828 : 2007年09月13日 11:09

こんにちは、いつもcafeglobeを拝見しております。

「あなたの心を駆り立てるものがあるなら、それを追いかけなさい」
「あなたの持ち時間はこうしている間にも刻一刻と減っているのよ。心を駆り立てるものがあるなら、躊躇せず
に追いかけなさい。」
これら、アニタさんの言葉の1つ1つに、胸を打たれ、涙が出ました。

このところ、現在の自分の状況に悩み、鬱々としていました。
仕事があり、住むところがあって、食べたいものを好きなように食べ、気に入った服を着て…、不自由なことなどないように、生活していても、どこか「これでいいの?」と疑問を感じていました。
幸いにして持病もなく、健康上の悩みもない。
けれど、もしかしたら明日、事故に遭って人生が終わってしまうかもしれない。
そんなときに、「我ながらよくやったわ」って満足できるような生き方をしよう、そう心から思いました。

アニタさんの創業されたBODY SHOPの理念も素晴らしく、特にフェアトレードと容器の再利用(リユース)については、もっと多くの企業にも広まってほしいと考えています。
使い終わるたびに捨てられていく容器に罪悪感を覚えますが、再利用を行っている企業の少なさにやるせない思いです。

私にできることは、なるべく再利用を実施している企業の製品を買うようにすること、せめて自宅ででるプラスチック容器については、自治体のリサイクルに出すこと。
これで、青木さんが以前「From the Editor」で書かれていたように、世界の貧しい人たちから奪っている石油が少しでも減ってくれたらいいと、思っています。


最後になりましたが、こんなに素敵なアニタさんの言葉をこうして紹介してくださり、ありがとうございました。

投稿者 なおこ : 2007年09月13日 18:55

Anitaの著作がありますね
2006年に西洋銀座の並びミカレディ隣の
ボディショップで黄緑色の表紙を手に取り
買って一気に読み上げました

「行動力とはこの星(地球)に住む家賃の様
な物...」

印象的な言葉でした

投稿者 Boston : 2007年09月13日 19:50

動物実験をしないというボディショップの方針には今でも納得はしていませんが、アニタの(わたしも一度だけお会いしました)人柄や大局的な考え方に対して、尊敬の念を覚えています。考え方の違いは、実はさして大した問題ではないのではないか、と初めて気づかされた人でした。

衷心よりご冥福をお祈りいたします。

投稿者 Xu : 2007年09月14日 18:28

青木さん、素敵な追悼文ありがとうございました。
ビッグイシュー日本の佐野です。
アニタがいなければビッグイシュー日本もありませんでした。彼女は偉大な人でありながら、彼女にできるなら私にも、と思わせる人だった、と英国のビッグイシューの仲間たちが言っています。
彼女は亡くなりましたが、彼女の精神こそいまに生き、生かす必要があると思います。彼女と出合った青木さん、彼女の精神を折りにふれ伝えて下さいね。お願いします。

投稿者 佐野章二 : 2007年09月27日 21:58




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青木陽子
Cafeglobe
ファウンダー・取締役
女性誌編集者時代、自分を含めまわりの女性たちが本当に読みたい媒体がないことに気づき、1999年に現社長の矢野とともにCafeglobeを立ち上げ、6年間編集長をつとめる。現在、パートナーの暮らすロンドンと東京の二重生活を実践中。
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illustration / Nakagawa Isami

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