更新日:2008年5月09日



地球温暖化がついに世界のメインステージに!

カテゴリ:地球温暖化  2006年11月17日

  「今すぐに地球温暖化の進行を食い止める努力を始めなければ、世界経済は壊滅的な打撃を受ける」という趣旨の『スターン報告書』、少しまとまった時間が取れたので一気に読みました。そして……興奮と緊張と不安と期待で鳥肌が立ちました。ああ、やっとここまで来た!という思いでの鳥肌です。

  これについては、ネットでさっと検索する限り、まだあまり日本語では詳しい評価や解説がなされていないので、できればcafeglobeでできないかしらと思ったりしています。が、とりいそぎここに感想を先に。


エコノミストの目から経済を説くこの報告書の肝は、「世界がこのまま温暖化に手を打たなければ、経済的な損失は840兆円に達するだろう。一方今から毎年世界中で合計4兆円を使って対策をすれば、この打撃は回避できる」というところ。4兆円は、世界のGDPのおよそ1%。早急に二酸化炭素の排出削減をしなければ、東京やロンドン、ニューヨークなどの大都市も水没確実と言われている。

  この報告書は、10月30日に英政府が発表したもので、まとめたのは元・世銀チーフエコノミストのニコラス・スターン卿。イギリスのブレア首相と次期首相と目されているブラウン財務相が並んで発表をしていました。

  本体は700ページに及ぶ報告書だそうですが、英語版の要約(27ページ)と、日本語のさらなる要約(4ページ)PDFが以下の英財務省サイトからダウンロードできます。

●STERN REVIEW: The Economics of Climate Change(英語)
http://www.hm-treasury.gov.uk/media/8AC/
F7/Executive_Summary.pdf

●スターン報告書-気候変動の経済影響:結論のまとめ(日本語)
http://www.hm-treasury.gov.uk/media/BCC/D8/
stern_shortsummary_japanese.pdf

  内容を超かいつまんでご紹介するならば……

(1)いかに地球温暖化が待ったなしの崖っぷちまで来ているかということを、これまでの科学的な調査報告(IPCCなど)を引きつつ改めて警告。とくに二酸化炭素をこれ以上大気中に増やすべきではない、と危機を強調。

(2)地球温暖化が引き起こす洪水や旱魃などの自然災害、食糧不足、海面上昇などによる億単位の難民発生とそれらによる世界の不安定化の指摘。これらがあと数十年で起きる可能性が高いこと。

(3)それらによる経済的な損失は、20世紀の大恐慌や2回の世界大戦並みかそれ以上のダメージであると試算。世界中の人々の暮らしの質が低下すると警告。

(4)世界経済の破綻を避けられるかどうかは、今後5~10年で世界がどれだけ二酸化炭素を出さない経済に変身し始められるかにかかっている。まずは炭素税や政策を駆使して、脱炭素社会の実現をすぐに始めるべし。そのコストは、このまま行くと人類が被る経済損失よりずっとずっと小さいのだから、始めない理由はない。さぁ早く!

……といったところです。

  内容自体は特別新しい発見や理論が入っているわけではないのですが、この報告書がすごいのは、世界のトップエコノミストによってまとめられ、G8のひとつイギリス政府の肝入りで発表されたということです。ついに政治経済の頂点に環境問題が登りつめた!のです。感無量。遅かりし由良の助、でないといいのですが。

  イギリス政府は、どうやらかなり本気です。事の深刻性をわかっていることもさることながら、なんとか政権を維持したい、おそらくブラウン率いることになるであろう労働党が命運をこのトピックに掛けようということなのかもしれません。来年のドイツG8の主題のひとつに脱炭素合意を押し込むと鼻息も荒くメルケルさんにかけあっているようです。だいたい、上のような日本語のPDFを財務省自ら用意するなんて、アピールに本腰入ってます。さっそく今日までナイロビで開かれていた国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP12)にもこのレポートを持ち込んで、話題を集めているようです。

  前々回のこのコラムで図らずも書きましたが、世界に対してアピール上手なイギリス(●バックナンバー参照>)です。さっそく『不都合な真実』のアル・ゴア氏(●バックナンバー参照>)を政府の顧問に迎えたいというような話もあるようです。

  はい、お約束、今回も振り返ってわれらがニッポン。省エネ技術では世界一とも言われる日本、この動きにどう組んでいくのか、日本政府を世論で押し上げるのは私たち日本人の仕事です。ぜひ注目してください。

●こちらもご覧ください(cafeglobe.com関連記事)>
『あらためて、環境問題について、かなりマジメに』(2004年12月15日)

●こちらもご覧ください(cafeglobe.com関連記事)>
『地球温暖化、今動き出せばまだ間に合う!』(2005年1月12日~4回連載)


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今、マイケル・クライトンの"State of Fear"(邦題不明でごめんなさい)を読んでいます。地球温暖化をデータで証明出来ないことに業を煮やした環境テロリストが、人為的に洪水を起こしたり、グリーンランドの氷河を爆破→崩落させようとしたり・・・といった展開のフィクションです。CO2削減や省エネを心掛けることはきっかけが何であれ大事だと思いますが、20世紀以降の人間の営みが本当に地球環境の破壊に直結しているのか、人間ってそんなに神がかった力を持つ存在で、一方の地球は一生物でしかない人間にやられてしまうほど脆弱なのか、は何となく疑問に思ったりしています。いずれにせよ、まずいろいろ考えることは温暖化防止(緩和)に向けての一歩だと思いますが。

投稿者 あっちゃん : 2006年11月21日 17:37

はじめまして。
いつも青木さんの記事を楽しみにしています。現在、環境とコミュニケーション(いわゆるCSRよりもう少し広がりを持ったサステナブルな社会作り)について社会人大学院生してます。学校で学んだことをどうやって潜在的な「プチエコ」の人たちにもっと自覚を促すことができるか、そうしたことをゆくゆくはライフワークにできたら。と小さな活動も始めてみました。試行錯誤してますが、やっぱり「実践」があっての知識だなあと実感する日々です。
さて、前置き大変長くなりました。

>この報告書がすごいのは、世界のトップエコノミ>ストによってまとめられ、G8のひとつイギリス政>府の肝入りで発表されたということです。ついに>政治経済の頂点に環境問題が登りつめた!

私もとても感慨深く感じます。来るべきときが。やはりボトムアップとこうした政治レベルとか双方方向の関係があってこそ、サステナブル、そして環境と経済は両立する。そういうことを私も今の論文に書いているところなので、すごく自分の中でhitしました!

途上国支援に関わってることもあって、先進国がどんどんこうした環境のモデルを政治レベルで発信してもらいたい。とも強く願います。

これからも青木さんの鋭い切り口の真摯なレポート、楽しみにしております♪

投稿者 Miki : 2006年11月28日 01:09

あっちゃんさん Mikiさん コメントありがとうございます。

>あっちゃんさん
疑問に思われるのはもっともだと思います。でも残念ながら、人間の力って、すごく強いようです。地球の歴史上初の規模なのでしょう。また、地球は私たちが体感的にとらえるよりもだいぶ小さい。とくに大気はすごく少ない。『不都合な真実』でゴアが紹介していましたが(9月29日の当コラム前々回をご覧ください)、地球儀があったら、大気はそれに塗ったニスくらいの厚さしかないわけです。地球の直径が1万2000kmに対して、大気圏の厚さは10km程度(それも外側のほうは濃度も薄い)ですので、たしかにそんなものでしょう。それだけペラリと薄く少ない大気の組成を変えるのはいかにもできそうだと思いませんか?

>Mikiさん
うれしいコメントありがとうございます! 私もまさに同じ思いで、出版社を辞め、cafeglobeを始めた8年前頃は環境とコミュニケーションまわりの勉強をしたいなと思っていたのです。ときには不安や徒労感に苛まれることもありますが、ある意味楽観的に信じて、絶えず押して行くしかないですね。がんばりましょう!

投稿者 アオキ : 2006年11月29日 15:36

青木さんからじきじきコメント付していただき嬉しく思います!
ところで、昨日のことですが、国連においてもハイレベル会合の中で、いよいよ開発と環境、とくにUNEPのステータスの格上げが議論されたらしいです。年明け、正式に承認されれば、本当に世界はまさに、環境と開発の両立がメインステージ!になっていくのだと思えるニュースでした。
来年冬には京都で自治体レベルの温暖化対策に関する国際イベントもあるようですし、ゴアさんも映画のプロモーションで来日されるようですし、目が離せないトピックス、私も私なりにできることから発信したいと思います!
毎度長文、スミマセンでした。以上です。。

投稿者 Miki : 2006年12月01日 00:46

私の入っているMLで回ったのですが、日本もこのStern報告には協力しているらしいです。
http://www-iam.nies.go.jp/aim/stern/index.htm
を参照。

投稿者 worry : 2006年12月01日 13:17




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青木陽子
Cafeglobe
ファウンダー・取締役
女性誌編集者時代、自分を含めまわりの女性たちが本当に読みたい媒体がないことに気づき、1999年に現社長の矢野とともにCafeglobeを立ち上げ、6年間編集長をつとめる。現在、パートナーの暮らすロンドンと東京の二重生活を実践中。
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illustration / Nakagawa Isami

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