更新日:2008年5月09日



BBCに見るイギリスの「国策」?

カテゴリ:東京  2006年11月04日

  『デンキ画報』のページでも少し書きましたが、最近、YouTubeとかPodcastの利用頻度が高まってきて、すっかり地上波テレビを観ない生活になってきています。タレントの名前がわからなくなってきたので仕事柄ヤバイと意識して地上波をつけても、今度は出演者たちの叫んだり手を叩いたりのオーバーアクションやチカチカするテロップに圧倒されてしまう。それでも我慢して観てみると、いかにも盛り上がっているけれど、ひどく薄い内容のネタをワーワー大声出して時間が来るまで引き伸ばしているような番組も多いし。消耗。

  テレビって昔からこんなに内容が薄かったっけ? 昔のことはよく覚えていないけれど、ひとつ言えるのはネットで得られる情報の深さ・密度の濃さに慣れてしまったことも理由なんじゃないかと思ったりしてます。あと最近ではNHKのニュースが、センセーショナルなテロップを使ったり、「信じられない事件」などのように主観的な言葉をつけて煽るような表現をし始めたのも気になっています。信じられないかどうかは視聴者が決めるべきでしょ。

  NHKといえば、視聴料をほぼ強制的に徴収するという点で似ている英国のBBCはよく利用しています。テレビ(日本ではBBC World)もラジオもWebも。テレビにも唸らされる番組が多いんですが(とくに風刺系コメディ!)、圧巻なのが十数局あるラジオとWebです。ニュースサイトはおそらく世界一、二を争う充実ぶり、今年になってからはテレビやラジオの番組も次々にPodcast化してきて、ものすごい予算とエネルギーのかけようです。

●BBCのニュースサイト>

  それでイソイソと私もニュースを得たり、痛烈な皮肉コメディに喜んだりしているわけですが、少し引いて眺めると、これはイギリスという国の生き延び戦略そのものなんだなぁと気づかされます。

  大英帝国時代に世界中から搾取してきた資産もあらかた使い果たし、北海油田ももうカラッポ。産業革命で丸裸になった北の自然は生産力が低いし、人口だって日本の半分。軍事費こそ世界5位あたりをウロついているけれど(ちなみに1位はアメリカで日本は2~3位)、本来たいしたことない国だと思うのです。それでもイギリスと言えば世界の舞台でも文化としてもとっても存在感がある。

  もちろん外交では安保理の常任理事国であることも大きいでしょう。でも、それ以上に大きな要素だと私が思うのが、情報戦の成果です。そのひとつの表れがBBCなのではないかと。

  まず、BBCに限らずイギリスのメディアは世界のニュースがやたら多い。パレスチナ(これは負い目を感じてるからもあるでしょうけど)問題からミャンマーやラオスでの民族浄化まで、日々お茶の間に届きます。BBCの海外特派員数は世界一で、毎日着々と世界の津々浦々からのレポートが公開されています。日本についても、高齢化の度合いや若者の気分、女性の地位などがけっこうな頻度で報告されているのを見かけます。

  どうも、「とにかく世界の事情に通じていなければ」という姿勢が国としてあるようなのです。一度世界を制覇した国なだけに、地球の端々の情報を常に把握しておくことのメリットを知っているんじゃないか。何かあれば仲裁に入ったり、早めに批判声明を出したりすることで、小さい国でも一目置かれる存在で居続けられる。ビジネスチャンスも見つけられるだろうし、リスクもよく見える。

  そして、英語の強みを生かして、世界に向かっても大量の情報を惜しみなく提供することで、自分たちの視線を世界に広める。自分たちの価値観もどんどん輸出してしまう。私なんぞも、彼らの思う壺にハマっているという見方もできるかもしれないわけです。

  翻ってわれらが日本。他の国がうまくやってるのを見れば、愛国心がやっぱり鎌首をもたげてきますね(愛国心はほっといても育つものだと確信する理由です)。大メディアでの海外ニュースの圧倒的な存在感の軽さ、ただでさえ挙動不審と誤解されがちな文化習慣や価値観を伝える努力の小ささ。損してます、絶対。世界はますます小さくなってきて、浜さんの連載でも再三お伝えしているようにグローバル化の苛烈な競争時代に突入しているこのご時勢。日本あっての世界ではなくて、世界あっての日本。自分探しはそろそろやめて、自分マーケティングを。どれだけ「美しい国」かを外向きに説明しなければと焦っています。

●浜矩子のわかりやすいお金の正体の話>


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青木陽子
Cafeglobe
ファウンダー・取締役
女性誌編集者時代、自分を含めまわりの女性たちが本当に読みたい媒体がないことに気づき、1999年に現社長の矢野とともにCafeglobeを立ち上げ、6年間編集長をつとめる。現在、パートナーの暮らすロンドンと東京の二重生活を実践中。
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illustration / Nakagawa Isami

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