更新日:2006年3月30日



世界中のみなさん、リール交換いたしませんか

カテゴリ:東京  2006 3月30日

   先日、久しぶりに実家に行き、元自分の部屋に置きっぱなしにしている自分の荷物をゴソゴソ。あったあった、コレコレ。丸い形のフィルムリールを入れて覗くと、風景やアニメ世界が3Dで見えるというアメリカ生まれの玩具「View-Master(ビューマスター)」。


「あーっ!」という方もきっといると思うのですが、Cafeglobe編集部で数人に聞いた限りでは知っている人はいなかった……。私のこれは十数年前に自分で買った二代目。70年代に親に買ってもらったものはディズニーのリールごときっと親にこっそり捨てられたのでしょう、行方不明。

   ステレオ写真と言えば、子どもの頃の学年誌などで、2つのそっくりな写真の間に厚紙か何かを立て、顔を近づけて見ると写真がほら立体に……というのを経験したことのある方は多いと思います。これはそのスライド版。仕組みはごくシンプルなのですが、肝は、コンテンツの充実っぷり。今でもアメリカなどの有名な観光地に行くと、よくその風景のリールが売られています。


この子どもたちのように、ヴューワーのお尻側を光にかざして覗きこむのが正しい鑑賞法。

   グランド・キャニオンだのダイヤモンドヘッドだの、ただの風景写真も、この立体感がやけに劇的に強調されたビューマスターで見ると、見飽きることがないから不思議。大人になった今でも、口をぽかんと開けて見とれてしまうキッチュな美しさなのです。東京ディズニーランドが開園した頃だったか、3Dの部屋か何かが話題になったけれど、まさにああいう世界が目の前に出現するのです。

   もしやと思ってネットを検索してみると、やはりありました、ビューマスターが生まれた1930年代からのヴィンテージ・リールを売る本格的なサイトが。オークションサイトeBayでもたくさんのリールがやりとりされている模様。1930~50年代のレアものとなると、数万円~という値段になっているようだけれど、40年代のもので1000円以下というものもけっこうある。きっと、いかにも「アメリカ」なその頃の景色だろうと想像すると、かなり欲しくなりますね。


日本の観光地ではあまり見かけないけれど、やはり元占領地だからか、沖縄の石垣島で見つけた八重山諸島のリール。川平湾、竹富島、西表島の水牛車などなど。

   まだまだ新作も発売されているということなので、行ったことのない世界のリールを買い集めて自宅にいながらにしての観光旅行を決め込むのもいいかも。世界各国に住んでおられるCafeglobeユーザーのみなさん、「ウチのそばのこのリールは必見!」という情報があったらぜひお寄せください。私も買いためておきますので、リール交換しましょう(半ばマジです)。インターネット時代だからこそ、なんだかこういうアナログなことがことのほか楽しく感じられるような、そんな気もします。

●ヴィンテージのリールやヴューアーも売っているサイト(英語)>

●ビューアー本体に注目したサイト(英語)>

●3D写真の専門サイト「STEREO CLUB TOKYO」>
(携帯でステレオ写真を撮る方法の解説をこれからしてくれるらしい)


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有機農業・自給自足の共同体にお邪魔してきました その2

カテゴリ:ロンドン  2006 3月23日

<前回からつづく

   そう、「できてるじゃん」「そう、これよこれ!」「……ムキーッ!」と羨ましくて言葉を失って身悶えしてしまうような生活がそこにはあったのです。

   まず、食事の大半が自前の有機作物だから、素性が知れているし、フードマイレージも限りなく少なくて環境にもやさしい。みんなでブッフェ式の食事だから残飯自体あまり出ないけれど、残飯やお茶ガラ、野菜くずは農園の中にある豚や鶏のエサに。


元修道院の敷地を下がりきったところには川が流れている。オークや白樺がそこそこに生えている、いかにもイングランドらしい田園地帯。まだ水遊びをしたそうなセッター2匹と、「もう帰るから上がりなさい」とジェスチャーする飼い主。


大量にとれたリンゴを保管する倉庫。5頭いる乳牛からとれるミルクで、バターやチーズも自給。チェダーチーズの熟成庫まであった。


これも、ここで収穫された大量のジャガイモ。イギリス人の主食はじつはジャガイモだから、日本人がたくさんのお米を見ると安心するように、イギリス人もこれを見るとホッとするんだろうな。

   食費は安いということで、では住居費はというと、いちおうルールでは、入居するスペースをマンションのように購入することで仲間に加わるのだそう。お値段は広さなどもいろいろなのでご紹介できないけれど、驚くほど安いってことはなかったけれど、妥当ですね、という程度。普通の収入のシングルマザーでも頑張れば手が届く、という感じ。

   そういうわけで、食と住がおおむね安定しているから、ここにいる人たちはのんびりゆったり暮らしている。働き盛り世代は外で仕事を持っている人が多いけれど、ワークシェアリングで週3日だけとか、午後だけとか、そんな人が多いらしい。あとの時間はここで農作業をしたり、食事当番をしたり、食堂で新聞を読んだり、おしゃべりをしたりして過ごしている。


初夏の昼下がり。一緒にコミューンを訪問したコロンビア人のピリが、アルゼンチンかどこか南米出身という男性と何やら初対面でいきなりディープに話し込んでいた。スペイン語の人も、国境を越えて話せる人が多くてうらやましい。

   これまたすごくいいなと思ったのは、子どもたちがコミュニティの中で育っていること。親が外で働いている間も、子どもは他の子どもと敷地内で木登りをしたりガチョウをからかったりしてずっと遊んでいるから託児所いらず。食堂にいると、ときどき子どもの一人が「転んだー!!!」と泣きながら転がり込んできて、新聞を読んでいるそのへんの大人(親ではない)の脚にかじりついて、なぐさめてもらっている。ここで育ったトム(前出のスティーブの息子)は、親以外の大人もいる環境で育ったことは本当にラッキー、最高に幸せな子ども時代だったと言う。

   そして、ここには知的障害のある人も、車椅子の人も、かなりご高齢の人もいて、それぞれ自分のできる範囲の仕事を受け持って誇りを持って暮らしている。本当は人間の共同体ってこのくらいが自然なんだろうなぁと、きれいごとでなく納得する風景だった。


お母さんが大学に教えに行っている間、他の大人に教わって建物の修復を手伝う女の子。この子のお母さんは40代前半のシングルマザーで、ここには最近加わったとか。決断は正しかった?と聞いたら、「もちろんよ! 唯一後悔するとしたら、なんでもっと早くここに来なかったんだろうってことくらいね」。

   ほかにも、暖房をできるだけ薪でまかなっていること、自家用車が増えたとはいえ、カーシェアリングが当たり前に行われていることなど、エネルギーへの配慮もそこかしこにされている。ここのひとりあたりの非再生可能エネルギー消費量は、東京やロンドンの平均的な一人当たり量の半分とか1/3とか、もっと少ないかもしれない。


どっさりと積み上げられた薪は、これでひと冬と半分くらいあるのだそう。薪も燃やせば二酸化炭素が出るけれど、それは育つ過程で吸収したのと同じ量。だから、再生されている森でさえあれば、地底から化石燃料を掘り出して燃やすよりも温暖化防止という意味ではよいとされている。


イギリスの田舎は公共交通が絶望的に頼りないのでクルマが必需品。そこで、通勤や街に行く予定のある人は自分の予定を黒板に書いて、一緒に乗っていきたい人を募集する。

   ……とまぁ、いいことばかりを書きました。ま、いいことばかりなんです、ハイ。私ももちろん、「いつか仲間に入れてもらいたいって願い出ようかな」と思いながらの見学でした。だからネガティブポイントがあるなら、いまのうちに見つけておかなくちゃ、と。たしかに小さいことはいくつかありました。

   まず、正直やっぱり平均的イギリス人の味覚はちょっと……Hmmmmm……なので、自分が食事当番の日はいいけれど、中にはかなりキツい日もあるだろうということ。これがイタリアだったらなあ。やっぱりね。あと、半農になるわけなので、虫や大量の動物の糞などが苦手な人は厳しいでしょう。

   それから、このコミュニティはもう30年目なので、中心的な人たちが60前後。哲学者(職業という意味でなく)が多いから、話は面白いし人格者が多いけれど、同時に偏屈な人も多そう。相当刺激的なやりとりを覚悟しなければ。もっとも、彼らもイマドキの風の必要性は意識していて、今からは若いカップルを中心にリクルート?したいとのこと。ただし、希望をする人には事欠かないようで、そういう人たちからの手紙はびっしりと束になってまとめられていた。

   最後に、ここに行きたくなった方もいるかもしれないのですが、スティーブから場所などは書かないでと釘をさされているので、私からはお伝えできないことをご容赦ください。でも、イギリスにはこういったエココミューンをリストアップしたガイドブックもあるので、探してみると見つけられるかもしれません。そもそも、思うに、私たちもめいめい私たちらしい……たとえば日本の風土に合ったこういった暮らし方を模索するべきなんでしょう。すでに始めている人たちも少なくないようですし。世界中でいろいろな試みが増えることが、今の地球には必要なことなんじゃないかな、と思います。


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有機農業・自給自足の共同体にお邪魔してきました その1

カテゴリ:ロンドン  2006 3月16日

   友人のスティーブは、年齢を訊ねたことはないけれど、30過ぎの息子がいるからたぶん60ちょっと手前くらい。筋金入りのインテリヒッピーで、今でも小さなデイパック1つで1ヶ月くらいの貧乏旅行に出てしまう刺激的なおじさんだ。

   彼は70年代、当時の左翼仲間たちが人間と環境にやさしい暮らしのあり方を考え、有機農業・自給自足を目指して28ヘクタールの農地がついた古い修道院を購入して始めたこの共同体に参加した。以来30年弱、ゆっくりとメンバーの入れ替わりはありつつ、ずっとここで20前後の世帯が一緒に暮らしている。しばらく前のことだけれど、「そういう暮らしに興味があるなら遊びに来なさい」と誘われ、寝袋持参でお邪魔した。


ほんの40年ほど前くらいまでは数十人の修道女たちが暮らしていたという建物と敷地に約20世帯が暮らし、畑を耕したりチーズを作ったり、外に普通に通勤したりしている。

   ロンドンからクルマで1時間少々走った小さな町のそばに修道院はあった。晩秋の早い夜、とっぷり暮れた中、門を抜けて敷地に入る。ヘッドライトの中にほったらかしの三輪車、スケートボード。そして「Drive slowly, free range children.(徐行運転。放し飼いの子どもあり)」の手書き看板。


敷地を横切る私道には「Drive slowly, free range children.(徐行運転。放し飼いの子どもあり)」の看板。


食事の合図の鐘を鳴らすスティーブ。ブレアとブッシュのイラク侵攻に激怒、米英軍がイラクを離れるまで髭は剃らない!と決めたらこんなに伸びてしまった。

   ちょうど夕食時だったので、いきなりご相伴にあずかることに。鐘楼の鐘が鳴ると天井の高い食堂におなかをすかせた住人たちが続々と集まってくる。最初は挨拶したり握手したりしていたけれど、あまりに人数が多いので、途中から全員に挨拶するのはあきらめて、ニコニコとだけしておいた。今は大人45人、子ども15人が暮らしているという。

   世の中にはさまざまな目的のさまざまなコミューン(共同体)があるけれど、ここはかなり現実路線、平たく言えば最も「怖くない」部類に入ると思う。20家族が一緒に暮らすといっても、建物の中は日本のマンションのように区切られていて、世帯ごとの玄関がある。仕事を聞くと、大学講師をしている人、近所のスーパーのレジ係をしている人、年金生活の人などなど。子どもたちは地元の学校に通っているし、閉ざされたユートピアを目指しているわけではない。ただ、食事は基本的にみんな一緒にとり、大人は週9時間以上掃除や炊事などコミュニティのために働かなければいけない。そのほかに農作業の担当もある。SOHOで小さなNGOを営むスティーブの担当は、タマネギ畑約1アール。


修道院時代は集会場だったという大きな食堂兼キッチン。外から帰ってきた人はみんなここを通り、食事の準備をしている人やお茶を飲みながら新聞を読んでいる人たちとお喋りしたり、あとで羊をあっちの牧草地に移そうなどと相談したり。突っ立っていると、「あなた動物は好き? 牛の乳搾りやってみる?」と女性に声をかけられ、私は長靴を履いてにわかハイジに。


食事は基本的にベジタリアン。日曜日だけ、ここで育った豚を潰した自家製ベーコンなど肉料理が1~2品出るけれど、手をつける人は少ない。それにしても、食材の半分以上は自分たちで育てたものだから、食費は1食90円!

   70年代のスタート当初は、社会主義的理想も高く、できるだけ自給自足、クルマは持たない、電話も全員に1回線だけ、テレビなんてダメダメ……という方針だったとか。でも、みんなで話し合いながら少しずつ、電話を個別に引いたり、テレビを持ったりするのもいいことにルールを変えてきた。「今ではみんな部屋でインターネットもしてるしね。ごくフツーだよ。クルマの個人所有だけは僕は賛成じゃないけれど……」と渋い顔のスティーブ。

   でも私はもうずーっと、軽い興奮状態になっていた。現代社会に妥協しつつ、彼らが実現してみせている暮らしは、それでも私たちがブチ当たっている問題の多くに答えを出せているからだ。いや、むしろ妥協しているからちょうどいいくらい。食の問題、環境問題、ワーク・ライフ・バランス、少子化……ウウウウ! これは羨ましい!

   ……と、突然ですがそろそろ長くなってきたので、この続きは次回にします。来週をどうぞお楽しみに!


農業などのお手伝いを条件に、数週間ほど無料で滞在させてもらうこともできるから、いつも数人の学生が転がり込んでいる。彼らが泊まるのは、長い廊下に沿って並ぶ、修道女たちが修行をしたお祈りのための小部屋。


ここが修道院になる前、上流階級のお屋敷だったときのバンケット・ルーム。出窓がいくつもあって、ジョン・レノンのあれは「Imagine」でしたっけ、ヨーコと一緒に白装束のあの部屋を思い出す。2号前のこのコラムでご覧に入れた青い図書室はこのバンケットルームのすぐ隣。

●有機農業・自給自足の共同体にお邪魔してきました その2


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日本にも続々登場中!新しい銀行のありかた

カテゴリ:地球温暖化  2006 3月09日

   イギリスで銀行口座を開設しました。最初はやはり「寄らば大樹の陰よね」ということで、どこのハイストリート(商店街)にもあるような大手銀行を考えていたのですが、友人に「エコならコープSmileがいいんじゃない?」と言われて軽い気持ちで調べてみたところ、出てくるわ、出てくるわ……いっそ知らなければ楽だった、嫌な現実が。

   イギリスの大手銀行の投資先リストには、兵器製造メーカーに、原子力発電所に、発展途上国に自国では禁止されているダイオキシン入りの農薬を売っている会社……そんな企業名が続々と出てくる。もちろん銀行も普通の営利を目的とした企業なわけで、預金などで集めたお金を貸して利子をかけ、株主のために儲けるのが商売なんだから、違法行為でもなんでもない。でも、(どうせスズメの涙ではあるけれど)少なくとも自分はそういう企業には出資したくない。ということはそういう銀行にはお金は預けたくない、と率直に思ったわけです。

   そこに来ると、たとえばコープ銀行は、環境保護・人権擁護に怪しい企業は不適格、兵器産業や遺伝子操作作物もNG、化粧品開発のための動物実験やたとえば雌鳥をケージに閉じ込めた鶏卵産業・毛皮ビジネスもアウト……とそのポリシーと過去の報告は何ページにも及ぶ量。これは気持ちいい!とばかりにすぐに支店に走ったのでした。

●CO-OP BANKの「Ethical Policy(倫理ポリシー)」ページ>


読めば読むほど考えさせられる、コープ銀行の投資における倫理ポリシー。

   気になる金利やサービスですが、もともと低い普通預金は大手とほとんど変わらず、むしろカードローンなどの場合、大手銀行系クレジットカードが十数パーセントなのに、コープは8%程度。最大限儲けることを使命にしていないということは、必要としている人から精一杯巻き上げないということでもあるのねと納得。日本の大手銀行は今次々に過去最高益を報告しているけれど、あの利益はいったいどこから生まれているのでしょう。


強いてコープ銀行の難点をあげれば、支店がかなり少ないことと駅から遠いこと、支店内がそっけなく照明も抑え目でどんよりしていることくらい。とはいってもオンラインバンキングは充実しているし、上等なソファのある銀行は客に信用があるように印象づけたり高揚感・ときには威圧感を与えるためのきれいさかもしれないと思えば、どんよりしていても別にいいのかもしれないとも思う。

   あーいい銀行に口座を持ててよかった、とホクホクしていたのですが、この手の話題に気をつけていると、日本でもこういう試みがいまどんどん出てきているらしいことに気づきました。ポリシーありき、フツーの人がお金を預けて必要なときに入れたり出したりというお財布代わりに使えるという意味での銀行はまだまだこれからのようですが、既存の地域銀行に着目するのも一案だし、誰でもが好きなだけお金を出資して集まったお金を地域活性化や環境などいわゆる持続可能なプロジェクトに融資するという試みはあちこちで始まっているようです。

●参考になるのがA SEED JAPANの「エコ貯金ナビ」>


77年生まれの木村真樹さんが代表理事を務める名古屋ベースの「 コミュニティ・ユース・バンク momo」。1口1万円から出資を募っている。木村さんのインタビューはこちらでも>

   坂本龍一さんの発案で小林武史さん、ミスチルの櫻井和寿さんたちが作ったAPバンクは自然エネルギーのプロジェクトに低利で融資するものだし、これからどんどん増えてきそう。今すぐ使わないお金がちょっとあるなという方、株式投資ももちろん悪くないけど、自分のお金をこういう方面で働かせるのも悪くないと思いませんか。


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疑い深いみなさんのために私の部屋の写真を

カテゴリ:東京  2006 3月03日

   女性ファッション誌の編集をしていたとき、私はカルチャー班と言って、ライフスタイルなどの記事を担当していました。インテリアの取材をすることも多く、それは素敵な、ため息が出るようなお部屋をよく訪ねたものでした。

   素敵な部屋をカメラマンにさらに素敵に撮影してもらい、記事に仕立てることを繰り返しているうちに、ふと気になりました。たしかに素敵なインテリアは参考になるけれど、私たちのストレスの元にもなってないか?と。

   言ってしまえば、お金にも時間にも余裕のある人のインテリアを、それが普通のこと、あるいは誰もが目指すべき姿かのように紹介するのは必ずしもいいことじゃないのではと思ったのです。お金にも時間にも余裕のないフツーの読者にとっては、参考になるよりもプレッシャーになるばかりなのでは? 私自身、原稿を書きながら「どうして私の部屋はあんなに狭くて物が多くて生活臭たっぷりで……私ってダメだ!」と自己嫌悪に陥ることが多かったので。

   その後Cafeglobeを始めた際、この疑問から生まれたのが「フツーな人の、フツーな暮らし」でした。憧れのインテリアもいいけど、もっと等身大の人たちの暮らしを覗かせてもらって、「私もやってるやってる!」とか「そのアイディア、即いただき」と思えるのもいいんではないかと。生活感たっぷりの部屋を見て安心するのもまた楽しいのではないかという狙いです。

   話は少しズレますが、以前からちょっと気になっているのが、「家をきれいにしておかなくちゃ」ストレスに押しつぶされそうになっている女性がけっこう多いんじゃないかということ。ほとんどが共働きをしている女性で、仕事と家事の“両立”を成し遂げようと頑張り、疲労困憊してしまう。

   パートナーの協力具合・収入との兼ね合い・仕事の条件・その人自身の体力などいろんな要素があるから一概には言えないけれど、もしやもしや、女性誌が持ち上げる理想のインテリアの呪縛に多かれ少なかれかかっているんじゃないか。洗濯もの山積み、風に転がる干草玉のようなホコリ、流行遅れのデザインの家具や家電のせいでストレスを感じるのは行きすぎなんじゃないか、というわけです。

   とくに女性は若い頃から女性誌のインテリアページにずっと晒されてきているから、男性よりインテリアへの目標が高くなりがちで、現実との乖離にストレスを溜めがち。男性にいくら女性誌級インテリアへの協力を求めても、彼のモチベーションはなかなか高まってこない。私の夫もしゃあしゃあと「ホコリで人は死なない」「きれいなインテリアは君の趣味の問題」と抜かすけれど、でも一理あるとも思うのです。

   女性のみなさん、素敵なインテリアはほどほどに。お友だちだって、みんなお客さんが来る前に掃除をして必死に繕っているだけで、普段はきっとグチャグチャな部屋でモリモリとたくましく生活しているんです。私は少なくともそうです。私の家など、それはおっそろしい状態です。捨てるのが苦手だから物だらけですし。でも、よっぽどのお金持ちかナポレオン並みの睡眠時間で平気な人でない限り、それが普通で、恥ずかしいことなんかじゃないと私は思ってます。

   本当にグチャグチャなのぉ?という疑い深いみなさんのために私の部屋の写真を撮って公開……しようかと思ったんですが、本当にあまりにひどいので、やっぱりやめときマス。人格疑われそうなほどひどいので。エヘ。と、私も弱気になってしまうあたりが、インテリアの呪縛なのかな。あるいはそんなことに拘泥できるほど私たちは豊かだということなんでしょう。はい、理屈はともかく。今週もおつかれさまでした。みなさんよい週末を!


まだまだ道のりは長いけれど、私なりの理想の部屋は、古びた大きな本棚と観葉植物がたくさんある部屋。中古の無垢のテーブルや椅子を少しずつ集めていきたいな、と。写真は、知人が大勢の仲間と共同生活をしている不思議な館の図書室。お金をかけなくても素敵な暮らしは作れるかもしれないと希望を持ったここでの体験についてもそのうちご紹介したいと思います。

●フツーな人の、フツーな暮らし>


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青木陽子
Cafeglobe
ファウンダー・取締役
女性誌編集者時代、自分を含めまわりの女性たちが本当に読みたい媒体がないことに気づき、1999年に現社長の矢野とともにCafeglobeを立ち上げ、6年間編集長をつとめる。現在、パートナーの暮らすロンドンと東京の二重生活を実践中。
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