更新日:2009年6月30日

バスク地方の暮らしとお菓子のレシピ「バスクの砂糖壺」


バスク地方は、フランス南西部~スペイン北部に広がる緑と水のゆたかな土地。お菓子とおいしいものが大好きなマテスク里佐さんのオーブンからは、今日も甘くて香ばしいいい匂いが立ち上っています。里佐さんがバスクで出会い・学んだお菓子やお料理、そして人々の暮らしの様子について、レシピとともにお届けします。

文=マテスク里佐
   

ジャム暦とアンズジャム



   フランスのジャム本を開くと、ときどき見かける「Calendrifutures」なる用語。「Calendrie(カレンダー)」と「Confiture(コンフィチュール)」を合体させた造語です。日本語に訳したらさしずめ「ジャム暦」といったところでしょうか。

   フランスに暮らし始めた頃、この「ジャム暦」を追うがごとく(「追われる」のがふさわしい?)ジャム作りに熱中していました。フランスの旬の果物の自然なおいしさに魅了され、キロ単位でドンと買えるリーズナブルさが後押しした結果です。

   以来、たくさんのジャム本を読み漁りました。いろんな果物、いろんなルセット(レシピ)をトライしました。自画自賛したくなるようなでき栄えのときもあれば、大失敗して凹んだことも多々あります。巨大な銅製のコンフィチュール鍋、保存瓶や保存にともなう小道具いろいろ……ジャム関連のグッズは何でも揃えました(形から入るのが好きなので)!


ジャムの瓶詰め・保存方法もいろいろありますが、私は、「煮沸消毒した瓶に熱々の出きたてジャムを口いっぱいまで注ぎ、瓶をひっくり返した状態で冷ます」式。これ、実は、スーパーの保存グッズ売り場で、見知らぬマダム(おそろしい量のジャム瓶をカゴに入れていた)から伝授された方法! 「毎年数10キロのジャムを作ってる私の結論よ。これが道具もお金もかからず、イチバン楽よ!」だそうです。


バニラの香りつき、杏仁の香りつき、シロップの中で煮る方法、マリネしてから煮る方法、実を残す方法、マーマレード方式……etc.アンズジャムとひと口にいっても、試行錯誤したルセットは数知れず! 3年ほど前から気に入ってるのは、このマリネ式。お砂糖をまぶしてひと晩(場合によっては数晩も)マリネしてから煮あげます。

   家族や友人が泊まる際は、「ここぞ!」とばかりに朝食にジャムを出しました。自家製のジャムが何種類も出てくるので、皆が驚いてました。賞賛のことば以上に、たくさん消費してもらえることが嬉しかった。ジャムのストックが溜まりすぎて、あきらかに消費量が生産量に追いつかない状況だったのです。

   そんなマイジャムブームもいつしか下火になり、私のジャム作りは自然淘汰される結果に。今は本当に自分が好きな果物、リピートしたいルセットのみです。朝食のおともという用途以上に、お菓子やデザートに使いまわせるか? これが絞り込みの条件になった気がします。


アンズジャムをつくる目的のひとつはコレ。自分のために作りたいお菓子ベスト3に入るもの、ウィーン風のアンズジャムサンドクッキーです。クラッシックなおいしさ、一生作り続けたいお菓子です。

   「アンズジャム」はこれからも毎年作っていきたい、大好きなジャム。クッキーやビスキュイ(ビスケット)にはさんだり、ロールケーキに塗ったり、タルトのツヤ出しに使ったり。お菓子づくりのマストアイテムでもあるし、作りすぎってことはありません。私の母がとてもアンズジャム好きな人で、昔から食べなれているせいかも。とにかくこれがないとちょっと落ち着かないのです。

   お鍋も必要なものだけが残りました。銅製のコンフィチュール鍋は、結局自分には必要ないワ、と判断。「売るのが趣味」な友人に託して、蚤の市で売却しました。「絶対に売れるから」と太鼓判を押してくれた通り、出した途端に即効で売れたそう。しかも買った金額とほぼ同額で! やはりフランス、ジャム狂の人が多いのです。

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コーヒーにあうお菓子



   「こだわりコーヒーメーカーがもたらす上質なひととき」。ただいまLIFESTYLEカテゴリーの中で、 デロンギ社のドリップコーヒーメーカーが紹介されています。赤白黒の3色展開、メタルボディってところがカッコいいコーヒーメーカーでございます!

  この中でちらりとワタクシの名がお目見えします。使命は「コーヒーに合うスイーツ」の推薦人。コーヒーにぴったりなお菓子のレシピ3点を提供させていただいてます。※6月26日(金)公開

   お菓子には、「お茶にあうお菓子」「コーヒーにあうお菓子」「どちらにもあうお菓子」があります。今回は、「コーヒーにあうお菓子」の中から「コーヒーじゃなきゃダメ。ぜひコーヒーと味わってほしい!」お菓子を厳選してみました。


お菓子候補を挙げいてく中で、どうしても外せなかったのはナッツを使ったお菓子でした。「ルノートル」のレシピを私好みにアレンジした、「クルミとココアのケーク」はまさにコーヒー向きのお菓子なのですが、初夏には季節外れな気がしてボツに。結果、ナッツを使ったお菓子はヌガーグラッセを選びました。

   推薦させていただいたお菓子は、「なめらかガトー・オ・ショコラ」「オレンジのヌガーグラッセ」「アーモンドクリームのブリオッシュ」の3点です。どれも、材料、食感、味わいがまったくタイプの異なるお菓子。でも、「コーヒーと食べたい」という点だけは共通です。

   なめらかガトー・オ・ショコラは、以前にこちらでご紹介したレシピ。こぐれさんもリピートして作ってくださったようで、かの『ごはん日記』に何度も登場しているのが、ひそかな自慢です! ヌガーグラッセは、メレンゲと生クリームの中にピスタッシュとオレンジのコンフィをちりばめた純白なクリームデザート。そしてアーモンドクリームのブリオッシュはブリオッシュパンにひと手間かけて作る、即席ヴィエノワズリー(菓子パン)です。

   朝のコーヒー、午後のコーヒー、そして夜のコーヒー。コーヒーを飲むシーンも、3場面イメージしてみました。アーモンドクリームのブリオッシュは週末のゆったりした朝食に。ガトー・オ・ショコラは夕方ホッとしたいときのカフェブレーク用に。そしてオレンジのヌガーグラッセは、おもてなし時の締めくくりコーヒーに、といった感じです。

   どれも材料や作り方はとってもシンプルです。気負わずに作ることができるのでお試ください……もちろんコーヒーのお供にどうぞ!


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いちごの季節のお菓子プラン



   いちごの季節を迎えました。お初ものが登場して以来、家デザートも外食時にオーダーするデザートも、いちご一辺倒な日々。まだまだ飽きそうにありません。

   フランスにいると、いちごを待ちわびる気持ちが日本にいるときよりも高まるのです。なにせきっちり旬限定。季節はずれに口にすることは、ほぼ不可能。だからこそ、季節を迎えたときの喜びはひとしおです。

   私の“いちご満喫プラン”を大雑把にご紹介しますと……まず最初の2週間は、手を加えずにそのまま味わう。お砂糖だのクリームだのはいっさい加えず。ただ素直に、9ヶ月ぶりに味わういちごの味を喜びます。

   3週目頃になると、ショートケーキやタルト、グラスデザートなどで。生クリームやフロマージュブランとの組み合わせを堪能します(そのためには、冷蔵庫のおいしい乳製品ストックを切らなさいことも大切)。そして1ヶ月過ぎたあたりでようやくひと息。興奮(?)ちょっと収まったところで、「デザート記録帖」を読み返したりして、初トライアルものを試作するという具合です。

   いちごのデザートは、過去記事でいくつかご紹介してますのでご参考までに。

いちごミルク色のノスタルジー「苺のババロア」>>
欲望のかたまり!? 「苺のスープ」>>
苺のフォンテーヌブロー・クープ>>
デザート・チーズの決定版、「自家製フォンテーヌブロー」>>


冷蔵庫にこれがあると食後が楽しみ、「いちごのババロア」。家庭ならではのおいしいデザートです。


いちごの季節はバラの季節でもあります。マルシェのお花屋さんで買ったピンクのバラ。スーパーのチラシやゴシップ紙などでくるまっているところも、楽しみだったりして。この日のブーケは、バイヨンヌ市が発行してる広報誌で包まれてました。

   「デザート記録帖」は、フランスに暮らし始めた当初からずっとつけてるノート。レストランやおよばれ先でいただいた、心に残ったデザートを乱文・乱スケッチで記録してます。たくさんのヒントや目標が詰まった、いわば私の玉手箱。自分の舌と目で味わったリアルな体験は、読み返すとモチベーションを上げてくれます。

   記録帖の中に頻繁に出てくるのは、やっぱり「タルト」です。タルトのお国フランス、ひとくちに「いちごのタルト」といっても決して紋切りタイプはなく、お店の趣向や作り手によって十人十色。生地ひとつとっても、タルト生地、パイ生地、ダックワーズ生地だってあるし、あわせるクリームといちごのバランス、大きさ、供されるときの温度感……タルトって、とても個性を発揮できるお菓子であることがわかります。

   昨年、地元レストランで何度も食べてすっかり気に入ったのが、「いちごのコンフィのタルト」です。焼きたてのパイ生地もさることながら、いちごコンフィのおいしいこと! こういうデザートを体験した時は、記録帖のページはメモでびっちり埋まります。

   そして実は今、わが家の冷蔵庫には初トライアルの「いちごのコンフィ」が待機中! あれとあれを作って、ああしてこうして、と頭の中でプランニング中。今年の「いちご満喫プラン」後半の課題は、「いちごコンフィのデザート」です。

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春の便りと「レモン色の焼き菓子」



   春が近づいてきました。暖かい日が続いたかと思うと、春の嵐が吹き荒れたり。バスクの春はまさに三寒四温です。

   もし私が“季節のお菓子ノート”なるものをつくるとしたら……。今ごろの季節のページに載せたいのは「ガトー・ウィークエンド」。収穫したてのレモンの皮を焼きこんだ、早春らしさいっぱいのお菓子。3月になると、無性につくりたくなります。


3月のテーマ色といえば色あざやかな黄色。ミモザが咲き始めると、それに続いてそこかしこに黄色いお花が咲き始めます。マルシェに水仙の花束が売られるようになったら春はもうすぐそこ!

   ベースは以前ご紹介した「レモンのカトルカール」です。「ガトー・ウィークエンド」はこれをもっとコンパクトにした味わい。フンワリ感よりもしっとり感を強調したいので、生地にはバターだけでなく生クリームも入れます。

   ウィークエンドという名前からすると、本来は週末のピクニックに持参するようなカジュアルなイメージですが……。私は家でお茶と一緒にじっくり楽しみたくなります。

   細めのパウンド型で焼いて、ちょっと厚めに切り分けます。羊羹をいただく時のような、ひと口ごとに小さな充実感とこっくり感を味わいたいお菓子。ギュっと凝縮した感じになるようなをおいしさを目指してつくってます。


グラサージュされたケーキを切り分けて、カステラの黄色い生地が覗く瞬間……お菓子づくりの悦びってこういう瞬間。

   焼き上がったお菓子には、2つの仕上げを。アンズジャムを刷毛で塗ってなじませたら、粉砂糖とレモン汁でつくったグラサージュでマットなツヤ感を出します。

   メイクでいったら、下地→ファンデを塗る作業に似ているかも。ザザっと大雑把にするのと、丁寧にするのとでは仕上がりが変わってくるのも同じく。焼きっぱなしカトルカールがスッピン肌だとすれば、ウィークエンドは肌をきめ細かくつくり込んだ感じ。ベースが同じとは思えぬほど、質感が変わってきます。

   なにはともあれ、ウィークエンドの命はレモンの香り! オーガニックなレモン、香り高いレモンがあるからこそつくりたくなるというもの。というわけで、今年もしばらくレモンの話題です。レモン好きな方、レモンの木を栽培してる方(当ブログ読者の方々には意外と多いようなので!)、お楽しみに……。

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引き菓子づくりとマドレーヌ



   育児に追われてるうちに、めっきりお菓子時間が少なくなってきた今日この頃。そんな中なんとか時間をやりくりして、ギフト用のお菓子を焼き上げました。


たくさんのマドレーヌとフィナンシェ。

   欲をいえばマカロンやバターケーキなども加えて“焼き菓子セット”にしたかったけど……今の生活状況ではぜったいに無理! 「簡単なものをおいしく」をモットーに、シンプルに徹することにしました。

   材料を計る、生地を仕込む、焼く、ラッピングする。すべての行程は、“デモンストレーション方式”で行いました! ハイチェアを2台並べ、娘ふたりに見学させながらのお菓子づくり。道具や音、そして何より私の動作に興味シンシンで、なかなか良い娯楽になったようです。キッチンは安全にさえ気をつければ、最高の子守りスペースになり得るかも?


焼きたてのマドレーヌ。娘たちもお菓子を食べられるようになったら、真っ先につくりたいお菓子です。

   さて、マドレーヌとフィナンシェといえば焼き菓子の定番中の定番。私もよくつくります。卵、バター、粉という基本素材だけのお菓子が好きな私にとっては、特にマドレーヌは思い入れの強いお菓子のひとつです。

   今まで、いったいどれだけのマドレーヌ・レシピをトライしたことか……。シンプルな分、素材の良さ(バターは大切!)や、ちょっとした香りや甘みバランスで個性が出る素敵なお菓子だと思います。


今回のマドレーヌ・レシピは、“ねかせ種”タイプ。冷蔵庫で生地をじっくり休ませることで、独特のしっとり感と弾力を出すつくり方です。本来は「好きなときにいつでも焼きたてを」というのがメリットだけど、今回みたいに一度に焼く時間がない場合も好都合です。

   以前、東京で有名パティシエの面々が講師をつとめるお菓子講習会によく参加してました。難易度の高いお菓子とは別にマドレーヌが登場したことがあり、「なんでいまさらマドレーヌなの……」と不満を漏らしてる参加者の人もいたけれど、私は嬉しかった! お気に入りマドレーヌ・レシピはいくつか持ってますが、うち1つはこの時に教わったものです。

   マドレーヌは貝殻、フィナンシェは平べったい金塊型がお馴染みの形。トラディショナルなこの型で焼くのが、私はいちばん好きです。でも今回は、ハート型とバラ型という乙女スタイルに(?)焼いてみました。

   とある行事の引き菓子として、つくったからです。この行事のお話しは次回に。

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お手本いろいろ、真冬のオレンジデザート



   柑橘類が美味しい季節になりました。秋のリンゴにかわって、果物売り場にはオレンジやミカンが山盛り積まれています。

   手に入るものは主にスペイン産です。南仏プロヴァンスもオレンジの産地ですが、バスクならスペインのほうがよっぽどフードマイルが少ないから。オレンジにしろミカンにしろ、旬の時期は驚きのリーズナブルさで手に入ります。


ビダールの一星レストランにて。マンダリンのスフレにブラッドオレンジのソースが添えられてる一品。

   ここでは、オレンジジュースは買うものでは作るもの! ジュース1本分のお値段で、フレッシュなつやつやオレンジを何キロも買えてしまうのだから。オレンジ数個をキュッキュッキュッと絞るだけで、フレッシュな美味しさを味わえるのは嬉しい限りです。

   以前、パリ在住の友人をディナーに招いたときのこと。ゲストの中に10歳の女の子がいました。飲み物といえばワインしか用意しておらず、お子様ドリンクが全くないことに気がつき焦った私は、「そうだ、オレンジを絞ろう!」とせっせとジュースをつくりました。

   単なる急場しのぎの策だったのに、その子が目を輝かせんばかりに感激してくれた! ワインを飲む大人たちの中で、ジュースのグラスを大事そうに握り締めてる様子に、こちらまで嬉しくなりました。


バイヨンヌのロティスリーにて。オレンジのスフレグラッセとガトーショコラの組み合わせ。チョコレートとオレンジの組みあわせはやっぱり最高です。

   さて、掲載フォトは地元レストランで出会ったオレンジデザート2品。今の時期、オレンジ使いのデザートが必ずカルトに登場するので、いろいろ食べ歩いて研究するのがとても楽しい!私のオレンジデザートのレパートリーのほとんどは、バスクのレストランで食べたものがお手本です。

   ちなみに現在、私が再現を試みようと四苦八苦中なのが(なかなかあの味に近づけない……)、ビアリッツの馴染みのレストランで口にした“オレンジのフラン”。「こんな組み合わせがあったとは!」と意表を突かれるある具材が中に入ってるのが印象的でした。再現に成功したら、お披露目したいと思います!

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義祖母のレシピノートから。クルミのお菓子



   夫の祖母は、クルミが大好きな人でした。クルミをつかったお菓子のレパートリーがものすごい。遺品のレシピノートを開いてみると、「ガトー・オ・ノア」 と名のつくものがたくさん登場します。

   バラエティ豊かな「クルミのお菓子」。そのどれもが個性に溢れていて、クルミのお菓子への既成イメージを覆してくれるものばかりです。レシピを読みながら、未知なるお菓子の味と姿を空想してみる。私の大好きな時間です。

   おばあちゃんのクルミのお菓子の大きな特徴。それは、クルミを挽いて使うことです。以前ご紹介した、『クルミペーストのブリオッシュ』も然り。荒挽きにしたり、さらさらのパウダーにしたり。それを、生地に混ぜたり、ペーストにしたり。お菓子によって、いろんな方法で展開しています。


おばあちゃんのレシピノートから。クルミプードルをたっぷり入れ込んだ、ふんわりしっとりの焼き菓子。寒い冬の午後にぴったりなお菓子です。


焼きあがった生地に温めたアンズジャムを塗ります。クルミとアンズ。おばあちゃんのおかげで私も大好きになったこの組み合わせ、上品にして絶妙です。

   彼女のクルミの使い方を再現しているうちに、ふと気づいたことがあります。これって、私たちにとっての胡麻の使い方に似ている……!

   胡麻を煎るように、クルミをローストする。胡麻をするように、クルミを挽く。胡麻ペーストをつくるように、クルミペーストを作る。すべては香りを立たせ、クルミの持ち味を存分に引き出すための作業なのです。


日々使用していたマンケ型も引き継ぎました。使いこんでいただけあって、とても使いやすい。私も愛用中。

   そして、私が感心(反省も……)したおばあちゃんのこだわり。それは、クルミを台所に常備しないこと。おいしいクルミだけを使うこと。その都度、使う分だけのクルミを買ってお菓子つくりにとりかかってました。

   義祖母のたくさんの知恵と経験と思いがつまったクルミの焼き菓子。次回レシピのご紹介です。お楽しみに!


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洋梨のコンポートを使ったデザート



   洋梨は秋の訪れを感じさせてくれる素敵な果物。部屋に飾っておいても絵になるし、ついつい余分に買ってしまいます。

   もともと大の梨好き。フランスに来たての頃、外食するたびに洋梨使いのデザートばかりオーダーしていた時期がありました。私のお菓子手帳にはそんな“ポワール狂時代”のメモが残っています。

   パイ生地に目がない私が特にハマっていたのが、“洋梨のミルフィーユ”。焼きたての折りパイ生地と贅沢なクリーム、そして扇を広げたように盛りつけられたポワール。定番のバニラやワイン風味のこともあれば、カシスやフランボワーズで色と香りの足し算をされていることもありました。


フランスのポワールの種類はざっと8種類ほど。バスクでその全種が手に入るわけではないけれど、常時3~4種類は見つかります。もっぱら気に入ってるのは、生食ならコンフェランス種、デザート使いならウィリアム種です。

   プロのデザートを真似することはムリだけど……コンポートなら真似できます! 私が作るのは、ベーシックにバニラの香り。水と砂糖の比率4対1くらいのシロップの中にバニラのさやを入れ、皮をむいた洋梨とレモン汁も少々加えて弱火で10~15分ほど煮ます。冷やすとき、洋梨がシロップの中に完全に浸るように注意。でないと色がキレイに仕上がりません。

   これをベースに焼き菓子を作るのも素敵なのですが、私は洋梨の姿形を生かせるデザートを作るのが好きです。

   ソースやクリーム、アイスクリームを添えるだけで素敵なおうちデザートが出来上がります。チョコレート、アングレーズ、それにフランボワーズとだって好相性。どの組み合わせにしてみても、「これが最高な組み合わせ!」と思えるのが不思議なところです。


私の洋梨デザート・ファイルから、ちょっと張り切ったメニューを。「アーモンド・ブリオッシュと洋梨のコンポート」。スライスしたブリオッシュにアーモンドクリームを塗ってオーブンへ。さらに上にもたっぷりアーモンドスライスを並べ、洋梨のコンポートをのせます。クレームアングレーズを流したお皿においたら、仕上げにキャラメルソースを添えて。キャラメルとポワールの組み合わせはやっぱりおいしい!

   来週、大事なおもてなしディナーを予定してます。ゲストは娘たちの洗礼式を執り行っていただく神父様。結婚式の際にお世話になった頃は「さすがバスク人の神父様!」と感心するほどの健啖家の方だったのですが、今は健康を気遣って小食になられたそうで。

   なので、おもてなしメニューは粗食(?)を心がけたメニューを思案中。デザートは、洋梨のコンポートにしようと思っています。あわせるソースと仕上げは当日の私の許容時間次第ということで……。

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自家製コンポートで、「アンズのチーズクリームタルト」



   昨年のアンズの季節に「真空保存のアンズのコンポート」>>のレシピご紹介をしたところ、たくさんのコメントやご質問を頂戴しました。掲載しといてこんなこと言うのもナンですが、あまりリアクションを期待していなかったので正直言って驚きました!

   と言うのも、日本ではフレッシュなアンズの存在価値というか普及度がどうもイマひとつなんですよね。お菓子に使うアンズといえば、缶詰かドライが主流。私も日本では缶詰をよく使ってました。

   でもよく考えてみれば、日本は“お取り寄せ天国”。たとえご近所のくだもの屋さんで見つからなくたって、生産地から直買できる手段はいくらでもあるハズ。そしてお菓子やジャム作りが好きな人たちにとっては、フレッシュなアンズは心くすぐられるくだものなのだと思います。


このコンポートを作り始めるようになってから、冬にもアンズのお菓子を楽しむようになりました。このタルトも季節はずれの頃によく作ります。

   私のアンズお菓子ファイルの中から今回の掲載フォトは「アンズのチーズクリームタルト」。フランス風アンズのタルトはアーモンドクリームを入れるのが定番ですが、これはウィーン風にフレッシュチーズと一緒に焼き込んだものです。

   数年前、夏のヴァカンス先オーストリアのとある小さな町のコンディトライで出会ったお菓子です。時期はまさにアンズの収穫期。アンズ街道とでも呼べそうなアンズ畑が連なる道沿いに無人販売スタンド(10キロ単位くらいで売ってる!)がたくさん並んでました。そんな印象的な景色と共に、旅の想い出となったお菓子です。


アンズの酸味をおだやかな風味のチーズクリームが受けとめた味。


ウィーン菓子の定番、シュトロイゼル(クランブルのこと)をトッピング。これもまたアンズのおいしさを引き立てる素敵なマジックです。

   レシピ完成までにいちばん苦労したのは、チーズクリームの再現。フランスのKiriクリームチーズを使ってみると、どうもオーストリアで食べたチーズの風味とはかけ離れてしまう……。微妙な塩気がアンズの味とバッティングする感じだし、こってり感がアンズとはミスマッチ。そこで、ふだんよく作ってる“フォンテーヌブロー”(フロマージュブランと生クリームを水切りしたデザート)を焼きこんでみたところ、かなり近いお味になりました!

   アンズのお菓子に関しては、フランス菓子よりもウィーン菓子のセンスのほうに心酔しています。私のアンズのお菓子レパートリーのほとんどはこのお国でひらめきを得たものばかり。オーストリアを訪れるたびに、目を皿のようにして(?)アンズのお菓子を捜し求めています。

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わたしのガトーバスク



   私がふだん作っているガトーバスクは、小さな型で焼き上げるプチ・ガトーバスクです。これは地元で気に入ってるお菓子屋さんで売られてるサイズを真似たもの。フォークではなく手でいただけるお饅頭サイズ(?)が手頃で気に入ってます。プレゼントや手土産にもしやすい点も◎。


こうして積み重ねると、ますます“お饅頭”らしい!?

   私は、タルトやガレットなどの焼き菓子のクルート(焼き色がついたハジっこ部分)がたまらなく好きです。子どもの頃は、タルトの端っこばかり食べて真中部分を残すという荒業をして、母親に怒られていたほど! 小さく焼き上げると、このクルート率が増えて「どこをかじってもクルート!」のおいしさです。

   フィリングには自家製の黒さくらんぼジャムを入れてます。クリームよりも甘酸っいジャムの味のほうが、はるかに自分好みだから。ジャムのストックさえあれば、生地をつくるだけなので気軽に楽しむことが出来ます。


このお菓子をつくるときのいちばん楽しい作業はコレ。黒さくらんぼジャムをスプーンで詰めていきます。

   そして、密かに大切にしてるのが粉選びです。地元の粉挽き屋さんの地粉を買い求めて作ってます。いまやフランスの田舎でもほとんど見ることがなくなってしまったという、昔ながらのムーラン(風車または水車)の粉挽き屋さん。ここバスクにはまだちゃんと残っています。

   私はふんわりしっとりさせたいお菓子にはフランス大手製粉メーカーの特選薄力粉を、ざっくり系の焼き菓子にはムーランの粉を愛用してます。市販の粉よりも灰分が高めなので、少しベージュ色がかった素朴な小麦粉の色。適度なコシ、そして何よりも挽きたてならではの風味の良さ! ガトーバスクのような焼き菓子を作ってこそ、その威力が発揮されます。


濃い目の焦げ色をつけるようにしっかり焼き上げたほうがおいしいお菓子。

   生地やフィリング、そして材料のこと……ここまで3回連続してガトーバスクについて語ってきました。そろそろみなさんのガトーバスク熱も盛り上がってくれていることを期待しつつ(?)次回からレシピのご紹介に入りたいと思います。お楽しみに!


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追悼、おばあちゃんとお菓子の想い出



   この春ミモザの花が満開に咲きほこっていた日に、義祖母が亡くなりました。92歳でした。

   豪傑にしてチャーミング、健啖家の酒豪。90歳まで現役でキッチンに立っていた、根っからのお料理お菓子好き。フランスに到着後、夫に真っ先に紹介された人でした。


お元気な頃はおひとりで飛行機に乗って年に数度はバスクに遊びに来てくれました。これは私の両親の来仏に合わせて来てくださった時の思い出深いフォト。

   初対面の日パリのアパルトマンへ行くと、エレベーターを降りてすぐにお菓子の香りが……。家の扉はすでに開かれていて、モスグリーン色の眼をしてグリーンのブラウスをお召しのおばあちゃんが玄関で待ち構えてました。

   あまりの緊張でどんな風に初対面の挨拶をしたかの記憶はないのですが、家にあがると焼きたてのお菓子の香りでいっぱいだったことを覚えてます。その香りがどんなに私の緊張と不安を和ませてくれたことか!

   オレンジのババロアのシャルロット、ガトー・オ・ショコラ、そして小さなメレンゲの焼き菓子。3種類ものお菓子が用意されてました。小さなボウルには、ガトー・オ・ショコラに添えるためのホイップクリームもおいしそうに泡立てられていて! そして飲み物はコーヒーでもお茶でもなく、きりりと冷えたシャンパン。

   この出会いの日を皮切りに、お菓子を掛け橋に孫嫁として可愛がってもらいました。パリにいくと必ずアペリティフやお菓子の時間に招いていただいたし、レシピノートの写しっこをしたり、レッスンをしていただいたり。お菓子や料理(そしてお酒も)が大好き! 1つ共通の世界を持ってるだけで、世代や環境やコトバの壁を越えて親密度を増せたことが嬉しかったです。

   夫と3人でパリの星つきレストランへ出かけるという楽しい夜もありました。私でも苦しくなってしまうようなポーションのお料理をぺろりと召し上がる姿、シャンパンの豪快な飲みっぷり、思わず笑ってしまうユーモアある言動に、サービスの人が微笑ましいコメントを言ってきたほどです。


レシピが無形遺産だとしたら、こちらは有形遺産。カトラリーやプレート、そしてお茶やお菓子まわりの小道具たち。結婚記念日やクリスマスごとにご愛用の銀製品をひとつひとつ贈っていただきました。どれも大切な宝物。

   私の手元には頂いたたくさんのレシピノートや古いお菓子本が残りました。そして年季の入ったお菓子道具や古い銀製品の品々。これからもずっとずっと、お菓子をつくる度に、お菓子をいただく度にいろんな想い出がよみがえると思います。

おばあちゃんのお菓子とお菓子にまつわるエピソード

●おばあちゃんのお菓子「杏のカトルカール」>>
●おばあちゃんのお菓子「ガトー・オ・ショコラ」、1つのレシピで2つのお菓子に。>>
●只今じっくり解読中、おばあちゃんの古い料理本&大昔のレシピノート>>
●おばあちゃんの得意技、コーンスターチ使いのカトルカール>>
●おばあちゃんからの贈り物、銀のデザート・スプーン>>
●我が家に招いたお菓子講師とは? そう、あの方です>>
●お作法道具の仲間入り、おばあちゃんからの「銀のケーキサーバー」>>


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“小嶋ルミさんレシピ”のシュークリームに初トライ!



   シュークリームが大好き。子どもの頃も、そしていろんなおいしさが分かるおとなになった今でも、変わらずにおいしく感じるお菓子です。そして日本にいたときも、フランスに暮らすようになってからも、同じようによく作ってます。

    シュークリームは私にとってのターニングポイント、お菓子“デビュー”を飾ったものでもあります。19歳の大学生の春、ドキドキして通いはじめたお菓子教室でのファーストレッスンのメニューがシュークリームだったのです。

   あまりに感動して、数日間私の頭の中はシュークリームが独占して夜も寝付けないほどに! しばらく大学の授業なんて放棄して、シュークリーム作りに熱中しました(さすがに数日目には親に叱られて復学しましたけど……)。


愛用レシピを浮気して、今回は小嶋ルミさんの「ミトンズシュークリーム」に初挑戦。クリームのぽてっとした感じ、ほっくりした佇まいは“ミトンズシュー”ならではの可愛さ!

   それに、フランス暮らしをスタートして「さてさて、フランスの材料でお菓子を作ってみよう」とまず作ってみたのもシュークリーム。新境地でのお菓子生活の幕開けもこれでした。

   バター、牛乳、卵、粉、生クリーム、砂糖、バニラ。お菓子の基本素材が全て使われ、高価な材料や特別の道具も必要としないシンプルなお菓子だからこそ、材料の質の違いや出来上がりの差を実感できるのが良いところ。


小嶋さんルセットの特徴その1。「生クリームを分離寸前まで泡立てる」。フランスの生クリームは乳脂肪分が低いので、濃くしたいときは生ミルクの上澄みクリームを足すことによってパーセンテージ調整をしています。


小嶋さんルセットの特徴その2。ひたすら「水分を飛ばすように炊き上げたカスタード」に上記の生クリームを「わざとムラが残るように混ぜる」。確かに画期的な作り方でとても勉強になったのですが、バスクの濃厚素材ばかりで作るとやたらコッテリしたクリームが出来上がってしまう。試食した夫の第一声は「これ、バタークリーム?」……というわけで我が家には定着しそうになく。

   そしてもうひとつ、シューは私にとって「オーブン試し」のお菓子でもあります。今まで何台ものオーブンを使ってきましたが、新調した日にまず焼いてみるのがシュー生地です。オーブンの扉の前でじーっと佇み、みるみる膨らんでいくシュー皮の様子を観察すること30分。熱の廻り方、焼きムラの有無、熱源の強度(特に下火の火力)は一目瞭然です。

   ところで、シュークリームといえば日本の全国津々浦々のお菓子屋さんにだってありますよね? なのにフランスのフツーのお菓子屋さんでは、あまり見かけないお菓子。特にここバスクで見たことあるのは、わずか1、2軒。エクレアは大抵のお店に置いてあるのに……。

   「自分で作らない限り、口にすることが出来ないお菓子」って希少価値(?)も加わり、ますます私のシュークリームづくりに熱が入るのです。


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ゲスト用の朝ごはん、「オーガニック・スコーン」



「バスク6daysの過ごし方」
5e jour 9h00 朝食用のスコーンを焼く

   スコーンをよく焼きます。日本で実家にいた頃はおいしい紅茶が手に入ったときのティータイムのお菓子でしたが、フランスに来てからは“朝ごはん”専用です。

   「スコーンって朝食に使える!」と気がついたのは、かつて夫の友人たちが急遽泊まっていくことになったとき。パンの買い置きがないことに気がつき、「朝ごはんに粉ものがないはマズいっ」と焦った私の頭に閃いたのがスコーンでした。

   「パンの代わりにどうぞー」と焼きたてスコーンをバターとジャムと出したところ、殿方3名から絶賛され(やっぱりフランス人男性ってホメ上手ですからね……)、私はかなり気をよくした想い出が!


今回作ったのは“ざっくり”タイプ。私の7年間のスコーン統計(?)によると、日本人ゲストはさっくりフンワリ、フランス人ゲストにはざっくりがウケる気がする。

   以来いろんな人におだててもらいながら、ゲスト滞在中の朝ごはんに必ず1回は焼いてます。こんなに簡単なのにこんなに喜んでもらえる理由はただひとつ。レシピうんぬんの力よりも、本当の焼きたてを味わってもらってるからだと思います。

   焼き上げのタイミングだけは、神経質なほど気を使ってるので。ゲストがシャワーを浴び始めた頃に準備をスタートすると、食卓についてもらう頃にちょうどタイミングよくオーブンから出すことが出来ます。


お客様との朝食風景は毎度こんな感じです。フランス人にはクロテッドクリームはあまり人気ありません、やっぱりバターがお好き。そしてなんといってもジャムの消費量がハンパない! 5日間で一瓶空になりました。

   木の実やドライフルーツを入れたり、ライ麦粉や全粒粉などをミックスして粉の風味を変えられるところも作り飽きない理由。加える水分も牛乳のほかに、ヨーグルトやフロマージュ・ブラン、はたまたマルカルポーネ(ものすごくフンワリ&リッチなスコーンになります!)やリコッタを入れるときも。

   もはやイギリスのスコーンからはかなり逸脱してますが。冷蔵庫にある乳製品やお菓子のストック素材を自由に組み合わせ(在庫整理という意味合いも)、気楽にアレンジできるところがスコーンの楽しさです。

   今回のゲストはオーガニック意識の高いおふたりだったので、粉の一部は全粒粉、中にはシリアル5種と胡麻、砂糖はカソナードという初アレンジで焼いてみました。

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「オランジェット」のレシピを比較研究してみました!



   「Orangette(オランジェット)」はオレンジとカカオの香りとビターな甘みを楽しむチョコレート。まさに大人のため、大人だからおいしく感じるチョコレートです。

   前回ご紹介したフランス大物パティシエ3名のショコラ本の中から、オランジェットのページをご覧に入れます! 達人たちの思い入れ、こだわり、そして個性をちょっぴりでも感じていただけたら。


ジャン=ポール・エヴァン氏の『Fruits enrobés』。氏のチョコレートのファンの方なら、この写真だけで「あっ、エヴァンだ」ってお分かりかも? オレンジ以外にもジンジャーのコンフィで作ることもオススメしてます。

      ジャン=ポール・エヴァン氏の凛とした美的感がが伝わってくるオランジェット。ブルーのガラス皿にのせられたスタイリング、それが正方形の版型とあいまって素敵な写真。この本の中で、1、2を争うくらい気に入ってるページです。


クリストフ・フェルダー氏の『Orangettes italiennes』。ものすごいアップ写真、オレンジの色が目にまぶしい!

   氏が今まで食べた中で最高のオランジェットは、ヴェネチアの有名レストラン『Cipriani』のものだったそう。「皮に果肉をほんの少しだけ残したコンフィが素晴らしかった」と語ってます。で、ご自分もそれを意識した作り方にして「イタリエンヌ」と命名しているわけです。

   コンフィのレシピの中で、シロップに使う水をわざわざ「ミネラルウォーター」指定しているところがミソ。やっぱり違うの? コンフィ作り好きとしては、とても気になる! そして使用チョコレートはもちろんカカオ70%を指定してます。


ピエール・エルメ氏の『Ecorces d’agrumes confites』。エルメ本の特徴、背景ブラックのマクロ写真が迫力満点。「柑橘類のコンフィ」ということで、ルビーのグレープフルーツ、オレンジ、そしてレモンのコンフィを紹介してます。

   私がこの本で密かに愛読してるのは、エルメ氏の「テンパリング解説」。大型本2ページを割いて文章ぎっしりでレクチャーしてます。いろんな本・著者のテンパリング説明文を読んできたけど、彼の解説ほど分かりやすかったものはない! 天才とは人に教えるのも上手なんだワ、と唸ってしまった。

   以前、何度も失敗して“テンパリング・スランプ”に陥ってしまった時に彼のこの解説をじっくり読んで再挑戦したところ、あっさり復活できた経験があるのです。以来私にとってこの本はテンパリングのおまじない本。

   こんな殿上人の後に紹介するのもナンなのですが、不肖わたくしも『オレンジの丸ごとコンフィ』と『オランジェット』をご紹介してますので、ご参考までに。オランジェット検索で初めて訪れてくださった方も多かったようで、たくさんの反響をいただきました! バレンタインの候補にもどうぞ。

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吟味したマロン・グラッセと「ブッシュ・ド・ノエル」



   昨年のNoelでは、25日お昼の部を我が家が主催しました。ハテ、あの日私はどんなメニューで臨んだのかしらン? 前夜のシャンパンがカラダに残留状態での準備だったし、相変わらずバタバタだったし、写真撮ってる余裕なんてありませんでした。

   唯一お客様が到着する前にカメラに納めておけたのはお菓子だけ。2種類用意しました。ひとつは昨年、義祖母に直伝してもらったクリスマス菓子「くるみペーストのブリオッシュ」。(このお菓子にまつわるエピソードとレシピは、こちらの過去記事をどうぞ>>)。本来こちらはクリスマスの朝食にいただくお菓子です。

   もうひとつ用意したのは、お馴染みブッシュ・ド・ノエルです。夫は「お菓子2つは大変だからブリオッシュだけで充分だよ」って言ったのだけど、「ウーン、それだと私の気が済まないのよ!」と主張してせっせと作ってしまいました。自分がシェフの時は、自分の定番クリスマスケーキだってやっぱり欲しい。そしてそれはやっぱりブッシュ・ド・ノエルなのです。


大学生時代にお教室で習って以来、10ウン年のお付き合いのお菓子です。ジェノワーズにチョコレート・バタークリームというシンプルな組み合わせだけど、飽きないおいしさ、何度でも食べたい大好きなレシピ。デコレーションで雰囲気をガラリと変えることができるのも、このお菓子の魅力のひとつだと思います。夫の家族にもとても好評だったのでホッ。

   ここで私がハタと悩んだのは、ケーキの糖度について。私がフランスで口にするブッシュ・ド・ノエルを激甘に感じてしまうってことは、彼ら(特に祖母!)にとって私のはピンぼけな甘さに感じられてしまうってこと。

   かと言って、お気に入りのレシピをイジるのは絶対にイヤ! そこで私が取った打開策はシロップです。これは日本人仕様の甘さ控えめなお菓子をフランス人仕様にマイナーチェンジさせたい時に、私が使う常套手段。

   生地をホワっとしっとりさせる程度のシロップ塗りが好みですが、この日は念入りにたっぷりジュワーっと染み込ませることに専念しました。お酒好き一家なので香りづけのブランデーの量を増やすことも忘れずに。すると香りが甘みを補強してくれて、だいぶ彼ら好みの濃厚風味なお菓子に変貌させることができるんです(この影の努力、みんな分かってくれてるかな……)。


実は昨年の今ごろ、お気に入りのマロングラッセを探し求めてバスクのショコラティエ数店のマロングラッセを食べ歩いて比較研究してみました。、栗の品質・口触り・甘み具合・グラサージュの美しさなどなど、お店によってかなりお味に違いがあることがよーく分かって興味深かったです。

   あとはやっぱりNoelですから、マロングラッセをアクセントに。日本の御節に栗きんとんがマストアイテムであるように、フランスのクリスマスにもマロンは欠かせない存在です。

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愛され続けて150年のロールケーキ



   東京、パリ、そしてバスク……お馴染みのそれぞれの街に、好きなカフェやお菓子屋さんが幾つかあります。

   そんな自分用のアドレス帳の中で、ちょっと特別な位置を占めているのがオーストリアのコンディトライ。なにせバスクからは遠いので足繁く通うわけにはいかないけれど、こうして夏休みを利用しての訪問は大きな楽しみでありまして。


まずはお菓子の前菜に(?)、オープンサンドイッチをオーダーします。ケーキに負けず劣らず、おいしいです。


日本のお菓子屋さんで出されても違和感がなさそうな“いちごのロールケーキ”です。150年以上前のレシピだなんて!と、ちょっと感慨深くなる。スポンジはふわっとしながらコシがある感触、そして生クリームの爽やかな口どけが嬉しくなるお菓子。


そして、締めくくりはやっぱりコレ。オーストリアにいるって実感が湧いてくる「アイス・カフェ」。コーヒーは苦手なのに、コーヒー使いのスイーツ好きにはたまらない味。

   人気店や有名パティシエ、そしてお菓子の流行が次々と塗り変わっていく状況とは縁遠く、ウィーン菓子は老舗店で職人技に支えられる伝統菓子が主流。新作のお菓子など見当たらず、創業以来の古いレシピで作り続けられてるお菓子が大多数です。でも、古臭いどころか逆にとても斬新に感じられる! これぞウィーン菓子の魔法といえましょう。

   今年で4度目の訪問を果たした、コンディトライ&カフェ『Zauner(ツァウナー)』。毎回せっせと違うお菓子をいただいてますが、まだこのお店のラインアップの半分も制覇していないかも! ウィーン菓子の底力を知り尽くすまでの道のりはまだまだ長いのです。


ザルツブルグ界隈ではつとに有名な老舗コンディトライ。別荘滞在中の旧皇室御用達店としても名を馳せています。宿から車で30分の距離ですが、足を運ぶ価値のあるお店!

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マカロン100個が瞬く間に消えた日



   引き続き、ビュッフェ・パーティの模様をお届け。今回はお菓子編!

   来客日のお菓子の献立。これを考えるのは、とても好き。お菓子日記やノートを見ながら、「アレを作ろう、これを作りたい」「ああしてこうして、あのお皿に盛って……」と、夢想するのが楽しい。


お菓子候補を挙げていく中で、最後まで外せなかったのはマカロンとチョコレートのお菓子。手で取りやすいのでパーティ向き。

   おもてなしって料理を作る段階よりも、献立メニューを考える時が大変ですよね。客人のお国柄、嗜好やスタイル、年齢、そして材料や時間と手間リミットとのバランスを考えながら悩むのが、ひと仕事でもあり楽しみでもあり。

   特に今回みたいに、50人中大半がフランス人で日本人は少数派なんていう場合、フランス人の嗜好と食べる量(やっぱり大人も子どもも、日本人より食べます!)を優先しないといけないし。

   私はいつも、料理よりも先にお菓子の献立を決めてます。楽しいことから考え始めると、すんなりイメージが決まっていくので!決して「お菓子が主役なパーティ」にしてはいけないけれど、「最後のお菓子もおいしく食べてもらいたい」っていう思いを大切にしています。


唯一、前もって作っておいたのはマカロンだけ。数日前に準備して冷凍保存させました。100個近く作ったのだけど、あっ!という間に消えてしまった。フレーバーは、カフェ、いちご、レモンの3種。


子どもたちが集まる場にチョコレートは外せない。ありったけのシリコン型で焼いた、フォンダン・オ・ショコラ。出す直前にほんわり温め直しました。

   とは言っても、冒険は禁物! 来客の日に、いきなり初挑戦するお菓子や、デコレーションに気合が入るお菓子は避けるべし。既に何度も作って、手と頭に作業が叩き込まれているくらいのお菓子を作るようにしてます。でないと、時間のロスにもなってしまう。

   手軽に作れて、ビュッフェに向いていて、みんなに好まれるお菓子。今回は5点の候補から、最終的に3点のお菓子に絞り込みました。果物2kgで作ったクランブル、マカロン100個、チョコレート500g分のフォンダン・オ・ショコラ。

   これが瞬く間に皆さんの胃袋に消えました。ひとつのお菓子をビュッフェ台に運び、台所で次のお菓子を盛っている間に、ひとつめのお皿は空っぽ……。爽快だったけど、焦りました。「お砂糖に群がる蟻んこみたいっ」と言い方は失礼ながら、ほんとそんな感じだったので。


この豪快な食べっぷり! 作り甲斐があるってものです。

   てんやわんやで写真を撮る余裕がなかった私に代わり、フォトグラファーとなってくれてたT子さん、ありがとう。特に、ロゼンヌちゃんのガブリショットは傑作です。お陰様でご覧の通り、記事にすることが出来ました!

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夏の定番デザート、「自家製あんずソースとババロア」



   前回に引き続き、あんずアルバムのお菓子から。「あんずソースとババロア」。これまた懐かしくて郷愁を誘うお菓子、ずっと昔から作りつづけているお菓子です。

   毎年あんずのコンポートを作り終わると、まず最初に作ってみたくなります。その年のコンポートのお味を確かめるという目的もかねてます。


夫のおばあちゃんから頂いた、ご愛用だった古いガラスの器。こういうレトロなお菓子がとても似合います。

   つるんとした口どけと、バニラの香りのカスタード。これに、冷たいあんずのソースはこれ以上ないほどマッチする!ソースというよりも"あんずのスープ"というくらいに、たっぷり流していただいてます。

   ババロアって、日本のお菓子本の常連ですよね。ところが意外なことに、フランスではあまりお目にかかったことがないお菓子。70年代頃のお菓子本には必ず載っているのですが、今時のお菓子本にはあまり登場しません。

   もはやクラッシックすぎるお菓子なのかしらん?それでも人気は健在。お客さんの日などに作ってみると、素直に喜んでもらえます。


私にとって冷菓といえばこの型。物心ついた頃からゼリーやババロアはいつもコレだった。母のお下がりだから、もう40才以上!アルミ型は錆び知らずでお手入れがラクで、重宝します。

   ババロアは、ドイツのババリア地方に古くからあった飲み物が起源だというのは有名な逸話。私も幼い頃、家にあった大御所・今田美奈子先生の本などを読みながら、ヨーロッパのお菓子ストーリーに心ときめかせていたものです。

   ここ数年、ババリア地方に実際に何度か足を運ぶことができました。ババリア地方で本場のババロアを食べてみたい!と期待はしていたものの、レストランのデザートではやはり出会えず……。

   そこでミュンヘンの本屋さんで、「ババリア家庭料理」を紹介する本を1冊買ってきました。すると、ちゃんと載ってました!「ババリアン・クリーム」なる名前で。長年の探し物をようやく見つけたみたいな気がして、嬉しかったです。

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懐かしのお菓子、「あんずのカップケーキ」



   私のお菓子アルバムの中から、あんずのお菓子をピックアップしてみます。

   選んでみたのは、ちょっとノスタルジックな、子どもの頃から食べていたような、お母さんが作ってくれたようなお菓子たち。フランスでも、あんずはレストランなどのデザートよりも家庭のお菓子に使われがちな果物。こういう風情がしっくりくる素材だと思います。

   まずは、シンプルなカップケーキから。子どもの頃、私はこういうお菓子をよく食べていました。


自家製あんずのコンポートをのせて、こんがりキツネ色に焼いたカップケーキ。缶詰めのアプリコットみたいにツヤピカしてないけど、この自然な色合いが好きです。

   当時、家族でアメリカに住んでいたのですが、その頃に我が母のお菓子つくりは黄金期(?)を迎えました。なにせ渡米したのは'79年、日本とアメリカの生活レベル格差は今の数倍もあった時代だから、母がカルチャーショックを受けたのは当たり前。

   広々キッチン、巨大強力オーブンに、ディッシュ・ウォッシャー。家が決まったとき、「お菓子をたくさん作らなきゃ!」と意欲がみなぎったそうな。

   次から次へと新作お菓子を作ってくれたので、子どもとしては「うわぁ、ラッキー!」って感じでしたね。みるみるうちに、母のお菓子道具や型が増えていくのを見るのも楽しかった。マフィン型もそのうちのひとつ。

   通ってた小学校で、自分のお誕生日にママ手作りのお菓子を持参して、クラスメートにふるまうという風習がありました。みんなが持ってくるお菓子は、判で押したようにマフィンだった! でも、大抵は私の苦手なマフィン・ミックスの味(私のアメリカの菓子に対する偏見と恐怖心は、この時代に芽生えてしまいました……!)


カトルカールのアレンジ・レシピ。フランスに来てから、大好きなフロマージュブランを入れて焼くようになりました。ほのかなチーズの酸味があんずに合います。

   「お母さんのカップケーキのがおいしい……」と心の中でボヤきながら、アメリカン・ママ達のマフィンを食べてました。私とマフィンのほろ苦な(?)想い出です。

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苺のフォンテーヌブロー・クープ



   先月、記事の中で「ショートケーキのないお菓子の国」という書き方をしたところ、cafeglobeのしろいしさんから「ショートケーキって日本のお菓子なんですか?」という質問をいただきました。


「いちごのショートケーキ」、グラス版。

   そうです、こちらのフツーのお菓子屋さんには苺のショートケーキは存在しません。これはフランス菓子ではなく、ニッポンのお菓子。食べたことないのだから当然、フランス人にはウケないお菓子です!

   以前、友人宅で総勢10人くらい(ニッポン人は私だけ)でお茶をしたときのこと。お盆に並べられた『Sadaharu Aoki』の美しきお菓子たちを、ひとりづつ好きなものを選ぶことに。ヘーゼルナッツやピスタッシュ、チョコレートを使ったものあたりから消えていく……彼らのチョイスを観察するのは、なかなか興味深かったです。

   そんな中で、「いちごのショートケーキ」が日の丸国旗のごとく、ぽつねんとした佇まいに見えてしまった。で、これを嬉々として選んだのはもちろん私ひとり……。私にとっては、懐かしさが先にたつ、和スイーツみたいな感覚なんですよね。

   「苺ショートケーキを、フランス人にウケさせる」は、私のちょっとした課題テーマです。先日、おもてなしの日に作ってみたのがこちら、「苺のフォンテーヌブロー・クープ」。とても評判が良かったです。もちろん、日本人も大好きな味です(でなきゃ、私だって作りません)!


私はグラス・デザートが大好き。おもてなし時、お料理もお菓子も作って(そして掃除もして)となると、さすがにかったるい時もあり。そういう時、ちゃちゃっと作れて、手抜きをバレさせない(?)のがグラス・デザートだと思う。いわば自分の救済策!


生地は、ふわふわジェノワーズを避けて、シュワっと軽いけどしっかり焼いたビスキュイ生地。


バターたっぷりは平気なのに、ホイップ・クリームたっぷりのお菓子には拒否反応を示すフランス人は多い(これまた興味深い現象だと思う)。そこで、クリームはフロマージュブランを使った「フォンテーヌブロー」にしてみました。

さて、「“フォンテーヌブロー”って何?」という方、次回ご紹介いたします!
お楽しみに。

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おすすめの新刊本2冊、マカロンづくりの参考書



   ここ最近、フランスの大抵の書店でお菓子本コーナーにドーンと平積みされているのがこちらの2冊。

   パリ風マカロンの教習本です。出るべくして出た、待望の本ですね。

   レジのお姉さんが「マカロン、マカロン、マカロン~♪」と鼻歌を歌ってきたのには笑ってしまった! お菓子の本を買うとき、レジの人にこういうリアクションをされることって、フランスではよくあります。「店員さんとお客さん」という位置関係ではなく、個人対個人の関係だから。日本の本屋さんでこんな反応されたら引いてしまいそうですけど……。


左は、クリストフ・フェルダー氏のシリーズ本の第6弾。この中で今一番心惹かれるのは、「フォアグラ・マカロン」! ハレの日のアミューズに作ってみたい。

   さて中身はと言いますと、かなり細かい説明に全行程の写真付き。日本では普通でしょうが、フランスでここまで親切な本って案外少ないので、それだけで好感度大。マカロンを美しく染色するための着色料使いのコツなんかは、とても参考になります。フランスでも、こうした“リアルなお菓子本”が増えてきそうな予感? 今後のお菓子本モードの流れが楽しみです。

   それにしてもマカロンの威力ってスゴい。喜ばれる度合いが他のお菓子とまるっきり違うんですよね。フランス人(とくに女性)にプレゼントすると、“感無量”といった表情で喜んでもらえて、頬っぺに熱い(?)キスを授かりますから。とても作り甲斐があるお菓子だと思います。


私は教室で教わったレシピを愛用中。生地状態と自分のオーブンでの焼き加減のマスターに励みました。一旦習得すれば、どんどん世界が広がる素敵なお菓子。

   でも、パリのお菓子の先生いわく「配ってばかりいると、そのうち当たり前に思われて感謝されなくなるから要注意ヨ」。なんとも含蓄のあるお言葉! レシピと同じくらい大切なことを教わった気がした……。

   実は今度、フランス人奥様方(夫友人妻たち)にマカロン・レッスンをする予定です。日本人の私がパリジェンヌにマカロンを教えるなんて僭越行為かもしれないけど、お菓子作りなら語学ハンデもカバーできるしネ、という思惑もあり。お菓子は私の社交にとって、恰好のコミュニケーション・ツールなのであります。


コーヒー&ショコラの組み合わせが好きな私は、カフェ・マカロンにガナッシュを挟むのが好み。しかし、こうみると「もなか」に見えなくもない!

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「懐かし系」がお好き? フランス人女性が選ぶお菓子本



   先日、立て続けにふたりのフランス人女性からお菓子の本をプレゼントされるという幸運にめぐまれた私です。パリに住み、しっかり仕事をしながら妻・母業もこなしている多忙な日々の中、ちゃんとお菓子だって作ってしまうような女性たち……。バイタリティ溢れる女性は、気遣いの達人・プレゼント選びの達人でもあります。

   同世代のこういうフランス人女性が選ぶ料理本とは、一体どんなもの? 本をプレゼントされるという嬉しさと同時に、ものすごい好奇心が沸いたことは言うまでもありません!


横長の小さな版型、そして暖色系の表紙。コンセプトがそっくりな2冊のお菓子本、どちらも2006年刊行本。フランスの女性には、こういう本が圧倒的に人気なのでしょうね。

   偶然にも2冊の本がとても似たスタイルの本だったことに驚きました。有名パティシエの豪華本でもなく、きれいでお洒落な写真が載っている本でもない。どちらも写真がついていない「昔懐かし系」のお菓子本です。当たり前ですけど、フランス人にとってのフランス菓子は特別なものでも非日常的なものでもないわけで、だからこそお菓子屋さんでは買えないお菓子、家庭的なお菓子にこだわる人が多いのだと思います。

   シンプルなレシピの横に、ふんわりしたトーンの絵が描いてある。この絵がなんとも女心をくすぐってくれるのです。お菓子がある風景っていいなぁ……。そういう温かな気持ちを高めてくれる効果は写真以上! もともと絵本料理本には弱いタチなので、すっかり気に入って何度も手にとって眺めています。

   タルトやサブレ、オーブンで焼いたシンプルな果物デザート。紹介されてるお菓子はどれも馴染みの家庭菓子ばかりです。例えば「タルト」っていうとどこか肩の力が入ってしまう人でも、こういう本を手に取れば、ちょっとハードルが低く感じるのではないでしょうか。


とてもフランスらしいイラストの数々。

   件のふたりにもお手製タルトをご馳走になったことがあります。ブルーベリーのタルトとりんごのタルトでした。料理が好きな彼女たちだからかもしれないけど、生地もちゃんと手作り(市販の生地を使う人もかなり多いご時世なのに)していて、ただただ尊敬。

   仕事帰りに子どもの保育園からのピックアップ、平日の夜8時に自宅ディナーに招待してくれることだけでもスゴいのに、ちゃちゃっとお手製タルトも焼いてしまうのね……。フランス人女性のパワーをこういう時につくづくと感じます。今度、私も日本の料理本をプレゼントしたいと思う(うーん、どんな本が喜んでもらえるでしょうね)。


こちらのお菓子本は、全国の「おばあちゃんのお菓子」投稿レシピを集めたもの。レシピの由来なんかも載っていて、読んでて楽しい。

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我が家に招いたお菓子講師とは? そう、あの方です



   12月のある日、我が家に「お菓子の講師」をお招きしました。

   暖房を全開にし(我が家は「耐えられないほど寒いっ」とおっしゃるので……)、冷蔵庫にはキンキンに冷やしたシャンパンを用意し、台所で腰かけてもらえるように小さな椅子を用意しました。その講師とは、夫のおばあちゃん。まさにご老体に鞭打っていただいて実現したレッスンでした。

   一緒にお菓子をつくったのは実に数年ぶり。今よりずっと体力があった頃は、彼女が自ら作ってくれるのを私が横で見守ったけれど、残念ながら今回は逆。おばあちゃんが口頭で指導してくれるのに従って私が手を動かす、というレッスン方式にしました。

   習ったお菓子は、「胡桃ペーストのブリオッシュ」。ブリオッシュ生地で胡桃のペーストをくるっと巻いて焼いた、滋味あふれるパン菓子です。私も今まで何度ご馳走になったか数えきれない、十八番中の十八番レシピであります。


おそらく普通の日本人にとっては、未知なる味わいのお菓子だと思う。私も初めて口にしたとき、新しい味覚との出会いを感じました。

   今回改めて知ったことですが、おばあちゃんが26歳でお嫁入りしたときに、お姑さんから「家の味」として教わったお菓子だそう。女の歴史が詰まったお菓子であります。

   以来昨年までの64年間(!)、年に数度は作り、そしてクリスマスの朝ごはんは必ずコレという慣習となっているもの。私にとっても、すっかり嫁ぎ先の「クリスマスの朝の味」と化しています。これがないとクリスマスの朝って気分にならないから不思議……。


年季の入ったご愛用ブリオッシュ型も引き継ぎました。使い込まれていながらもコンディションも良くって感激。私にとっては、高価な骨董品級のお宝モノです。

   そんな訳で、いつか必ず教わっておかなければいけなお菓子でした。おばあちゃんもずっとその機会をうかがっていたようです。しかし、「教えてあげるわよ」とは決して言わず、私が「教えて」と自発的に言い出すのをずっと待ってくれていた。こんなところにも、おばあちゃんの懐の大きさを感じます。


頂いたノートをチェックしてみたところ、どのノートにもこのお菓子が載ってました。ノートを新調しても、このお菓子だけは必ず写し書いていたのです。お菓子の名前は「おかあさんのブリオッシュ」となっています。おばちゃん、可愛い……。

   果たして行ったレッスンは、ハプニングあり笑いありの数時間でした(シャンパン飲みながら……)。無事に焼きあがった時は、お互いの顔を見て笑ってしまいました。

   それにしても今回のレッスン実現に向けて誰よりも張り切り、出来上がったお菓子に歓喜していたのは、まぎれもなく夫! 子どもの頃からの「クリスマスの朝のおばあちゃんの味」を、まさか私が引き継ぐことになろうとは想像していなかったみたいです。

   次回、レシピをお届けします。お楽しみに!

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バター量はヒ・ミ・ツな「ガレット・デ・ロワ」



   新年といえばこのお菓子、「ガレット・デ・ロワ」の季節がやってまいりました! クリスマスのお菓子と入れ替わるようにしてお菓子屋さんの店頭に続々と登場してます。

   折込パイ生地の中にぎっしりとアーモンドクリームを敷きつめた、これぞフランス菓子の真骨頂とでも言うべき伝統菓子。フランス人なら老若男女みんなが愛してやまないお菓子でもあります。

   このお菓子を食べているときの人々の嬉々とした表情といったら……。フランス菓子の本質、フランス人とお菓子の濃密な関係をしみじみ感じる瞬間です。


バイヨンヌのパン屋さんMauriacのガレット・デ・ロワ。ここのパイ生地は良質のバターを使ってるのがよーく分かります。

   実は自分でこのお菓子を作ったことは一度もありません。そして、これからもきっとないだろう……。今月中はこれを口にする機会がとても多いので、さらに自分でも作っていたりしたら大変なことになりそうだから。

   何と言っても折パイ生地とアーモンドクリームのコンビですもの。バター摂取量はフランス菓子の中でもピカイチなお菓子ではないでしょうか。これを何度も口にするのはさすがに避けたい、っていうのが本音。

   私はお菓子をつくるとき、カロリーのことは全く忘れてます。気にするくらいなら最初っから作らない方がマシって考え。あくまで作りたい気持ちを優先です。ただし、食べるときに全く意識しないかと言えばウソです! 特にフランスのお菓子屋さんのお菓子などは、日本のそれよりポーションも濃度も大柄なので、頭の中で使用バター量などを空想計算しながら心の中で冷や汗……なんてことがよくあります。


ガレットにフォークを入れる瞬間……いろいろな思いが頭の中をよぎる。

   昔、自宅に友人を呼んでお菓子つくりをしたときのこと。私がいとも平気な顔をしてバターの塊を用意してるのを見て、彼女が小さな悲鳴をあげました。「エっ、こんなにバター入ってんの!?」。その叫びを聞いて、逆に私はとても新鮮な感情をおぼえました。お菓子の内訳を全く知らないでいるのも、ある意味幸せだなぁと。

私は、自分の中に一線というものを引いてます。「これを超えたらちょっとマズいんでないの?」という一線。それを超えているお菓子の1つがガレット・デ・ロワです。そしてその線引きの基準は、1ポーションあたりの摂取バター量が〇〇g以上という数値。〇〇の数値は敢えて内緒にしておきますね。皆さんを恐怖させるといけないので……。

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食感に特徴あり! フランス南西部の地方菓子



   ガスコーニュ旅行中、私がとても楽しみにしていたお菓子があります。その名は「croustade(クルスタッド)」。フランス南西部一帯で親しまれている地方菓子です。

   バスクもこのエリアに含まれているとは言え、ガトー・バスクという押しも押されぬ地方菓子があるせいか、クルスタッドの存在感はイマひとつという感を否めません。

   ガスコーニュへ行ってみると、どこのお菓子屋さんの窓辺にもこのお菓子がお行儀よく並んでました。クルスタッドの本拠地はやっぱりガスコーニュなのね! 現地でしかと確認できる、こういう楽しみはフランス地方旅行の大きな愉しみです。


驚くほど地味な佇まいのお菓子屋さんを発見。剥き出しの金属パイプに板を並べた台にお菓子が並んでる……! ちょっと寂しい、だけど妙に好奇心をそそられました。

   名前の語源は、croustillant(形容詞)「パリパリしている」。

   名は体を表すの如く、食感が身上のお菓子です。透けるくらい薄い生地を何層にも重ね、アーモンドクリームと果物を敷いて焼き上げます。クシャクシャっと無造作に焼き上げた上の部分はパリパリしている、いやパリパリしてなくてはいけないお菓子です。

   当然、焼き立てはとっても美味! でも逆に言うと、焼いてから時間がたてばたつ程、パリパリ→ふにゃふにゃ→グニャグニャな食感に。これほど食感の劣化が激しいお菓子も珍しいと思います。以前、買ってきたクルスタッドを口にしてみて「あれ、コレ何かに似てるー」と考えて、それが「翌日の春巻き」だと分かったときはちょっと悲しかった……。


昼食のデザートに注文。パリパリ感はまあまあでしたが、中のレーヌ・クロード(プラムの一種)のお味が爽やかでとても美味でした。

   「パリパリ」と言えば、先日パリの某チャイニーズ・レストランでパリパリの究極(?)なる北京ダックを食べに行ったときのこと。中国人の友人と一緒だったので、オーダーは全て彼女に任せました。オーダーし終わった後、彼女がわざわざマネージャーを呼んできてマンダリン語で強い調子で何かを言い、彼の表情が一瞬曇ったかのように見えた……。

   「今、何て言ったの?」と彼女に訊ねれと、「『まさか昨日の残りなんて出さないでしょうね!ちゃんと焼き立てを頂戴よ!』と言っておいたのよ」だって……。普段おっとりしているのに、果敢にお店の人を挑発する様子に笑ってしまった。そして、ますます彼女のことが好きになった私です。はたして出てきた北京ダックは、それはそれは素晴らしいパリパリ感でした。

   おいしいものって、受身な態度では手に入らないのかもしれない。彼女みたいに、こちらも充分に気合を見せて相手をタジタジさせるくらいでなければ。例え同じ店で食事したとしても、おいしいものを出してもらえる人と出してもらえない人、という差は絶対に存在するはず。そしてそれは、日本よりも海外ではより顕著な気がします。

   クルスタッドを注文するとき「まさか、昨日のじゃないでしょうね!」と言える勇気、私も欲しい……。

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お菓子の香水、今秋の新顔は「アルマニャック」



   我が家のリキュール棚に新たな瓶が加わりました。Pruneaux à l’Armagnac「プルーンのアルマニャック漬け」。ガスコーニュ旅行中に見つけました。

   アルマニャックはワインから作られる蒸留酒、ガスコーニュ地方の特産品です。葡萄畑沿いの道を車で走っていくと、アルマニャック醸造所が幾つも。去年、年代もののアルマニャックをお歳暮に頂いたので、ほんとは買うつもりなんてなかったのだけど……美しい葡萄畑を眺めているうちに気分が盛り上がってしまい、買ってきました。

   こうして新しいリキュールを旅先で見つけると、私が真っ先にトライしてみるのがバニラアイスクリームとの組み合わせです。アイスクリームの上にぽたぽたっと垂らし、アイスクリームごと「試飲」します。

   そのままグイっと飲むにはアルコール度数が強すぎる場合も、アルコール分をさほど感じずに、香りをしかと確認することが出来ます。そして大抵の場合、とってもおいしく感じて「もっとかけちゃえ」と増量する羽目に……。


先日の来客ディナーの際も、この簡単デザートに。バニラアイスクリームとアルマニャックとプルーン、そして簡単なガトー・セック(ダックワーズ生地をフィンガー風に)を添えて。思いのほか好評でみんなお代わりをしたので驚いた。やっぱりシンプルでおいしいものが一番のご馳走なのね、としみじみ。

   香りの特徴、バニラとの相性、そして、どんなお菓子や果物に使おうかな……と、そこからどんどんイメージを膨らませるのが何より楽しい。うーん、やっぱり私にとってお酒なしのお菓子作りは考えられません。

   ちなみに、写真のリキュール棚は今年の春に馴染みのブロカント(古道具屋)で一目惚れ、即断でオーダーしたもの(ひとりで家具を即買いしたのは初めての経験!)。楕円型の棚の側面がぐるりとガラス張りになっているので、瓶の姿が透けて見えます。


今回改めて数えてみたところ、所有リキュールは20種ほど。登場回数がダントツ多いのは、相変わらずグランマルニエ、コニャック、ラムですが。使用頻度が少ないものは、来客時の食前酒などとして消費。

   中身もさることながら、お酒の瓶のデザイン性もかなり重視している私にとって、願ってもない家具なのです。模様替えのつもりで時々瓶の位置を入れ替え、目でも楽しむことが出来るので。当分のあいだ、アルマニャック瓶がこの家具のアリーナ席を陣取りそうな気配です。

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お誕生祝いの焼き菓子セット、あの日本の銘菓も!



   今年もこの時期がやって参りました。実は一家にとってはクリスマスよりも大事なイベントなのかもしれない、夫の祖母のお誕生日。先日91歳のお誕生日を迎えました。

   惣菜屋さんでアペリティフから料理、ケーキまで注文。シャンパン(おばあちゃんの命の水!)もたくさん持参し、養護ホームの自室でお祝いしました。今年はお誕生日ケーキを作るという大役はありませんでした。でも、やっぱり何かお菓子を作ってさしあげたい! 私とおばあちゃんの間の最大にして最強な絆はお菓子つくりなので。

   そこで今年作ったのは、焼き菓子の詰め合わせです。ホームの朝食に出てくる乾いたバゲットには辟易としているご様子のおばあちゃん、ここ最近は自室で市販のカトルカールなどを朝食にしている、という寂しい話を聞いていたこともありまして……。朝ごはんが楽しくなるように、ちょっぴり元気になってもらえるように。という気持ちを込めて焼きました。


おばあちゃんからいただいた銀のお皿に盛り込みました。手前から、「レーズンサンド」、「オレンジピールのカトル・カール」、「木の実のサブレ」。


日本で食して以来、「日本の洋菓子界の一大銘菓だ!」と夫が絶賛するレーズンサンド。小川軒の発明品ですね。私も大好きなので、今回メニューに取り入れてみましたが。さて、おばあちゃんの反応やいかに?

   その他プレゼントしたものは、相変わらずファンデーションやチークなどのお化粧品、そして香水。これが一番喜んでもらえる品物です。ホームの食堂に降りていく際も、部屋着から外着に着替え、きちんと白粉とチークそして口紅をつけているおばあちゃんですから。

   ちなみに彼女曰く、「エっ、90代なのにまだお化粧するんですか?」という台詞、これほど心傷つく野暮な台詞はないそうな。高齢の女性は女を捨てて当たり前、という失礼極まりない発想ってことです。私も深く納得しました。若い頃に美しさが際立っていた人だからこそ、幾つになっても出来るだけ綺麗でいたいと願うのは極当然な女心なのだと。そして、綺麗でいようという気力こそ生きるための活力になるのだと。

   おばあちゃんを見ていると、ハッパをかけられる気持ちになります、30代ごときでお化粧をめんどくさがったりするなんて、とんでもない話なのね……。

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フランスの田舎のお稽古事事情



   先月からお菓子教室に通いはじめました!とは言っても、パリのお教室なので不定期参加にさせてもらってますが。こうして同じ先生にきちんと継続して教わるのは実にン年ぶり。久しぶりの充実感(紹介してくれたK.Eさん、ありがとう)!


習ったお菓子その1、「いちごのシャルロット」。華やかでいかにもフランス菓子然としてます。

   教室といえば、先日こちらのコメントでこんな質問を頂きました。「バスク旅行に行く予定ですが、地元に料理教室はありますか?」。素っ気無いようですが、答えは「ありません」。私も来仏当初は、地元の人に尋ねたりして探していたのですが……。本当に見つかりません。

   日本やパリにはあんなにあるのに、なんでここにはないわけ!? 地方暮らしって損だワー、と恨めしく思ったこともあります。が、この土地の地味で堅実な暮らしぶりに感化され始めると、諦めにも似た理解の感覚を持つに至りました。日本が、パリが、特別なのよね……と。

   何年か住んでみて私なりに分析したその理由。まずは、優雅な専業主婦の数は少ないです。シビアに言ってしまうと、経済的にも時間的にもお稽古事に費やす余裕ある人は意外に少ないってこと。料理=家事の1つを習うなんて、非常に贅沢なお遊びなんですね。

   あとは、料理や味に対して、フツーのフランス人はフツーの日本人ほど貪欲じゃない気がします。悪く言えば保守的、良くいえばとても節操がある。隣国イタリアの料理ですらあまり普及していない点からいっても、この貞操観念(?)はある意味尊敬に値すると思う。

   かく言う私は……良く言えば好奇心旺盛、悪く言えば節操がない日本人代表の1人です。だって、いっつもガトーバスクでは飽きてしまうし、シャルロットやマカロンもいいけど、バームクーヘンだって素敵だし、ウィーン菓子のクラッシックなおいしさも捨てがたい。そして、自分でも作ってみたいという願望がある。この気持ち、「お仲間」の方にはきっと分かっていただけるでしょう。


習ったお菓子その2、ビスコッティ。実は手作りものは初めて、美味!

   日本は、ありとあらゆる文化圏の食べ物が手に入るし、お教室や学校に行けば技術もしっかりと教えてもらえるスゴい国だと思います(手間とお金を惜しまなければ、という条件つきですが)。日本人の研究心、器用さ、勤勉さの賜物ですね。これは、食の国と呼ばれるフランスの地方の実態を目の当たりにするからこそ、感じることです。

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モノが文化を語る、フランスのジャム用グッズいろいろ



   フランス人の食卓に、ジャムがいかに欠かせないものか。ジャム作りという家事が庶民の楽しみとしてどれほど根付いているか。これを実感できる場所は4つあります。

   1つ目、言わずもがなのジャム売り場。さすがに種類が多いです。1つをじっくり選ぶっていうよりも、大雑把に数種類をぼんぼん籠に放り込んでる姿をよく見かけます。消費ペースは日本人の数倍のはず。

   2つ目、書店や図書館の料理本コーナー。ジャム本の多さは、日本の比ではありません。お菓子作りとは別個のジャンルとして親しまれているのが分かります。


ジャム作りをきっかけにハマったもの其の1、古いジャム瓶収集。形、底面のデザイン、ガラスの色、気泡の入り方。どれも個性的で愛着が湧きます。

   3つ目は、スーパーのジャム用品売り場。これがジャム文化の濃さが一番あらわれている所かなって、思います。作るための道具だけではなく、保存アイテムが充実している点が特徴です。サイズ・密閉方式いろいろな保存瓶。そしてセロファン、固形パラフィン。初めて目にしたときは「なにコレ?」だったのですが、自分がヴィンテージの瓶を使い始めて納得。古い瓶には蓋がないので、セロファンやパラフィンを使って密閉させるわけです。


蓋の代わりをするセロファン・シート。ラベルシールとゴムがセットになって売っている。


こちらは固形パラフィン。鍋で溶かし、ジャムの上に流し固まらせることで密閉します。ヴィンテージ・ジャム瓶での長期保存には不可欠。

   ジャム用品売り場を眺めていて面白いのは、土地柄・客層によって充実度に差があることです。若い共稼ぎ夫婦などで賑わう大型店よりも、年配世代が平日にちょろっと買物するようなご近所スーパーの方が品揃え豊富です。我が家から徒歩圏内に、買物欲を失わせるようなシャビーなスーパーが1軒あるんですが、ジャム用品コーナーだけはすごい充実ぶりでなんだか微笑ましい。

   そして最後は、朝ごはん風景。皆さん、ぺたぺた塗るというよりも、こんもりのっけて食べていて、見てると思わずニヤニヤしてしまう。義父にあげたさくらんぼジャム(500g瓶)、1週間後には空瓶が戻ってきた! 彼に言わせると、「ジャムがなければ朝ごはんなんて食べてられっか」ということだそうです。


シール好き、この年になって再燃の兆し! ジャム作りをきっかけにハマってしまったもの其の2、はラベルシールです。

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コンフィチュールvsジャム、ことばの不思議



   「コンフィチュール」って言葉、日本にすっかり浸透しましたね! 2000年頃は、まだコの字も出現していなかったと思うのですが。

   今やフランス直輸入コンフィチュールが売られたり、コンフィチュール専門店もあるご時世。と、こうして書いたりする分にはいいのだけど……。実際に日常会話の中で「コンフィチュール」と臆面もなく言えてる人ってどれくらいいるのだろう?と、個人的に非常に興味あり。うーん、私は口に出すのはちょっと抵抗あり、です。ジャムはジャム、ですから!

   昨年いがらしろみさん(鎌倉でジャム屋さんをやっておられます)とお会いした時も、この話題で盛り上がったのであります。ろみさんの台詞で印象に残ってるのは、「コンフィチュールって言葉がひとり歩きしているみたいなんですよねぇ」。ひとり歩きって言葉、すごく的を得ているなって思いました。

   コンフィチュールっていうと、数種類の果物を組み合わせたり、リキュールを入れたり、高級感があったり、とにかくモノ珍しい味を連想してしまう人もいるらしく。おそるべし、フランス語マジックですね。「でも、やっぱりジャムはジャムよね!」と2人で頷き合ったのでした。


ジャム作り、一番大切なのは保存方法。差し上げた人がすぐに食べてくれるという保障はないので。きちんと行えば室温で1年以上だって余裕です。


開封したら、アンティーク瓶に移し変えて冷蔵庫で保存。当たり前だけど、アンティーク瓶はジャムを入れたときに一番見映えがします。

   次回、「コンフィチュール」ならぬ「コンフィ」のご紹介です。

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満足感は苺のショートケーキ並、な苺のデザート



fraises au sucre「苺の砂糖がけ」
fraises à la crème chantilly「苺の生クリームがけ」
この季節、あちこちのレストランで立派な一品として供されるデザート。前者にはセルフ式に砂糖壷がドンと添えられ、後者には生クリームがもわもわっと絞られて登場します。素材がおいしくなきゃ面目丸潰れなデザートゆえ、いちごは露地栽培のおいしいもの、クリームは注文ごとにその場でちゃんとホイップしたものっていう条件付きですが。


ようやく先週からバイヨンヌの市場にもお目見えしました。バスクの農家ではGariguettesという品種が主流。酸味・甘み・水分のバランスが絶妙。


生牛乳から取った自家製生クリームに砂糖小さじ1杯を入れて泡立てる。粘度のあるホイップクリームが出来上がります。

   今でこそ条件反射的に注文している私ですが、はじめの頃は密かに驚いたもんです。家の食べ方と思っていたものが、店でイッパシのデザートとして出されるとは! 生地だクリームだソースだの、プロの技術が数倍かかっているほかのデザートたちの立場は?と。ついつい手間量・仕事量なども想像してデザート選びをしてしまうのが、お菓子作りを少々嗜む人間の悲しい性でして……。

   でも、フランスで何度か苺の季節を迎えてみて感じたこと。それは日本の苺とフランスの苺は、おいしさのポイントが違うってこと。なので必然使い方が違ってくるってことでしょうか。日本の苺は思わずお菓子にも使ってみたくなるおいしさだけど、フランス苺はお菓子にするまで待ってあげられない、早く丸ごと食べてあげなきゃ申し訳ない気分になるイチゴなのです。

   で納得。「いちごのお砂糖がけ」と「いちごの生クリームがけ」は、素材頼みの手抜きデザートなんかではなく、非常に理にかなったデザートであります。


パリのフィリップ&ジメナ宅にて。お邪魔する度にサダハル・アオキのケーキを用意してくれるお心遣いは涙もの。しかも、イチゴのショートケーキ! 日本人の私以外は、あまり興味なさそうでホッ(フランス人はチョコレート系に群がってました)。

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絶対ハマる! バスクの羊のミルク・デザート「マミア」



   バスク暮らし、最初の2ヶ月で私は3キロ太りました。我が人生最速ピッチな太り方に、自分でも目を丸くした! この頃、お菓子作りは再開していなかったし、外食の回数だって今よりずっとおとなしかったというのに。

   太った原因の見当はすぐについた。チーズとミルクのせいでしょう、と。犯人は牛さんではなく、バスクの羊さんです。チーズ農家でチーズを大量買い、お昼はそれとバゲットで簡単ランチ、デザートには「マミア」という日々……。そりゃあ太るはずです。

   「マミア」。誰もが発音しやく、ママンとマミーを足して2で割ったような、この甘ったるく郷愁をそそるネーミング。バスク語です。フランス語では Caillé de lait de brebis「羊のミルクの凝乳」。スプーンですくえる、ぎりぎりのやわらかさ。おぼろ豆腐のような食感です。

   マミアの一番のマミアらしさは、その香り。ちょっと気恥ずかしくなるほど乳の香りがします。でもそれが決して嫌味な乳臭さではなく、なんだかとても心地よい匂いなのです。牛乳を温めたときのあの豊満な匂いは実は苦手な私でも、マミアの匂いは難なくクリア。「マミア」という音の響きの乳臭さに最初はたじろいだものの、初めて口にした時からこの味と香りの虜になりました。


マミアの友は、お砂糖かハチミツ。人によって好みが分かれるところです。私は昔はハチミツ派でしたけど、今はすっかりお砂糖派に転向。ふるふる&じゃりじゃりのメリハリが最高です。


バスク住民の台所には、一家に最低10個は溜まっているんでは?と思われるマミアの空き瓶。文房具立てにしちゃっているって人も何度か見かけました。

   フランス側スペイン側どちらでも、魚レストランや郷土レストランで必ずお目にかかれます。もうお腹がはちきれそう。でも甘いものひと口食べたい。そんな時にもするする口に滑り込んでいくデザートです。

   バスクのスーパーなら、どこでも売ってます。プラスチック容器入りのエセ(?)もありますが、ホンモノは必ず陶器入りということをお忘れなく。ミルクをただ凝固させただけ、だから賞味期限の短さもマミアの特徴の1つなのです。ホテルの朝食、またはカフェで砂糖の袋をこっそり拝借しておいて、パラリと振りながら食べてみてくださいね。

   ちなみに、その後チーズとマミア狂いを卒業したら、私の体重はすんなり元の数値に戻ってました。羊のミルクってよっぽど乳脂肪が高いんでしょうかね?


羊ミルクと凝乳液が運ばれる。液を投入、待つこと3分。ふるふるの出来たてマミアが味わえるレストランもあり。

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真冬の甘い保存食つくりその2
「オレンジの丸ごとコンフィ」



   前回ご紹介の「オレンジのビター・マーマレード」と同時進行で、「オレンジの丸ごとコンフィ」をつくりました。真冬の大事なお菓子行事の一つであります。

   作る作業自体が好き、そのまま食べてもお茶請けになる、お菓子やデザートに応用できる。と、3拍子揃っていて、私にとって人一倍思い入れが強いお菓子素材。よって今日から数回にわたってご紹介していきます。しばらくオレンジ色の画像が続きますが、よろしくお付き合いの程を……。

   普通のオレンジ・ピールとの違いは、皮だけでなく果実も丸ごと使うところ。皮のほろ苦さに果肉のみずみずしさもプラスされたおいしさになります。そして皮の適度な固さに実のねちねちっとした感触が合わさって、噛みごたえも二重に楽しめます。


つやつや輝くオレンジの輪切りコンフィ。お菓子などに使うときは、前もって網の上にのせて充分にシロップを切っておきます。


こちらはくし形切りのコンフィ。こういう保存食作りが好きだと自然、ガラス瓶に興味が出てくる。骨董屋で買った柄つきの古い瓶(60年代もの?)に入れると、透かし具合がいい感じに。

   日本でもオレンジや甘夏の皮でオレンジピールを作ってはいましたが、フランスのショコラティエで輪切りコンフィを目にするようになって以来、私もすっかりこの「果実丸ごと派」に転向しました。

   丸ごと派になった理由のもうひとつは、バスクという土地柄にも関係あり。お隣スペイン産のオレンジが、おいしい。そしてとんでもなく安い。バンバン使わないと損だな、というケチな発想が湧いてくるのです。


もちろんオレンジ並木道の下を歩くと、柑橘の香りが漂っていました。

   こちらは数年前に南スペイン旅行をした際の、とある街角のオレンジの街路樹。街路樹がオレンジの木だったのです、街路樹が! わたしはすっかり感動して、建造物の見学なんかそっちのけでひたすらオレンジ並木道を歩きました。当然八百屋さんでは、オレンジがびっくりしてしまう大きさのズタ袋に入れられて売られていました。

   この光景が目に焼き付いて以来、ますますオレンジのコンフィ作りが好きになったような気がします。次回、作り方をお届けします!

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「ガレット・デ・ロワ」、バスク流な香りつけとは?



   カフェグローブ読者のみなさま、あけましておめでとうございます。ひきつづき「バスクの砂糖壷」、発信させていただきます。今年もどうぞよろしくお願いします!

   さてさて、こちらはようやくクリスマスムードが去ったところです。イブが終わると同時にがらっとお正月モードに落ち着く日本と違って、こちらは年末までクリスマスムードをずるずるとひきずります。クリスマスマーケットは年末まであるところが多いし、お菓子屋さんではクリスマスケーキが堂々と(叩き売りではなく)売られ続けます。

   ブッシュ・ド・ノエルとバトンタッチするかのように、「Galette des Rois(ガレット・デ・ロワ)」が登場し始めました。日本でもすっかり有名なお菓子ですね。クリスマスケーキは手作り派っていう家庭がまだまだあるでしょうが、ガレット・デ・ロワは買う人の方が圧倒的に多そうです。とにかくこの時期、どこのお菓子屋もパン屋もこのお菓子が山積みになります。


PAULのガレット・デ・ロワはまだ試食したことありません。こういう全国展開の店の場合、香りはやっぱりラムに統一しているのかな?と興味あり。

   私はガレット・デ・ロワが好きっていうよりも、このお菓子で溢れかえるお菓子屋、そしてそれを買い求めるためにフランス人が列をなしている様子を眺めるのが好きです。お菓子がお菓子という存在以上に、宗教、暮らし、行事に溶け込んでいるのがよーく分かって心温かくなります。

   伝統菓子なので地方によって香りつけが違ってきます。私はラム酒入りなら大歓迎なのですが、ラムばかりとは限りません。アーモンド・リキュールを入れるところも多いし、バスクのガレット・デ・ロワはPastisパスティスというアニス酒で香りつけしているものの確率高し。アニスの香りが鬼門である私にとっては、こうなると涙が出そうなほど辛いお菓子であります。

   よそのお宅に招ばれた際には失礼にならぬよう、「お腹いっぱいなので(これも本当だけど)うすーくうすーく切ってください」とお願いすることを、ようやく去年あたりから身に付けました。後で苦労するくらいなら「最初から意思表示」、大切ですね。


おみくじのように入っている陶器のフェーブ。コレクターではありませんが、気に入ったものは取っておいてあります。去年のガレットに入っていた「アヒルのおばあちゃん」です。

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粉雪をまぶした三日月クッキー、「ヴァニレキプフェル」



   「Vanillekipferl(ヴァニレキプフェル)」を作ってみました。とても有名なオーストリアのクリスマスの小さなお菓子、ご存知の方や食べたことある方も多いと思います。

   作ったのは実は今回が初めてです。作りたくなった理由は、このお菓子がクリスマスを迎えるまでの準備期間に作られるお菓子ってことを知ったから。クリスマス当日のとっておきのケーキも素敵だけど、待つあいだにゆっくり楽しむためのお菓子っていうコンセプトに何だかグッと来ちゃったのであります。


バニラとレモンの香りのおだやかなおいしさ。


棒状にまとめた生地を輪切りにして、それを紐状にのばして三日月形にします。

   シンプルに白一色なところも今の気分にぴったりでした。いわゆるクリスマスカラーの赤&緑はバスクカラーでもあるわけで、年中見てすっかり飽きてしまっているせいかも?


生地の中にも、仕上げにも粉砂糖をつかいます。

   さてさて、明日はイブですね! 皆さんいろいろな過ごし方をされることでしょう。家族と過ごす人、友だちと過ごす人、カップルで過ごす人。私はもちろんどっぷり家族派、です。料理(七面鳥料理)は義母が担当、お菓子(クルミのお菓子)は義祖母が担当。そして私は手伝うフリだけしてあとは飲んで食べるだけが仕事の人と化してます。

   でもクリスマスの料理を担当するなんて30年早い、お菓子を任されるなんて60年早いってこと?と、このベテラン女性2人を見ていると痛感してしまいます。文化と家庭のしきたり・伝統が詰まったヨーロッパのクリスマスには、簡単には真似できないホンモノ感があります。日本のお正月の過ごし方、日本の御節料理がそうであるように。

   何だかヴァニレキプフェルからだいぶ脱線してしまいました。うーん、つまり何を言いたいかっていうと、クリスマスは宗教的な祝日という点をのぞけば日本のお正月にも通じる大事な家族儀式ってことですね(その代わりと言ってはナンですが、大晦日は友だちとパーっと発散する予定)。

   それでは皆さん、素敵なクリスマスをお過ごしください!

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フランスのハチミツ、地方によって香りいろいろ



   パリからの帰り道、ポワトゥ地方の蜂蜜農家へ立ち寄りました。ここ2年ほど、我が家のハチミツはコレです。

   出会いは、いつも途中泊する宿での朝食でした。普段はあまりパンを食べない私なのでありますが、ここのホテルの朝はハチミツを味わいたいが為にバゲットがバクバクすすむという異常事態が発生。何回目かのときに思いきって宿の御主人に仕入先を聞き、こちらの農家を教えてもらいました。


ガレージ横の小さな部屋がハチミツ販売スペース。ハチミツ7~8種類、それにプロポリスなども売っています。

   ハチミツは産地や花の種類、そして当然ながら生産農家によっても味は違ってくるのが普通です。こだわり始めたのは、そうしようと思ったからではなく、フランスのハチミツの種類がとても多く、それぞれ個性的だから。私は植物の香りの好き嫌いがはっきりしているため、ハチミツの好き嫌いもはっきりしてしまうわけです。

   たとえばプロヴァンスのラベンダー・ハチミツはどうも石鹸を彷彿させられてクラクラしそうになります。バスクのひまわりハチミツはひまわり油みたいな匂いを感じて、ちょっと苦手です。栗のハチミツをトライしてみたら、香りはOKだったけど、味的には何度も口にしたいと思うには至らず……。

   そんな私のハチミツ遍歴に終止符を打ってくれたのがこちらのハチミツです。Miel de Printemps「春のハチミツ」といいます。名前のごとく、春のいろいろな花のハチミツをミックスしたもので、ブレンド具合がここの農家ならではの味わいになっています。おだやかなアイボリー色、スプーンでタラタラ~ではなくってナイフでさくっと切り取るバターみたいな固めのテクスチャー、そしてクセのないやさしい香り。私にとって理想的なハチミツです。


左からアイボリー色の「春のハチミツ」、今回ちょっと冒険して買ってみた Miel de Bourdaine「クロウメモドキのハチミツ」。クロウメモドキって何科の植物なのでしょう?


「お得意様カード」も発行してもらいました。5キロお買い上げごとに500gプレゼント、だそう。

   お菓子に使うこともたまにありますが、ハチミツはやっぱり毎日ちょっぴりづつ口にするのがおいしく、そしてからだにも良さそうな素材です。

   すっかり気温が低くなってきた今日この頃、冷え性と風邪予防にせっせと飲んでいるのは、ハチミツ生姜ミルクティとハチミツレモンティです。どちらもからだが芯から温まります!


そして定番のヨーグルトにも。友人に密輸してきて頂いたカスピ菌、がんばって続いています。

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「朝ごはん」でおもてなし。そのコツは?



   私のお菓子ノートには、「朝ごはん」のカテゴリーがあります。なぜなら我が家はお客様を迎えての朝食の機会が多いから。そして残念ながら、歩いて行ける近所にコレぞっていうパン屋がないのも理由のひとつ。

   自分の旅の楽しみの一つがそうだから、はるばるバスクに遊びに来てくれる家族友人にも「朝ごはんでバカンス気分」を味わってもらいたい。和食派の人、トースト&コーヒー派の人、それにドリンクだけ派の人。みんなそれぞれ好みや主義によってルーティン化されているのが朝食。だから旅先でのこんな目先の変った朝ごはん、結構喜んでもらえます。


友人さっちん撮影、外資系監査会社お勤めのリアルキャリア女子お二人を迎えての朝食風景。焼きたてスコーンにジュレやジャム、さらには彼女たちがパリで買ってきたジェラール・ミュロの焼き菓子……。これぞ「朝ごはんごっこ」な朝ごはん。

   朝ごはん用のお菓子は、粉の香りが生きていて、甘さほんのりなものが基本。スコーン、パンケーキ、果物のオムレツなど。小麦粉、卵、牛乳、ヨーグルトの常備材料だけで作れて、もちろん用意が簡単なもの。準備が簡単なお菓子であればあるほど、ほんわりした温かさが肝、冷めたらおいしさが半減してしまうのも真実です。だから、焼き上げタイミングにだけは気を遣います。

   もちろんお客様の日以外だって、たまにこんな朝ごはんを用意するのは気分転換に有効です。ウィークデーはさすがに無理だけど、ゆっくりしたい週末の朝にでも。気持ちよく朝を迎えた日、皆さんもお試しを……。

次回、朝ごはん向きお菓子レシピをご紹介します!


フードプロセッサーであっという間のスコーン作り。食器、飲み物、人……、全て準備が整ったところでオーブンへ。

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秋のお菓子行事、マロン拾い



   春の筍と秋の栗。笑っちゃうくらいに日本的な食材のお宝が義両親宅の庭に眠ってます。5年前までは「スーパーで選ぶもの」と思っていた私ですが、いまや出刃包丁・手袋・ビニールの三点セットを握ってガサガサと裏山に分け入る姿(なんかコワい……)もサマになってきたみたいだし、目利きも出来るようになりました。

   この栗の木、私がやってくるまでは忘れ去られたように毎年ただ落ちていく実が放置されていたのだとか。義母はショコラティエで売ってるマロングラッセには目がないけど、生栗から作るほっこりしたおいしさにはあまり興味がないようで。数あるお菓子素材の中でも別格扱いなほど栗好きな私にとって、ちょっと耳を疑ってしまうような話。一人嬉々として収穫している私は半分感心半分呆れられている模様です。でもきっと栗の木さんだって喜んでくれているハズ。


撮影時期9月。ビルの3階建て高さくらいある巨木です。不調な年もあったそうですが、健康を取り戻して健気に実をつけてくれています。ずっと元気でいてね、と願わずにはいられない。

   若草色のイガが茶系に染まり、自らの実の重さに耐え切れなくなってきた頃が、栗拾いの絶好のタイミング。落下が始まったら、出来るだけ日をあけずに拾って実を取り出します。地面に放置されている時間が長ければ長いほど、虫食い率が高くなるし栗の実の新鮮さが失われてしまうのです。


まぶしい朝日に照らされて輝く栗の実。熟れて新鮮な栗は、パカっと簡単に取り出すことが出来ます。トゲの痛さは強烈なので、工事現場用のゴム手袋が必需品。

   落下のピーク時になると、拾ってるそばからガサガサッとすごい音をたててイガが落ちてきます。音がした方向へ走り寄って、取り出すほやほやの栗の実は、感動的なほど美しい。すべすべしっとりのマロン肌、そしてどっしりとした充実感を指に感じます。


2時間くらいの栗拾い労働の成果がこちら。ぷっくり膨らんだ栗の実って本当にかわいいです。

   日本にいる時は甘露煮を丁寧に作るのが秋の恒例お菓子行事でした。今は収穫量が量だけに、いちいち皮をむいていたら腱鞘炎になりかねないので、一気に大鍋で茹でる方法にシフト。柔らかく茹でた実をスプーンでくり貫いてからストックしてます。

   ところで、お菓子業界に「和栗」「洋栗」という言葉があるようですが、栗の洋と和の違いってそんなにある?と正直疑問に思う私です。店で売ってるグラッセとかペーストなどの加工品の味は、確かに洋的な「濃ゆさ」がありますが、生栗、少なくともバスクに育つこの1本のシャテニエ(栗の木)のほくほくな素朴感は、祖国のそれと全くと言っていいほど似通っているのですが。もちろん栗ごはんにしても、違和感ゼロです。


くり貫いた状態で冷凍。この作業すらめんどくさくなってしまったときは、茹で栗丸ごと状態で冷凍。蒸かし直して裏ごしすれば、お菓子に必要なほっくり感は充分甦ります。


くり貫いた身に牛乳と砂糖、時にはバニラを加えて煮上げるマロンペースト。市販品より「和栗」な味に仕上がります。

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お菓子の香水、リキュールの新顔



   以前「お酒はお菓子の香水」なんて書きましたが、夏の間にこの香水コレクションに5つの新顔が加わりました。当初はガラガラだった我が家のリキュール棚も、いまやフル状態に近づきつつあります。

    新たな顔ぶれのうち3本は旅行中に自分で買い求めたもの。そして2本は、我が家を訪れてくれた方からお土産で頂いたものです。


国道沿いに杏販売のスタンドがたくさんあるほどオーストリアは杏の産地でした。そんな光景の想い出にぴったりの「杏のリキュール」を発見。パッケージの遊び心が心ニクい!なんと薬品のアンプル容器に入れてあるんです。


アルザス旅行の直後に我が家にやってきたフィリップ&ジメナ夫妻のお土産は「りんごのオー・ド・ヴィ」。マットな質感の琥珀色のボトルがこれまた美しいのであります。

   旅とお土産リキュールの素敵なところは、ボトルを眺める度に、そして香りを嗅ぐ度に、想い出まで味わえるところ。飲むためのお酒というよりも香りを楽しむためのお酒ならではの、不思議なパワーです。買った場所とか、お土産をくれた人と過ごした時間がお酒にしみ込んでいる、というか。ちょっとキザに聞こえるけど、お酒にはそういうロマンチックな面も確かに潜んでいる、と思います。


Cafeglobeのアオキご夫妻に頂いたシングルモルトの「アイリッシュ・ウィスキー」。香りを楽しむための専用グラス付きです!


オーストリアの山の中の修道院(目的はお手洗いを借りることだった……)の売店で見つけた「ワイルドフルーツのリキュール」。ブラックベリー、フランボワーズ、ブルーベリーのミックスリキュールです。

   スーパーや酒屋に並んでいる有名・定番リキュール以外にも、世の中にはまだまだたくさんの美味なる香りのお酒がたくさんあるはず。これからも、香りとの偶然の出会いを楽しんでいきたいです。


イタリアン・リキュールといえば有名な「アマレット」。どこでも売っているとはいえ、そのお国に来るとなぜか欲しくなってしまう性癖でイタリアのスーパーで購入。杏の種から取った独特の強い芳香。

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メイキング・オブ「お菓子の本」、本作りの舞台裏



   先日、お菓子の本の撮影を行ってきました。

   「前作と雰囲気を変えてみよう」というアイディアのもと、今回選んだ撮影場所はバスクの山奥深く入ったところ。詳細地図上でも一番小さく載っているSouraideという小さな村です。

   辺り一帯に見えるのは山山山、緑緑緑……。牛乳1本、バゲット1本買いに行くのにも、車を15分走らせなければいけない人里離れた土地。そんな所にぽつねんと建つ一軒家を丸ごと借りて、泊り込みでの集中作業。まさに「お菓子合宿」な数日間でありました。


遠くに見渡せる隣村の丘と、斜面に広がる広大な庭。洗濯物を干せば、まるで洗濯洗剤のコマーシャルみたいなシーンの出来上がり。

   合宿初日の大仕事は、お菓子の材料・道具の搬入。鍋、フライパン、たくさんのボウルと数々の道具、膨大な量の基本材料(牛乳6リットル、卵60個エトセトラ)。そして引き続き、編集者さんが調達した食器、テーブルクロス、小道具などの搬入も。必要なものが揃ったら、私の仕事はひたすらお菓子制作に集中するのみ。あとは、本のイメージに沿ったスタイリングが作りこまれ、撮影がされていきます。


お菓子合宿の「トレーニングルーム」はこちらの台所。スペースがたっぷりあったし、電気ではなくガスコンロだったので助かった。

   「普段のお菓子」と「本のお菓子」の違いを一言で表すとしたら「作りこみ具合」。出来上がったお菓子をどう演出するか。撮影場所、食器、添える小道具、布、そしてその選び方と見せ方によって、ガラリとお菓子の雰囲気、メッセージが変わってきます。お菓子の作り手がいて、それを一つのイメージに作り上げていくプロがいる。いろんなエッセンスの融合が一冊の本になります。世の中には既にたくさんのお菓子本が存在するけれど、次々に新たな本が生まれる理由のひとつだと思います。同じお菓子、同じレシピだろうと、それをどういう絵心で捉えるかで全く印象の違うお菓子の世界が生まれるはずだから。


スタイリング、写真、編集・レイアウト、さらにはおいしい和食作りまで、と一人何役もこなしてしまう森さん。そのパワーとスピード感は驚きです。


布小物の待機ルーム。クロス類は、すべて「バスクの布」で統一しました。折ジワを消すためのアイロンがけも必須な仕事。

   去年に引き続いて2冊目のお菓子の本の撮影でした。1冊目の時ほどの緊張こそなかったけど、まだまだ修行が足りない面を痛感した今回のお菓子合宿。とりあえず無事に終了してホッと胸をなでおろし中です。

   仕事の余韻はひとまず忘れ、今週は自分の台所でゆっくり気ままにお菓子を作る喜びに浸りたいと思います!


暖炉がある食堂。出来上がったお菓子はひとまずこちらに移動して、撮影待機。

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黒砂糖のおいしさ カソナードvs沖縄黒糖



   皆さんの「砂糖壷」には何色の砂糖が入ってますか? 我が家が常備している砂糖は、白のほかに、ベージュ1色、黒2色。カソナード2種類と沖縄の黒糖です。お菓子作りには圧倒的に白い砂糖の出番が多いとはいえ、黒い砂糖にしか出せないおいしさも捨て難く。

   クレームブリュレのぱりんと割れるキャラメルはカソナードならではの香りだし、和のデザートには黒蜜のコクがたまらなくおいしい。精製度が低い分、黒い砂糖には独特の旨みがあります。それに、「ミネラル豊富」という健康キャッチフレーズにも心くすぐられます。


昔から日本の家族がお取り寄せしている、沖縄黒糖。このじんわり感はカソナードにはない旨み。沖縄の食事処の真似をして、小さな壷に入れてお茶請けにしてます。

   白い砂糖は純度が高いので、どこの国で買おうとほとんど同じもの。日本のグラニュー糖とフランスのグラニュー糖にはもちろん大した差はありません。その点、黒い砂糖はサトウキビの原料に近い状態なので、生産地や加工した場所によっても風味や粒子の大きさが変わってきます。沖縄黒糖とひと口に言ってもいろんなタイプが存在するけれど、カソナードも然り。メーカーによって様々だったり、お隣の国ベルギーで買い求めたカソナードはフランスのとはびっくりするほど違ったものであったり。ある意味、白い砂糖より奥が深く、あれこれ試してみるのが楽しい素材ではあります。


「ベルギーのカソナードは旨い!」というフランス人の知人の薦めで、ブリュッセル訪問の際にもスーパーへと走りました。フランスのそれがパラパラと乾いた感触なのに対して、ベルギーのカソナードは日本の三温糖みたいな「しっとり」感を持っています。

   ただし、おいしいからといって白い砂糖の代用として使うことはあまりしません。たっぷり使うと、コクがクドさに、香りがクセに感じられてしまいます。白い砂糖の1~2割くらいで代用してみるとか、焼き菓子の上にぱらぱらっと振るのに使うとか。黒砂糖はあくまでもアクセントに、というのが上手な使い道って思います。


友人に教えてもらって以来すっかりはまっている「豆乳ゼリー」。カソナードと沖縄黒糖両方でトライした黒蜜ですが、軍配はもちろん沖縄黒糖の方に上がります。蜜にしたときの味のパンチが全然違う。

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トウモロコシの粉を使ったお菓子つれづれ



   真夏らしい風景のひとつ、トウモロコシ畑。日本でも見たことがある懐かしい景色が、バスクにも広がってます。強い陽射しの下、濃い緑のつやもよく元気よく育ったトウモロコシには、大地の生命感がたっぷり。


麦わら帽子が似合いそうな、真夏の風景。

   こんな景色に影響されてか、最近トウモロコシを使ったお菓子や料理が気になっています。トウモロコシを挽いた粉で作る、料理、お菓子、そしてパン。どれも古くから伝わる極シンプルな食べ方なので、素っ気ないほどの味わいが逆に新鮮に感じられるようになりました。

   いつもの粉屋さんで、小麦粉と一緒に買ってきたトウモロコシの粉。まず作ってみようと目論見中なのが、先月ベネチアでも何度か口にした「ポレンタ」です。粉と水を練ってぐつぐつ煮るという、料理の原点のような料理です。北イタリアのスペシャリテとはいえ、オリジンはローマ時代にまでさかのぼるという料理なので、ヨーロッパのあちこちで作られています。もちろんバスクでも。


お祭りで売られていた、とうもろこしの粉で作ったバスクの伝統的なパン「メテュール」。お店の人のペイザンヌ(農民)・ルックと、ギンガムチェックのクロスがぴったりでした。

   ぽってりと固まったポレンタを切り餅サイズに切って、焼いたり揚げたりして料理の付け合わせに。もちもちした食感が肉料理によく合います。初めて食べた時は、実は特においしいとも思わなかったけど、あら不思議、一度目よりは二度目、二度目よりは三度目、と口にする度に段々と好きになってきました。

    地元の図書館の本で調べてみると、フランス南西部にはこのポレンタがベースの古いお菓子レシピが幾つか見付かりました。「粉と水を練ったものを焼く」。どこの国でもそれぞれの粉を使って作られている庶民のお菓子。華やかなフランス菓子とは違う、こういうペイザンヌ菓子の素朴なおいしさも見つけていきたいと思ってます。


当たり前だけど、「インスタント・コーンスープ」色してます。これがあれば、クリームコーンスープも簡単に作れるかも(フランスにはクリームコーン缶がないので)?

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使いこなそう バニラの一番だしと二番だし



   前回に引き続いてバニラのお話です。正直、バニラのさやって決して求めやすい素材ではないですよね。もちろん品質や購入先などにも左右されるのでしょうが、2大産地を領土に持つフランスでだって、結構お高めの素材というイメージがあります。エッセンスで間に合わせる人の方が多いというのも確かな実情。

   以前、「私もお菓子作りを頑張ってみる!」と張り切った友人を連れて、バニラを求めに製菓材料店へ出かけたことがあります。しかし、いざその値段(1本1000円近かった)を見て思わず絶句して買わずに帰ってしまった彼女……。確かに、サヤインゲン豆1本サイズ、と考えると非常にお高い。でもでも、バニラは「材料」ではなく「香料」なのです。食べ物ではなくて、香りを買う。そう考えれば決してバカ高い代物ではないはず、なんて私は思うのですが。


冷凍、冷蔵、室温……。バニラの保存方法に関しては、プロのパティシエさんたちですら唱える説はそれぞれ。私は頂いた状態のまま、レユニオン島の竹筒に入れて常温保存です。

   香料として割り切って考えた方が使い方も広がります。香りが残っているうちは、骨のズイまで? 最後まで楽しめます。

   まずは中の黒い粒々を使って、おいしいカスタード系のお菓子を作ってみましょう。言ってみれば、バニラの「一番だし」というところ。

   使ったさやはキレイに洗ってパリパリになるまで乾燥させます。充分に香りが残っているので「二番だし」に活用します。一番効果的なのは、砂糖壷に入れて香りを移すこと。お上品なバニラシュガーが出来上がります。それから、果物のコンポートになど、ふんわりあっさりバニラの香りをつけたいときなども、この二番だしで充分いけます。


バニラシュガーは、コーヒーに入れるのもオススメ!

   さやがある程度たまったら、ミルで粉末に砕いてしまうのも一つの方法。生地に混ぜたり、焼き菓子の上にぱらりとふったり。ここまで可愛がってあげたら、バニラだって本望のはず。そして、お値段払い甲斐のある優秀な香料だってことがお分かり頂けるのでは?なんて思います。


粉末にお砂糖適量を混ぜて、色付きバニラシュガーにしても。

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インド洋の小島レユニオン島からの素敵なお土産とは?



   タヒチ、メキシコ、マダガスカル、そしてレユニオン島。共通項が何かお分かりですか?

   ピンと来た方はきっと私と同じ、バニラ愛好者ですね! そう、どれも世界の代表的なバニラの産地です。南の島々に生息する、このひょろっとした黒インゲン豆みたいな植物こそ、お菓子にうっとりするような芳香を与えてくれる香料です。

   私がここ数年愛用しているバニラは、マダガスカル島の東のインド洋にぽつんと浮かぶレユニオン島産。かつてこの島はブルボン島と呼ばれていたので「バニラ・ブルボン」という名前がついています。この島に在住の知人が毎年お土産に持ってきてくれるのですが、おかげで大切にしつつもいささか大胆に(?)バニラを使える恩恵をこうむっています。

   島の市場では、南国フルーツに混じってバニラが大量に、しかもキロ単位で売られているのだとか。じっくり乾燥させたものばかりでなく、収穫ほやほやのフレッシュもの、少しだけ乾燥させたもの……と段階別に売られているそうです。日本の干物屋さんで「一夜干し」があるのと同じノリかしら?なんて勝手に想像してます。


生バニラがいかに太っているかをご覧に入れたくて、並べてみました。左から、普通に売られているバニラ、「生」バニラ、そしてシャープペンシル。

   先週お土産に頂いたのは、正真正銘の「生」バニラでした。彼女が鞄の中をゴソゴソやっているそばから香りがふわりと漂ってきて、思わず顔がほころんでしまいました。包みを開けてみると、まず驚いたのがその太さ。収穫したてのものはこんなにぷっくり太っているのです。色はまだ黒味を帯びておらず、ツヤのあるこげ茶色。そして触るとひやっと湿っぽい。まさに「植物」な感触がします。


どうせなら目でも鼻でも楽しんでしまおうと、グラスに入れて干してます。ルーム・フレグランスにもなって一石二鳥。

   市場の人からの伝言によると、フレッシュなバニラの乾燥期間は6ヶ月。香りを凝縮させる、そして長期保存させるためにも必要な作業とのこと。これから半年、風通しの良いところに置きながら、じっくりゆっくり自家製の「干しバニラ」を作りたいと思います。

   ちなみに政治的には、レユニオン島はフランスの海外県、そしてタヒチ島もフランスの領土であります。バニラの2大産地を所有しているなんて、本当は手放しで喜んではいけないけれど……「フランスあっぱれ!」。

   次回は、バニラのとことん利用法をご紹介します!


その他のレユニオン特産品はこちら。これまたすごい太さのシナモンスティック、そして歯切れ良い香りの赤胡椒。レユニオンは香りの宝庫のようです。

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ガトーバスク、どっちが食べたい? クリームvsジャム



唐突ですが、みなさんの街には「銘菓」ってありますか? 日本では、広島のもみじ饅頭、名古屋のういろう、上野のお団子などを思いつきますが。

バスクの銘菓といえば、もちろんガトーバスク。「バスクのお菓子」なるネーミングのこのお菓子、地方を代表するお菓子となっています。お菓子屋さんのウィンドウにずらり並べられている様子はちょっとした風物詩といえるかもしれません。


地元のガトーバスクが大集合。フォークの線描き模様もいろいろ。

大きいホールサイズと一人サイズのプチガトーバスク、それから最近ではショコラ・ガトーバスクなんていうのもちらほら見かけるようになりました。チャームポイントはこんがりおいしそうについた焼き色。アーモンドプードル入りのバター生地は、サイドもトップもまんべんなく香ばしい。この色にくらくらときて思わず買ってしまう人は絶対にたくさんいるはずです。


男性こそが甘いもの大好きなフランス人。お菓子大国の底力はそこにあるような気がします。

フィリングは2種類。アーモンド風味のカスタードクリーム入りか、土地の名産黒さくらんぼジャム入り。土地の人にはカスタードクリーム、観光で訪れる人にはジャムが人気みたいです。どちらにせよ、ほろほろっとした生地とねっとりしたフィリングの組み合わせの妙を楽しむお菓子です。

シンプルなお菓子だからこそ、お店や職人さんのそれぞれのこだわりが表れています。毎年催されるガトーバスク祭りでは、地元のお菓子屋さんが勢ぞろいしてコンクールが行われます。地元の有志で構成される審査員はなんと20種類以上のガトーバスクを食べ比べるのだとか! 「フランス人の胃袋ってすごすぎる……」と改めて恐れ入ってしまうイベントなのです。


ガトーバスク祭りでの実演コーナーにて。力強くて、惚れ惚れする手際の良さ!

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香りはお菓子の香水(バニラエッセンスの作り方付)



お菓子とお酒。自分の人生で大切な位置を占めている嗜好品。この二つをおいしく味わうことができる自分の体、一緒に味わって楽しむ家族や仲間の存在、それを享受できる環境に感謝しながら楽しんでいます。

私はお菓子やデザートには必ずと言っていいほどリキュールを加えます。香水と同じで、なくてもいい、でもつけてみるとたちまち甘味に深い趣が出るのが香りの素晴らしいところ。香りの威力ってすごいといつも思うのです。

いちばん大好きなリキュールは、グランマルニエ。子どもの頃に母や叔母が作ってくれていたお菓子には、イチゴのショートケーキですらグランマルニエが使われていたからだと思う。あの赤い瓶の香りは、私の嗅覚においしい香りとしてしっかりインプットされてしまったらしい。クリーム類をはじめ焼き菓子から果物系のフレッシュなデザートまでと、全般的に使える万能リキュール。


我が家のリキュール棚の中身をご紹介……こんな感じです。

その他のお菓子に頻繁に使用するのがラム酒とコニャック。そして登場回数は多くないけどポワール、フランボワーズ、さくらんぼ、コーヒーのリキュールなど。

好きな香りを追求し始めると、お菓子作りの楽しさが広がると思います。同じクリームでも、香りの付け方ひとつでガラリと印象は変わってくる。これはリキュールとはちょっと違うけど、自称バニラオタクな私はフランスの市販のバニラ・エッセンスにお気に入りが見つけられなかったので、自家製を作ってみました。


自家製バニラエッセンス。琥珀色のコニャックが、時間が経つにつれ深い飴色に変貌します。

という訳で、バニラエッセンスの作り方をご紹介します。
父上またはパートナーさんのお酒コレクションの中から、一番高級なコニャック(レミーなどがいいですね)を拝借しましょう。小瓶にコニャックを注ぎ、バニラのさやを漬け込んで数ヶ月放置しておくだけ。コニャックの色が徐々に飴色になってきたら、一度その香りを嗅いでみて頂きたい。クラクラっとしてしまいそうな芳醇な香りがして、絶対にお菓子に使ってみたくなるはずです!


上品なコニャックは、お料理にお菓子にと応用価値大です。

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フランス人と日本人の「おいしい」は違う?



今日は友人宅への手土産にお菓子を焼きました。毎度毎度のシュークリーム。でもこのお菓子はほんとに貴重なのです、なぜって子どもと大人、そして日本人とフランス人、世代と国籍を飛び越えて気に入ってもらえるお菓子なのですから。


絞り出したシュー生地には、上火のあたりをやわらげてふっくら膨らませるために、霧吹きまたは手水をふりかけます。ツンツンとしたツノも指で軽く押さえて形を整えます。

私はこちらでお菓子を作るとき、食べる人がフランス人なのか日本人なのかで全く作るものを変えています。フランス人のほうがかなり甘党……とはいえただ砂糖の分量を増やしたところでフランス人仕様になるかと言えばそうでもないのでありまして。

今の季節、日本人だったら苺ロールケーキでふわふわ気分ってなときでも、フランス人にだったらアーモンドクリームをしっかり敷いた苺のタルトで勝負するべし、という感じでしょうか。


粉砂糖のおしろいをはたいてあげて、完成です。

似ているようで、お互い共感できるようでいて、お菓子に関しての味覚の微妙な違いは確実にあるというのが実感です。フランスのお菓子屋さんと日本のお菓子屋さんで食べ比べてみればその差は歴然としていますよね。でも、だからといってどちらがおいしいかとジャッジを下すのは難しい。大事なのは自分の「おいしい」を持っているかどうかのはず。

みなさんにとってのおいしいお菓子は何ですか?


カスタードを作るため、バニラ(右端にちょこっと見えている黒くて細い棒のようなもの)をミルクに浸しています。バニラも一種の乾物。だから、ゆっくり浸してあげることでじわじわと香りが移るのです。

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春の便りと「レモン色の焼き菓子」 (3月17日)
引き菓子づくりとマドレーヌ (2月17日)
お手本いろいろ、真冬のオレンジデザート (1月13日)
義祖母のレシピノートから。クルミのお菓子 (11月11日)
洋梨のコンポートを使ったデザート (9月30日)
自家製コンポートで、「アンズのチーズクリームタルト」 (7月08日)
わたしのガトーバスク (5月27日)


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