更新日:2010年2月23日

バスク地方の暮らしとお菓子のレシピ「バスクの砂糖壺」


バスク地方は、フランス南西部~スペイン北部に広がる緑と水のゆたかな土地。お菓子とおいしいものが大好きなマテスク里佐さんのオーブンからは、今日も甘くて香ばしいいい匂いが立ち上っています。里佐さんがバスクで出会い・学んだお菓子やお料理、そして人々の暮らしの様子について、レシピとともにお届けします。

文=マテスク里佐
   

私の「臓物料理」入門



   私にとって、フランス料理・肉部門のひとつの大きな関門は「内臓料理」。いまだに手ごわい存在です。

   わが夫はフランス人の中でもとりわけて臓物好きで、メニューに内臓料理を見つければ間違いなくオーダーする人……。「おいしいから、食べてごらん」「これを食べたら、キミも絶対に好きになるって!」私を内臓ワールドに引き込もうとしましたが、あまり効果は出ておらず。

   ただし、例外がいくつかあります。まず、ご存知フォアグラ。あれは好きです。そもそも、フォアグラはフォアグラであって、「内臓料理」というイメージを持ってないですし。臓物の入門編というか、番外編という感覚です。


ペリゴール土産にいただいたフォアグラ。健康面・ダイエット面ではあまりよろしくない食品ではあるけれど、フランス暮らしにフォアグラとのお付き合いは避けて通れない!? 細く長く良いお付き合いをするためには、上質のものをほんの少しづつ堪能すること。これに尽きると思います。


脂肪の塊であるフォアグラ。包丁でスライスしようとすると、べたべたしてキレイに切れません。こんな風に糸を使うと、断面をスパっと切り分けられます。

   でも、数年前に旅先で「フォアグラ御膳」(フォアグラ料理がこれでもか、というぐらい登場したコース)を食べて以来、ちょっと好き度が下がってしまいました。何でもほどほどが大事ですね……。

   あとは、テット・ド・ヴォー(仔牛の頭肉)はまあまあ平気。まあまあというのは、「ソース次第ではおいしく食べられる」というニュアンスです。スープに入って出てくるスタイルは大の苦手ですが、おいしいラビゴットソースが添えてあったりすると、ぺろりと平らげることができます。

   リ・ド・ヴォー(仔牛の胸腺肉)やリ・ド・アニョー(仔羊の胸腺肉)は、内臓ジャンルの中でも私が好き好んで食べる希少なもの。これは、バスクという土地柄のおかげです。羊の地方なので、特にリ・ド・アニョーの品質は秀逸。素材の力&料理の力のおかげで、いつの間にか大好きになっていました。


リ・ド・アニョーを嬉々としてオーダーしている時点ですでに、「内臓苦手」は克服したと言えるかも。『バスクのアドレス帳』でご紹介したレストランArséのリ・ド・アニョー。まわりはカリっと香ばしく、中はとろりとしていて美味です。

   こうして書き出してみてふと気づいたのですが、私が食べられる臓物は上半身(!)限定のようです。お腹から下の部分、つまりは胃袋だとか腸とかは大の苦手。特にロニョンは、ニオイだけでもう駄目。夫が横でおいしそうに食べているのを見てるだけで、「勘弁して……」と思ってしまいます。

   臓物は決して自分で挑戦したりせず、プロが作った料理を食べるのが鉄則だと思ってます。でも、またまた例外あり。わが家で唯一料理する、そして私が大好きな内臓料理がありました! これまた上半身。次回、それのご紹介をしようと思います。


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真冬の献立、キッシュと「マーシュのサラダ」



   真冬の料理っていいですよね。朝からコトコト煮込み料理を作ったり、冬野菜でお漬物を作ったり、お鍋にしたり……。

   ちなみに、わが家でお鍋といえば「鴨鍋」です。鴨&ポワロー葱が主役。日本食材に頼らず、フランスの食材でこそ贅沢に楽しめる鍋!がコンセプト。

   お味は2種類、その日の気分によって選びます。甘辛く仕立てた「鴨すき焼き鍋」か、鴨肉を挽いてダシ仕立ての「鴨だんご鍋」か。いずれにせよ、実家から送られてくる自家製乾燥ゴボウと天然だしパックも必須材料なので、100%フランス鍋ではありませんが(父母よ、ありがとう)!


ポワロー葱とほうれん草たっぷりのサーモンのキッシュ。冬においしいキッシュです。

   オーブン料理も大切な真冬料理です。1年365日私にとってオーブンは必須熱源ですが、冬になるとさらに回転率が高くなります。

   キッシュは週末ランチによく登場します。ここ数年、頻繁に作っているのは「サーモンとほうれん草のキッシュ」。友人宅でとてもおいしいのを頂いて以来、私も作るようになりました。以前ご紹介した「野菜キッシュ」にしても、このキッシュにしても、うちのキッシュは「どこかで食べたおいしいキッシュ」がお手本です。


朝市で量り売りで買ってきます。「おとなふたり分で」と頼んでも、この大量! フランス人を見習って、私ももっとサラダを食べなくては。

   キッシュの横にはサラダが付き物。そして、真冬サラダは「マーシュ」がおいしい! サラダの葉といえば春から夏が旬のものが多い中、マーシュは冬が旬という変り種。青々としたグリーン、小さじスプーン形の丸い葉っぱ、フワリとやわらかな食感が特徴です。

   マーシュはおいしいだけでなく、栄養的にもとても優秀なサラダ葉です。オメガ3脂肪酸(α-リノレン酸、EPA、DHAを含む必須栄養素)の含有率が高く、ビタミンCも豊富。真冬だからこそ、こういう新鮮なグリーンをたっぷり食べるとすがすがしい気分! カラダがきれいになったような気分になるから不思議です。

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師走のおいしいお惣菜、「ブーダン・ブラン」



   ご馳走続きの12月。フォアグラ、トリュフ、ジビエ(食用のため捕獲された野生の鳥獣)といった高級食材が瞬く間に人々の胃袋に納まっていく月……それがフランスの師走です。

   そんなイケイケドンドン(?)の様相があるフランスの師走食材の中、私がこよなく愛するのは
“ブーダン・ブラン”。食材というよりお惣菜ですね。12月らしいお惣菜です。

   数あるフランスお惣菜の中でも、ブーダン・ブランには優しいおいしさがあります。“ブラン”は白。血気盛んな濃色が多い肉製品の中、ひっそり優しげな色。冬の白は視覚的にもほっとさせてくれます。


うちの師走週末ランチといえば、決まってコレ。バイヨンヌの名物シャルキュトリー(ソーセージ、ハム、テリーヌなどの加工食品)の師走限定ブーダン、品質とお味レベルは最高級です! 難をいえば、おいしすぎてすぐに売り切れになってしまうこと。ブーダン・ブランの季節に朝寝坊は禁物なのです。

   鶏や仔牛肉といった脂の少ない白い肉に、卵、クリーム、粉などを加えて腸詰めにしたもの。つまり、練りものです。私が愛してやまないのは、それも理由のひとつかも? 練りもの食品、これまた日本人としてはかなり郷愁をそそられる食品ですから。

   練りものなだけに、質とお味はピンきりです。スーパーマーケットで年中売られてる大量生産モノと、信頼できる店が手作りしてる季節限定モノとは、まったく別の代物。1年中食べられたら嬉しいけれど……わが家では「あのシャルキュトリーの、あのブーダン・ブラン」を師走限定で堪能します。

   慌しい季節は食事準備の時間も惜しくなります。そんなとき、とっておきのお惣菜があれば大助かり。リンゴと一緒にオーブンに入れるだけで、おいしい食事が約束される! ちなみに、リンゴ以外にはドライプルーンとも好相性です。


リンゴ&ブーダンのマリアージュのおいしさは、黒ブーダンと同じく。ワインとブーダンの味が染みこんだリンゴがこれまた美味。「もっと、リンゴを入れれば良かったー」とならないように、たっぷり並べます。


この日料理ワインとして使ったのは、独特の香りを放つアルザスのGewurztraminer。

   さてさて、早くもクリスマスが迫ってきましたね。みなさんは準備や計画はお決まりでしょうか? わが家はイヴのディナーを担当。これから細かい料理献立を立てます。メイン料理は昨年に引き続いて、夫のプラード(雌鳥)料理になりそうです。

   あとは私がアペリティフを数種類用意する予定。あまり張り切りすぎず、でも自己嫌悪にならない程度にがんばること。これが今年のノエル・ディナーの課題です!


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秋のマルシェとお気に入りメニュー



   にわかに秋らしくなってきました。「暑さ寒さも彼岸まで」といいますが……これはバスクの気候にもぴたりと当てはまります。

   さてさて、秋といえば味覚の秋ですね! 夏素材がひとつまたひとつと姿を消す一方で、秋の収穫が登場しています。まずはホックリ系が続々と……カボチャに新豆、そして栗。果物売り場は、葡萄とリンゴが種類豊富に並びます。

   この時期、私が意識的に買いもとめるのはサヤ入りの生豆です。「お豆をもっと取り入れなくちゃ!」と思いつつも、乾燥豆だとつい億劫になりがち。フレッシュの豆なら、気軽です。戻す手間なし、短時間で煮える、おいしいダシ効果あり。いろいろな野菜スープに入れて楽しみます。


初秋のマルシェにて。スイカとカボチャが同時に並ぶ、夏と秋がすれ違う季節です。

   先日、いつも聞いてるラジオのお料理コーナー(シェフが旬素材を使いこなすちょっとしたコツや、お料理ヒントを教えてくれる)から流れてきた、「生豆」ポイント。それは、なんと「新鮮なうちに、サヤから出してそのまま冷凍保存を」というものでした。早速、実行したのは言うまでもなく!

   いわゆる秋の味覚とはズレますが……ちょっとマイナーなお楽しみが、コリアンダー(香菜)。マルシェの馴染みのおじさんが、初秋限定の摘みたてコリアンダーを売っています。彼自身がベトナム料理好きで、半分趣味で植えてるようで。片手で握りきれないほどの太い束が1ユーロ、というお値段も感動です。

   「どんな料理に使ってる?」とお互いのレパートリーを交換して、立ち話に盛り上がりました。おじさんはとにかく「パセリの代わりにバンバン使う!」らしく、「ニンジンのサラダにたっぷり入れて、レモンとニョクマムで」がお気に入りだそうです。

   やはり摘みたてハーブは香りとおいしさが別格! とことん無駄なく楽しみたいので、ベトナムやタイ料理メニューに励みます。サラダや麺類にどっさり、干し海老(これはもちろん日本産を空輸です!)&ニンニクチップス&刻みコリアンダーの混ぜごはん……。これぞ、わが家の“食欲の秋メニュー”です。


りんご、くるみ、栗……秋のお菓子素材ビッグ3のディスプレイ。 「お菓子いっぱいつくろう!」って思わせてくれます。

   日本に帰国するたびに、食材の豊富さとオールシーズンぶりに目を見張ります。フランスに戻ってくると、買い物籠の食材の少なさに愕然……。でも、バスクの新鮮な地野菜や果物に恵まれているのだから、文句は言えないかナと思ったり。少なくとも、旬素材を使いまわす術(使いまわそうと努力する姿勢)はフランスにいるほうが磨かれる気がするのです。

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「生ミルク」のある暮らし、その後



   lait cru(レ・クリュ)、訳して「生牛乳」。わが家の牛乳は、バスクの酪農家直送の無殺菌牛乳です。これに出会い、私のミルク・ライフが激変してから6年ほどたちます。

   ベシャメルソース、カスタードクリーム、カッテージチーズ、クロテッドクリーム……etc。生牛乳からつくる、ミルク・レシピはとてもおいしくて、とても楽しい。これでつくる“濃厚ミルクジャム”に夢中になっていた時期もありました。(lait cru(レ・クリュ)」については、こちらの過去記事>>で詳しくご紹介しています)


自家製カッテージチーズは気軽に作れて、おいしい副産物のひとつ。おぼろ豆腐のようなフワフワのでき上がりです。

   一昨年、この界隈でも最後のおひとりであった方が酪農業を引退され(報告されたときは心底ショックだった)、今までのレ・クリュ自宅配達という恩恵は受けられなくなりました。

   そこで、新たなるレ・クリュ入手先を探し求めることになりました。いろいろ情報を集めた結果、マルシェで“こっそり”売っている人を発見。“こっそり”というのは、ずばり“無許可販売”のことです。乳製品を販売するためには当然、衛生局などによる然るべき許可が必要ですが、それが無いということ。許可を求めていたら、結果的にレ・クリュを朝市で売ることが不可能になってしまうからです。

   表向きは野菜しか売っていないその人に、「よかったら牛乳を買わせていただきたいのですが。これから毎週買います!」と話かけたときは、緊張しました。「新参者には売らない」というウワサも聞いてましたから。

   熱意(?)が伝わったのか、ニヤリとしながら奥の冷蔵サックの中からペットボトルを出してくれたときは、嬉しかった! 以後毎週、一定量(これ大事)を買い求めてます。旅行や用事で買いに行けない場合は、前週にその旨を伝えてことも怠りなく(これもっと大事)。今では「顧客」として認めてもらえうようになりました。


1.5Lのペットボトル空き瓶に入れて売っています。瓶の確保にだいぶ苦労されてるようなので(こんな風にCoca Cola瓶に入ってくることもアリ!)わが家も水の空きペットボトルを提供しています。買ってきたらすぐにミルクパンに入れ、じっくり低温殺菌します。

   暗黙の了解、暗黙の信頼関係の上に成り立っているレ・クリュ商売。マルシェのほかの人たちも、馴染みの客もみんなそれを認めてるし、後ろめたさは全くなし。役所に密告されて販売が禁止されるようなことも有り得ない世界。小さな町の商売には、独特の信条とルールがあるようです。

   さてさて、先日朗報がありました。「このあいだ仔牛が産まれたから、ミルクがもっとおいしくなるかもね」と……今月のミルクの味が楽しみです(気分は仔牛)!


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「イチジク」のおいしい食べ方



   大のイチジク好きです。祖父母の家に大きなイチジクの木があって、夏休みの終わりに遊びに行くと甘煮やジャムを食べた思い出があります。子どもの舌には、大人が言うほどおいしいとは思えなかった……ただ「不思議な味の果物」と思っていた記憶があります。

   大人になると、「この不思議な味こそがおいしい」と思えるようになりました。そして私のイチジク好きが見事に開花したのは、フランス! ひと夏の太陽でじっくり熟成させたような、ねっとりした食感と濃縮感のある味わい。「さすが!」と感動しました。


思わず木箱買いしてしまう、おいしそうなイチジク。タルトやクランブルなどの焼き菓子に愛用しているヴァイオレット種は、完熟ながらも皮がピンとしていて実がひきしまっています。独特の深みのある色と味が特徴で、火を通すとちょっぴりスパイシーさも感じます。

   フランス料理におけるイチジクの使われ方、ツワモノ揃いのフランス素材の中でもしっかり自己主張しているイチジクのおいしさも、目からウロコの発見でした。お料理の中に使われるイチジク、フォアグラや鴨料理などに添えられた食べ方が大好きです。

   昨年のイチジクの季節、友人宅でのディナーの前菜に「フォアグラのテリーヌ&いちじく」が登場しました。美しいプレゼンテーションとあまりのおいしさに、テーブルからは賞賛の嵐……! すべて自家製と聞いて、かすかなカルチャーショックを覚えたほどです。思わず、テリーヌもチャツィネ(スパイスを使ったジャム)もお代わりしてしまいました。

   フォアグラのテリーヌは彼女の父上のお手製、チャツィネは母上が庭の収穫で作ったもの。どちらも洗練された味でありながら、作り手の愛情と年季を感じさせるものでした。なにより、ご両親の自慢の逸品が素敵なコラボ料理になっているところが素晴らしかったです。


こちらは、小ぶりで皮が黄緑色した種類です。白ワインとレモン、バニラで、爽やかなコンポートにしました。しっかり冷やして、リキュールグラスに入れて食後のひとくちデザートに(シロップも美味!)

   地元の朝市では、4~5軒の農家の方から買うことができます。卵や野菜をささやかに売ってる人が、庭の木の収穫を売っているスタイル。当然ながら完熟もぎたてで、惚れ惚れしてしまうほどおいしい。

   それぞれ品種が微妙に違うし、時期によって甘さや身の引き締まり方も違ってくるので、コンポートは好みと勘をたよりに作っています(レシピを聞かれると、ちょっと困ってしまうもののひとつ)。赤ワイン煮、白ワイン煮のほか、ポルト酒煮やブランデー煮にしたり。あっさりコンポートもいいけれど、数日間じんわり火を通したコンフィ風甘煮も乙な味です!

   次回、イチジクの季節の定番デザートのご紹介です。

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さくらんぼの過去記事を読みながら



   遅れ馳せながらでありますが、当ブログも4周年を迎えることができました。日頃読んでくださってる皆さま、コメントお寄せくださる皆さま、cafeglobeの皆さま、ありがとうございます!

   なぜ4周年に気がついたかといいますと。6月はさくらんぼの季節。バスクの黒さくらんぼは地方スペシャリテ。毎年必ずこの話題を取り上げているので、「今までどんな内容を書いてきたのだろう」と過去記事をチェックしてみたところ……、出てくるわ出てくるわ。4年分ごっそり出てきたので、我ながら驚きました。


バスクの黒さくらんぼジャム。いったい、何軒のジャムメーカーがあるのか……銘柄は数え切れないほどあります。私が今まで試食しただけでも10種くらい。正直いってどんぐりの背比べなのですが、「これは違う!」という逸品に出会えると感激します。

バスク名物サクランボをおいしく食べる方法>>
田舎ステイのすすめ、黒さくらんぼ村のオーベルジュ>>
バスクの春、黒さくらんぼのイッツァス村よりお届け>>
さくらんぼ特集スタートします!>>
イッツァス村のさくらんぼ風景、羊とさくらんぼのショットも。>>
ジャムつくり用のさくらんぼ、直売スタンドで大量入手!>>
イッツァス村の黒さくらんぼ、2007レポート>>

   ざっと拾っただけでも、これだけ書いてました。ガトーバスクやお菓子レシピ絡みでも頻繁に黒さくらんぼについては触れていますが、全部挙げているとキリがないほどです。

   過去記事を読んでいたら、懐かしくなってしまいました。特に2006年のジャムとコンフィつくり。イッツァス村の直売スタンドで12キロも買い込んで、種取作業だけでも数時間労働。家中がさくらんぼの香りでむせ返る日々でした。今こんなことを本気でやろうとしたら、2日間フルでベビーシッターさんに来てもらわないとムリ……。やりたいことはできる瞬間にやっておくに限りますね!


黒さくらんぼジャムを入れて焼く、プチ・ガトーバスク。昨年ご紹介したレシピでは生地を型に敷きこみますが、こんな風に抜き型を使ってサブレ風に仕上げることもできます。

   とりあえず今年は、自家製さくらんぼジャムづくりは休業するつもりです。その代わり、人様が丹念につくった逸品をちびちび賞味したい。相変わらず、バスクでいちばんおいしいと私が確信してるのは、イッツァス村のマダム・ボネ製。毎年(不作年をのぞいて)わが家に数瓶おすそ分けしてくださるこのジャムこそ、6月の楽しみです!娘たちのジャムデビューは、このさくらんぼジャムでいこうかなと思ってます。

   冒頭で「黒さくらんぼはバスクのスペシャリテ」と言いましたが、正確には「黒さくらんぼのコンフィチュール」がバスクのスペシャリテです。次回、そんな地方スペシャリテを使ったバスクならではのデザートをご紹介します。準備時間1分でできてしまう、とびきりおいしいデザート。材料さえ入手できれば、なのですが……。

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アスパラガスの食べ方つれづれ



   「素敵……」というものに何度も出合いながら、いまだ私が購入を踏み切れない食器がひとつあります。それは、「plat à asperges(アスパラ皿)」。その名のごとく、茹でた白アスパラガスをのせる専用皿で、水切りの受け皿がついています。

   季節限定&食材限定の食器。買ってしまった暁には食器棚の大整理をして、スペースを確保しなくてはいけない嵩高さ(購入を躊躇してしまう最大の理由はコレ)! いろんな意味で、贅沢な食器。そして、フランス人の食卓でいかにアスパラガスが愛されてるかを教えてくれる食器です。


春の訪れを真っ先に教えてくれる野菜。スタンドが登場すると、毎年ながらウキウキします。

   先日、食器中心の蚤の市に出かけたのですが、この日見かけたアスパラ皿はかなりの数にのぼりました。磁器ものがほとんどですが、めずらしく銀器ものをひとつ発見。水切り穴がクローバー型をしていて、銀もピカピカしすぎていない程よさ。それはそれはエレガントな品でした。

   お店の人に思わず「これ、素敵ですねー」と話しかけてしまい、「お勉強(値引き)しますよー」と押され、一瞬「買っちゃおうかなー」と思ったのですが、「こんなの買って、どうするの!」というもう1人の自分の声が聞こえて、止めました。こんな調子だから、多分私は一生アスパラ皿とは無縁で終わりそう……。

   今年は4月初旬にお初ものが登場したアスパラガス。今まさに旬を迎えてます。私がいつも求めるのは、バスクのすぐお隣ランド地方産。この季節、お隣ランド地方の農家の人のスタンドには、アスパラガスを求める主婦主夫たちで長い行列ができています。


量り売りのアスパラガスの穂先。皮むきの必要がないし、ハズレなく柔らかくておいしい部分です。


夫の簡単料理。穂先は茹でずに、シンプルな油炒めで。

   フランス人(に限らず、ヨーロッパ共通?)にとって、アスパラガスといえば白。グリーンももちろん売ってるのですが、売ってる量からいっても、買ってる人の少なさからいっても、圧倒的に白が人気なのが分かります。

   私は白・緑、甲乙つけがたいほど好きです。でも日本で食べ慣れていたせいもあって、グリーンアスパラガスの方がいろんな楽しみ方ができるかな、というのが正直なところ。そんなわけで、アスパラガス料理もいつしか夫婦分業が定着。白は夫、緑は私という具合です。

   なぜか年によってお気に入りの食べ方が変化します。「茹でてマヨネーズがイチバンでしょ!」いう年もあれば、半熟卵とからめながら食べるミラノ風に夢中になったり。そして、昨年から(今年も引き続き)ハマっているのは、「網焼き」。京都で買ってきた「有次」の焼き網を使いたいがために始めたのですが、焼いてるそばからゲランド塩をぱらりとかけて食べるおいしさといったら! やっぱり私にはアスパラガス皿など必要ないのです……。

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レモン収穫期のはちみつシロップ



   先日何軒かのお宅を訪問をしたところ、偶然にもどちらでもレモンの木を発見! 収穫のためというよりも、単に美しいから置いてる趣きでした。レモンの木って、ほんと絵になるんです。

   1軒のお宅では、人ひとり入れそうなほどの大きな壷にレモンの木が植えられていて、中庭にシンメトリックに置いてありました。風にそよぐ若葉とレモンの実、そしてテラコッタ。インテリア雑誌から抜け出してきたみたいな空間でした。


旬の時期はこんな風にどっさり届きます。

   義理の両親宅にもレモンの木がありますが、こちらはおもいっきり「花より団子」! 実がなれば、せっせと収穫してます。消費させてもらってるのは、もっぱら私なのですが。

   おかげで、お菓子や料理にレモンを使いこなす習慣はつきました。完全オーガニックだという安心感、それに何よりも香りが素晴らしいので、皮ばかり重宝するクセもついてしまいましたが! すると、どうしても果汁を持て余しがち。皮をこすり取られた、無残な白いレモンが何個も溜まってしまう有様です。


私が愛してやまない「ミエル・ド・プランタン(春の花々のハチミツ)」、オーベルニュ地方産です。乳白色でこっくりクリーミー、そして本当に春らしい香りがするハチミツです。

   お菓子や料理に使う量はたかが知れている。やっぱり大量消費はコレ! 今年は風邪防止策もかねて、“レモンのはちみつシロップ”をよくつくりました。お湯で割ったり、紅茶に入れたり、炭酸水で割ってレモネードにしたり。水分補給のたびにちょこちょこ使えば、自然にレモン果汁を消費できます。

   “生姜信者”の私としては、これにさらに生姜もたっぷり入れて医食同源的なシロップにしたいところなのですが……生姜が得意でない夫に文句を言われ、あえなく断念。その都度、自分用に生姜をせっせとおろして加えたりしてます。このおかげかどうかは分からないけど、今年は風邪をひかずに冬を乗り切れました!


1日ほどねかせると、さらりとしたシロップのでき上がり。

   さて、一昨年のレモン収穫期に『自家製レモンのコンフィ』をご紹介しました。「レモンに限らず、身近なおいしい柑橘類なら何でも!」とオススメしておきましたが、柚子や夏みかんなどでお試し下さった方も結構いたようです。

   レモンの収穫があると、レモンのコンフィをつくらずにいられなくなる。コンフィをつくると、これを使ったお菓子をつくらずにいられなくなる。そんなドツボにハマってる私のレパートリーの中から、次回小さなお菓子をご紹介します。

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「ショコラの街」のお菓子用チョコレート



   “今週の食材”にピックアップしたのはもちろんショコラでございます! バレンタイン近し、ですものね。

   私にとってチョコレートという素材は、たくさんのお菓子素材の中でも一番の難関もの。失敗の心配ゼロなお手軽レシピは別として、チョコレートを使うお菓子は本来とってもデリケートなので気が抜けません。

   “ビスキュイ・ショコラ”(敬愛する「ア・ポワン」の岡田シェフのレシピ!)を作るときなどは、おもわず手に汗かいてしまうことすらあります。温度調整や卵の泡だて方、混ぜ合わせ方などにより、おいしさレベルに雲泥の差が出てくるのです。

   出来上がったお菓子には、厳しく自己採点。失敗すれば大いに落ち込むし、上手く出来たときはひとり悦に入る……。こういう緊張感や達成感こそ、ショコラのお菓子の醍醐味だと思います。


ただ“溶かす”といっても、“何度に溶かす”かが重要なわけでして。私はデジタル温度計を愛用してます。希望温度が設定でき、アラームつきなので安全確実なのです!

   チョコレートといえば、ブランドや銘柄選びも楽しみのひとつです。ヴァローナ社、ペック社、カカオバリー社などのフランス大御所メーカーはじめ、スーパーで手に入るお手頃チョコレートなど。フランスに来たての頃は、数々の銘柄を買っては作りくらべ、食べ比べしてました。

   同じレシピでも、どのメーカーのどのチョコレートを使うかでお菓子の表情が変わってきます。利き酒ならぬ“利きチョコレート”は、同じお菓子を繰り返し作ると分かりやすい。私の場合、十八番のスフレ・オ・ショコラが利きチョコ専用のお菓子です。

   大手ブランドのほかに、密かに気に入ってるマイナーブランドもあります。バイヨンヌのショコラティエで調達する、製菓用ショコラ。こちらは地酒ならぬ地チョコレートです。


自家製レモンコンフィでつくる、“シトロネット”。これは、フランス人ゲストにすこぶる好評な一品です! コーヒーのおともに、小さなお茶うけにと大活躍。


老舗ショコラティエ「Cazenave」の製菓用ショコラ。カカオ分70%、きりっと引き締まったストレートなビターさです。テンパリングによるブルーム現象(シミが出来る)が出来にくいのもお気に入りの理由。100g当りで換算すると、お値段はヴァローナよりも高いのですが……!

   以前ヴァローナのストックがきれた時に「せっかくチョコレートの街に住んでるのだしね」と思い、使い始めたのがきっかけ。いつものスフレで試食してみたところ、「いかにもバイヨンヌチョコ!」というビターさが気に入りました。以来、ヴァローナに負けず劣らず愛用してます。

   卵、粉、生クリーム、バター、そしてココアとチョコレート。私のガトー・オ・ショコラの材料はすべてバスク生まれです!

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冬の味覚、クルミのおいしい使い道



   昨年の冬、バイヨンヌの朝市に新顔の男性がポツンと立ってました。彼の横には、クルミがどっさり入った大きな網袋。

   クルミを売っている農家の人は他にもたくさんいるけれど、クルミ専売って人はこの地方ではかなり珍しい。「むむ……これはっ!」ピーンと来て、すぐに駆け寄って話しを聞いてみました。案の定、ペリゴール地方(クルミの名産地です)のクルミ農家の方でした。

   買って帰り、殻を割ってぽりっと摘まんでみました。「!!!」絶句してしまうほどおいしかった。さくっと軽やかな食感、フワっと高貴な芳しさ。あまりに美味しくって、お菓子に使う前に食べきってしまったほどです。


お客さんたちの要望で、殻から出したものも売ってくれるように。前日に夜なべ作業で用意しているとのこと、有難いです。「殻から出すと劣化が早いから、出来るだけ早く食べてね。もしくは冷凍保存で」というアドバイスをもらいました。

   以来、すっかり常連客です。このおいしさに惚れこんでしまったのは我々だけではないらしく、お客さんがどんどん増えていくのも嬉しかった(クリスマス前の週には、行列が)!彼の商売が安泰ならば、わたしのクルミ入手も安泰なわけで。

   とびきりおいしいクルミが、必要な分だけ(これって重要)手に入る。おかげで、我が家ではストック素材なんかでなく、デイリー素材になりました。リンゴやアンディーブとのサラダに。クルミパンに。当たり前だけど、クルミが美味しいとそれだけおいしさがグレードアップします。

   もともと大のクルミ好き。お菓子材料のナッツといえば圧倒的にアーモンドが主流ですが、私にとってはクルミも大切な素材です。ひょっとしたらアーモンドよりもクルミ使用率のが高いかもしれません。

   サブレ、タルト、パウンドケーキ……etc。ホールで使う定番お菓子も好きですが、今いちばん気に入ってるのはクルミを自分で挽いてパウダーにする使い道! フレッシュで高品質なクルミだからこそ可能なのです。


クルミプードルをたっぷり入れ込んだ小さな焼き菓子。ホロリとした食感、ちょこんとのせた杏ジャムの酸味がクルミの香ばしさを引き立てます。クルミ菓子というとコーヒーにあうものが多いけれど、これはミルクティにぴったりなのも気に入ってる理由。

   クルミプードルを使いこなすようになって、お菓子のレパートリーがぐっと広がりました。そんな新しい楽しみ方を私に伝授してくれたのはあの方です。そのお話しは次回に。

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異国暮らしのフランス人が恋しがる食べ物といえば



   「フロマージュは別腹」。フランス人の食べっぷり、目を細めて舌鼓をうってる様子を見てるとそんなフレーズが頭をよぎります。

   私は“デザート専用腹”なら持っています、しかも立派で頑丈なヤツを。レストランに出かけといて、甘いものをパスするなんて絶対に有り得ない! ではフロマージュ用はどうかというと……ここ数年、ようやく“小さな別腹”を抱え始めたところ。

   フロマージュそのものは以前から大好きです。フランスのフロマージュ文化に敬意のような気持ちすら抱いてます。ワインがなおさらおいしく飲めるという特典まであるし。

   問題は、お腹の体力。フランス料理をがっちり食した後に、まるでダメ押しかのようにフロマージュで〆る。その食事スタイルに慣れるのには随分時間を要した気がします。


舌なめずりしたくなるプラトーを目の前にしながら、別腹が用意されていないばかりにあえなくギブアップ。そんな、今となっては舌打ちしたくなるような体験は数知れず。

   で、ある時からどんなにお腹が苦しくても果敢に挑戦するようにしたのです。と、あら不思議。スルスル食べられる!? しかも、お代わりまで……! フロマージュは食べた瞬間に“別腹”を出現させる不思議な食べ物、これぞ発酵食品の魔力なのだと知りました。

   自分の町にお気に入りフロマジュリーを見つけること。フランス各地のフロマージュ農家を訪れるという旅の余興。ここぞというレストランに出かけたら、絶対にフロマージュを頼むこと。マルシェで農家の人が売っている名のないフロマージュをも愛でること……etc。あらゆることを教育してくれた人、それはフロマージュ大好き人間の夫です。


パンとワインとフロマージュ。このおいしさの相乗効果といったら! 酒飲み体質で良かった(父親の遺伝子に感謝)……! なんて思ったりするのもこの瞬間。

   ガイコク暮らしのフランス人がいちばん恋しがる食べ物はフロマージュ、というのはよく耳にする話。でも東京暮らしの頃、彼はそれほど恋しいと思わなかったとか。なぜなら、日本には日本のおいしい発酵食品(別称、クサい食べ物ともいう)がワンサカあるから。それでもたまに思い出したように恵比寿の某チーズ屋さんに買いに行っていたそうですが。

   私も以前ほど日本の発酵食品(主に納豆ですね)に執着しなくなった気がします。無いものねだりしてジタバタするより、フランスで堪能できるものを楽しんだほうがいい。そう悟るまで、何年も費やしてしまいました。

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レモンよりもプチサイズ、「バスクの山桃」



   日本の果物の中で私がいちばん好きなのは、白桃! 数年前の夏、一時帰国中に八ヶ岳に滞在したおりは、まるで数年間分の恨みを晴らすかのように堪能しました。日本の桃は「水蜜」ですね。品種改良と手間ヒマの賜物、って味がします。

   それにに比べると、バスクの地元産の桃は野趣ただよう果実の味。原種のまま、なにもイジられていないような、山で採れる山モモです。香りは高貴なほどに桃なのですが、食べるとカリカリと音がたつ食感。はじめて食べたときは「これが桃のご先祖さまか」と、妙に納得してしまいました。


うぶ気の濃さもかなりワイルドな桃です。

   山モモはほかのストーンフルーツといっしょにマリネにしたり、野菜感覚にサラダ風に食してます。ちなみに私は日本人の習性でどうしても皮をむかずにはいられないけど、フランス人は桃も皮ごと手づかみで山ザルのごとく食ベる人が多いみたい……。

   スーパーマーケットに行けば、もうちょっと“進化”した桃が売っています。日本の水密レベルにはあと一歩だけど、山モモよりはずっと甘みもねっとり感も増しているのでデザート向き。お値段が手頃なので、惜しげもなく桃のコンポートを作ることが出来ます。

   桃のデザートは、過去記事でいくつかご紹介してますのでご参考までに!

つるんと湯むきするのが楽しい、「桃のコンポート」>>
ペリゴールの想い出、「桃のテリーヌ」>>
簡単、天然シロップのおいしさ「桃と葡萄のマリネ・カクテル」>>

   というわけでここ数年、加熱処理しておいしく食べる方法ばかりを探求していて、フレッシュを堪能するための桃は半ば諦めていたのですが……ありました、スペインに! サンセバスチャン在住の友人にとっておきの店を教えてもらいました。

   完熟食べごろフルーツが1個1個キレイに陳列している様子、店員さんがいつも果物の状態に目を光らせている様子、世界各国の選り抜き食材などが置いてる様子はまさに“バスクの紀伊国屋”とでも呼びたい雰囲気。さすがに、ここで売られている桃は日本の水密レベル並み! 去年の夏は、桃を買いたいがためにサンセバスチャンに何度も足を運んだほどでした。


カクテル好きな方なら、桃と聞けばすぐにお分かりのカクテルです。

   あまりにおいしい桃なので、「この桃があれば、アレをお家で作ることが出来る!」と去年我が家に小さなブームを引き起こしたカクテルがあります。次回レシピのご紹介です、お楽しみに。

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カラフル! 初夏のフランスの果物売り場



   初夏のマルシェは目にもおいしい! オレンジ、ピンク、赤、黄色……カラフルな果実がずらりと並んでる姿はまさに百花繚乱。見てるだけで気分が高揚してきます。

   自国産の果物がこれだけ種類豊富に揃うこと。そして日本のフルーツ価値観と比べると、比較にならないほど贅沢に堪能できること。フランスの食事情の何もかもが素晴らしいっ、なんて誉めちぎる気は全くありませんが、夏の果物三昧な生活は“豊かなフランス”を見せつける説得力があります。


Cambo村のマルシェにて。たまに自分の町以外の朝市に出かけてみると、観光気分(?)で楽しめます。

   桃、ネクタリン、プラム、アンズ。初夏のストーンフルーツはどれも魅力的ですが、“お菓子素材”としていちばん楽しみなのはアンズ。毎年、ジャムやコンポートをせっせと作るのが季節仕事です。

   6月も後半に入ると、「今年のアンズはおいしいかしら? 旬の週はいつ?」と、ソワソワした気分になります。なぜならアンズは、年によって時期によって産地によってもかなり味の差が出る果物。朝市の人に「今週が買いどき? それとも来週まで待ったほうがいい?」とプロのご意見を必ず求めることも、この数年で学んだことのひとつです。

   初めてフランスで迎えた7月、果物売り場にアンズが山積みされているのを見たときはちょっとした感動を覚えました。売り場には人がたくさん集まっていて、みんな1つ1つ指でプニュっとはさみながらセレクションにいそしんでる!

   初心者だった私は最初はおそるおそる数百グラムだけ買って帰り、迷わずコンポートをつくってみしました。クリームオレンジ色だった果肉が、シロップの中で光り輝くオレンジ色になった時の感激といったら。味見をしてみて、冴えざえとした酸味と芳香の良さにさらにびっくり……。

   あのはじめてコンポートをつくった日を皮切りに、わたしのアンズ好き・アンズのお菓子研究はまだまだ発展・進化中といったところ。そんなわけで、次回の話題はアンズを使ったお菓子です。

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スパイスたっぷり! バスクの「薬草リキュール」



   眩しいほど色あざやかなグリーンとイエローのボトル。「グリーンだからミント味かな?黄色はポワールのリキュール?」なんて単純に色で判断して飲んでみると、想像していた味とのあまりの違いにびっくり仰天してしまうようなお酒です。

   バスクの人に愛されている、バスク生まれの“薬草リキュール”です。カフェやレストランのバー、よそのお宅のリキュール棚にこのボトルが置いてあると、ほかのシックな色調のボトルとは異色な存在感にぱっと目が留まります。

    その名は『Izarra』、バスク語で「星」の意味。はるか遠く昔のバスクの人々には、もちろん食後酒としてではなく、薬として飲まれていたアルコールです。


薬草エキスたっぷりの蒸留酒に、アジアやオリエントのさまざまなスパイスで調香されています。基本スパイスはカルダモン、ナツメグ、サフラン、シナモン、コリアンダー。グリーンはさらに、ミント、胡椒、アンゼリカが加えられた、辛口なお味。イエローは、ハッカ、ビターアーモンド、アニスの香りが加えられ、蜂蜜入りの甘口リキュールです。

   時代とともに廃れてしまったのか、それとも医学の発展とともに飲まれなくなってしまったからか、いつしか“処方箋=ルセット”も伝承されなくなり、この薬はやがてバスクから消え去りました。

   時を経て、19世紀終わり。ひとりの植物学者がたまたま文献の中にルセットを発見、幻のリキュールを蘇らせることに成功します。一度は消滅しかけた薬が20世紀に再びこうして、“食後酒”として返り咲きました。

   以来この学者の子孫ファミリーによってのみ生産販売されてる、専売特許的なリキュールです。もちろん銘柄はひとつのみ。薬草のルセットは門外不出とされている、ミステリアスなお酒でもあります。

   明らかなのは、ピレネーの山で採れる40種近くもの薬草エキスが調合されているということ。“薬草エキス”って言葉で私の脳裡に浮かんだのは『養命酒』!これはまさにバスクの養命酒と呼ぶのが相応しい?

   今では、食後酒としてバスクの人々に愛されてます。こってりしたバスク料理をたっぷり食した後でも、これを飲めば胃もたれとは無縁なのかも?

   だとしたら何やらカラダに良さそうなお酒であることは確かなのですが……。ガトーバスクやガレット・デ・ロアなどに、『Izarra』を入れてるお菓子屋さんが存在するのを知ったときは驚愕でした! 『養命酒』をお菓子に入れてしまうとは……。バスクのお料理・お菓子、だいたいのものはおいしくいただけますが、こういうジャンルになると私には付いていけない味覚世界。こんなとき、バスクがとても異国に思えたりします。

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目玉焼きトーストの朝ごはん



   春は卵の季節。果物や野菜に旬があるように、卵にだって旬があります!

   スーパーマーケットのパック入り卵に慣れてしまうと気がつかないのが普通ですが、バスクの朝市で毎週卵を買っているうちに自然と分かるようになりました。自然のものなのだから、卵にも春夏秋冬があって当然ってことに。

   年に数回、いつもの卵屋さんに「今日は卵はないよ」と言われてしまうことがあります。真冬の凍える日が続いた週は産卵数が激減してしまうから。そんな日は、卵を手に入れるために何軒かの農家の人をハシゴするなんてことも。

   草樹の緑が芽吹いてくる季節になると、どの農家の人の籠にも卵がいっぱい詰まってる! 籠の上までこんもり積まれた卵を見ると、「あぁ、春だなぁ」と嬉しくなります。


籠はみんなそれぞれ風情があって、とてもかわいい。持参した卵ケースに、ひとつひとつ目の前で入れてくれます。

   バイヨンヌの朝市で売ってる卵はどれももちろん、“フェルミエ卵”(農家の産みたて卵)。鮮度は保証つきなのですが、フェルミエだからすべて極上の卵かって言うとこれまたちょっと違うのでありまして。「フェルミエ卵こそ吟味して選ぶべし」っていうのが私の6年間の卵体験による結論。

   養鶏舎でオートメーション化されていない卵だからこそ、農家によって如実に差が出るのは当然のこと。鶏の餌、鶏そのものの健康度、そして鶏の年齢など。飼育環境と鶏の違いが見事に卵の質に現れるのです。

   お気に入りの農家の人を見つけてしばらく買い続けたものの、段々と卵のレベルが落ちて来てるって感じたり、割ってみたらほとんどの卵が大量出血していて(!)悲鳴をあげてしまったことも。

   ここ1年ほどは、馴染みの鶏農家を3軒キープしてます。特に今いちばんひいきにしてる農家の卵は、惚れ惚れしてしまうほどの極上品! 黄身はツヤツヤのオレンジ色、白身も黄身もぷっくらと盛り上がってて新鮮そのものです。


マルシェ帰りの朝は、“目玉焼きのせトースト”で朝ごはん。うちは卵を全く食べない日もあるけど、食べるときは豪快に主役にして食べます!

   マルシェの買い物客の中にはここの卵の固定ファンが少なからずいる模様だし、かなりの限定品です。だから「早起きは三文の得」が我が家の標語。もうちょっと布団にくるまっていたいなーって思っても、この卵のためならムクっと起きられる(?)そんな偉大な卵です。

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ルヴァン酵母パンとチーズの晩餐



「バスク6daysの過ごし方」
4e jour 17h00 ディナー用のパンを焼く

   2年程前から夫がパンづくりを楽しんでます。といっても、こねは Machine a pain(ホームベーカリー)、発酵はドライイーストというお手軽派です。

   このホームベーカリー、実は私がフランスの某お料理コンクールで優勝した際の景品のひとつ! 「せっかく頂いたのだから使わなきゃね」と軽い気持ちで始めたのですが、私よりも彼の方がハマってくれたのでシメシメです。

   いまや仕事帰りにスーツ姿で“水車の粉挽き屋さん”(バスクの伝統的な水車で挽いた粉を売ってるお店)に寄って、自分で数種類の粉をブレンドするように。理系人間らしく毎回ノートに記録しながら作ってます。ちなみに、うちのベーシックパンはライ麦粉パン、全粒粉パン、パン・オ・レの3種類。

   そんな我が家に、新たな“パン革命”がやってきた! 革命の引導者は、今回のゲストのニコラ(この家でもなぜかパンづくりは男性)。彼は数年前からルヴァンでパンを焼くのが日課という、達人なのです。この大きなパン(粉500g分)を2人で1日1個朝晩で食べきるというのだから、スゴい消費量。


全粒粉、小麦粉、ライ麦粉をほぼ同割で入れた配合。中に雑穀を入れ、胡麻をたっぷりトッピングして焼きあげたルヴァンの天然酵母パン。焼き上がった時の香りの素晴らしさが秀逸! そして冷めても風味がしっかり残っておいしい。チーズとの相性もばっちり。


粉屋さんへ行ったら全粒粉が売り切れだったので、オーガニックのお店へ材料調達に。使用した穀物は、胡麻、オートミール、亜麻の種、ひまわりの種。そして大切なルヴァン種もこちらで購入。

   農家で調達してきたバスクのオッソイラティ。そして彼らのお土産サヴォアのチーズ。今夜の主役はとびきりのフロマージュ4種類。これに相応しいパンを用意しよう! ルヴァンのパンづくりを作ってもらいつつ、私もいろいろ勉強させてもらいました。


手前から、農家で買ってきたバスクの『シェーブル(ヤギのチーズ)』、『オッソイラティ』、『サヴォアのトム』、『マール・ド・レザン』。マール・ド・レザンは、ワイン作りの際の葡萄の搾りカスで覆われてるという、サヴォア特産の珍しいチーズ。葡萄の香りがしっかり染み込んだ、独特の風味をもたらしてます。


ひと口噛みしめてみて、あまりのおいしさに衝撃を受けました。チーズと交互にいつまでも食べつづけられる味……。自分史上、パンを一度にこんなにたくさん頂いた日は初めて。こういうパンが自分たちで作れるなら、ご近所のイマイチブーランジュリーは不要!

   以来数週間、我が家のパンづくりもイーストパンを卒業してルヴァン発酵一辺倒に。それに応じてパンの消費量はうなぎ上り、それに反比例するかのようにお米と日本調味料の減り方はペースダウンしてます。

   主食が変わると自然と料理が変わる、食卓が変わる! パン革命にとどまらず“食卓革命”を起こしそうな気配です。

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レモン大豊作にうれしい悲鳴!



   ここ最近レモンの使い道を考える日々です。義両親の庭で育ったレモンがドッサリと届くようになったから。そう、レモンって二度成りの果物なのです。夏の収穫が8月末に終わりホッと一息ついたのも束の間、11月にはもう実をつけ始めました。そして立春の頃まで収穫が続きます。


全部で3本の木、それぞれ個性的な実をつけるところも愛着が沸きます。「これはあの木の実だな」と分かるようになりました。こちらはゴツっとした感じの皮、大きくずっしり重たいレモン。

   特に今年の冬はもの凄い! 夏のそれに勝るとも劣らない収穫量を見せています。今年のバスクの天候はしっかり寒いながらもサンサンとした冬の太陽に恵まれているからかも。

   私は普段からお菓子・料理にレモンを多用するクチなので、無駄にしてしまうってことはないのですが。うーん、さすがに今冬の収穫量は少々もてあまし気味……。


こちらは1本だけ品種が違うレモン。皮の色、ジュース、香りにかすかに柚子に似たものを感じさせてくれる柑橘です。ミカンのような薄くてつるんとした皮なので、これでコンフィを作るとしっとり柔らかく仕上がるところが好き。焼き菓子よりもデザートの飾りなどに愛用してます。

   で、ついに私もデビューしました、レモン風呂! これは昨夏レモンについて書いた際に、カリフォルニア在住のこけし様のコメント(樹齢60年以上のレモンの木を栽培されてるそう)から拝借した素敵なアイディア。柚子風呂ならぬレモン風呂、今年の冬の贅沢な使い道です!

   でもこうしてせっせと新たな消費法を模索しているあいだにも、レモンの木は豊作を続けているわけで。実はつい昨日も再び30個のお届けがあって、嬉しい悲鳴をあげてしまいました。

   というのも、先月クリスマスにプレゼントしたコレをエラく気に入ってもらえたらしく、箱にびっしり詰めたものをあっという間に食べ終わってしまったそうです。要は「また作ってね」というリクエストってこと……。

   コレとはこちら、レモンのコンフィです。


キッチンの作業台がふさがってしまうほど大量に作ったのですが、プレゼントや年末年始の来客時のお茶請けとして完食することができました。爽快!

   次回レシピのご紹介です。お楽しみに!

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バスクの野山へ、ブラックベリー摘みに



   ミュールが少しづつ黒づいてきたら、「夏もそろそろ終わり」のお知らせ。季節の移り変りを感じます。「mûre(ミュール)」は、英語でブラックベリー、日本語で黒いちごのこと。

   緑豊かなバスク地方は、野生ブラックベリーの宝庫です。夏の天候や雨の恵み、そして生えてる場所によってだいぶ差があるのですが、8月末から9月頃が旬の季節。


黒く色づく前の姿はまるでフランボワーズ。フランボーワズとブラックベリーは親戚、だそうですから。

   ふっくら黒光りしている実は、驚くほどまろやかな甘みと香り。そして、野生ならではのアクの強さも少々。

   茂みあるところにブラックベリーあり、とばかりにそこら中に自生してます。川原道などにもたくさん生えてますが、人間や犬の散歩道周辺のものは摘まない方がベター(理由説明はいりませんよね?)。山深く鬱そうと茂った藪の中、出来るだけ高い所に生えてるのを摘みに出かけます。

   バスクの野山がどれだけブラックベリーの宝庫かと言いますと、2時間ほどせっせと摘めばジャム作りに充分な収穫量が期待できるほど。山をドライブしていると、一家総出でお鍋やボウルを抱えて摘んでる微笑ましい光景をちらほら見かけます。


「牛とブラックベリー」の図。こんな風に牧場付近にもたくさん自生してます。

   あれを見たら、誰だって「私もジャムを作ってみたい」って思うハズ! 以前、友人夫妻と山に出かけた時、最初は散歩途中の味見だったのに、なんと彼らがバッグからジップロックの袋を取り出した(なんて準備がいいんでしょう……)!

   みんなでせっせと摘んで、ビニール袋はあっという間にパンパンに。家に戻って、白ワインで煮込んだジャムを作り(料理上手なご主人がつくってくれた)、デザートのお供になりました。男性が即興で作ってくれたジャムのお味は、私にえもいわれぬ感動と発見をもたらしました。

   以来、ベリーのジャムというと、彼の白ワイン入りレシピを愛用させてもらってます。


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ジャムとコンポート作りの定番フルーツ、あんず



   日本にいた頃のお菓子づくりと、今の生活でのお菓子づくり。手に入る素材の違い、周りの人の反応の仕方……いろんな小さなことに影響を受けながら、作るものや作り方も少しづつ変化してきました。

   先日、この数年間の自分の「お菓子日記」を読み返してみたところ、我ながらおもしろい記述がいろいろ……。日記をつけるという習慣は全くありませんが、お菓子日記だけはこれからもずっと続けてみようと思ってます。

   いちばんの変化はなんといっても、果物の使い方、果物の使いっぷりですね。日記に「○kg購入」なんていう言葉が当たり前のように羅列してあって、いかに私が果物の衝動買いを繰り返しているかが分かります。


とは言え、買い急ぎは禁物。出盛りの頃がいちばんおいしいから。お値段が下がり始めた週を狙って、木箱買い。待ちすぎると逃してしまうキケンもあるし、このタイミング掴みも要経験!?箱ごと買うと、「あ、ジャム作るのね!」と必ず言われます。

   朝市の旬の果物。色美しく、みずみずしく、辺りに漂う甘酸っぱい香り。気がついたら大量買いしていた、なんて夢遊病のような行動を取ってしまうことが度々。これはもう立派に“お病気”と呼べるほどで、ここに住んでいる限り治りそうにありません……。

   7月の旬のフルーツといえばあんず。ここ数年、“木箱買い”が恒例化してます。ただし、あんずの場合は衝動買いではなくちゃんとした“計画買い”です。

   昨年7月のお菓子日記のメモはこんな具合。

「7月某日、木箱で7kg購入」
1.5kgはマリネ→残りジャム
5.5kgはシロップ煮


極限までフレッシュ感をキープさせた、自家製の瓶づめコンポート。冬場のお菓子つくりにも大活躍です。

   次回、「あんずのコンポート」をご紹介します。バイヨンヌの図書館の古い料理本で見つけた、ちょっとおもしろいルセット。お楽しみに!

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イッツァス村の黒さくらんぼ、2007年レポート



   悪い予感が的中してしまいました。

   心待ちにしていたイッツァス村の黒さくらんぼが、今年は不作。不作どころか、何十年に一度あるかどうかの凶作年! 初夏の訪れを告げる果物だけに、そしてフランス・バスクを代表する果物だけに、暗澹とした気分にさせられるニュースであります。

   理由はもちろん、異常気象。今年の春は、お日様が光り輝く日が極端に少なく、明らかに日照不足。そして連日激しく雨が降り、ときには強烈な嵐が吹き荒れました。ニュースで見て心配してくださった方もいましたが、バイヨンヌでは洪水によって死者も数人出ました。あの日、夫の知り合いは通勤途中に乗用車ごと水の渦に巻き込まれ(!)、ギリギリのところを消防隊員によって救助されたとか……。


昨年の写真から、青空と真っ赤なサクランボ。今年はこういうお日様の光がとても少ない。うーんこのままでは、2007年の葡萄の出来、ワインの出来も危ういかも。

   それでも「ひょっとしたら少しは……」と淡い期待を抱いて、昨年お世話になった農家の方に電話してみたところ、「今年の出来はお話しにならんよ」という答えが返ってきました。

   人の命すら落とすような強雨だったのだから、か弱いさくらんぼの実が大打撃を受けるのは当たり前。実りの時期を目前にして、ボロボロの傷モノになってしまったそうです。

   我々消費者側は、「今年はあの黒さくらんぼが食べられないのね」と残念がるだけでおしまい。のん気なもんです。しかし、生産者側である農家の方々の立場を考えると、本当に気の毒。皆さん酪農業との兼業なので、これによって生活を脅かされる心配はないと思います。しかし、かなりの痛手であることは間違いないし、お天道様商売のつらい宿命を感じます。

   そんなわけで去年スタートした私のさくらんぼジャム作り、今年はお休み。スーパーに行けば、他の地方のさくらんぼを手に入れることが出来ますが(バスクほど不作ではないにしろ、同じく出来が悪い)、浮気する気にならない!

   イッツァス村の黒さくらんぼが、来年こそ元気に実をつけてくれますように……!


昨年はさくらんぼの大当たり年だった! 12kgのさくらんぼで大量に作り上げたジャムとコンフィ。「いくら何でも作りすぎでしょ」と実は反省していたのですが、今となっては「豊作年にたっぷり作っといて正解!」と思います。天候不順が当たり前の時代になってしまったのだから……。

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バスクの密かな自慢野菜



   晩春から初夏にかけて、私がマルシェで毎週せっせと買い求める野菜はグリーンピース。毎年、お初ものが登場した週は心が躍ります。その喜びレベルはイチゴがお目見えした時と同じくらいと言ってもいいほど。それくらい私はグリーンピースが好きなのです。

   ただでさえ好きなのに、幸運なことにバスクはグリーンピース栽培が盛んな土地ときている!これを知ったときの嬉しさ、理解してもらえるでしょうか? 日本で慣れ親しんできた素材、大好きな素材の現地産が手に入ることって、本当にありがたい。


こうまで美しく健康的な野菜だともはや鑑賞に値する。京都で買った竹籠に入れて。

   バスクの農家のグリーンピース、これがまあ素晴らしい。要は本当の採れたて、ものすごく新鮮だということ。直前にパチンパチンとハサミで枝を切ったであろう元気さ。ハリとツヤがあってつるつる(お化粧品の宣伝文句みたい)。枝まで元気にピンと伸びていて、さやを開けば弾けるようなの青い香り、豆の酵素パワーを感じます。

   初めてこれでお豆ご飯を作ったときは、驚きの感動でした。青豆ごはんという食べ方を教えてくれたのは日本ですが、私にグリーンピースの真の味を教えてくれたのはバスクです。


青豆ごはんの次によく作るのは、「春の野菜のパスタ」。青い野菜を取り合わせ、バイヨンヌの生ハム、バスクのチーズと一緒に。ローカル産物だけで料理を作ると嬉しくなります。

   グリーンピースと言うと、忘れられない台詞があります! 発言主はイギリスの美人料理研究家ナイジェラ・ローソン。料理番組で「ワタシ、グリーンピースをさやごと買って料理するって行為が信じられないのよ。何の意味があるのかしらね?」と言いながら、冷凍豆をザザァーっとお鍋に放り込んでました……。

   いやはや、ビックリしましたです。いえ、私はアンチ・冷凍グリーンピースではありません。あれはあれでメリットがたくさんあると思います。それにアンチ・ナイジェラでもありません、念のため。

   料理番組(特にイギリスの)がエンターテイメント性をも重視してるってことはよーく分かります(実際、他の国の番組より楽しい)。だから、ひょっとしたら御本人の台詞ではなく、番組制作者側が用意した台本を読んだだけなのかもしれない。だけどこの台詞にはカチンときてしまいましたね、野菜好き人間としては!

   「フレッシュの野菜を使うことに何の意味があるの?」と問われたら、驚くというより哀れみを感じてしまう。彼女にバスクのグリーンピースをぜひ食べてもらいたいものです(逆に「青クサくておいしくないわね」と言われたりして……)。

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レモンの収穫、楽しみ方あれこれ



   5月は義両親宅を訪問する頻度がさらに跳ね上がる月。その理由はレモン! 「レモンの実、大きくなってきたわよ」「ハイハイ、伺います」と、毎週のようにレモン狩りに参上している有様です。

   鉢植えのレモンの木、これが5月になるとたわわに実をつけます。実を枝からもいだ瞬間、パァっとミクロの芳香が飛び散るのですが、この香りの素晴らしさといったら! クラクラ目眩しそうなほどに良い香りがします。


可憐なピンク色の花、スカっと爽やかなライムグリーン色の葉、そして大きなレモンの実。当然ながら完全なる無農薬レモンですが、結構日持ちします。だからまとめて収穫できないこともないのだけど、敢えて少しづつ、毎回2~3個にしています。なぜなら、もぎたての香りは儚く短い。

   か細い枝から両の手で数えられるほどの収穫量だったのが、毎年ぐんぐん成長して今や需要が供給に追いつかないほど。すると俄然張り切って、消費方法をあれこれ考えるのが私の貧乏性でして……。以前は「お裾分け」っていうかわいい量でしたが、今や私がほとんどを消費させてもらってます(お菓子に変身させて還元)。

   この時期、ドレッシングやソース作りのお酢はレモン果汁に取って代わられるし、炭酸水にぎゅっと絞った即席レモン水もお気に入りの使い道です。顔をすぼめてしまうような、角のある酸味が全くないので、柚子感覚で香りを楽しむことが出来ます。


私にとってレモンはバニラに次いで欠かせない、大切で貴重な香り素材。このレモンがあるとお菓子を作りたくなります。

   そしてお菓子づくり。皮の風味を焼き菓子に焼きこむのが一番好きな使い道です。それからフルーツのコンポートの風味付け、果汁をレモンクリームに仕立てた生菓子に。さすがに使い切れない分は冷蔵庫で保管しておき、6月~7月のジャムづくりで活躍させます。こう考えると、レモンって名脇役にも主役にもなれる、かなりアドリブの効く果物だと思います。

   おかげでここ数年で、私のレモンのお菓子レパートリーは飛躍的に増加しました。お菓子の記録写真を素材別・フルーツ別にファイリングしているのですが、レモンファイルが明らかに他のよりずっしり重い! 今年はレモンファイルをさらに「焼き菓子」と「生菓子」に分類しよう、と考えてます。


レモンファイルから、昨年作ったお菓子をひとつ。サブレ生地の上にレモンと白ワインのムース、トッピングはレモンクリーム。尊敬するお菓子職人のおひとり、横溝春雄氏のレシピを参考に作りました。何かで読んだ、横溝氏のレモンという素材への思い入れに偉く共感したので。今年もまた作りたい。

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マルシェの朝摘み苺と買物事件簿



   苺の季節到来です。日本の方からすると、「えっ、今ごろ?」と思われるかもしれませんが。ようやくマルシェに露地物の朝摘み苺が登場するようになりました。まだスタンドの数は少なめですが、5月の声を聞けば「今日はどの農家の苺にしようかナ」と選り好みできるほど出回ります。


バスクの苺はガリゲット種が主流。苺らしい甘酸っぱさと香りの高さが特徴。デザート、お菓子、そしてこのままで……めいっぱい楽しみたい。

   とてもデリケートな箱入り娘です。日本みたいにお行儀よく並んではいないけれど、同じくらい大切に、丁寧に取り扱われてます。先日、苺を買うために列に並んでいたところ、前の前にいたおじさんが大きな買物袋を台にぶつけ、あやうく苺パックをドミノ倒ししそうになった!

   幸い、箱入り苺たちは無事だったのですが、ほんとうに危機一髪でした。私も心の中で「うわぁあ」と大声あげてました。そしてその瞬間、農家のおばさんの激しい雷が落ちた!「何してるのー!!苺が全部落ちてたらどうしてくれるのよ、キィイーっ!!くどくどくど……」。強烈でした、ハイ。私はひそかにオジサン援護派でしたけど(助かったんだから、そこまでプリプリしなくたっていいのにね)。

   おじさんが「エヘヘ」とばつが悪そうに笑って誤魔化した様子が、人間くさくて最高でした。そして、普段はお買物中もペラペラとおしゃべりが止まらないフランス人であるのに、この場にいた人達がシーンと傍観者然を決め付けていたのにも笑っちゃいました。マルシェって私にとって食料調達の場だけでなく、フランス天然気質を鑑賞できる寸劇舞台って感じ。見ててホントに飽きません……。


春のお花も続々と登場中。八百屋さんがお花も売ってるので、野菜ついでに買えるところが好き。


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マルシェの春野菜、まずは「菜の花」からスタート



   朝市がいっせいに春の風情になりました。冬が終わった! という実感が沸いてきます。バイヨンヌの朝市は農家直売形式なので、真冬のあいだは寂しいほど出店数や野菜の種類が少なくなるのです。それが3月に入ると、数ヶ月ぶりに見かける農家のおじさんおばさんの顔も見えてホッとします。

   だからこそ、春は朝市が本当に楽しくって、一番通い甲斐のある季節。旬のものに毎週ひとつづつ再会できる楽しさは、冬の氷河期(?)を乗り越えた喜びでもあります。


旬の花は、水仙の花。春の到来を感じさせます。

   目に飛び込んでくる色彩の数、つまり食卓に上る野菜の種類がぐっと増えることが何よりも嬉しい。先週の旬は「菜の花」。ほかの野菜は素通りするけど、菜の花だけは大ファンの農家のおじさんがいます。彼も「毎年、菜の花だけを買っていく東洋人」として私の顔をインプットしているようで、「おっ、今年も早速買いにきたね」と言われました。

   菜の花は、スーパーや八百屋さんではなぜかほとんどお目にかけない野菜。私にとっては、バイヨンヌの朝市に行かなければ手に入らない貴重な青菜のひとつです。栽培している農家の方は実際少ないようで、マルシェで売っているのはわずか3軒くらい。

   必然この地方の人たちは、菜の花を食べたことはおろか、存在すら知らない人も結構いるとか。以前、「菜の花のおひたし」を夫のお弁当に入れたところ、早速同僚の方々から「その野菜は何?」とチェックが入ったらしい。そして彼は(自分だって、私が使うまで知らなかったクセに!)得意になって説明したようです。


ホロ苦味が何とも言えずおいしい。バスク産だけど「和」を感じさせてくれるお野菜。

   それにしても私の作るお弁当は、“日本の食べ物=Sushi・Sashimi”という紋切り型常識を覆すものらしく、日々好奇の目に晒されている模様……。そもそも、お弁当っていうジャンル自体がビックリだったようですね。最初は相当恥ずかしそうにしていましたが(今でも多少)、日本の食文化の草の根外交、と開き直ることにしたみたいです。

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バスクのチョコレート商戦、その以外な現実



   2月第2週にもなると、チョコレート商戦はかなりの盛り上がりを見せているのではないでしょうか? 皆さんお住まいのエリアではいかがですか?

   こちらバスク地方では、「バレンタイン・デーにチョコレート」という習慣はほとんど見受けられません。ウィンドーにバレンタイン仕様のチョコレートが飾られているのは、チェーン店のチョコレートショップくらいであります。対して地元のショコラティエはどんなかと言いますと……なんとこの時期、悠長に冬休業している店もあるほど! 「バレンタイン? だから?」とでも言わんばかりに、淡々と普段のチョコレートを普段通りに売っています。

   小学生の頃から「バレンタインとチョコレート」文化を一種のお楽しみ行事として享受してきた私としては、ちょっと物足りない風景ではあります。また1つ楽しい行事を失ってしまった寂しさみたいな……。

   でも、他所の文化に迎合しないところ、我が道を行くところがバスクの美点ですから! こうなったらいつまでも、ストイックにバレンタインにバレンタインチョコを売らないショコラティエでいておくれ、と願うばかりです。

   そんないつもながらのショコラティエで、先日買ってきたものがこちらの品です。


軽い、おいしい、使う楽しみがある。バスクのおミヤゲ候補にどうぞ!

   我ながら、地味なお買物……。「ココアパウダー」です。しかし、たかがココアされどココアでありまして、おいしいショコラティエで買うココアパウダーは当然ながらおいしいのです。何よりも新鮮さがポイントですね。先日、自分用とプレゼント用にと2個買い求めようとしたところ、「最後の1個しかないから、また来週来て頂戴ね」と言われたので驚きました。フレッシュなものを売りたいので、必然あまりストックは置かない主義なのだとか。

   腐るものでは決してないのに。こういう頑固さもあるんだなぁ、とこれまた偉く感心した私です。スーパーなどで買物をしている時、「この国には在庫管理ってシステムがないわけ?」とイラつくこともある私でありますが……この時ばかりは「こういうストック切れなら大歓迎!」と思ったのでありました!

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ビタミンCたっぷり! 真冬の果物「クレマンティーヌ」



   あけましておめでとうございます。

   お正月はいかがお過ごしですか?
日本だったら、おコタに入ってミカン食べながらテレビや映画三昧という方をされてる方も多いのでは?

   コタツといえば、去年の春にパリに日本のマンガ喫茶がオープンしました。木枯しが吹き始めた頃に「コタツ始めました」とチラシに書いてあったのがちょっと可笑しかったです。パリのど真中で、コタツに入って漫画を読む。なかなかシュールだなぁと思います。

   脱線しましたが、取り上げたい話題はずばり「ミカン」。フランスでも、師走の声を聞く頃には果物売り場の顔的存在になります。「Clementine(クレマンティーヌ)」と「Mandarine(マンダリン)」という名で、おおまかに分けて2種類あります。さらに両種とも国産以外にスペインやモロッコなど南の国々からの輸入品も多いので、柑橘類の品種はかなりの数にのぼります。


マルシェの「葱のおじさん」(とてもおいしい葱を売ってる人)から買ったクレマンティーヌ。暖冬のせい?去年のより甘い。

   どちらかと言うとクレマンティーヌの方が爽やかな甘味で、私はこちらを好んで買っています。年末年始のご馳走続きで胃がお疲れ気味のときなど、まるでビタミンCがカラダにじわじわ染み入るかのよう! ラルース食材辞典を読んでみると、クレマンティーヌ2個で1日に必要なビタミンCが摂取できるそうです。

   フランスでいえばコルシカ島産が有名です。しかし、こちらバスクでも細々ながらも生産してます。朝市では、農家の人が実益・趣味半々で庭で育てているクレマンティーヌを手に入れることが出来ます。地元贔屓目を差し引いても、コルシカ産に負けず劣らずおいしい。

   やっぱり、フード・マイレージを意識したい。そして地元農家の人を応援したい。今年もこの心意気をキープしつつ、楽しく健康的な食生活を送っていきたいと考えてます。

   今回の「今週の食材」はじめ、バスク暮らしのこと、おいしいもの、そして旅先で出会ったことなど、満遍なく(?)網羅していくつもりです。

   2007年もご愛読どうぞよろしくお願いします!

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Kusmi Tea、気に入りました!



   不平不満も書いてみるものだなぁ、と言うのが正直な感想です。こちらで英国紅茶の話題ついでに、「フランスの紅茶にはどうも馴染めず……」と愚痴を漏らしたところ、同じ紅茶趣味をお持ちと思われる方から素敵な情報をいただきました。コメントお寄せくださったsrsさん、ありがとうございます(そして追加コメントくださった、nousnourさんも)!

   KUSMI TEA、早速買い求めてきました。結論から言いますと、美味! しっかり煮出したミルクティの味は、フランスで今まで挑戦したどのブランドよりもピンときました。


缶のデザインも個性的!

   私は起きぬけに頭すっきり、そしてカラダを温める目的で、生姜やシナモンを入れるスパイス・ミルクティもよく作ります。なので、こういう力強い紅茶はとっても貴重。スパイスの存在感にも負けないコクがあります。


ロシアはサンペテルスブルグで1867年創設。オリジンは「クスミチョフ」なる名前のブランドだそう。

   ロンドンに行くと必ず立ち寄る紅茶屋さんで、お店の人(インド人男性)とオシャベリしたときのこと。「フランスに住んでいるのにここで紅茶を買っているってことは、君はフレンチスタイルの紅茶文化に馴染めないんだね! 分かるなぁ、その気持ち」と言われたことがあります。

   そっか、お茶の質そのものではなく、スタイルが問題なのね。彼に指摘されて合点がいった気がしました。言われてみると、フランス人のお宅で夕食後に紅茶(フレーバー・ティ系)、コーヒーそして食後酒をオファーされると、一瞬悩んだ末にコーヒーを頼んでる私です。

   ところで、紅茶に関して一番カルチャーショックだったこと。それは、義母は私に会うまでミルク・ティの存在を知らなかったという事です。「紅茶にミルクを注ぐの!?」ショックを受けている様子に、こちらこそかなりビックリしましたです。

   やはりラテン文化では圧倒的にコーヒー文化の方が強し、です。

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ジビエにセップ茸、そしてリンゴ……秋の味覚つれづれ



   先週のカフェグローブvoteのお題、「秋の味覚、アナタにとってズバリどれ?」でしたね。ズラリ並んだ憧れの食材名に一瞬本気で悩んじゃいましたが、私は畏敬の念も込めて新米に一票投じさせてもらいました。

   ちなみにフランスで秋の味覚と言ったら、ジビエとキノコ!この2点に尽きます。そうそう、今年の天候はキノコ達には最高な生育環境らしく、セップ茸がとっても豊作だそうな。バスクでは国道沿いにセップ茸スタンドが登場します(いつかご紹介したい)。今年は値段がちょっぴりリーズナブルだし、レストランの食事メニューにも惜しみなく使われてます。

   りんごがおいしい季節もやってきました。お菓子作り好きな方なら、すでに今年りんごでお菓子を作られたのでは? 私も先日、お決まりのパイを焼いてみました。ちょっと小寒い日に、オーブンから漂うりんごとバターの香り……。秋気分盛り上がります。

   一年中手に入る果物とはいえ、倉庫で長いこと保管されたりんごと秋の採れたてりんごの味は明らかに違う。だから秋はりんごへのリスペクト度が一番高い季節といえます。真冬になると、来る週も来る週も果物といえばりんごばかりな時期がやってくるので。本音を言うと、冬も終わりに近づく頃には見向きもしなくなることがあります。有り難味がある今のうち、たっぷり楽しむのが上手い付き合い方かなと。


皮の色が黄色、赤、緑とカラフルなレネット種。バイヨンヌの農家の人から買っています。

   散歩をしていても、お庭に立派なりんごの木があるお宅が目に留まります。ちょっと気になるのは、みなさんボタボタ落っことしたまま、土の上で朽ちるまま放置しているんですよね。もったいない。私だったら、シードル酒蔵を作るのに……!

   以前、友人のノルマンディの別荘で自家製シードルをご馳走になって以来、よそのお宅の無駄使いを舌打ちしながら眺めてる私。そして以来、我が家のシャンパンの空き瓶は、彼らのシードル作りに再利用してもらってます。もうこんなに嬉しいリサイクル方法はありませんっ。手作りのシードルって、おそろしいほど美味なのです……。


ジャムやジュレ作りだけでは、ラチがあかない収穫量なのでしょうね。

   次回も引き続きりんごの話題、簡単おもてなしデザートのご紹介です。お楽しみに。

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秋の産物その2、ピンク色のインゲン豆



   初秋のほんの短い間、私が心待ちにしている野菜。それがこちら。サヤがフューシャ・ピンク色したインゲン豆です。はっきりいって野菜売り場には似つかわしくない色です。土色、緑色などが野菜の制服カラーだとすれば、ヤツだけひとり場違いな私服を着てしまっている。そんな野菜です。


ふわっと温感を感じるような触り心地がするフレッシュなサヤ。その分あれよあれよと言う間に傷んでしまうので、早めに使い切ることが肝心。

   初めて目にしたときは色のキョーレツさにひいて、「これどうやって食べるんですか?」と思わずオニイサンに尋ねてしまった。「茹でてスープやサラダにすればいいんだよ」とオーソドックスな使いみちをアドバイスされる。すると、お隣で買物していた初老のマダムが「スープが一番おいしいわよ」と耳元で囁いてくれた。……それがこのお豆さんとの馴れ初め。

   実際使い始めると、このうえなく魅力的な食材ということを実感しました。乾燥豆のように戻す手間が要らず、コトコト20分ほど茹でればふっくら柔らか。まるでジャガイモなホコホコ感に自然なやさしい甘みがあります。

   そして毎回ながらちょっとした驚きを感じる味見の瞬間。いつものスープにこの豆を入れて途中ちょっと味見してみると……豆からコクが出てる! 単なる素材としてだけでなく、立派なダシの素にもなれる。そんな豆の底力も、このお豆さんが実習体験させてくれた気がします。そして、「スープが一番よ」のマダムの耳打ちの信憑性もしっかり納得しました。

   この豆が出回る季節、バスク人に負けず劣らず私もせっせと作りたくなるスープがあります。豆がなければ始らないバスクのスープ、豆があるからおいしいスープ。次回、詳しくご紹介します。お楽しみに。


豆は紫寄りの臙脂色と白のまだら模様。かすかに紫がかった色に茹であがります。

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バスクの秋の産物その1、マロン



   今年も栗拾いに行ってきました。「今年はなかなか上出来ヨ」と8月下旬から義母が言っていたので、期待に胸膨らませて出かけてみると……ホント、確かに豊作でした。イガの中から、ふっくらとした顔を覗かせてる様子はとても可愛い。


日本のよりも若干小ぶりながら、コロンと丸みを帯びた元気な栗です。

   経験ある方ならお分かりだと思いますが、栗拾いってものすごい重労働なんですよね。学生の頃、東京郊外の大地主の家のクラスメート宅に遊びに行った際に、お母様が裏山の栗の実をずっしりと持たせて下さった想い出があります。翌日いただいた栗ごはんのおいしさもさることながら(未だに我が家で語り草になってるほど美味だった)、お母様の汗だくなお姿と完全武装な栗拾いファッションが強烈に記憶に残ってます。

   実際やってみると風流さなどとは無縁な肉体労働です。今回も、夫と2人張り切って始めましたが30分間で汗をびっしょりかきました。

   我々の栗拾いファッションは3点セット。登山用の靴(かなりな急斜面に立つ木なので)、車の修理工場用ゴム手袋、出来るだけ分厚い服(近辺に生える雑草のトゲ対策)。要は体を出来る限り密閉状態にしてアクセク動きまわるから、ハードなわけです。2人で1時間黙々と労働して9kgくらいの収穫ってところでしょうか。これを考えると、市場で売ってる栗って決して高くないワって思います。きっと農家の人も家族総出の人海作戦でやっているのでしょうね。

   買ってくる栗と自分達で拾った栗の差。それはやっぱり、拾いたてかどうかの違い。落下後、そして拾ってから時間がたてばたつほど、虫喰い率がどんどん上がってしまう。市場で買う栗は見てくれは良くっても、作業中に虫がにゅるっと顔を出すこともあってギャーッと絶叫することが多々あります。自分で拾いたての栗だと、この確立は限りなく0%に近い。優雅に楽しく栗作業に没頭できるところが好きです。

   それにしても秋って素敵な味覚が目白押しな季節ですね。次回も引き続き、私がとても楽しみにしている秋の産物をご紹介していきます。


先日の義母のお誕生日ケーキに作った「栗のムース」。ムースそして上に絞ったマロンクリーム(蕎麦ではありませぬ……)に、茹で栗をたっぷり入れこんだ味。自分の庭の産物がお菓子に変身しているのを見て、とても喜んでくれました。

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フランス国内でブームの兆し?バスクのとうがらし粉



   近頃フランスの料理番組チャンネルを見ていて、おやおや?っと気が付いたことが1つあります。それは、あの「piment d’Espelette(エスプレット村のとうがらし粉)」がかなり頻繁に登場するようになったこと。前回ご紹介した「ピペラード」をはじめバスクの郷土料理には欠かせない香辛料ですが、他の地方の食卓ではまだまだマイナーだし、まして全国ネットの料理番組で使われるシーンなんて今まで全く見たことなかったのだけど……。

   今年になって、料理研究家の口々から「エスプレットのとうがらし粉」なる言葉を何度聞いたことか! しかもバスク料理ではなく、普段のフランス的お惣菜にさらっと使われている点に要注目です。そう、私たちが七味などをサっとふったりする、あの自由で習慣的な薬味感覚。


ちょっとオレンジがかった明るい色合い。私もバスク料理以外の使い方をもっともっと試してみたい。

   ふと、大好きな「柚子胡椒」(絶対に調味料棚に欠かしたくないモノの1つ!)のことを思い浮かべました。あれも九州特産の香辛料が、あれよあれよという間に全国的な人気香辛料となった典型的な例ですよね。エスプレット村の唐辛子粉も、柚子胡椒のような人気コースをたどっていくのか?

   またまた虎の巻『ラルース・ガストロノミック辞典』の「piment(とうがらし)」の項目を開いてみると、願ってもないような記述を発見。

「フランスでは長い間とうがらしは他の香辛料と混同されていたこともあり、今だにその使用方法はかなり狭い範囲に限られている。ただし、バスク地方はのぞく」

   これを読んでも納得できるように、フランス料理ととうがらしって無縁なんですね。だから当然、バスク以外のフランス人は辛いものに弱い人が多いです。バスクの郷土料理を食べただけでヒーヒー言っている人も時々いて、可笑しくなってしまったことがあります。


毎年9月~10月が収穫期。ちょうど今頃、畑で仕上げの太陽をぐんぐん浴びて収穫を待ち構えている時期。

   それに比べると、日本人の辛いもの好きといったら! 鷹の爪、柚子胡椒、タバスコ、豆バン醤、ワサビ、からし……。馴染みの香辛料を挙げていくとキリがない。たくましく鍛えられている日本人仕様の舌から言わせて頂くと、エスプレットのとうがらし粉は正直言って痛くも痒くもない辛さです。


七味の瓶と並べてみました。親近感を沸かせてくれる小瓶調味料がバスクにはたくさんあります。

   でも、パリなど大都会ではエスニックやアジア料理に慣れている人もたくさんいるし、辛さの免疫がついてきたフランス人が増えているのではないかな。そう言えば、とうがらし粉を使ってた料理研究家の人たちはみんな若手の人ばかりだった。そんな舌の国際化やオリエンタルへの好奇心が、「エスプレット村のとうがらし」人気を後押ししているのではないかしら?というのが私なりの推察です。

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茄子にピーマンにトマト、バイヨンヌ朝市の夏野菜



   ちょっと前にcafeglobeで「渋谷で『朝市』がスタート!」って記事、ありましたね。日本帰国の際はぜひ覗きに行きたい! 「あれが東京にあれば、この街はもっともっと楽しくなる」とありましたが、本当にその通りだって思います。渋谷に朝市のために出かける、なんて素敵ではありませんか。

   育てたご本人から野菜を買うって、想像以上に気持ちが良いことです。顔と顔を突き合わせた買物ですから。この気持ちよさを知ってしまうと、もう後戻りはできないかなって気分。朝市での買物、正直言って面倒なときもあります(雨降りの日とか、深酒した翌日とか)。それでも毎週せっせと通うのは、気持ち良さがクセになったから。

   私にこの気持ち良さをとことん叩き込んでくれたのが、バイヨンヌの朝市。フランス国内の中でも、かなり異色な存在です。八百屋スタンドも数軒ありますが、ほとんどは農家の人の直売式。近辺の八百屋やレストランのシェフ達も買い付けに来る市場です。一度、早く目が覚めたついでに暗闇の中の朝市に出かけてみたところ、客層が全く違うので驚きました。いかにも料理のプロ然した男性が、木箱単位で野菜を買っていく様子は壮観です。


バイヨンヌの市場の野菜は、他で手に入るものよりずっと小ぶり。茄子だって、ほかでは見かけない日本サイズが手に入るのですごく助かります。焼き茄子にすると美味。


いよいよお目見え、バスクを代表する野菜、ピーマンの季節。ぐるんぐるんに曲がっていたりして、いかにも野生味たっぷり!

   さて、バイヨンヌの朝市にトマトがやおら登場するのは7月に入ってから。夏に採れる野菜なのだから夏にしか買えない→夏にしか食べられない。すると「うわートマトだ!」と、有り難味が倍増します。シーズン以外はほとんどトマトを口にしない訳だから余計おいしく感じるし。そして猛暑で疲れ気味のカラダが喜んでるのも分かります。そんなわけで只今、親の仇のようにトマトを食べています!


完熟トマトをがぶりとかじるのって夏の最高のおやつですよね。どの農家の人のもそれぞれにおいしいので、週ごとに食べ歩いてます。

   面白いなぁと思うのは、日本からお越しの方が一番おいしいと言う野菜も、夏ならトマト、冬ならジャガイモ、と平凡であること。目先の変わった野菜よりも、普段食べているベーシックな野菜、そして採れたての味を知ってる野菜だからこそ、反応がいいわけですね。

   以前日本人のお客様にトマトのサラダをだしたら、「バアちゃん家の庭で食べたトマトの味だー!」と叫んでた人がいました。これってトマトに対する最高の賛辞だなぁ、って今でも思い出します。

   次回、トマトたっぷりのバスク料理をご紹介します。お楽しみに。

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「さくらんぼ」特集、スタートします!



   カフェグローブのリニューアルに伴って、新カテゴリー「旅・ごはん」が登場しました! 女子に生まれたのなら、ほとんどの人が当てはまるのでは?と思われる旅好き・食好き性。皆さん共々、私も楽しんでいきます。「バスクの砂糖壷」もこちらへ配属(?)となりましたので、よろしくお願いいたします。

   6月に突入、そろそろ梅雨・初夏の時候ですね。梅雨こそありませんが、こちらのこの時期はものすごい寒暖の落差があります。先週は30℃近い日もあれば12℃足らずの日もあって、冬と夏を往復しました。何年経っても、私の日本人仕様のカラダはこの大陸性気候に付いていくのにヒーヒー言ってるという、情けない状況。体調管理、体温調節こそ日常の一大事であります。

   気持ち的にはまだまだ春気分にぬくぬくと浸っていたいところだったのですが。市場へ行くと、さくらんぼのお出まし!すっかり目が醒めちゃいました。もう夏は目前ですね。


まだちょっと酸っぱいけど……1年ぶりの初夏の味わいは格別。こちらはフランス全国で出回る品種。

   このお初ものとの対面を皮切りに、ここ数日の私はさくらんぼ三昧な日々を送ってました。鑑賞して、買って、味わって、保存食を作って。既にかなり堪能した気分です。詳細は、次回からじっくりお届けして参ります。


三つ子ちゃんを見つけるとつい写真を撮りたくなります。

   今年1月にご紹介して、たくさんの方にリアクションを頂いた「ビターオレンジのマーマレード」と「オレンジの丸ごとコンフィ」。あの時は、オレンジ色の画像をさんざんお届けしました。今月もあの調子で、さくらんぼ色画像を連発してしまいそうな予感です。オレンジ・レシピをお試しいただいた方、これに味を占めて保存食作りにハマった方、そしてさくらんぼが大好きな皆さまにお送りします。再びよろしくお付き合いの程を……。


こちらが地元イッツァス村が誇る「黒さくらんぼ」。村に直接足を運ばないと入手できないレアなさくらんぼ。満を持した味わいです。

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フランス人の摂取量に追いつき追い越せ? 新じゃがの季節到来



   まずはご覧ください、かわいいバスクのオジサマ方を! バイヨンヌの朝市で、じゃがいもを、この季節なら新じゃがを売ってる人たちです。


市場に行くと、売っている人と野菜の空気がマッチしていることに気がつく。優しそうな人が売っている野菜はおいしそうだし、実際においしいんです。これ私の極端な「市場持論」です。

   春真っ盛りのこの時期、色どり鮮やかな野菜や果物に目が奪われてしまい、地味な出で立ちのジャガイモのことをふと見落としそうになるのですが。彼らがいれば大丈夫。ジャガイモのようなホコホコした笑顔と、土の香りが漂ってきそうなお姿を見れば「新じゃがの季節がやってきた!」と連鎖反応を起こしてくれます。


つるんとした柔肌は、じゃがいもの赤ちゃんといった風情。

   『ラルース・ガストロノミック辞典』をひいて見ると、出てくるわ出てくるわ。じゃがいも情報は実に6ページに及んでます。フランスで取れるじゃがいもの品種は17種類。全国的に栽培している品種のほかに、ブルターニュ地方でしか取れない品種も幾つかあります。

   北の地方の方が消費量が多く、また社会的地位によっても消費量にばらつきがある、との言及にもフムフムと納得。じゃがいも1個(約100g)でパン40gの栄養価に値するそうです。主食費を削減しようと思ったら、じゃがいも料理を研究すれば家計の助けになるやもしれない。

   紹介されている代表的なじゃがいも料理は14種類ほど。蒸す、茹でる、揚げる、煮る、ソテーする、オーブンで焼く。どの調理法でもそれぞれのおいしさが出るところがじゃがいものスゴさだな、と再認識しました。

   驚かされたのはこの数字。フランス人の年間平均摂取量73kg! 1人平均月に6kg、週に1.5kgのじゃがいもを消費しているってことです。道理で市場でオジサンに「1kg頂戴!」と言うと、いぶかしげな表情を見せられるわけだ(「足りる?」と心配顔で聞かれたこともあり)。

   でも、新じゃが摂取量なら私もフランス人にも負けてないかもしれません。料理という以前に、ただ蒸かして食べるだけ。これがあったら、ご飯も炊かないし、パンもいらない。簡単でおいしくって、大好きな主食風な食べ方です。


蒸かしたてにバターひとかけ、粗塩ぱらり、そしてシブレットをちょきちょきと。

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春の香りたっぷり、ホワイトアスパラガス



   ヨーロッパの人にとってのアスパラガスって日本人にとっての筍に似ている、と思う。味はもちろん趣もだいぶ異なる。でも春の息吹を感じさせる素材、掘りたてが何より珍重される素材、そして年中手に入る水煮もの(あれはあれでおいしいけど)とは別格の取り扱い、そして何よりも、春の味覚として人々に愛されているという点において。

   春になり、朝市通いがますます楽しくなってきました。毎週、新しい野菜が登場して、売り場は賑やかに華やかになりつつあります。先週の4月第2週、堂々と顔を見せたのがホワイトアスパラガスです。


緑~ヴァイオレット~白の色トーンが美しい。1キロでこの位の分量です。

   アスパラガスの一大産地であるランド地方(バスクのお隣)からスタンドがやってきます。普段はほかの野菜も取り扱っている店ですが、この時期はアスパラガス専門スタンドに。それだけ売る側は気合が入ってるし、買う側も心待ちしている野菜ということです。

   お値段の方はと言いますと、市場のはキロ当たり5.5ユーロほど。ほかの野菜と比較すれば高級な素材と言えましょう。でも、ただ茹でるだけで立派な前菜になり得る、という絶対価値を考えればお手頃な野菜とも言えます。


市場の人のアドバイスに従って、熱湯の中で20~25分茹でる。


粗熱を取ってほんのり温かいところにソースを添えて。香りがすばらしい!

   『ラルース・ガストロノミック辞典』で調べてみると、こんな実用的なアドバイスを発見。「1人前300gを目安に」だって。食べる前に読んでおけば良かった……!と後悔した私です。とりあえずたくさん買ってきて、一気に茹で上げて食したところ、胸やけのような、ちょっとした気分の悪さを感じてしまったのです。なんと言いましょう、植物パワー、大地パワーのようなものに酔っ払ったような感覚。

   旬のものこそ、お上品に少しづつ楽しむのが肝要ですね。と、頭では分かっていても、見ればついつい買いすぎてしまうのがお初もの。春のあいだ、当分このお初マジックに翻弄されそうな気がします。


今週はイースターの連休です。これを持って教会へ出かけるらしい。朝市で配ってくれます。

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マテスク里佐プロフィール

バックナンバー
私の「臓物料理」入門 (2月23日)
真冬の献立、キッシュと「マーシュのサラダ」 (1月19日)
師走のおいしいお惣菜、「ブーダン・ブラン」 (12月15日)
秋のマルシェとお気に入りメニュー (9月29日)
「生ミルク」のある暮らし、その後 (9月15日)
「イチジク」のおいしい食べ方 (8月25日)
さくらんぼの過去記事を読みながら (6月09日)
アスパラガスの食べ方つれづれ (5月19日)
レモン収穫期のはちみつシロップ (3月24日)
「ショコラの街」のお菓子用チョコレート (2月03日)


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