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パティスリーBasque
2008年5月20日
前回に引き続いて、バスク饅頭ならぬガトーバスクの話題。今回はパート・バスク(ガトーバスク生地のこと)についてです。
まずはこちらのフォトをご覧あれ。以前にもご紹介したことのある“ガトーバスク祭り”でのデモンストレーションの模様です。ラガーマンとしても充分通用するような屈強で大きなカラダつきをしたパティシエたちが、その大きな手でガトーバスクを仕上げていく様子は圧巻です。

塩もぱらぱらと。

とにかく作業が早い!というのが第一印象。でも出来上がった生地はちゃんとツルンときれいにまとまってる!
バター・砂糖・卵を練り混ぜる。それを粉類とザックリ押し混ぜるようにしてまとめます。使用道具は一切なし。3台分くらいの生地を作るのに、所要時間わずか3~4分ってところ。とにかく手のサイズ、手の力がケタ違いなのです。
この“力強くざっくり”ってところがいちばんのポイント。これによってガトーバスク独特のザクっとした粉の風味が生きたおいしさが生まれます。
これを泡立て器を使ってバターと卵に空気を含ませ、粉も几帳面に混ぜ込んだりしてしまうと、フンワリきめ細かいバター生地にはなるものの(ある意味こういう生地のほうが日本人好みであることは確かなのですが)、粉のインパクトは消え失せてガトーバスクらしくなくなります。

生地を麺棒で伸ばすのも瞬間芸。あれよあれよという間に出来上がっていきます。
フランス語は全ての名詞が男性名詞と女性名詞に分かれてるのは、ご周知の通り。ということは、存在するすべてのお菓子にもしっかりと性別がついているってこと。シューは男性だし、ミルフィーユは女性、シャルロットは女性、タルトも女性、マカロンは男性……という具合に。
ガトーバスクはもちろん男性名詞(ガトー自体が男性形なので)。“名は体を表す”のごとく、ガトーバスクは男性的に仕上げた方がおいしいし、サマになるお菓子です。生地は力強く男らしく、フィリングはたおやかなクリームやジャムで女らしく! お互いの良いところを引き立ててこそ、魅力的なお菓子になるのです。
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カスタードと黒さくらんぼジャム、2つの正統派フィリング
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パティスリーBasque
2008年5月13日
そろそろサクランボの季節。ってことはそろそろガトーバスクも旬の時期を迎えますので、久々にガトーバスクの話題を! 今回は“フィリング”についてです。
ガトーバスクは言わずと知れたバスクの郷土菓子です。フランスのお菓子の世界での立場を日本のものに例えるとしたら、「バスク饅頭」としてしまうのがいちばんしっくり来るのでは? っていうのが私の極論。もちろんベースは全く違いますが、皮で餡を包んだ素朴なお菓子という意味合いにおいて。
日本各地でさまざまなお饅頭が作られているように、フランスにも皮のパートと餡のフィリングで出来たシンプルなお菓子はガトーバスク以外にもたくさんあります。

マルシェのガトーバスク・スタンドで。ご覧のように本場のガトーバスクは、背を低く平べったく仕上げることによって、生地よりもフィリングを楽しむような作りになっています。
では「バスクのお饅頭」の特徴は何?って言うと、包んでいる餡の種類がはっきり限定されていること。バスクで実際に作られてるガトーバスクのフィリングは、「カスタードクリーム」か「イッツァス産黒さくらんぼジャム」の2種類のみ。「この2種類しか認めないからね!」という暗黙の了解みたいな空気が現地にはあります。
日本でもガトーバスクを置いてるお店は結構ありますよね。私は日本帰国時は他に食べたいものがありすぎて、ガトーバスクを食べてるお腹の余裕なんて全くないのですが、「日本のパティスリーでは何のフィリングを入れているのかしら?」ということだけはとても興味があります。
今回手元にある日本のお菓子本(いずれも有名パティシエやお菓子研究家の方々の本)をざっと見回したところ、7冊の本でガトーバスクが紹介されてました。そのうちカスタード派は2つ、あとは栗のペースト、ナッツ類、さくらんぼ以外の果物のジャムを使ったアレンジ版です。

地元のほとんどのお菓子屋さんでは自家製ジャムで作っています。ジャムも一緒に販売しているお店も多い。
保守的なバスクの人がアレンジ版を見たら「これはガトーバスクじゃないわよ!」と小言を言ってきそう……。でもこれは他国の食文化を紹介しあうときはお互い様。作る人と食べる人がバスクの人ではなく日本の人なのだから、そっくり同じものをつくる必要もないし、自分達がおいしいって思う感覚で再現して当然だと思います(もちろん本場の味を知っておくことも大切だと思いますが)。
かく言う私も拙著『甘い香りの幸せデザート』の中ではカスタードでもなく、黒さくらんぼジャムでもなく、「くるみといちじく」のアレンジ版でご紹介しました。
これは私自身がカスタードよりも果物入りの方が好きだからと、「材料は日本で手に入りやすいもので」という編集者の方のアドバイスがあったから!
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2007年6月12日
半年程前、ガトーバスクに関してあるショッキングな話を耳にしました。
私にこの話を教えてくれたのはマダム・ボネ。彼女はイッツァス村の民宿レストランの女将であると同時に、どこの国のどの町にも必ずひとりはいるであろうオシャベリ大好き、いわゆる“ウワサと情報の玉手箱”的な女性。
同業者の景気の話題、どこどこで起きた交通事故のこと、今年の農作物の出来具合、そしてもちろん人の噂も……。次から次へと地元情報を提供してくれるわけです。そうそう、最近は「あなたのおかげかしらー、ニッポンのお客さんが増えたわねぇ」とご機嫌顔で言われました。
普段私は、「ハー、へぇ、そうですか」と適当に相槌をうつのが精一杯(彼女にとってはかなり物足りない相手に違いない)。そんな私が、この話には「ウンウン、それでそれで」と珍しく反応を示したものだから、マダム・ボネはいつになく嬉しそう。目を輝かして語ってくれたのです。
「一部の政治家やおエライさん達の中でガトー・バスク協会なるものを作ろうという動きがあるのよ。ガトーバスクを村興しや自分達の功績材料に利用しようっていう魂胆なワケ。それだけならまだ許せるとして、彼らが何を企んでいるかアナタ想像できる?」
ううん、と首を横にふる私。
「なんと、ガトーバスクを1つに統一しようっていうの! あなたも知っているように、ガトーバスクはお店によってだいぶ違うでしょう? それを、1つのルセット、1つの味にしようと。生地やクリームはもちろん、焼き時間や生地とクリームの比率なんかまで細かく決めようじゃないかって。(途中トークは略)……ファーストフードじゃあるまいし! 全く何て愚かなことを思いつくのかしらね!」
この辺まで一気にしゃべり終わった頃には、彼女は仕事中で私は食事中ということも完全に忘れ、おしゃべりに夢中というか興奮状態。彼女の弾丸トークは、我々が前菜を食べている間中ずっと横で続きました。

豊かな個性を強調することこそ地方菓子の魅力なのに。没個性のガトーバスクだなんて……想像しただけで虚しい。
最後にマダム・ボネが吐き捨てるように言った台詞はこれ。
「お菓子のことを何も分かっちゃない、ジイサマ連中の考えそうなことよ!」
パチパチパチ、と手を叩いて賛同しました。ホント、ジイサマ方の愚かな計画が頓挫するように願うばかりです……(まあ十中八九、頓挫すると思いますけど)!
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2007年6月08日
新しいカテゴリーをたてました。名付けて「パティスリーBasque 」。バスクのお菓子にまつわる温故知新なストーリー、楽しいエピソード、そして私の主観的思い入れや発見などを綴っていこうと思います。
バスクの有名お菓子といえばガトーバスクなわけですが、他の無名(?)地方菓子も少しづつご紹介していくつもり。
お菓子屋さん、パン屋さん、レストラン、マルシェ、はたまた民家にも「ガトーバスク売ります」の看板……。バスクにはガトーバスクがひしめいている! そんな、よりどりみどりなお店ガイド・試食レポートも入れていきたい(ただし太る事だけは勘弁願いたいので、ゆっくりペース遵守で)。

もうすっかり目が慣れてしまった私でも、お菓子屋さんの前を通りかかると「どれどれ今日のお顔は……」と必ず覗いてしまう。ガトーバスクの焼き色、質素な佇まいは、お菓子の原点を教えてくれるような気がする。
単なるお店案内や情報の羅列、ましてや「おいしい、おいしくない」などと評論ぶるつもりは全くなし(私の好みレベルなどは言及してしまうと思いますが)。なぜならお菓子は食にとどまらず、文化、風土、暮らしそのものなのだから。味だけでなく、お菓子の背景も感じることによって楽しく広がる世界だから。
バスクのお菓子をすでに味わったことのある人、まだ一度も口にしたことのない人、日本のお菓子屋さんのを味わったことある人、フランスの地方菓子に興味がある人、そして正直言ってあまり口に合わなかったナという人……etc。お菓子の経験値・知識量・好みのレベルに関わらず、楽しんでいただけますように。そんな願いを込めて、お届けしていこうと思ってます。
次回もガトーバスクのお話しです! お楽しみに。
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