更新日:2009年8月25日

バスク地方は、フランス南西部~スペイン北部に広がる緑と水のゆたかな土地。お菓子とおいしいものが大好きなマテスク里佐さんのオーブンからは、今日も甘くて香ばしいいい匂いが立ち上っています。里佐さんがバスクで出会い・学んだお菓子やお料理、そして人々の暮らしの様子について、レシピとともにお届けします。

文=マテスク里佐
   

「イチジク」のおいしい食べ方

   大のイチジク好きです。祖父母の家に大きなイチジクの木があって、夏休みの終わりに遊びに行くと甘煮やジャムを食べた思い出があります。子どもの舌には、大人が言うほどおいしいとは思えなかった……ただ「不思議な味の果物」と思っていた記憶があります。

   大人になると、「この不思議な味こそがおいしい」と思えるようになりました。そして私のイチジク好きが見事に開花したのは、フランス! ひと夏の太陽でじっくり熟成させたような、ねっとりした食感と濃縮感のある味わい。「さすが!」と感動しました。


思わず木箱買いしてしまう、おいしそうなイチジク。タルトやクランブルなどの焼き菓子に愛用しているヴァイオレット種は、完熟ながらも皮がピンとしていて実がひきしまっています。独特の深みのある色と味が特徴で、火を通すとちょっぴりスパイシーさも感じます。

   フランス料理におけるイチジクの使われ方、ツワモノ揃いのフランス素材の中でもしっかり自己主張しているイチジクのおいしさも、目からウロコの発見でした。お料理の中に使われるイチジク、フォアグラや鴨料理などに添えられた食べ方が大好きです。

   昨年のイチジクの季節、友人宅でのディナーの前菜に「フォアグラのテリーヌ&いちじく」が登場しました。美しいプレゼンテーションとあまりのおいしさに、テーブルからは賞賛の嵐……! すべて自家製と聞いて、かすかなカルチャーショックを覚えたほどです。思わず、テリーヌもチャツィネ(スパイスを使ったジャム)もお代わりしてしまいました。

   フォアグラのテリーヌは彼女の父上のお手製、チャツィネは母上が庭の収穫で作ったもの。どちらも洗練された味でありながら、作り手の愛情と年季を感じさせるものでした。なにより、ご両親の自慢の逸品が素敵なコラボ料理になっているところが素晴らしかったです。


こちらは、小ぶりで皮が黄緑色した種類です。白ワインとレモン、バニラで、爽やかなコンポートにしました。しっかり冷やして、リキュールグラスに入れて食後のひとくちデザートに(シロップも美味!)

   地元の朝市では、4~5軒の農家の方から買うことができます。卵や野菜をささやかに売ってる人が、庭の木の収穫を売っているスタイル。当然ながら完熟もぎたてで、惚れ惚れしてしまうほどおいしい。

   それぞれ品種が微妙に違うし、時期によって甘さや身の引き締まり方も違ってくるので、コンポートは好みと勘をたよりに作っています(レシピを聞かれると、ちょっと困ってしまうもののひとつ)。赤ワイン煮、白ワイン煮のほか、ポルト酒煮やブランデー煮にしたり。あっさりコンポートもいいけれど、数日間じんわり火を通したコンフィ風甘煮も乙な味です!

   次回、イチジクの季節の定番デザートのご紹介です。

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フランスの遠足ガイド&BENTOブーム

   リュックサックにおべんとうと水筒を入れて、てくてく歩く。子どもの頃「遠足」が大好きだったのですが、バスクでその「遠足好き」が復活しました。

   きっかけは、「バスク地方の遠足ルート・ガイド本」。地元出版社からいろいろ出てます。1冊あたり約50ルートが紹介されていて、行程時間、歩行距離、難易度などのプラクティカル情報が細かく載っています。


バスク地方内のエリア別遠足ガイドも出ています。今までの経験上、どのルートも本当に素晴らしかった!

   ただ歩くという運動目的ならバスクのそこら中が遠足ルートになりえるし、ガイドブックなんて必要ない。遠足ガイド本の素晴らしいところは、目も心も知識も満足させてくれるルートを紹介してくれる点です。フランスの田舎ならでは、バスクならでは、土地の魅力を知り尽くしたプロおすすめのコースが満載です。

   古城、ピレネー山脈をのぞむパノラマ景色、中世の教会、牧場やチーズ農家、古い水車……などなど。どの風景も、どの見所も、素晴らしい。一応カメラ持参で行くようにしていますが、撮っておきたい風景が多すぎて、ウォーキングがはかどらないところが難点といえば難点です。


とうもろこし畑の中の通り道。


アドゥール川沿いの散歩道。

   一番心に残っているのは、白樺林の中を鹿の親子が走っているのを見たこと。「夢か幻か?」というほど、幻想的な光景でした。かと思えば、道中いきなり「イノシシの皮剥ぎシーン」に出くわしたこともあり。狩の季節、しとめた獲物を処理しているところだった……。かなり焦りましたが、後でガイドをよく読んだところ「このコース、狩の季節には避けること」という注意書きを見つけて、もっと焦りましたが!

   そして、遠足のお楽しみといえばおべんとう。ウォーキング後に青空の下で食べるおべんとうのおいしさといったら! はじめの頃は、「パンとチーズ」だったのが、「パンとハムとチーズ」→「卵サンドウィッチとおかず」と進化して、結局は「おにぎりとおかずいろいろ」の行楽べんとうを持参するようになりました。


ときどきこんな素敵なお弁当スポットが登場して、嬉しくなります。ただしフランスのガイドはこういう実用ポイントに関しては、ノーインフォメーション主義。日本のガイドだったら、必ず記載しているところですが。

   ところで「おべんとう」といえば……今フランスで「BENTOブーム」が沸き起こっているのをご存知でしょうか。火つけ役は、フランス人のマニアな人たちのお弁当ブログだったようで。ついには、おべんとう本が出版されたり、料理雑誌で取り上げられたり、フランス製おべんとう箱も発売されてます! このブーム、日本人の立場からするととても興味深いものがあるので、しばらく注目していきたいと思ってます!

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バスクの真夏模様をお届け

   みなさま、暑中お見舞い申し上げます!

   8月も中盤、夏真っ盛り。ということで、できるだけ真夏ムードな写真をセレクトしてみました。太陽ぎらぎら、紫外線指数100%のビアリッツの海岸で撮ったものです(撮影月は7月ですが)。日本の夏とはひと味違う、バスク独特の暑さを感じていただけたら……。

   バスクの夏は、“そこそこ”暑いです。“そこそこ”がどの程度かというと、東京から遊びに来た友人たちが「意外と暑いねー」(もうちょっと涼しいのを期待していた)とつぶやくレベルです。陽射しの強さにも、皆が驚きます。日本からバカンスでお越しの皆さん、サングラスと日焼け止めクリームは必須アイテムです!


グラン・プラージュのカフェにて。ひとりで優雅にヴァカンスを楽しんでいる大人の女性ってカッコいい。

   「でも、ここが日本と違っていいのよねー」と喜ばれるのが、朝晩の涼しさ。日中の最高気温が30数℃に上った日でも、夜になれば1枚なにかを羽織りたくなるほど気温が下がります。熱帯夜はほとんどありません。

   とは言え、天候がめまぐるしく変化している昨今なので、年によって夏の気候がまったく違います。猛暑の年もあれば、冷夏の年もあり。いまだに強烈に記憶に残っているのは、2003年夏のヨーロッパ猛暑。友人が扇風機を買いに行くのにつき合ったところ、長蛇の列だったことを思い出します。

   猛暑でも扇風機でしのげる程度ですから、基本的には日本よりずっとラクです。最近ちょっと気になるのは、ここバスクでも「冷房あり」を売りにしたレストランが増えてきたこと。先日行ったお店でも、しっかりクーラーが効いてました。隣のテーブルの人が「もっと気温を低くしてくれ」とリクエストしているのには驚いてしまいましたが。


海風に吹かれながらのお茶タイム。Dodinで私が決まってオーダーするのは、夏限定の苺クープです。カシス、フランボワーズ、苺のソルベに生クリームがたっぷり。

   ところで先日、子どもの月例検診で小児科医に「海水浴デビューはしました?」と聞かれ、「いいえ、まだです」と答えたところ、「海水浴に、処方箋はいらないからね」とウィンクしながら言われてしまいました。

   「水温はできたら20度以上の日に」「紫外線対策は怠りなく。日焼け止めクリームをしっかり塗ること」「まっ昼間は避け、朝か夕方に行くのが理想的」なんて諸条件も指導されてしまうと、なかなか実行できずにいるのが実情です。


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夏デザート、「チーズケーキ風トライフル」

   ふんわりクリームとしっとりビスキュイ、そして旬のフルーツ。「トライフル」は、黄金の組み合わせを楽しむデザートです。

   本来はカスタードクリームと生クリームを使いますが、私は自家製の「チーズクリーム」で作ってます。こうすると、トライフルとチーズケーキの良いとこ取りのおいしさです。


マルシェで衝動買いしたフランボワーズとレーヌ・クロード。どちらもフランスの夏を代表する果物です。レーヌ・クロードは、ねっとりと濃厚な甘みが特徴のプルーンの一種。ほかの品種のプルーンは加熱向きですが、レーヌ・クロードは生食がおいしいです。

   チーズクリームとは、以前ご紹介した「フォンテーヌブロー」のこと。フロマージュ・ブランをベースにした、ほんのりチーズ風味が効いたクリームです。私にとっては、まさに「万能デザートのもと」! 特に夏のお手軽デザートづくりには大活躍してくれます。

   「苺のフォンテーヌブロー・クープ」のようにヴェリーヌ風(グラスデザート)にしたり、今回のように大きなガラス容器に入れてケーキ風にしたり。フルーツは1種類だけでも、色とりどりに組み合わせても素敵です。


ビスキュイ、またの名(英語)はフィンガービスケットです。何かと使える生地なので私は茶飯事的に作ってますが、市販の生地を利用していただいても。

●「チーズケーキ風トライフル」(5~6人分)

フォンテーヌブロー
フロマージュブラン……500g
生クリーム……200g
グラニュー糖……50g

ビスキュイ(または市販のスポンジケーキやフィンガービスケットなど)……適量
フランボワーズジャム(またはお好みのジャム)……大さじ5
キルシュ(またはシロップ)……1/2カップ
お好みのフルーツ……適宜

1.「フォンテーヌブロー」を前もってつくっておく。
2.フランボワーズジャムをキルシュで溶きのばす。
3.バットにビスキュイを並べ、2を全体にふりかけてしみ込ませる。
4.グラス容器の底に3をしき、その上にフォンテーヌブローを塗り広げ、フルーツを並べる。
5.4を繰り返して段々に重ね、冷蔵庫で数時間以上落ち着かせる。トップにフルーツを散らしてサーブする。

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マテスク里佐プロフィール

バックナンバー
「イチジク」のおいしい食べ方 (8月25日)
フランスの遠足ガイド&BENTOブーム (8月18日)
バスクの真夏模様をお届け (8月11日)
夏デザート、「チーズケーキ風トライフル」 (8月04日)


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