更新日:2008年3月25日

バスク地方は、フランス南西部~スペイン北部に広がる緑と水のゆたかな土地。お菓子とおいしいものが大好きなマテスク里佐さんのオーブンからは、今日も甘くて香ばしいいい匂いが立ち上っています。里佐さんがバスクで出会い・学んだお菓子やお料理、そして人々の暮らしの様子について、レシピとともにお届けします。

文=マテスク里佐
   

フランス人が大好きな「ジャンボン・ド・バイヨンヌ」

「バスク6daysの過ごし方」
5e jour 11h00 ジャンボン・ド・バイヨンヌを買いに行く

   “旅のおみやげ”。これまた風習や国民性の違いが出ておもしろいなぁといろんな人たちに付き添ってて思います。

   特に日本人とフランス人のおみやげの買い方は対照的。日本人にとって、おみやげはヴァカンスの証、旅の勲章! ちらりと人に見せたくなるもの、ちょこっと人にあげたくなるもの……バスクだったら、リネンバスクのテーブルクロス、チョコレート、さくらんぼジャムなどが恰好のアイテムです。

   対してフランス人。彼らの頭の中にはヴァカンスをカタチで残す、っていう観念なんてサラサラないのでは? 職場におみやげを配る風習や気遣いは無用だし、旅先でのお買い物には(普段もだけど)ドライな感覚を持っていると思います。

   そんな彼らでも、目の色変えて買っていくおみやげがコレ! 『ジャンボン・ド・バイヨンヌ”(バイヨンヌの生ハム)』。イタリアはパルマの生ハム、スペインはイベリコ豚生ハムとお隣両国に名だたる逸品があるけれど、愛国意識高いフランス人にとっての生ハムといったら自国産バイヨンヌ生ハムなのです。


ふたりの真剣な様子に、お店のマダムも熱心に生ハムの種類の説明中。


壁にぶら下がる生ハム、エスプレットの赤とうがらし。カウンターにはチョリソなどの豚肉加工品類やフォアグラやパテの缶詰などなど。典型的なバスクのお肉屋さんです。

   バイヨンヌ生ハムとひとくちに言っても、本当にピンからキリまで。豚の質、熟成期間、そしてお店や職人さんによってランクや種類がいろいろあります。ガルビュールなどの煮込み料理専用の大味なジャンボンもあれば、イベリコ生ハムに勝るとも劣らない舌にとろける極上品も。

    「ジャンボン・ド・バイヨンヌ」だからおいしいという思い込みと早とちりは禁物なので、買い求める場合は必ず試食させてもらってから。説明をもとめれば、大抵のお店の人は喜んでレクチャーしてくれるし、その場で薄くそぎ切りしたものを振舞ってくれます。


見てください、このアツい表情! 語りだすと止まらないオジサンだった……。

   ただしバスクのお肉屋さんのご主人って、陽気を絵にかいたような人たちが多いので自慢の品々を語らせるとオシャベリが際限なく続いてしまうのが難点! 今回も生ハム300gを買うのにオシャベリが延々と続き(しかも話題は一環して生ハムなのだから大したもの!)1時間近くも経過してました。

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ゲスト用の朝ごはん、「オーガニック・スコーン」

「バスク6daysの過ごし方」
5e jour 9h00 朝食用のスコーンを焼く

   スコーンをよく焼きます。日本で実家にいた頃はおいしい紅茶が手に入ったときのティータイムのお菓子でしたが、フランスに来てからは“朝ごはん”専用です。

   「スコーンって朝食に使える!」と気がついたのは、かつて夫の友人たちが急遽泊まっていくことになったとき。パンの買い置きがないことに気がつき、「朝ごはんに粉ものがないはマズいっ」と焦った私の頭に閃いたのがスコーンでした。

   「パンの代わりにどうぞー」と焼きたてスコーンをバターとジャムと出したところ、殿方3名から絶賛され(やっぱりフランス人男性ってホメ上手ですからね……)、私はかなり気をよくした想い出が!


今回作ったのは“ざっくり”タイプ。私の7年間のスコーン統計(?)によると、日本人ゲストはさっくりフンワリ、フランス人ゲストにはざっくりがウケる気がする。

   以来いろんな人におだててもらいながら、ゲスト滞在中の朝ごはんに必ず1回は焼いてます。こんなに簡単なのにこんなに喜んでもらえる理由はただひとつ。レシピうんぬんの力よりも、本当の焼きたてを味わってもらってるからだと思います。

   焼き上げのタイミングだけは、神経質なほど気を使ってるので。ゲストがシャワーを浴び始めた頃に準備をスタートすると、食卓についてもらう頃にちょうどタイミングよくオーブンから出すことが出来ます。


お客様との朝食風景は毎度こんな感じです。フランス人にはクロテッドクリームはあまり人気ありません、やっぱりバターがお好き。そしてなんといってもジャムの消費量がハンパない! 5日間で一瓶空になりました。

   木の実やドライフルーツを入れたり、ライ麦粉や全粒粉などをミックスして粉の風味を変えられるところも作り飽きない理由。加える水分も牛乳のほかに、ヨーグルトやフロマージュ・ブラン、はたまたマルカルポーネ(ものすごくフンワリ&リッチなスコーンになります!)やリコッタを入れるときも。

   もはやイギリスのスコーンからはかなり逸脱してますが。冷蔵庫にある乳製品やお菓子のストック素材を自由に組み合わせ(在庫整理という意味合いも)、気楽にアレンジできるところがスコーンの楽しさです。

   今回のゲストはオーガニック意識の高いおふたりだったので、粉の一部は全粒粉、中にはシリアル5種と胡麻、砂糖はカソナードという初アレンジで焼いてみました。

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ルヴァン酵母パンとチーズの晩餐

「バスク6daysの過ごし方」
4e jour 17h00 ディナー用のパンを焼く

   2年程前から夫がパンづくりを楽しんでます。といっても、こねは Machine a pain(ホームベーカリー)、発酵はドライイーストというお手軽派です。

   このホームベーカリー、実は私がフランスの某お料理コンクールで優勝した際の景品のひとつ! 「せっかく頂いたのだから使わなきゃね」と軽い気持ちで始めたのですが、私よりも彼の方がハマってくれたのでシメシメです。

   いまや仕事帰りにスーツ姿で“水車の粉挽き屋さん”(バスクの伝統的な水車で挽いた粉を売ってるお店)に寄って、自分で数種類の粉をブレンドするように。理系人間らしく毎回ノートに記録しながら作ってます。ちなみに、うちのベーシックパンはライ麦粉パン、全粒粉パン、パン・オ・レの3種類。

   そんな我が家に、新たな“パン革命”がやってきた! 革命の引導者は、今回のゲストのニコラ(この家でもなぜかパンづくりは男性)。彼は数年前からルヴァンでパンを焼くのが日課という、達人なのです。この大きなパン(粉500g分)を2人で1日1個朝晩で食べきるというのだから、スゴい消費量。


全粒粉、小麦粉、ライ麦粉をほぼ同割で入れた配合。中に雑穀を入れ、胡麻をたっぷりトッピングして焼きあげたルヴァンの天然酵母パン。焼き上がった時の香りの素晴らしさが秀逸! そして冷めても風味がしっかり残っておいしい。チーズとの相性もばっちり。


粉屋さんへ行ったら全粒粉が売り切れだったので、オーガニックのお店へ材料調達に。使用した穀物は、胡麻、オートミール、亜麻の種、ひまわりの種。そして大切なルヴァン種もこちらで購入。

   農家で調達してきたバスクのオッソイラティ。そして彼らのお土産サヴォアのチーズ。今夜の主役はとびきりのフロマージュ4種類。これに相応しいパンを用意しよう! ルヴァンのパンづくりを作ってもらいつつ、私もいろいろ勉強させてもらいました。


手前から、農家で買ってきたバスクの『シェーブル(ヤギのチーズ)』、『オッソイラティ』、『サヴォアのトム』、『マール・ド・レザン』。マール・ド・レザンは、ワイン作りの際の葡萄の搾りカスで覆われてるという、サヴォア特産の珍しいチーズ。葡萄の香りがしっかり染み込んだ、独特の風味をもたらしてます。


ひと口噛みしめてみて、あまりのおいしさに衝撃を受けました。チーズと交互にいつまでも食べつづけられる味……。自分史上、パンを一度にこんなにたくさん頂いた日は初めて。こういうパンが自分たちで作れるなら、ご近所のイマイチブーランジュリーは不要!

   以来数週間、我が家のパンづくりもイーストパンを卒業してルヴァン発酵一辺倒に。それに応じてパンの消費量はうなぎ上り、それに反比例するかのようにお米と日本調味料の減り方はペースダウンしてます。

   主食が変わると自然と料理が変わる、食卓が変わる! パン革命にとどまらず“食卓革命”を起こしそうな気配です。

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羊チーズ「オッソイラティ」をもとめて
バスクのファームを訪問する

「バスク6daysの過ごし方」。
4e jour 11h00 農家へオッソイラティを買いにいく

   バスク特産の羊乳チーズ、「オッソイラティ」。マルシェでなく、フロマジュリーでなく、ましてやスーパーなどではなく、農家を訪れて買う。“限定ゲスト”と楽しむ、我が家のスペシャルご案内プランです。

   限定ゲストの条件とは……おいしいチーズとおいしいパン、おいしいチーズとおいしいワインをこよなく愛する人たち。「この3つさえあれば今夜のディナー、他に何もなくていいから!」と言ってくれる人たち。チーズを味わいながらチーズのことを熱く語ってくれる人たち。


農家のお宅の住宅兼事務所兼フロマージュ売り場の一軒。広大な土地と膨大な数の羊を飼育している大きな農家でした。我が家から車でわずか15分足らずの距離なので、これから頻繁にお世話になりそうな予感。

   となると、日本人よりもフランス人と行く機会が多くなるのは紛れもない事実。だってやっぱりフランス人にとってのフロマージュって、彼らが愛して誇りに思ってる食文化そのものだから。しみじみとおいしそうに食べる様子、パンとワイン、チーズとワインを交互に味わっている姿は、絵になりすぎるくらい絵になるのです。

   原料である羊のミルク、それを生みだしている羊の群れ、そしてその羊たちを愛情かけて育てている農家の人たち。チーズが出来上がる環境丸ごとを見て、試食させてもらい、好きな分だけ買って帰る。すると食卓でそのチーズを味わう度に、“あの家のチーズの味”として大切に味わうことが出来ます。


全部で500頭の羊を飼っていらっしゃるという。放牧している羊とこうして羊舎にレストしている羊がいます。生後2週間ほどの赤ちゃん仔羊もたくさん! カメラを向けると、赤ちゃん羊たちがワーっと私の方へ群がってきました。


生産してらっしゃる5種類のチーズを試食させてもらいました。バスクにしては珍しく、シェーヴル(ヤギのチーズ)も。どれも本当に美味で、思わずたくさん買い込みたくなる! 生産者の方からならではの話をいろいろ聞けるのもファーム訪問の醍醐味。

   バスクの山道をドライブしていると、「フロマージュ売ります」の農家の看板があちこち目につきます。以前訪れて気に入った農家を再訪することもあれば、今回のように鼻をきかせて新たな出会いを求めるケースも。

   実はこの日も他の目的で車を走らせていたときに、私がすかさず看板を発見して(こういうことだけは動体視力が良いワタシ)、「寄ってみよう!」と盛り上がったのがきっかけ。


「将来は、鶏を飼育して生みたて卵を食べられるような生活をしたいと思ってるの!」とファーム生活に憧れているマリナ。今回の訪問に大喜びしてくれました。もちろん、お土産チーズもたくさんお買い上げ。

   どんなパンと食べよう? ワインは何にする? 帰りの道中は、すでにチーズとパンとワインの話題でもちきりに。そして車内はたくさん買い込んだチーズの香りで充満。急遽その日の夕食の献立が変更されたのは言うまでもなく!

    “チーズとパンとワインの三重奏ディナー”の模様、次回お届けします。


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マテスク里佐プロフィール

バックナンバー
フランス人が大好きな「ジャンボン・ド・バイヨンヌ」 (3月25日)
ゲスト用の朝ごはん、「オーガニック・スコーン」 (3月18日)
ルヴァン酵母パンとチーズの晩餐 (3月11日)
羊チーズ「オッソイラティ」をもとめて
バスクのファームを訪問する
(3月04日)


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