半年程前、ガトーバスクに関してあるショッキングな話を耳にしました。
私にこの話を教えてくれたのはマダム・ボネ。彼女はイッツァス村の民宿レストランの女将であると同時に、どこの国のどの町にも必ずひとりはいるであろうオシャベリ大好き、いわゆる“ウワサと情報の玉手箱”的な女性。
同業者の景気の話題、どこどこで起きた交通事故のこと、今年の農作物の出来具合、そしてもちろん人の噂も……。次から次へと地元情報を提供してくれるわけです。そうそう、最近は「あなたのおかげかしらー、ニッポンのお客さんが増えたわねぇ」とご機嫌顔で言われました。
普段私は、「ハー、へぇ、そうですか」と適当に相槌をうつのが精一杯(彼女にとってはかなり物足りない相手に違いない)。そんな私が、この話には「ウンウン、それでそれで」と珍しく反応を示したものだから、マダム・ボネはいつになく嬉しそう。目を輝かして語ってくれたのです。
「一部の政治家やおエライさん達の中でガトー・バスク協会なるものを作ろうという動きがあるのよ。ガトーバスクを村興しや自分達の功績材料に利用しようっていう魂胆なワケ。それだけならまだ許せるとして、彼らが何を企んでいるかアナタ想像できる?」
ううん、と首を横にふる私。
「なんと、ガトーバスクを1つに統一しようっていうの! あなたも知っているように、ガトーバスクはお店によってだいぶ違うでしょう? それを、1つのルセット、1つの味にしようと。生地やクリームはもちろん、焼き時間や生地とクリームの比率なんかまで細かく決めようじゃないかって。(途中トークは略)……ファーストフードじゃあるまいし! 全く何て愚かなことを思いつくのかしらね!」
この辺まで一気にしゃべり終わった頃には、彼女は仕事中で私は食事中ということも完全に忘れ、おしゃべりに夢中というか興奮状態。彼女の弾丸トークは、我々が前菜を食べている間中ずっと横で続きました。

豊かな個性を強調することこそ地方菓子の魅力なのに。没個性のガトーバスクだなんて……想像しただけで虚しい。
最後にマダム・ボネが吐き捨てるように言った台詞はこれ。
「お菓子のことを何も分かっちゃない、ジイサマ連中の考えそうなことよ!」
パチパチパチ、と手を叩いて賛同しました。ホント、ジイサマ方の愚かな計画が頓挫するように願うばかりです……(まあ十中八九、頓挫すると思いますけど)!
harukaさま
コメントありがとうございます!
(返答遅くなりスミマセン。)
おっしゃる通り、地方菓子の伝統保持と
いう名目で、なにやらミヤゲ菓子的な
存在になってしまったら、興醒めですよね。
ふつうのお菓子屋さんで淡々と作りつづけて
いって欲しいです。
こんにちわ。いつも楽しく拝見しています。
ガトーバスクは大好きなお菓子。記事を読みいってしまいました。まがい物が多い世の中ですので、守るための基準は必要だとは思います。が、それが商用目的、ブランドだけのためにするのであれば、何の意味なのか分からなくなってしまいます。悲しいですね。
楽しい記事楽しみにしています。
ぷうさま
そうなんです!
ガトーバスク憲章なる
ものを設定したい気持ちも、理解
できるんですよ。
そこを突っ走ってしまって、
「クリームと生地の比率」なんていう
レベルまで提案してしまったから
大反対されてしまったわけで・・・。
次回日本帰国時は、ガトーバスク視察に
繰り出してみたい(時間が許せば)
気分になってきました!
マテスクさま、
最近はバスクの外、日本などでもガトーバスクと称するものが出回っておりますが、中にはバスクで食べたものとは似ても似つかないものも多くあります。もしかしたら今後バスク内でもそのようなことが起こるかもしれません。ここでバスクの人たちが、統一というのではなくて、伝統を守るために最低限守るべき規範というか、ガトーバスク憲章のようなものを制定するのは意味があるような気がします。
Mochidangoさま
クッキーカッターなる表現、
分かりやすくっていいですね。
フランスもアメリカナイズされてきた
部分が結構あると思います。
地方菓子は文化財産だと思うので
ずっと残って欲しい・・・。
ぷうさま
あ、言及し忘れましたが
この協会は、あくまでフランス・バスク
サイドの動きだと思われ。
スペイン・バスクにはこんなアイディア、
ハナから相手にされないでしょう!
こんにちは、
新カテゴリーとっても楽しみです。
さて、ガトーバスクの統一。バスク民族、バスク国の統一よりも先に実現するのか?と考えると、ありえない話のように聞こえてしまします。それもまた民族性かも、なんていうとバスクの人に怒られちゃうかな(笑)
おいしいガトーバスクが増える方向なら大歓迎ですけど…
理佐様、こんにちわ。またブログを拝見させていただいております。さくらんぼの季節なので、さくらんぼのタルトを父の日に作ろうか考えております。その際にはレシピ活用させていただきます。
お店ごとに味のあるものの統一とは恐ろしい考えですね。ガトーバスクという名の下、いろいろな種類があるからこそ、多くの人のそれぞれの味覚、好みに合うわけで、統一してしまえば、逆にターゲットが絞られ、村おこしの逆効果になりかねないですよね。アメリカでは、合理化がすすみ、基本的にクッキーカッターのようにどこのショッピングモールに行っても同じ店・ブランドばかりで面白みに欠けます。
ところで、はじめガトーバスクがどのようなものか分からず、Google検索しましたら、理佐様の2年前のブログにたどり着きました。ちなみに、アメリカではガトーバスクなるものは見当たりません。ぜひ、バスクを訪れてみたいものです。