更新日:2008年5月27日

バスク地方の暮らしとお菓子のレシピ「バスクの砂糖壺」


バスク地方は、フランス南西部~スペイン北部に広がる緑と水のゆたかな土地。お菓子とおいしいものが大好きなマテスク里佐さんのオーブンからは、今日も甘くて香ばしいいい匂いが立ち上っています。里佐さんがバスクで出会い・学んだお菓子やお料理、そして人々の暮らしの様子について、レシピとともにお届けします。

文=マテスク里佐
   

我が家に招いたお菓子講師とは? そう、あの方です




   12月のある日、我が家に「お菓子の講師」をお招きしました。

   暖房を全開にし(我が家は「耐えられないほど寒いっ」とおっしゃるので……)、冷蔵庫にはキンキンに冷やしたシャンパンを用意し、台所で腰かけてもらえるように小さな椅子を用意しました。その講師とは、夫のおばあちゃん。まさにご老体に鞭打っていただいて実現したレッスンでした。

   一緒にお菓子をつくったのは実に数年ぶり。今よりずっと体力があった頃は、彼女が自ら作ってくれるのを私が横で見守ったけれど、残念ながら今回は逆。おばあちゃんが口頭で指導してくれるのに従って私が手を動かす、というレッスン方式にしました。

   習ったお菓子は、「胡桃ペーストのブリオッシュ」。ブリオッシュ生地で胡桃のペーストをくるっと巻いて焼いた、滋味あふれるパン菓子です。私も今まで何度ご馳走になったか数えきれない、十八番中の十八番レシピであります。


おそらく普通の日本人にとっては、未知なる味わいのお菓子だと思う。私も初めて口にしたとき、新しい味覚との出会いを感じました。

   今回改めて知ったことですが、おばあちゃんが26歳でお嫁入りしたときに、お姑さんから「家の味」として教わったお菓子だそう。女の歴史が詰まったお菓子であります。

   以来昨年までの64年間(!)、年に数度は作り、そしてクリスマスの朝ごはんは必ずコレという慣習となっているもの。私にとっても、すっかり嫁ぎ先の「クリスマスの朝の味」と化しています。これがないとクリスマスの朝って気分にならないから不思議……。


年季の入ったご愛用ブリオッシュ型も引き継ぎました。使い込まれていながらもコンディションも良くって感激。私にとっては、高価な骨董品級のお宝モノです。

   そんな訳で、いつか必ず教わっておかなければいけなお菓子でした。おばあちゃんもずっとその機会をうかがっていたようです。しかし、「教えてあげるわよ」とは決して言わず、私が「教えて」と自発的に言い出すのをずっと待ってくれていた。こんなところにも、おばあちゃんの懐の大きさを感じます。


頂いたノートをチェックしてみたところ、どのノートにもこのお菓子が載ってました。ノートを新調しても、このお菓子だけは必ず写し書いていたのです。お菓子の名前は「おかあさんのブリオッシュ」となっています。おばちゃん、可愛い……。

   果たして行ったレッスンは、ハプニングあり笑いありの数時間でした(シャンパン飲みながら……)。無事に焼きあがった時は、お互いの顔を見て笑ってしまいました。

   それにしても今回のレッスン実現に向けて誰よりも張り切り、出来上がったお菓子に歓喜していたのは、まぎれもなく夫! 子どもの頃からの「クリスマスの朝のおばあちゃんの味」を、まさか私が引き継ぐことになろうとは想像していなかったみたいです。

   次回、レシピをお届けします。お楽しみに!

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ayumingoさん
スタージュお疲れ様でした!
遂にお店に伺わずに終わってしまってごめんなさい。
それにしてもとても充実した時間をお過ごしだったのですね。それが文面からたっぷり伝わってきました。私はこれからもこの土地に住み続ける立場上、熱い気持ちは持ち合わせていないけれど・・・淡々とした静かな愛情みたいなのをこれからも持って暮らしていきたいです。これからもバスクを思い出していただけるためにご愛読いただけたら嬉しいです。

しよこさん、yuka_helixさん
コメントありがとうございます。
「今年のクリスマスは何のお菓子にしようかな」と考えるのが楽しみであった私にとって、おあばちゃんの習慣、そしてひとつのお菓子への徹底的な愛情は衝撃でした。
引き継いだ以上、私もこれから覚悟して毎年このお菓子を作らねば!


投稿者 マテスク : 2007年01月17日 21:39

連載開始から毎回読んでいます。
私はイギリスに住んでいるのですが,イギリス人のだんなと結婚したときにはすでにだんなの祖母はおらず、だんなの母親は料理嫌いの人で、イギリスの家庭料理、伝統料理はすべて料理本を見ながら学んでいます。今回の記事を見て、本当にうらやましくなってしまいました・・・お菓子好きのおばあさまから、直々にお菓子作りのレッスンが受けられるなんて!本当に素晴らしいことですね。フランスの食文化は、そうやって受け継がれているんですね(イギリスとは違って!)。

投稿者 yuka_helix : 2007年01月16日 21:54

 マテスクさん、こんにちは。
 いつも楽しみに拝見しています。
 64年間、クリスマスの朝はコレ!というのに感動しました。そうやって家庭の味、伝統って作られるんですね。根を生やした安定感のある生活って、そうやって作られるんでしょうね。私もそういう一品を身につけたいです。

投稿者 しよこ : 2007年01月15日 01:08

りささん

ご無沙汰しております!
バスク、CIBOUREのレストランChezDominiqueでスタージュをしていた者です。12月末にスタージュを修了し、このたび帰国しました。バスクで10月以来ブログを読むことができず、大変残念でした!
(お返事をいただきながら申し訳ありませんでした・・。)
ここのレストランですばらしいシェフ、仲間達にめぐり合え、とてもとても充実したバスクでの仕事を経験することができました。
シブールの町のみなさん、サンジャンドリュズのマルシェで知り合ったパン屋さん、魚屋さん、おすしを売ってるジェラルリーナをはじめ多くの友人ができ、ますますバスクに取り付かれております・・。
帰国後りささんのブログを一気に読み干し(?)ました。おばあさまの秘伝、くるみのペーストブリオッシュにつばを飲み込んでいます。おばあさまの大切なレシピを、満を持して引き継がれる・・とてもすてきですね!りささんのブログから発せられるバスクのエスプリ、旅と食へのきらきらした好奇心に、心うばわれて読ませていただいています。
私はバスクを離れることがつらすぎて今月末にまた戻ることにしました。短期間ですが・・。
これからも「バスクの砂糖壷」、ずうっと大切に読ませていただきます!

ayumingo

投稿者 ayumingo : 2007年01月14日 22:14


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