ガスコーニュ旅行中、私がとても楽しみにしていたお菓子があります。その名は「croustade(クルスタッド)」。フランス南西部一帯で親しまれている地方菓子です。
バスクもこのエリアに含まれているとは言え、ガトー・バスクという押しも押されぬ地方菓子があるせいか、クルスタッドの存在感はイマひとつという感を否めません。
ガスコーニュへ行ってみると、どこのお菓子屋さんの窓辺にもこのお菓子がお行儀よく並んでました。クルスタッドの本拠地はやっぱりガスコーニュなのね! 現地でしかと確認できる、こういう楽しみはフランス地方旅行の大きな愉しみです。

驚くほど地味な佇まいのお菓子屋さんを発見。剥き出しの金属パイプに板を並べた台にお菓子が並んでる……! ちょっと寂しい、だけど妙に好奇心をそそられました。
名前の語源は、croustillant(形容詞)「パリパリしている」。
名は体を表すの如く、食感が身上のお菓子です。透けるくらい薄い生地を何層にも重ね、アーモンドクリームと果物を敷いて焼き上げます。クシャクシャっと無造作に焼き上げた上の部分はパリパリしている、いやパリパリしてなくてはいけないお菓子です。
当然、焼き立てはとっても美味! でも逆に言うと、焼いてから時間がたてばたつ程、パリパリ→ふにゃふにゃ→グニャグニャな食感に。これほど食感の劣化が激しいお菓子も珍しいと思います。以前、買ってきたクルスタッドを口にしてみて「あれ、コレ何かに似てるー」と考えて、それが「翌日の春巻き」だと分かったときはちょっと悲しかった……。

昼食のデザートに注文。パリパリ感はまあまあでしたが、中のレーヌ・クロード(プラムの一種)のお味が爽やかでとても美味でした。
「パリパリ」と言えば、先日パリの某チャイニーズ・レストランでパリパリの究極(?)なる北京ダックを食べに行ったときのこと。中国人の友人と一緒だったので、オーダーは全て彼女に任せました。オーダーし終わった後、彼女がわざわざマネージャーを呼んできてマンダリン語で強い調子で何かを言い、彼の表情が一瞬曇ったかのように見えた……。
「今、何て言ったの?」と彼女に訊ねれと、「『まさか昨日の残りなんて出さないでしょうね!ちゃんと焼き立てを頂戴よ!』と言っておいたのよ」だって……。普段おっとりしているのに、果敢にお店の人を挑発する様子に笑ってしまった。そして、ますます彼女のことが好きになった私です。はたして出てきた北京ダックは、それはそれは素晴らしいパリパリ感でした。
おいしいものって、受身な態度では手に入らないのかもしれない。彼女みたいに、こちらも充分に気合を見せて相手をタジタジさせるくらいでなければ。例え同じ店で食事したとしても、おいしいものを出してもらえる人と出してもらえない人、という差は絶対に存在するはず。そしてそれは、日本よりも海外ではより顕著な気がします。
クルスタッドを注文するとき「まさか、昨日のじゃないでしょうね!」と言える勇気、私も欲しい……。