更新日:2006年10月31日

バスク地方は、フランス南西部~スペイン北部に広がる緑と水のゆたかな土地。お菓子とおいしいものが大好きなマテスク里佐さんのオーブンからは、今日も甘くて香ばしいいい匂いが立ち上っています。里佐さんがバスクで出会い・学んだお菓子やお料理、そして人々の暮らしの様子について、レシピとともにお届けします。

文=マテスク里佐
   

ジビエにセップ茸、そしてリンゴ……秋の味覚つれづれ

   先週のカフェグローブvoteのお題、「秋の味覚、アナタにとってズバリどれ?」でしたね。ズラリ並んだ憧れの食材名に一瞬本気で悩んじゃいましたが、私は畏敬の念も込めて新米に一票投じさせてもらいました。

   ちなみにフランスで秋の味覚と言ったら、ジビエとキノコ!この2点に尽きます。そうそう、今年の天候はキノコ達には最高な生育環境らしく、セップ茸がとっても豊作だそうな。バスクでは国道沿いにセップ茸スタンドが登場します(いつかご紹介したい)。今年は値段がちょっぴりリーズナブルだし、レストランの食事メニューにも惜しみなく使われてます。

   りんごがおいしい季節もやってきました。お菓子作り好きな方なら、すでに今年りんごでお菓子を作られたのでは? 私も先日、お決まりのパイを焼いてみました。ちょっと小寒い日に、オーブンから漂うりんごとバターの香り……。秋気分盛り上がります。

   一年中手に入る果物とはいえ、倉庫で長いこと保管されたりんごと秋の採れたてりんごの味は明らかに違う。だから秋はりんごへのリスペクト度が一番高い季節といえます。真冬になると、来る週も来る週も果物といえばりんごばかりな時期がやってくるので。本音を言うと、冬も終わりに近づく頃には見向きもしなくなることがあります。有り難味がある今のうち、たっぷり楽しむのが上手い付き合い方かなと。


皮の色が黄色、赤、緑とカラフルなレネット種。バイヨンヌの農家の人から買っています。

   散歩をしていても、お庭に立派なりんごの木があるお宅が目に留まります。ちょっと気になるのは、みなさんボタボタ落っことしたまま、土の上で朽ちるまま放置しているんですよね。もったいない。私だったら、シードル酒蔵を作るのに……!

   以前、友人のノルマンディの別荘で自家製シードルをご馳走になって以来、よそのお宅の無駄使いを舌打ちしながら眺めてる私。そして以来、我が家のシャンパンの空き瓶は、彼らのシードル作りに再利用してもらってます。もうこんなに嬉しいリサイクル方法はありませんっ。手作りのシードルって、おそろしいほど美味なのです……。


ジャムやジュレ作りだけでは、ラチがあかない収穫量なのでしょうね。

   次回も引き続きりんごの話題、簡単おもてなしデザートのご紹介です。お楽しみに。

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ハンサムな人が作る、美的センス溢れる料理

   「バスクのアドレス帳」レストラン編。久々の更新です。

   だいたい週2ペースで外食しているのですが、一旦気に入ると惚れ込むタチなので行く店やローテーション具合がすっかりマンネリ化していた今日この頃。手持ちカードをもうちょっと増やしたいナという思いもふつふつ沸いてきたところです。この秋、お気に入り店を増やしたい!と意気込んでいます。

   まずは、近頃地元で評判のレストランへ繰り出してみることに。店自体は以前からあったのですが、パリの三ツ星レストランで長年働いていた人が新任シェフに就任、2年目にして早くも星を獲得したという店です。この評判だけならばとっくに行っていたはずなのですが、「サービスが遅いのが玉にキズ」とも聞いていたので、二の足踏んでました。いくらフランス料理でも、ダラダラ長い食事は苦手なので……。

   結婚記念日ディナーはダラダラしてもまいっか(?)ということで、行ってきました。確かに長い、裕に3時間以上の食事。サービスがが長いと何が問題かって、飲みすぎてしまうってこともあります。今回も、アペリティフが美味しくってグイグイいってしまったことも一因だけど、前菜の途中にしてワイン1本完飲という事態に陥ってしまった……長すぎる食事はキケンです。


チーズボードのプレゼンも、秋らしく。

   しかし、その料理には大満足! 繊細で儚げな料理、そしてとにかく美的でした。アペリティフに花椒が添えてあったり、メインの仔羊料理には味噌を添えてくるなど、アジアの調味料にもかなり傾倒している様子。都会でならそう珍しくはないでしょうが、保守的なバスクで、しかも特産物の仔羊に味噌を使うのはとっても大胆です。


イチジク好きにはたまらない、秋のデザートメニュー。見つけると迷うことなく頼んでしまいます。フロマージュブランのアイスクリームとの組み合わせ、いつか真似してみよう。

   日本人ってことが伝えられたらしく、シェフが食後に挨拶に来てくれることに。登場したシェフを見て驚く。彼の料理のイメージそのまんまの人だったから! 線が細く、フランス人には珍しいほどシャイな、だけど芯が1本通った意思の強さを感じさせる人でした。「味噌って仔羊にとても合うんですね」と言ったら(コレ本当です)、はにかんで微笑んでました。

   そしてこのシェフ、案の定ハンサムな方でした。この料理からして、お腹が出たニコニコ顔のオジサンが登場するハズはない!と睨んでいたんです。料理は人を表すのね、と思いました。そういう意味では、美味なる料理に出会った際にはシェフの顔も拝めたら一粒で二度おいしい食事になるかもしれない……(例外もあるかと思いますが)!

les Platanes
32 avenue Beau Soleil
64200 Biarritz
tel. 05.59.23.13.68

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紅葉と赤とうがらしの組み合わせ、「エスプレット村」の衣替え

   すっかり秋深まってきました。マロニエの大きな葉っぱが枯れ始め、歩くとカサコソと足元で音をたてます。

   この時期のバスクの風物詩といったらコレでしょう、な「赤とうがらしの衣替え」。太陽と風雨に1年間晒され続けた赤とうがらしは、夏のおわりの頃には干乾びてシワシワの茶褐色になる。それを取り去り、収穫したての新トウガラシを吊るす秋の行事です。


蔦の紅葉と赤い窓枠の色ともあいまって、バスクカラーに彩られる建物。

   10月も半ばを過ぎれば、8割方の壁々が新とうがらしに取り替えられます。壁の白と真っ赤なとうがらし色のコントラストくっきり! 特に、秋晴れの日には目にも眩しく映ります。


村の角にあるお肉屋さん。サラリとシンプルなところが逆に目をひく飾り方。

   それにしても、1年ってアッという間ですね。この衣替えネタをを昨年秋につらつら書いたのは遂先日のことみたいに思えます。この分では、あれよあれよという間にクリスマスだ年越しだのムードに突入してしまいそうでコワい……。

   さて、昨年書きました「エスプレット村、新村長さんの村興し政策」その後について。観光客誘致プランは今のところ大成功といったところでしょうか。村のあっちにもこっちにも新設された駐車場は、オフシーズン中だって車がたくさん。ナンバープレートを見る限り、フランスの各地方から人が訪れてます。石畳をしいた村の中心には、フランス国内観光客がそぞろ歩きを楽しんでます。数年前と比べると、この村の傾向がかなり変貌したことが分かります。


赤とうがらしオーナメントは村のあちこちで販売されてます。こちらの民家では白いワンちゃんが店番を担当。近寄るとムクっと起き上がって「お客さん?」という目で見てきたけど、私がただの写真小僧だと分かると再びゴロ寝。この子の様子から見て、あまり売れてないみたい……。

   人が増えると何が増えるか。言うまでもなく、カフェが増えます。これはフランスだったら極当然の現象なはず。前はこの村でお茶と言えば一軒くらいしかなかったのですが、昨年以来カフェ選びにも選択肢が増えました。

   先日、学生時代の友人が日本から遊びにきたので、散歩がてらエスプレット村へもご案内しました。すると、またもやオープンしたてのカフェを発見。そして看板を見上げて「うわぁあ……」「イタタタ……」と過剰反応してしまった私たち。

   だって、カフェの名前が「カリフォルニア〇〇」だったんですものー(〇〇の部分はバスク語)。正直言って、ガックリなセンス。この手のちぐはぐネーミングを、ヨーロッパの田舎でしかも地元で見たくなかった。感性がかなり似通った友だちと一緒だったということもあり、ひとしきりボヤき節になった私です。

   こんな風に、エスプレット村は賑やかになった反面「アレれれ?」と不安に思わせる点もなきにしもあらず。エスプレット村よ、一体何処へ行く? この辺でやめにしてフツーの田舎の村に戻っておくれ。でないと、リピート通いする立場の者にとってはイタい村に思えて仕方ないのです……。

●去年のエスプレット村レポートはこちら(2005年11月21日)

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フランス南西部生まれの豆のスープ、「ガルビュール」

   「Garbure(ガルビュール)」は野菜たっぷりのお惣菜スープ。バスク地方料理ではなく、バスクを含むフランス南西部全体で親しまれてる一品です。

   がっちりした一枚木のテーブルの上に、木綿の厚地テーブルクロス。白い湯気を立ち上らせながら、大きなボウルがテーブルに運ばれる。銀の大きな玉じゃくしでスープ皿によそっていく……。これって、子どもの頃に読んだ西洋昔物語の食事シーンのイメージにかなり近い! だからこんなに心動かされるのかもしれない。ガルビュールは私が頭で描いていた、物語の中のスープなのです。

    奥の深い、フランスの地方料理の伝統が詰まったスープです。私みたいなイチ新米・イチ日本人が語るのは、ちょっとおこがましい気がする。それでも敢えて言わせて頂くと、このスープのカギは豆が握っている、と思います。豆がダシを作り、豆が野菜とダシのつなぎ合わせをしているのです。


一汁二菜が基本の我が家の夕食なれど、ガルビュールの日は一汁のみ。たっぷりとスープを食べる夕食、思いのほか満足感が高いです。

   スープストックがなければ水で煮たって構わない。キャベツがなくったって、セロリがなくったって、野菜の種類が少なくたって構わない。でも、豆がないとダメ。逆においしい豆さえあれば後は豆が誘導してくれる、そんなスープです。私が乾燥豆は使わず、初秋を心待ちにしてフレッシュの豆で作るのはそういう理由。私にとってガルビュールは通年スープではなく、秋のスープです。

   南西部という広いエリアの地方料理ゆえ、さらにまた細分化した地域独特のガルビュールが存在します。入れる野菜、ダシの種類、ダシの取り方……etc。日本のお雑煮が地方や県などによって微妙に異なるという、料理分布地図を連想していただければよろしいかと。

   自分にとってガルビュールといえばバスク・ガルビュールの味が定番でしたが、つい数日前にご近所ガスコーニュ地方で体験したガルビュールは、しっかりコクが効いた迫力満点のお味で驚きました。それもそのはず、ここのダシは鴨ガラと鴨のコンフィから取ってるそうな。丸ごと入ったジャガイモの芯にまで鴨のダシが染み込んで、それはそれは美味だった。

   これに比べると、バスクのガルビュールは一歩控えめな穏やかなダシが特徴。その代わり、例のお得意技・「エスプレット村の赤とうがらし粉」をふりかけてピリリとさせて頂きます。この「穏やか味+ピリリ唐辛子」なバスクの味覚センス、かなり日本人向きだワって思います。


「スープとパン」でなく「スープとクルトンたっぷり」が好き! 干乾びたパンもおいしく生まれ変わるから、これぞ自分で作るに限ると思う。夫が作る田舎風クルトンは、牛乳・卵・ガーリック・ソルトをくぐらせて、オリーブ油でかりっと香ばしく焼き上げる。ガルビュールの最高のお供、お気に入りの一品です。

●「バスク風ガルビュール」作り方(5~6人分)

バイヨンヌ生ハム塊(パンチェッタやベーコンで代用)……70g
インゲン豆(フレッシュ)……正味120g
ポワロー葱……2本
セロリ……1本
にんじん……2本
キャベツ……約1/2個
じゃがいも……3個
ブーケ・ガルニ……1束
塩・胡椒……少々
エスプレットのとうがらし粉(一味とうがらし、チリペッパーなどで代用)……適量

1.生ハムを細かく切る。
2.野菜を切る。ポワローとセロリは小口から薄切りに、にんじん、じゃがいもは角切りに、キャベツはザク切りにする。
3.インゲン豆はさやから取り出す。(乾燥豆の場合は、水に一晩つけてから茹でておく。)
4.厚手の鍋に1の生ハムを入れて炒める。油が出てきたら、ポワロー、にんじん、セロリを加えて入れじっくり炒める。
5.水または鶏のスープストックを2.5リットル、インゲン豆、じゃがいも、キャベツを加え、煮立ったらアクをすくい、弱火で30~40分ほど煮込む。
6.ブーケ・ガルニを取り除き、塩胡椒で調味する。
7.スープ皿によそい、とうがらし粉をふりかけながらいただく。

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秋の産物その2、ピンク色のインゲン豆

   初秋のほんの短い間、私が心待ちにしている野菜。それがこちら。サヤがフューシャ・ピンク色したインゲン豆です。はっきりいって野菜売り場には似つかわしくない色です。土色、緑色などが野菜の制服カラーだとすれば、ヤツだけひとり場違いな私服を着てしまっている。そんな野菜です。


ふわっと温感を感じるような触り心地がするフレッシュなサヤ。その分あれよあれよと言う間に傷んでしまうので、早めに使い切ることが肝心。

   初めて目にしたときは色のキョーレツさにひいて、「これどうやって食べるんですか?」と思わずオニイサンに尋ねてしまった。「茹でてスープやサラダにすればいいんだよ」とオーソドックスな使いみちをアドバイスされる。すると、お隣で買物していた初老のマダムが「スープが一番おいしいわよ」と耳元で囁いてくれた。……それがこのお豆さんとの馴れ初め。

   実際使い始めると、このうえなく魅力的な食材ということを実感しました。乾燥豆のように戻す手間が要らず、コトコト20分ほど茹でればふっくら柔らか。まるでジャガイモなホコホコ感に自然なやさしい甘みがあります。

   そして毎回ながらちょっとした驚きを感じる味見の瞬間。いつものスープにこの豆を入れて途中ちょっと味見してみると……豆からコクが出てる! 単なる素材としてだけでなく、立派なダシの素にもなれる。そんな豆の底力も、このお豆さんが実習体験させてくれた気がします。そして、「スープが一番よ」のマダムの耳打ちの信憑性もしっかり納得しました。

   この豆が出回る季節、バスク人に負けず劣らず私もせっせと作りたくなるスープがあります。豆がなければ始らないバスクのスープ、豆があるからおいしいスープ。次回、詳しくご紹介します。お楽しみに。


豆は紫寄りの臙脂色と白のまだら模様。かすかに紫がかった色に茹であがります。

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バスクの秋の産物その1、マロン

   今年も栗拾いに行ってきました。「今年はなかなか上出来ヨ」と8月下旬から義母が言っていたので、期待に胸膨らませて出かけてみると……ホント、確かに豊作でした。イガの中から、ふっくらとした顔を覗かせてる様子はとても可愛い。


日本のよりも若干小ぶりながら、コロンと丸みを帯びた元気な栗です。

   経験ある方ならお分かりだと思いますが、栗拾いってものすごい重労働なんですよね。学生の頃、東京郊外の大地主の家のクラスメート宅に遊びに行った際に、お母様が裏山の栗の実をずっしりと持たせて下さった想い出があります。翌日いただいた栗ごはんのおいしさもさることながら(未だに我が家で語り草になってるほど美味だった)、お母様の汗だくなお姿と完全武装な栗拾いファッションが強烈に記憶に残ってます。

   実際やってみると風流さなどとは無縁な肉体労働です。今回も、夫と2人張り切って始めましたが30分間で汗をびっしょりかきました。

   我々の栗拾いファッションは3点セット。登山用の靴(かなりな急斜面に立つ木なので)、車の修理工場用ゴム手袋、出来るだけ分厚い服(近辺に生える雑草のトゲ対策)。要は体を出来る限り密閉状態にしてアクセク動きまわるから、ハードなわけです。2人で1時間黙々と労働して9kgくらいの収穫ってところでしょうか。これを考えると、市場で売ってる栗って決して高くないワって思います。きっと農家の人も家族総出の人海作戦でやっているのでしょうね。

   買ってくる栗と自分達で拾った栗の差。それはやっぱり、拾いたてかどうかの違い。落下後、そして拾ってから時間がたてばたつほど、虫喰い率がどんどん上がってしまう。市場で買う栗は見てくれは良くっても、作業中に虫がにゅるっと顔を出すこともあってギャーッと絶叫することが多々あります。自分で拾いたての栗だと、この確立は限りなく0%に近い。優雅に楽しく栗作業に没頭できるところが好きです。

   それにしても秋って素敵な味覚が目白押しな季節ですね。次回も引き続き、私がとても楽しみにしている秋の産物をご紹介していきます。


先日の義母のお誕生日ケーキに作った「栗のムース」。ムースそして上に絞ったマロンクリーム(蕎麦ではありませぬ……)に、茹で栗をたっぷり入れこんだ味。自分の庭の産物がお菓子に変身しているのを見て、とても喜んでくれました。

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おかげ様で復活の兆し、な発酵食品作り

   皆さん、先日(9月26日付)の「リビングフード Diet」ご覧になりました? ヤマショウさんが中間報告と題して、数々のお写真をデータ遍歴と供に披露してくださったアレです。画面の前で思わず「おォっ」と唸ってしまいましたよね?

   はっきり言って、ビッグシスター状態だろうとヤマショウさんは素がとってもチャーミングな方とお見受けしましたが、現在の凛!としたキレイなお姿はどなたの目をも釘づけにしたはず。リビングフード、おそるべしですね。

   何を隠そうワタクシ、LF連載開始直後にジューサーを購入してます(かなり影響されやすい性質なんで)。しかしいざ使ってみると、コップ1杯のジュースを作るのにものすごい量の洗い物が出ること、絞りがアマくて無駄が多いことに不満が募り(買った機種に問題あり?)、機械は既に納戸入りという情けない結果に終わりました。結局、おろし器を使った手絞りフルーツジュースを週に僅か1~2度ペースで飲んでます。

   こんな、リビングのリの字にも追いついていない私。しかし、ヤマショウさんのおかげで「朝ごはんにはフルーツを」を心がけるようになっただけでも小さな改革でした。前はフルーツっていえば、お菓子素材としての消費方法ばかりを考えていたので。「趣味の果物」「実益の果物」を分けて消費するようになりました。今の季節、アップルパイを焼いたとしても、朝には生のりんごも齧ってみよう。たったそれだけのことなんですけどね。まあ、せっかくフランスは果物に恵まれた国なんだし、フルーツの酵素をもっと積極的に取り込んでみようと。

   それからもう1つ。ヤマショウさんに俄然ヤル気を引き戻していただいたのが、「納豆」と「ヌカ漬け」への情熱。この2大ジャパニーズ発酵食品と白いご飯は私の食の原点ですから。どんなにおいしいパンとチーズがあろうと、代替品にはなり得ないんです。パリ生活ならいざ知らず、バスク暮らしで一番悩んだのがこれ。そして結局、自分で作るようになりました。


人肌温度で発酵後、室温で数時間「後発酵」させることによって、ふっくらとした味わいに仕上がります。発酵物って生き物なだけに油断できぬ存在。だけど上手に出来たときのおいしさ、そして自分で作った納豆への愛着はひとしお。

   料理ではなく食品作りなので、実験・研究が必要だし珍談悲談の連続です。特にヌカ漬けは毎日手をかけるペット状態になりますからね。家を空けることも多い身としては、泣く泣く捨てるという辛い思いも経験済み。でも心の痛手(?)もすっかり拭えたから、ヌカ床再デビュー狙ってみようかな。とりあえず、実家の母に「ヌカセット、また送ってー」と電話オーダーしておきました。

   その他の面では、私の食生活のLV率はかなーり低めです。ワインはたっぷり飲んでるし、外食といえばフレンチ(野菜や果物は加熱調理が基本なのでLV度は低い)な環境だし、お菓子をつくってるし……うじうじ。

   でもヤマショウさんも「小さな出来ることから少しづつ」とアドバイスして下さってます。そもそも食習慣って生活スタイルの一部、個人の生き方・価値観のパーツですもんね。自分らしさを崩さずに、取り入れられる部分を模索していけばいいのではないか、と。

   ヤマショウさんファンの皆さん、それから海外で私みたいに発酵食品作りに精を出している皆さん。一緒に頑張りましょうね。


私の納豆フェチぶりは近親者にはつとに有名な話。家族友人が送ってくれるとっておきの国産大豆で作ります。納豆つくり、私に言わせると成功の秘訣5割は素材の豆のおいしさが握ってます。

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グリュイエール村で食べたラクレットとクリーム・デザート

   ヴァカンスも残すところ帰途につくのみ。後ろ髪を引かれる思いでザルツブルグを後にし、オーストリアとドイツを横切り、スイスに入国しました。旅籠町に選んだのは、Gruyèreグリュイエール。そう、あのグリュイエール・チーズのグリュイエールへ行ってきました。


ホテルの窓から望むグリュイエールの景色。8月とは思えないほど、空気がひんやり。夜に散歩しようと思ったけど、セーター1枚では凍えてしまいそうだった。

   豊かな緑、なだらかな山、そして赤い屋根の家々……。ん? パッと見、バスクの景色とちょっと似てるような。でも目を慣らしてからじーっと見直すと、明らかに違うんですね。まずは緑の色。グリュイエールの緑は冴え冴えとして目に眩しい。これに比べると、バスクの緑はこっくり深い色してます。そして、広がる大地にゆっくり動いている動物たち。バスクは圧倒的に羊さんの国ですが、グリュイエールは当然、牛さんだらけでした。

   夕食は「Raclette(ラクレット)」をチョイス。「溶けた」(過去形)チーズ・フォンデュよりも、「溶けたばかり」(現在完了形)のラクレットが私は好き! ドンと塊チーズが運ばれ、器具の台の上にのせられます。熱によってジワジワ溶けはじめた表面を木べらでザッと拭い取って、めいめい皿へ。茹でたジャガイモ、ハム、きゅうりや小玉ねぎのピクルスと供にいただきます。


伝統的には、焚き火の前で溶かして食べるものだったそうな。きっともっともっと美味かっただろうな、と想像。今の時代は、電気プラグを繋げるだけ……。

   単純明快にして、後を引くおいしさ! とろりと溶けた部分もいいけど、端のお焦げ部分も捨てがたい。1つの塊を分かち合って食べる感覚も、お鍋感覚で楽しい。箸、ではなく木べらがどんどん進む味です。「チーズはおいしいし体に良い。でも太るのよね、これが」と、普段は極力控えてる身なので、余計においしく感じてしまう。でも、これでは普段の我慢が帳消しですよね……。


デザートの「グリュイエールの生クリーム」。日本のお風呂桶ミニチュアみたいな容器に入ってきた。黄色ががった色のとっても濃厚なお味で酸味もかすかに感じる。この日の乳脂肪摂取量、ハンパないかも。

   こぐれさんが「ごはん日記」の欧州旅行編で「日本食を恋しいとは思わなかったけど、帰国した途端むやみに食べたくなる」と書かれてましたが、私も全く同感です。旅先では日本食のことは完全に忘れてました。

   なのに家に帰った途端、付き物が落ちたかのように和食を欲してしまうのは何故? こうして数々の食べ物写真を眺めていても、「連日よくもまあ……」と自分でも呆れてしまう。帰宅してしばらくのあいだ、日本食のおいしさを噛み締めたことは言うまでもありません!

   これにてヴァカンス報告2006、お終いです。読んで下さった方、コメントくださった方、ありがとうございました。次回から今まで通りのバスク時間に戻ります。

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海外で着物を着る!その心得つれづれ。

   こちらに来てから何回着物を着たかしらン……? もはやイチイチ数えてないけど、年に3回くらいのペースでしょうか。ちなみに日本にいた頃は、成人式と卒業式そしてお正月にちょっと着たぐらい。日本を離れたからこそ、着物を着ることに目覚めた私です。

   「ヨーロッパ女性のドレス姿には太刀打ちできんワ、着物でも着よっと」。悟りの境地に達したのが着始めたきっかけ。スタートは意外とネガティブ・シンキングです。着始めてみると、想像を遥かに超えたポジティブ効果に驚く!


日本でまとめ買いしておいた100円ショップの「着物ケース」は優れもの。旅先への着物移動には欠かせません。

   気恥ずかしくなるほど賛辞のお言葉をいただけるし、とにかく目立つのでイヤでも注目されます。洋服を着ていたらこんなこと絶対にありえない……。そうそう、「日本人ですか? 中国人ですか?」という不躾な質問や視線を受けなくて済むのも大きなメリット。「私は日本人ですっ」と宣言して歩いてるようなものですから。

   そしてこれが一番スゴい効果って思うんですが、気後れせずに堂々と振舞えるようになる。背筋がシャンとする気分っていいますか。衣装って、外見だけでなくマインドをもコントロールするのねー、とつくづく思います。

   日本と違って「お直しおばさん、ジロジロ評価おばさん」に遭遇しないのも、気軽に着られる要因でしょうか。いたとしても外国なら意外にへっちゃらですし。もちろん、出来るだけ綺麗に着たいと思ってるしそのための努力は怠らないつもり……。


祖母の遺品の「携帯衣紋掛け」や風呂敷各種を愛用。よく考えてみると、祖母の世代は旅先で着物を着るってことが日常茶飯事だったわけですよね。帯、下着類、小物類を運ぶのには、夫のアタッシュケースを拝借。きっちりコンパクトに運べます。

   ただし、然るべき正装感のある場所、「キモノ」を知ってる文化教養クラスの人達の場でないと、エキゾチックさがアダになったり、ただの見世物になるので要注意です。ひどい場合、サムライの服(!)、はたまたパジャマの一種(!)と勘違いしてる人もいるのが悲しい現実。以前、夫の反対を押し切ってフランスの田舎のレストラン(いちおう3星)へ着物で出かけてみたら、悪目立ちして居心地悪かったです。日本の田舎の料亭へヨーロッパの民族衣装で出かけてしまったガイジンさん、というさむい図を想像してくださいまし。

   以来、「田舎では着ない」がポリシー。ただし結婚式やお祝いの席では時々着ます。数年前にドイツの小さな町で行われた結婚式に出席しました。会場までの道のりを歩いていると、前からやってきた少年3人組がものすごい驚き顔で私を眺め、「いっせいのセイ」で3人揃って深々とお辞儀の挨拶をしてくれました。私もびっくりしたけど、可笑しかったです。

   海外でキモノを着始めると、こういう楽しいエピソードに事欠かなくなります。日本人であること、日本文化のこと、そして外国の人にどう思われているかってこと。いろんな小さなことに気がつきます。


和装バッグってチョットね……。というわけで、ヴェネチアで絹の織物バッグを見つけてきました。帯締め感覚で各色揃えたくなる!

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マテスク里佐プロフィール

バックナンバー
ジビエにセップ茸、そしてリンゴ……秋の味覚つれづれ (10月31日)
ハンサムな人が作る、美的センス溢れる料理 (10月29日)
紅葉と赤とうがらしの組み合わせ、「エスプレット村」の衣替え (10月24日)
フランス南西部生まれの豆のスープ、「ガルビュール」 (10月20日)
秋の産物その2、ピンク色のインゲン豆 (10月18日)
バスクの秋の産物その1、マロン (10月13日)
おかげ様で復活の兆し、な発酵食品作り (10月11日)
グリュイエール村で食べたラクレットとクリーム・デザート (10月06日)
海外で着物を着る!その心得つれづれ。 (10月03日)


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