更新日:2006年7月28日

バスク地方は、フランス南西部~スペイン北部に広がる緑と水のゆたかな土地。お菓子とおいしいものが大好きなマテスク里佐さんのオーブンからは、今日も甘くて香ばしいいい匂いが立ち上っています。里佐さんがバスクで出会い・学んだお菓子やお料理、そして人々の暮らしの様子について、レシピとともにお届けします。

文=マテスク里佐
   

「男バスク」と「女バスク」、ナショナリズムの温度差

   以前お知らせしたツール・ド・フランスのバスク中継、ご覧になった方いますか? 実は私も現場には行かず、テレビ観戦で済ませました。

   馴染みの国道を自転車群が疾走する様子はなかなか興味深かったです。そして私が楽しんだのは、上空カメラから映し出された山バスクの景色。ブロッコリーみたいな緑の塊の中に、白・赤のミニチュアハウスが点々と散らばっているかのようでした。当日はどんより曇り空のお天気だったので、少々くすんで見えたのが残念ですが。

   赤・白・緑。とにかくこの地方は、3色オンパレードです。建物の色、窓枠の色、船の色、お祭りの衣装の色etc……。目が慣れるまでは、1年中お祭りな地方に見えるかもしれません。


お祭りの付き物であるフォークダンス。この日は12歳前後の少年少女が踊っていて、それはそれはピュアな美しさに見惚れてしまった(お肌のきれいさにも目が釘付け!)


代表的な産物である赤トウガラシもしっかりとお国の色ですし。

   そしてバスク・カラーといえば、忘れてならない「国旗」。バスク語で「Ikurrina(イクリナ)」と名付けられるこの旗は、赤地に白と緑のクロスが重なってます。フランス側スペイン側どちらでも、アパートのベランダでヒラヒラ揺れる旗、建物の壁に描かれている旗、そしてお祭りの日に掲げられる旗は、フランスのトリコロール旗でもスペインの旗でもなく、この1枚! バスク人としての誇り、強いナショナリズムの象徴です。


バイヨンヌの町角で。

   そう言えば、スペイン側に住む友人から先日面白い話を聞きました。あんなに愛国心丸出しで盛り上がるワールド・カップですら、生粋バスク人はスペインが勝とうが負けようがお構いなしなんですって!自分の国だと思ってないから……。へー、そこまでとは! 正直言って驚きました。

   それに比べたら、フランス側バスク地方のナショナリズム度はかなーり薄めです。「オリジンはバスク人だけど、やっぱり僕はフランス人さ」っていう、ゆるいスタンスというか。スペイン側から見れば歯痒いでしょう。デモはほとんどないし、ワールドカップがあれば張り切ってフランスを応援するし、ジダンが退場になれば町はシーンと悲しみに包まれていたし……。

   この温度差、傍目には非常に興味深いです。

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フランスの田舎のお稽古事事情

   先月からお菓子教室に通いはじめました!とは言っても、パリのお教室なので不定期参加にさせてもらってますが。こうして同じ先生にきちんと継続して教わるのは実にン年ぶり。久しぶりの充実感(紹介してくれたK.Eさん、ありがとう)!


習ったお菓子その1、「いちごのシャルロット」。華やかでいかにもフランス菓子然としてます。

   教室といえば、先日こちらのコメントでこんな質問を頂きました。「バスク旅行に行く予定ですが、地元に料理教室はありますか?」。素っ気無いようですが、答えは「ありません」。私も来仏当初は、地元の人に尋ねたりして探していたのですが……。本当に見つかりません。

   日本やパリにはあんなにあるのに、なんでここにはないわけ!? 地方暮らしって損だワー、と恨めしく思ったこともあります。が、この土地の地味で堅実な暮らしぶりに感化され始めると、諦めにも似た理解の感覚を持つに至りました。日本が、パリが、特別なのよね……と。

   何年か住んでみて私なりに分析したその理由。まずは、優雅な専業主婦の数は少ないです。シビアに言ってしまうと、経済的にも時間的にもお稽古事に費やす余裕ある人は意外に少ないってこと。料理=家事の1つを習うなんて、非常に贅沢なお遊びなんですね。

   あとは、料理や味に対して、フツーのフランス人はフツーの日本人ほど貪欲じゃない気がします。悪く言えば保守的、良くいえばとても節操がある。隣国イタリアの料理ですらあまり普及していない点からいっても、この貞操観念(?)はある意味尊敬に値すると思う。

   かく言う私は……良く言えば好奇心旺盛、悪く言えば節操がない日本人代表の1人です。だって、いっつもガトーバスクでは飽きてしまうし、シャルロットやマカロンもいいけど、バームクーヘンだって素敵だし、ウィーン菓子のクラッシックなおいしさも捨てがたい。そして、自分でも作ってみたいという願望がある。この気持ち、「お仲間」の方にはきっと分かっていただけるでしょう。


習ったお菓子その2、ビスコッティ。実は手作りものは初めて、美味!

   日本は、ありとあらゆる文化圏の食べ物が手に入るし、お教室や学校に行けば技術もしっかりと教えてもらえるスゴい国だと思います(手間とお金を惜しまなければ、という条件つきですが)。日本人の研究心、器用さ、勤勉さの賜物ですね。これは、食の国と呼ばれるフランスの地方の実態を目の当たりにするからこそ、感じることです。

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バスク地方、実は四国よりも大きいんです!

   フランス人は数字がお好き。これは彼らと接していて少なからず思うことの1つ(他のお国の人もそうですか?)。ちょっとした日常会話の中で、数字データを求められてタジタジさせられるってことが度々あります。よく聞かれるのは人口、面積、どこからどこまでの距離など。社会科や地理の数値ですね。私は日本のこういうデータに関してまるっきり知識がなかったのですが、、これってかなり恥ずかしい事なのね……と反省しました。

   さて本題へ。バスクのデータはと言いますと、面積は約20万㎡。これは日本の四国地方がすっぽり収まってもお釣りが出るほどの大きさです。意外と広大です。うちフランス側の国土が15%、スペイン側が85%を占めています。バスクっていうとスペインのイメージの方が強いのは、面積比から言っても当然かもしれません。


バスクは逆三角形のような、ハート型のような形をした土地。独立運動のポスターはあちこちで見受けます。

   人口は290万人。これは四国の人口の7割程度。言わずもがなですが、人口密度はめちゃくちゃ低いです。うちフランス側は27万人。つまりバスク人口の約10%がフランス人、90%がスペイン人です。そして忘れてならない存在は、「イヤイヤどちらでもない、我々はバスク人なのである!」と主張する生粋のバスク人口。ETAは今春に無期限停戦を発表しましたが、独立運動はまだまだ続きます。


我が家の廊下に飾ってある壁掛けは、バスク7州のシンボルの彫り物。生粋のバスク人の方に、結婚のお祝いに頂いたものです。

   最後に、私のとっておきのお気に入りデータをご紹介します。私の住む町バイヨンヌの人口は約4万5000人。これはパリに住む日本人人口とほぼ同じ数字なんです。誰に言っても「へーっ」と驚かれるし、そこから話題が広がったりするんで重宝してます。

   バスクの人に対しては、「パリには日本人がたくさんいますよ」ってことを雄弁に伝えてくれるし、「バイヨンヌは小さな世界ですよ」ってことをパリの日本人に説明するにも、説得力がある。なかなか使えるデータなんです。フランス人が会話に数字を散らばすのがお好きな理由、ちょっと分かる気がする……。

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お手本はオーストリアの朝ごはん、杏の季節限定の焼き菓子

   「マリルン・クーヘン」。去年の夏のオーストリア滞在中にホテルの朝食で出会ったお菓子です。朝ごはんの豊かさは、ヨーロッパ内でもダントツなオーストリア! パンテーブルの上だけでも、目移りしそうなドイツ風のパン、デニッシュ類、そして焼き菓子が幾つか並んでました。

   朝ごはんにお菓子って、お菓子への関心度が低め~中レベルの人の目にはどう映るでしょう? 朝から冗談じゃないワ、って思う人もいるかもしれませんね。私の場合、ビュッフェの隅っこにお菓子がそっと慎ましやかに置かれているのを見ると、もう小躍りしたい気分になります。


薄めのバター生地、フレッシュな杏、シュトロイゼル生地の3層のお菓子。同じパターンで、ほかの果物やペーストが入ったお菓子も試食しましたが、やっぱり杏に一番惹かれました。

   独語圏のオーストリアですが、杏は「アブリコーゼン」ではなく、オーストリア方言の「マリルン」が通称。これだけで、杏がオーストリアを代表する果物ってことが分かります。

   極々シンプルな焼き菓子なのですが、ウィーン菓子ならではのおいしさです。やさしい味なんだけど、ポイントを突いたおいしさというか……・。全体的に濃厚な味がおいしいとされるフランス菓子とは、そこが大きな違いって気がします。

   コンポートではなく生の杏を焼きこんでありました。甘酸っぱさが引き立った味。この強弱あるバランス感に一旦ハマると、缶詰めの杏ではちょっと物足りなくなってしまう。敢えて保存食では作らず、フレッシュが出回るのを待ちわびて(旅から戻ったときにはこちらの杏シーズンは終わっていたので)、やっと今年の杏で再現しました。

   杏の上にはこれまたウィーン菓子の特徴の1つ、ぽろぽろのシュトロイゼル生地(英語のクランブル)をアクセントに。クランブルが朝食にぴったりなことでも証明済み、シュトロイゼル生地を使ったお菓子は朝ごはんに食べると特においしく感じます。


生産量が少ないのでしょうか、もっともっと日本でも人気が出て欲しいと願う果物のひとつ。無限の可能性、魅力を持った果物だと思う。

●「マリルン・クーヘン」作り方 20cmx20cm角型1台分

バター生地
バター……80g(室温に戻してやわらかくしておく)
粉砂糖……80g
塩……ふたつまみ
バニラエッセンス……数滴
レモン皮すりおろし……1個分
卵(大)……1個(室温に戻しておく)
小麦粉……80g

生の杏……約300g

シュトロイゼル生地
小麦粉……100g
塩……ふたつまみ
アーモンドパウダー……50g
グラニュー糖……70g
バター……70g

1. バター生地を作る。泡立て器でバターをクリーム状にした中に、粉砂糖、塩、バニラ、レモン皮を順次加えて混ぜていく。
2. 卵を溶いたものを加えて混ぜ合わせる。あらかじめふるっておいた粉を加え、へらでなめらかに混ぜ合わせる。型に流し、表面を平らにならす。
3. 杏をふたつに割って、種をはずす。種のついてた凹側を上にして、2の全面にびっしりと並べ置く。
4. シュトロイゼル生地を作る。ボウルに材料を全て入れ、指先でぽろぽろのそぼろ状にまとめる。の上に均等にのせる。
5. 180~190度のオーブンで約30分、表面がきつね色になるまで焼く。

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さりげなくバスク風な料理が味わえる、カンボ村のおすすめの店

   「バスクのアドレス帳」、レストラン編。

   連続して取り上げたカンボ・レ・バン村、最後はもちろん食の話題!

   この村には気に入ったバスク料理レストランが2軒ありました。が、1軒がオーナーチェンジをした結果、味ウンヌン以前の問題というほどにレベルが落ちてしまいました(頑丈さが取り得の私の胃腸がグルグルと文句を言ったほど)。いやはや残念です。

   バスクの田舎の郷土料理レストランは、大抵は家族経営です。必然、後継ぎがいなければレストランの権利を売却することになります。すると、店の看板、メニュー内容、ときには同じシェフを引継ぎながらも、オーナーが変わった途端に見る影なしってほど変貌する事が有り得ます(大抵は経費削減で味が激落ちっていうパターン)。

   大都会だったら、オーナーがコロコロ変わるのなんて茶飯事ですよね。以前行っておいしかったのに、また行ってみるとガックリってこと結構ありませんか?

   毎年のようにパリにショッピング&グルメの旅にやってくる友人がいますが、彼女はその都度最新のパリガイドブックを買い揃えてやって来ます。「毎年買い替える必要あんの?」と聞くと、「パリの去年情報なんて全くアテになんないから」だと。なるほど、否定は出来ない。で、用済みとなったお古ガイドはありがたく私が頂戴しています(我が家には旧パリ・ガイドブックがたくさん)!

   話が脱線してしまいました。要は、カンボ村で私がおすすめする店は、只今こちらの1軒のみです。上品丁寧な地方料理が味わえます。こちらももちろん家族経営の店。お母上と娘さんが切り盛り、息子さんがシェフ、夏休み中は高校生のお嬢さんも働いています。


バスクのおいしい食材、仔羊の煮込みのパイ包み。典型的なバスク料理ではなく、バスク素材を活かした創作料理ってところがいい。


「洋梨のスフレ」はバスクらしいデザートのひとつ。地元産の洋梨リキュールを使ってます。

Le Bellevue
rue Terrasses
64250 Cambo-les-Bains
tel 05.59.93.75.75
休 日曜夜・月曜、1月


夏場なら、村全体を見下ろせるテラス席がおすすめ。

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バスクでフランス庭園を堪能できる、かの文豪の家

   「バスクのアドレス帳」、観光編。

   前回取り上げたカンボ・レ・バン村から、「アルナガ」のご紹介です。

   みなさん、『シラノ・ド・ベルジュラック』ってご存知ですか? 演劇好きまたは仏文科出身なんて方にとってはお馴染みの作品のはず。どちらにも当てはまらないって人でも、作品名だけは聞き覚えあるのでは? もう随分前の作品ですが、ジェラール・ドバルデュー主演の映画でご覧になった方もいるかもしれませんね。大きな鼻がコンプレックスだった男の悲恋物語、です。

   この人気作品の原作者、エドモン・ロスタンが住んでいた邸宅がバスクのカンボ村にあります。「アルナガ」は家の名前。現在、村の文化財として大切に維持・管理され、一般公開されています。日本にも、文豪の生家とか住んでいた邸宅が記念館になっていたりしますよね。あれのフランス版と思っていただければよろしいかと。


さすが、大成功をおさめた文豪の家の貫禄。建物、庭園、景色の調和が見事です。

   おそるべき文学マニアである我が夫に「ロスタンって、日本の近代作家に例えたらどの辺にあたる?」という質問をしたところ、「ウーン、武者小路カナ」という答えが返ってきました。「アルナガ」は、バスクのサネアツ記念館ってところ……・?

   立派なネオ・バスク建築です。大小あわせて20ほどある部屋は、同じ人物の趣味とは思えぬほど、1部屋ずつ全く違う趣。絵本の世界に飛び込んだ気分になる子ども部屋、中国様式なサロン、蝶の標本部屋etc.. .ロスタンという人物が並大抵でない完璧主義者であったことが分かります(室内撮影禁止ゆえ、お見せできないのが残念!)。

   「シラノ? 文学? ロスタン? 何それ?」っていう方でも充分楽しめる記念館です。ワインと地方料理でゆっくり昼食を楽しんだ後の、酔い覚ましと腹ごなしにもぴったりであります。

   次回、付近のおすすめレストランをご紹介します!


広大なフランス庭園を横切って、邸宅にむかいます。庭園脇の緑のアーチを通りながら。


2階の窓から。後ろにそびえるピレネーの景色も計算した上での庭園設計です。ロスタンもフランス庭園だけでは食傷気味だったのでしょう、家の後ろ手にはイギリス庭園もちゃんとあります。

Arnaga
route de Bayonne
64250 Cambo-les-bains

開園時間
3月 土・日曜の午後のみ
7月8月 10:00~19:00
4月~6月および9月 10:00~12:30&14:30~19:00
10月 14:30~18:00

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ツール・ド・フランスがバスクのこの村にやってくる!

   ワールドカップも残すところ決勝戦のみ! 私は今大会、ガラにもなくかなりたくさんの試合をテレビ観戦しました。フランスが試合に勝つ度に、テレビをパチっと消すと……町の中心から雄叫びの轟きとクラクションの大合唱が聞えてきた! 先日の準決勝ポルトガル戦の夜は、フランス各地でコーフンが止まらない人が続出。ケガ人、ついには死者も出てます。これでイタリアに勝っちゃったりしたら、どんなドンチャン騒ぎが巻き起こるのでありましょう。

   さて、このほとぼりが冷めたら、お次にやってくるであろう自転車熱。「Tour de France(ツール・ド・フランス)」、7月1日からスタートしてます!

   20行程にして、走行距離3600キロ。3週間かけてフランス国土をぐるりと時計反対廻りに疾走します。険しい山道、永遠に続くかに見える大平野、そして各地方の町々。沿道で旗をふりふり応援している様子は、日本の駅伝マラソン大会さながら、いやそれ以上かも。フランスの自転車人気、相当に根強いです。

   で、この伝統競技がやってくる! しかも今年は通過どころか、スタート地点に選ばれた! というわけで、バスクのとある村が目下てんやわんや状態なのであります。


沿道にはテーマカラーの黄色い旗がヒラヒラ。しかし、年始から始まってる道路整備工事がいまだ終わってないのが気になる。のん気だなぁ、当日までにちゃんと終わるのだろうか?


村の自転車屋さん、当然張り切ってます。店の前に黄色い自転車のディスプレー。バックに写っているのは17世紀のサン・ローラン教会。

   7月12日(水)の行程は、「ピレネー山脈ルート」。山バスクの小さな村Cambo-les-Bains(カンボ・レ・バン)から出発します。ワァワァーっと見送るのではなく、「ヨーイ、ドン!」をする場所に選ばれたってところがポイント。数多の町村の中からこれに選ばれるってことは、村にとって名誉なことなんです。知名度を上げるためにこれほど適した機会はないはず。マスコミ陣もわんさか訪れる訳だから経済効果も相当でしょうし。

   ちなみにワタクシ、結婚式(法的な市役所結婚式および披露宴)はこの村で行いました。万が一、テレビ中継でカンボ村が映ったら、「へぇ、ここでねぇ」と思ってくださいまし。


人口4500人、緑に包まれた清潔感漂う村。フランス屈指の「湯治場の村」として知られてます。

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山バスクの夏のご馳走、ニジマス料理のおすすめ1軒

   「バスクのアドレス帳」。レストラン編。

   昨年9月の「パリジャンと巡るおいしいごはん」回にも登場しました。パリジャンならずとも、明るい季節を迎えると必ず足を運びます。我が家から国道で50分、ちょっとした山ドライブもかねて。山バスク奥深く入ったところ、スペインとの境はすぐそこです。

   春の訪れとともに開業し、秋が深まる前に休業するという春夏限定のホテル・レストランです。とは言え、派手なヴァカンスムードではなく、しっとり落ち着いた雰囲気が心地良い。創業1世紀以上も経つ老舗だということ、最近になって私も知りました。然もありなん、という感じの落ち着いた1軒です。


大きく枝を広げたプラタナスの葉っぱが天幕の代わり。風が吹くとそよそよと音をたててます。

   ロケーションの素敵さは秀逸です。澄み渡ったおいしい空気、小川のせせらぎの音、テーブルの上にゆらゆら揺れる木漏れ日。この空間全体がご馳走の一部です。自然の演出効果はおいしい料理をさらにおいしく感じさせてくれます。


まるで舞台のスポットライトのような木漏れ日の光。

   スペシャリテは、何と言ってもとびきり新鮮なニジマス。店の真横を流れるニーヴ川はニジマスの宝庫なのです。そして、こんな新鮮なニジマスを加熱調理するほどバスクの料理センスは野暮ではありませぬ。必ず、「カルパッチョ」か「タルタル」、生の状態で供されます。ニジマスはバスク料理の密かな逸品ですが、ここの新鮮さは群を抜いてます。川から厨房までのフードマイレージはたった10メートルなのですから!


ご覧の通り、川はすぐそこ。ラッキーだと、副シェフが自らニジマスを捕る様子を見ることが出来るそうな。


本日は「タルタル」でした。レモンを絞るのを忘れてしまうほど、クサみは全くなし。サワークリームのソースを添えて。

   その他、これまた地元名産の仔羊料理なども美味。バスクの素材力をがつんと感じてみたい方はお足運びを。そして私と同じく、海よりも山派な方には絶対におすすめです。

Arcé (3月中旬~11月中旬の営業)
route col d’Ispéguy
64430 St-Etienne de Baïgorry
tel 05.59.37.40.14(要予約)
fax 05.59.37.40.27

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マテスク里佐プロフィール

バックナンバー
「男バスク」と「女バスク」、ナショナリズムの温度差 (7月28日)
フランスの田舎のお稽古事事情 (7月25日)
バスク地方、実は四国よりも大きいんです! (7月21日)
お手本はオーストリアの朝ごはん、杏の季節限定の焼き菓子 (7月18日)
さりげなくバスク風な料理が味わえる、カンボ村のおすすめの店 (7月14日)
バスクでフランス庭園を堪能できる、かの文豪の家 (7月11日)
ツール・ド・フランスがバスクのこの村にやってくる! (7月07日)
山バスクの夏のご馳走、ニジマス料理のおすすめ1軒 (7月04日)


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