更新日:2009年7月28日

バスク地方の暮らしとお菓子のレシピ「バスクの砂糖壺」


バスク地方は、フランス南西部~スペイン北部に広がる緑と水のゆたかな土地。お菓子とおいしいものが大好きなマテスク里佐さんのオーブンからは、今日も甘くて香ばしいいい匂いが立ち上っています。里佐さんがバスクで出会い・学んだお菓子やお料理、そして人々の暮らしの様子について、レシピとともにお届けします。

文=マテスク里佐
   

只今じっくり解読中、おばあちゃんの古い料理本&大昔のレシピノート




   先日、夫の祖母からとてつもない贈り物を受け取りました。段ボール1箱。中身は料理本、お菓子本、レシピノート、そして愛読していた料理雑誌のバックナンバー。60年以上もの料理歴がぎっしり詰まった重量感です。

   昨年秋に元気に90歳のお誕生日を迎えたものの、まるでそれがきっかけとなったかのようにガクっと体力が衰えてしまったおばあちゃん。足腰が弱くなるってことは自炊生活が出来なくなること、自炊生活を諦めることは生活の舞台を変えることを意味するわけで……。家族の説得に応じ、遂に老人ホームに入居しました。

   台所に立てない。お菓子を作りたくても体がついていかない。始めはこの現実を認めるのがあまりに辛くて、ヤケになって全部処分することも考えていたようです。でも、この類の本を異様に珍重する日本人の孫嫁(ワタシのことです)が頭に浮かんだらしく、丸ごとドサっとプレゼントしてくれました。印籠を渡されたような気分です。大切に大切にしたいと思います。

   本棚から1冊づつ出していく作業中、「これはすごく良い本」「こっちはまあまあ。何だか大事なヒントを隠している感じね」と、使い込んだ人ならではの楽しいコメントも披露してくれました。


料理本は、一番古いのが1947年刊行もの。その他は50~70年代ものが大半です。どれも今の本と違ってハンディサイズ。写真は少ないけれど、その分1枚1枚が一写入魂という感じで素敵です。


『ELLE』誌の1957年刊行本。見てるとワクワクする。写真よりも逆にイメージが膨らむのは何故でしょう? イラストパワーってすごいなと思わずにはいられない本。

   手書きノートは全部で7冊。うち2冊は、彼女の母上が使っておられたお料理ノート。19世紀末の手書きレシピ……。日本は日清~日露戦争の時代か。その頃、私の曾婆サマは何を作っていたのだろう? 肉なんて食べていたのだろうか? ご馳走は何だったのだろう? てな具合に、あれこれ思考回路を繋げて行くと非常に感慨深いものがあります。


これが夫の曾祖母のレシピノート。万年筆の美しい筆跡が19世紀を物語っている。

   一緒に作ったもの、食べさせてもらったもの、そして読んだだけでは想像も出来ないような未知のもの。興味深いレシピが満載です。イマドキ風なお菓子ではないけれど、そのイマドキでないところに私は妙に心踊らされます。中でも、今一番惹かれるのはイースト菌を使ったブリオッシュ生地で作るパン菓子類。おばあちゃんのお菓子作りの中で、欠かせない存在となっているジャンル、そして私がこれからぜひ自分の中に取り入れたいと思ってるジャンルであります。レシピを読んでいるだけで頭の中にあのおいしそうなイメージがムクムクと膨らんでくる。


実はおばあちゃん、本の出版を夢見ていた! 叶わずに終わってしまったけれど……。これはそれの準備のために書いた原稿。一生懸命自分でタイプしたそうです。いわば厳選された十八番レシピの数々。


ノートの中身は料理4割お菓子6割。それにしても、革張りノートってしっかり残るし、いい味出してます。私も今度ノートを新調する際は革にしよっと!

   おばあちゃんのノートは、読んでいてとにかく楽しいです。決して美しく読み易い訳ではないのですが、そこがいい。表紙が喪失してしまっていたり、雑誌の切り抜きがベタベタっとセロテープで貼ってあったり、油や卵の染みがそこら中に飛び跳ねている。でも、美しい装丁本を眺めるときとは全く違った、温かな創作意欲をかきたててくれるノートです。失敗したり、スランプになったり、自分らしさを考える時に眺めたいノートです。これからじっくり解読して、自分なりの解釈も加えて、新たな発見をしていきたいと考えてます。

   次回、おばあちゃんのノートから、解読済みお菓子レシピをご紹介します!

コメント (15)



はじめて投稿させていただきます。
時々、とても素敵なサイトだと思いながらのぞかせていただいていました。
大切なおばあ様がお亡くなりになられたのこと、お気持ちはいかがばかりかとお察しいたします。おばあ様との素敵なご関係とたくさんの思い出と共に貴重な宝物も引き継がれるのですね。
私も娘の為に少しづつ書き残して行けたらと思います。
すてきなお話ありがとうございました。

投稿者 MIMI : 2008年05月17日 21:59

Kazukoさん、はじめまして!
コメントありがとうございました。
正直言ってこの話題を選んだとき、こんなにたくさんの方に反応を頂けるとは予想だにしていませんでした。料理やお菓子作りが趣味の方達にとっては、こういうものの存在感って大きいのだなと再確認です。
少しづつ実践していきながらご紹介していきたいと思います。

投稿者 マテスク : 2006年05月01日 14:53

マテスクさん、はじめまして。
カリフォルニアから飛んできました。
素敵なブログ、いつも楽しみに拝見させていただいています。
遅ればせながら、あまりに素晴らしいお話に、コメントせずにはいられなくなり、書いています。
おばあさまからの贈り物、なんて素敵なんでしょう。そうやって代々受け継がれてきたレシピや、おばあさまの思いが沢山詰まった本やノート、かけがえのないものを手にされましたね。
私も曲りなりにお料理を生涯の課題と思っている身で、このお話にとても心を動かされました。
そして、どんな中身なのか、知りたい気持ちもむくむくと(笑)。
捨ててしまおうかとまで思ったおばあさまの気持ちを考えると、胸が詰まりましたが、マテスクさんに引き継げる!と思ったときは、嬉しかったでしょうね。
手にされたレシピ、ブログでも、紹介してくださいね。長くなってすみません。また、遊びに来ます。

投稿者 Kazuko : 2006年04月28日 16:27

てりこさん
はい、タダモノではありません。今のホームを快諾したのも、ミニ冷蔵庫があるから→シャンパン飲酒自由自在。っていう理由が決定打でした。ホームの赤ワインは断固飲まず、食後お部屋でシャンパンの晩酌が日課のようです。おそるべし、です。

投稿者 マテスク : 2006年04月28日 15:28

かなり遅ればせでございます。
あのおばあちゃんタダモノではないとは思ってましたが、さすが。思わず唸ってしまいます。
これらを手放し生活様式をがらっと変えるっておばあちゃんにとってとても大変なことでありましょう。
そんなおばあちゃんの為にも、マテスク先生解読&実践頑張れ!

投稿者 てりこ : 2006年04月27日 10:10

ゆうこさん、はじめまして。
沖楽さん、masamiさん、kamiさん、コメントありがとうございます。いろいろな方の身近の「おばあちゃん」への尊敬の気持ちが伝わってきて、じんときました。日本の祖母からは何も学ぼうとせずちっとも孝行しないで終わってしまった自分なので・・・。

投稿者 マテスク : 2006年04月25日 16:46

里佐さん、はじめまして!
ブログ、そして本ともにいつも楽しませてもらっています♪
おばあさまから譲り受けたステキなレシピたち、お金では買えない大切なものがたくさん詰まっていて宝物みたいですね。当時のお菓子や料理の歴史も振り返ることができて、ブログを読ませていただきながら私もドキドキワクワクしちゃいました☆また里佐さんが作ったお菓子を老人ホームにお持ちになったら、おばあさまも喜ばれるんじゃないでしょうか。おばあさまと思いを共有するひととき、たくさん過ごされて下さいね。

投稿者 ゆうこ : 2006年04月24日 10:33

里佐さん
私の祖母も現在83歳。今でも元気に週に2回パンを焼き、地元でお料理を教え、一人暮らしなのに電話をするといつも後ろに笑い声が聞こえます。15年程前に祖父が亡くなったのを機にワープロを始め、今ではお料理をする度にレシピに残しています。日本にいた頃は「食べにいけばいいや」と思っていましたが、海外に出てからそのレシピを元に再現して、分からない時には即電話をして教えてもらっています。でも、梅干しもらっきょうもも祖母が作れなくなったらどうすればいいの?と思ってしまいます。おばあちゃん、大事にしたいですね。

投稿者 kami : 2006年04月23日 06:10

おばあちゃまの歴史とそれを受け継いでいくりささん。なんか時の流れの大切さを感じるね!! この文章から本当にどれだけりささんが、たいせつにおばあちゃまの歴史を受け継ぎ、どんなに喜んでいるか、すごく伝わってきます。今の時代新しいものが重宝されていくなか、こんな風に伝統を守っていく、伝えていくって本当に素敵ですね。おばあさまのご健康お祈りしてます!

投稿者 masami : 2006年04月22日 13:33

なんて素敵なプレゼント。大事に大事にしてください。私も、今、月1でフランスの家庭料理を習っているのですが、マダムは現在85歳!!一度、彼女のおばあちゃま(!)が作っていたというガトー・オー・マロンを習ったときがあり、作り方もシンプル、味も素朴だけれど、今でも十分美味しい!!と驚いた記憶があります。さすが、フランス。親子代々受け継いでいるレシピがある事に感動したのを覚えています。おばあちゃまのレシピ、楽しみにしています!!リサさんが解読して作ったものをたまにおばあちゃまに持って行ってあげるのは何よりでは?

投稿者 沖楽 : 2006年04月21日 20:14

たかこさん、はじめまして。どどどっとほかの皆さんにもコメント頂き嬉しい驚きです。何で読んだかは忘れてしまったのですが、日本の家庭では普段の味は見て作って覚えるもの、書き残すという習慣はあまりなかったそうです。対して西洋は普通の何てことない料理こそ、しっかり書くみたいですね。皆さん、今からでも遅くない、普段の料理こそ書いて子孫に残しましょう!

おばたさん、こんにちは。恐縮ですー。
marilleさん、私も思いました!そう、「ご馳走の手帖」西洋版って感じです。でも、これかなり可愛い絵図を厳選してまして、何だかコワいイラストも多数あり。これはこれでまた愉快なんですが。うーん再現、相当時間かかりそうですが頑張ります。私も90歳になってしまいそう・・・。そして試食の結果の肉体の変貌もこわい・・・。

投稿者 マテスク : 2006年04月21日 18:32

19世紀から積み重ねられてきた、まさにHeritageですね。家族が繋がっていく一つの証なんだなと思いました。
50年代のELLE、日本の「暮らしの手帖」に似ている気がします。イラストの雰囲気も、レシピが王道っぽそうなところも。

お祖母さまのレシピ、ここで少しずつ再現した後でマテスクさんが出版したらどうでしょうか?写真が残るのは、プレッシャーかもしれませんけど・・・。

投稿者 marille : 2006年04月21日 17:46

19世紀の手書きレシピ!
当時どんな生活をしていたんでしょうか?
凄く楽しみです!

そうそう。新しい本、遅ればせながら購入しました。
気軽に試せるレシピなので重宝しています。

投稿者 おばた : 2006年04月21日 17:19

初めてお便りします。パリ在住、夫フランス人、メイクアップアーティストの貴子です。私は、どちらかというと料理好きでランスに住んできたときに出会ったフランス人のマダムにいろいろな料理を伝授してもらったのが始まりで今では義母にいろいろ仕込んでもらっている今日この頃。理佐さんのサイトは毎回本当に楽しみにして読ませてもらっています。今回のを読んで改めて国籍を問わず、女という生き物は食べることそして、なにより人に作ってあげるという喜びになんと満ち溢れているのかと感心せずにはいられませんでした。行き場のなくなった、本達の新たな場所を見つけたおばあさまの喜びを想像すると胸が熱くなります。それか、本たちが一番行きたがっていた場所をそっとおばあさまに耳打ちしたのかもしれませんね!いつも応援しています。楽しんで毎日豊かにお過ごしください。

投稿者 たかこ : 2006年04月21日 17:15

里佐さま
なんかこちらまで感動してしまいました。19世紀のノートって、今、21世紀ですよ!3世紀に渡って生き延びているノートって、すごい!これは里佐さん、責任重大ですね、後世に伝える使命のバトンを渡されてしまった?!
あれだけお菓子作りの大好きなおばあちゃま、自分で焼けなくなってしまうのはさぞ、お辛いでしょうね。孫嫁の手から古いレシピが再生されていくのを熱い視線で見守ってくれることでしょう。私も楽しみです!

投稿者 miholanta : 2006年04月21日 11:50


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