更新日:2006年4月28日

バスク地方は、フランス南西部~スペイン北部に広がる緑と水のゆたかな土地。お菓子とおいしいものが大好きなマテスク里佐さんのオーブンからは、今日も甘くて香ばしいいい匂いが立ち上っています。里佐さんがバスクで出会い・学んだお菓子やお料理、そして人々の暮らしの様子について、レシピとともにお届けします。

文=マテスク里佐
   

満足感は苺のショートケーキ並、な苺のデザート

fraises au sucre「苺の砂糖がけ」
fraises à la crème chantilly「苺の生クリームがけ」
この季節、あちこちのレストランで立派な一品として供されるデザート。前者にはセルフ式に砂糖壷がドンと添えられ、後者には生クリームがもわもわっと絞られて登場します。素材がおいしくなきゃ面目丸潰れなデザートゆえ、いちごは露地栽培のおいしいもの、クリームは注文ごとにその場でちゃんとホイップしたものっていう条件付きですが。


ようやく先週からバイヨンヌの市場にもお目見えしました。バスクの農家ではGariguettesという品種が主流。酸味・甘み・水分のバランスが絶妙。


生牛乳から取った自家製生クリームに砂糖小さじ1杯を入れて泡立てる。粘度のあるホイップクリームが出来上がります。

   今でこそ条件反射的に注文している私ですが、はじめの頃は密かに驚いたもんです。家の食べ方と思っていたものが、店でイッパシのデザートとして出されるとは! 生地だクリームだソースだの、プロの技術が数倍かかっているほかのデザートたちの立場は?と。ついつい手間量・仕事量なども想像してデザート選びをしてしまうのが、お菓子作りを少々嗜む人間の悲しい性でして……。

   でも、フランスで何度か苺の季節を迎えてみて感じたこと。それは日本の苺とフランスの苺は、おいしさのポイントが違うってこと。なので必然使い方が違ってくるってことでしょうか。日本の苺は思わずお菓子にも使ってみたくなるおいしさだけど、フランス苺はお菓子にするまで待ってあげられない、早く丸ごと食べてあげなきゃ申し訳ない気分になるイチゴなのです。

   で納得。「いちごのお砂糖がけ」と「いちごの生クリームがけ」は、素材頼みの手抜きデザートなんかではなく、非常に理にかなったデザートであります。


パリのフィリップ&ジメナ宅にて。お邪魔する度にサダハル・アオキのケーキを用意してくれるお心遣いは涙もの。しかも、イチゴのショートケーキ! 日本人の私以外は、あまり興味なさそうでホッ(フランス人はチョコレート系に群がってました)。

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おばあちゃんの得意技、
コーンスターチ使いのカトルカール

   前回お話した義祖母のノートから。Pavés au citron「レモンのパヴェ」なるレシピのご紹介です。Pavé「敷石・石畳」になぞらえた、真四角な形のお菓子です。


手でぽっぽっと掴める、お茶菓子スタイル。このジュレ風クリーム、生クリームなどを使わないのでさっぱりした味わいです。

   数々のレシピの中から、真っ先にこれを試作してみたくなった理由はいろいろ。
その1 黄金配合カトルカール(2005年5月13日の記事参照)がベース。
その2 ベーシックなカトルカールと違い、小麦粉の代わりに100%「コーンスターチ」を使用。間に挟むクリームもコーンスターチ入り。
その3 真四角形が、懐かしくもあり新鮮でもあり。
その4 折りしも、只今レモンの季節。

   思えば、昨年5月にこの連載で初めてご紹介したお菓子もレモンのカトルカールでした(同2005年5月13日の記事参照)。季節が一巡したのね……という一周年記念的(?)な私の感慨も込もっています。

   ところで、おばあちゃんのノートを読んでいると、彼女がいかにコーンスターチ・マニアであるかが分かります。前から薄々と感じてはいたのですが……。このほかにも多用しているレシピをいろいろ発見! コーンスターチ・メーカーにお勤めの人が読んだら喜んでもらえそう。何故だろう? その理由、何となく想像はできるのですが、ご本人に確認したわけではないので言及するのは控えときます。でも、いつかしっかり聞いておかねば!とは思っています。


フランスで「コーンスターチ」と言えば、Maïzenaの黄色い箱のこと。製品名よりも商標名の方が通用しているという、専売特許的な材料です。

   かく言う私も、頻繁に使うお菓子材料であるコーンスターチ。あまり使ってみたことのない方、ふわふわ好きな方、一度この威力をお試しあれ。

●「レモンのパヴェ」作り方(20x20cm角形1台分)

<カトルカール生地>
卵……3個
グラニュー糖……(卵と同重量)
コーンスターチ……(卵と同重量)
バター……(卵と同重量)
レモンの皮のすりおろし……1個分

<レモンのジュレ風クリーム>
グラニュー糖……70g
バニラシュガー……10g
コーンスターチ……20g
卵黄……1個
レモン汁……1個分
水……200c

<カトルカールを焼く>
卵を割って正味の重さを量り、その他3つの材料を同量計量します。作り方は卵ベースバターベースの2通り。お好みとご都合によって選んでください。バターを薄く塗って粉をはたいた型に入れ、180度のオーブンで40~50分で焼き上げます。型から外して冷まします。

<レモンのジュレ風クリーム>
1. 小鍋にグラニュー糖、バニラシュガー、コーンスターチを入れて均等に混ぜる。卵黄を入れて溶き混ぜた中に、レモン汁と水を加え、ダマにならぬように注意しながら混ぜ合わせる。
2. を火にかけ、かき混ぜながら火を通す。ぽってりと濃度がついたら火を止め、ボウルに移して冷ましてから冷蔵庫へ。

<仕上げ>
1. カトルカールを半分の厚さにスライスする。1枚にレモンのジュレ風クリームを均等に塗り広げ、もう1枚を重ねて密着させる。
2. 縦横それぞれ4等分、計16個の正方形サイズにカットする。

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只今じっくり解読中、おばあちゃんの古い料理本&大昔のレシピノート

   先日、夫の祖母からとてつもない贈り物を受け取りました。段ボール1箱。中身は料理本、お菓子本、レシピノート、そして愛読していた料理雑誌のバックナンバー。60年以上もの料理歴がぎっしり詰まった重量感です。

   昨年秋に元気に90歳のお誕生日を迎えたものの、まるでそれがきっかけとなったかのようにガクっと体力が衰えてしまったおばあちゃん。足腰が弱くなるってことは自炊生活が出来なくなること、自炊生活を諦めることは生活の舞台を変えることを意味するわけで……。家族の説得に応じ、遂に老人ホームに入居しました。

   台所に立てない。お菓子を作りたくても体がついていかない。始めはこの現実を認めるのがあまりに辛くて、ヤケになって全部処分することも考えていたようです。でも、この類の本を異様に珍重する日本人の孫嫁(ワタシのことです)が頭に浮かんだらしく、丸ごとドサっとプレゼントしてくれました。印籠を渡されたような気分です。大切に大切にしたいと思います。

   本棚から1冊づつ出していく作業中、「これはすごく良い本」「こっちはまあまあ。何だか大事なヒントを隠している感じね」と、使い込んだ人ならではの楽しいコメントも披露してくれました。


料理本は、一番古いのが1947年刊行もの。その他は50~70年代ものが大半です。どれも今の本と違ってハンディサイズ。写真は少ないけれど、その分1枚1枚が一写入魂という感じで素敵です。


『ELLE』誌の1957年刊行本。見てるとワクワクする。写真よりも逆にイメージが膨らむのは何故でしょう? イラストパワーってすごいなと思わずにはいられない本。

   手書きノートは全部で7冊。うち2冊は、彼女の母上が使っておられたお料理ノート。19世紀末の手書きレシピ……。日本は日清~日露戦争の時代か。その頃、私の曾婆サマは何を作っていたのだろう? 肉なんて食べていたのだろうか? ご馳走は何だったのだろう? てな具合に、あれこれ思考回路を繋げて行くと非常に感慨深いものがあります。


これが夫の曾祖母のレシピノート。万年筆の美しい筆跡が19世紀を物語っている。

   一緒に作ったもの、食べさせてもらったもの、そして読んだだけでは想像も出来ないような未知のもの。興味深いレシピが満載です。イマドキ風なお菓子ではないけれど、そのイマドキでないところに私は妙に心踊らされます。中でも、今一番惹かれるのはイースト菌を使ったブリオッシュ生地で作るパン菓子類。おばあちゃんのお菓子作りの中で、欠かせない存在となっているジャンル、そして私がこれからぜひ自分の中に取り入れたいと思ってるジャンルであります。レシピを読んでいるだけで頭の中にあのおいしそうなイメージがムクムクと膨らんでくる。


実はおばあちゃん、本の出版を夢見ていた! 叶わずに終わってしまったけれど……。これはそれの準備のために書いた原稿。一生懸命自分でタイプしたそうです。いわば厳選された十八番レシピの数々。


ノートの中身は料理4割お菓子6割。それにしても、革張りノートってしっかり残るし、いい味出してます。私も今度ノートを新調する際は革にしよっと!

   おばあちゃんのノートは、読んでいてとにかく楽しいです。決して美しく読み易い訳ではないのですが、そこがいい。表紙が喪失してしまっていたり、雑誌の切り抜きがベタベタっとセロテープで貼ってあったり、油や卵の染みがそこら中に飛び跳ねている。でも、美しい装丁本を眺めるときとは全く違った、温かな創作意欲をかきたててくれるノートです。失敗したり、スランプになったり、自分らしさを考える時に眺めたいノートです。これからじっくり解読して、自分なりの解釈も加えて、新たな発見をしていきたいと考えてます。

   次回、おばあちゃんのノートから、解読済みお菓子レシピをご紹介します!

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春の香りたっぷり、ホワイトアスパラガス

   ヨーロッパの人にとってのアスパラガスって日本人にとっての筍に似ている、と思う。味はもちろん趣もだいぶ異なる。でも春の息吹を感じさせる素材、掘りたてが何より珍重される素材、そして年中手に入る水煮もの(あれはあれでおいしいけど)とは別格の取り扱い、そして何よりも、春の味覚として人々に愛されているという点において。

   春になり、朝市通いがますます楽しくなってきました。毎週、新しい野菜が登場して、売り場は賑やかに華やかになりつつあります。先週の4月第2週、堂々と顔を見せたのがホワイトアスパラガスです。


緑~ヴァイオレット~白の色トーンが美しい。1キロでこの位の分量です。

   アスパラガスの一大産地であるランド地方(バスクのお隣)からスタンドがやってきます。普段はほかの野菜も取り扱っている店ですが、この時期はアスパラガス専門スタンドに。それだけ売る側は気合が入ってるし、買う側も心待ちしている野菜ということです。

   お値段の方はと言いますと、市場のはキロ当たり5.5ユーロほど。ほかの野菜と比較すれば高級な素材と言えましょう。でも、ただ茹でるだけで立派な前菜になり得る、という絶対価値を考えればお手頃な野菜とも言えます。


市場の人のアドバイスに従って、熱湯の中で20~25分茹でる。


粗熱を取ってほんのり温かいところにソースを添えて。香りがすばらしい!

   『ラルース・ガストロノミック辞典』で調べてみると、こんな実用的なアドバイスを発見。「1人前300gを目安に」だって。食べる前に読んでおけば良かった……!と後悔した私です。とりあえずたくさん買ってきて、一気に茹で上げて食したところ、胸やけのような、ちょっとした気分の悪さを感じてしまったのです。なんと言いましょう、植物パワー、大地パワーのようなものに酔っ払ったような感覚。

   旬のものこそ、お上品に少しづつ楽しむのが肝要ですね。と、頭では分かっていても、見ればついつい買いすぎてしまうのがお初もの。春のあいだ、当分このお初マジックに翻弄されそうな気がします。


今週はイースターの連休です。これを持って教会へ出かけるらしい。朝市で配ってくれます。

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スペイン料理界を牽引するこの街には星が14個も!

   「バスクのアドレス帳」レストラン編。

   3回連続のサン・セバスチャンの話題のトリとして、この街の3つ星レストランのアドレスです。

   前回のピンチョスが下町料理だとしたら、今回のは山の手風な料理といいましょうか。実際、こういう店は市街の中心から少し上ったところ、丘の上にひっそりと立っています。

   下町料理が盛んだから、山の手料理が花開いたのか。山の手料理が先にあって、下町文化も洗練されていったのか。どういう展開でこの街が食の都へと化していったのか、私には知る由もありません。でも、とにもかくにもサンセバスチャンという街が、現在のスペイン料理界を牽引している街であるのは確かなようです。

   それを、素人目にも分かりやすくデータ化してくれているのがミシュランの星の数でありましょう。なんと! 街の中心半径10km圏内に星つきレストランが7軒もあり。しかも、その内2軒が3つ星、トータルの星の数は14個にもなります! ちなみに「女バスク」フランス側は3つ星はなく、トータル星数は6個。しょぼーん、ですね。まあ、サン・セバスチャンが驚異的にすごすぎるっていうことです。

   しかもこの街の人口は僅か17万7千人。マニアックな計算(人口・星密度)で恐縮ですが、市民1万2千人に1個の割合で星が存在することになります。数字好きなもんで、日本の市別人口を調べたところ、サンセバの人口は愛媛県の今治市と僅差でした。皆さんちょっと想像してみて下さい!ミシュラン覆面調査員の試食の結果、今治市のレストランが7軒も星つきにランクインしていたとしたら……。「今治って、どういう食文化の土地なのだろう?」って俄然興味シンシンになりませんか?

   さて本題のお店のご紹介です。バスクでそしてスペインではつとに有名なアルザック氏の店。現在は、30代半ばくらいと思われる彼のお嬢さん(お上品なスペイン美女!)がシェフを引き継いでいます。父上が獲得した星を失うどころか、彼女の腕とともに「アルザック」は押しも押されぬ3つ星店として不動の地位を保っています。


立体的な盛り付けがひとつのアートのよう。


「ショコラのハンバーガー」という名前で出てきたデザートがこちら。しばらく横から上から斜めからとじっくり眺めていたいような面白さがあります。

   行った日、お父上アルザック氏がテーブルを1つ1つ回りながらお客の反応を確かめていました。みんなが「ブエーノ、ブエーノ!(おいしい、おいしい!)」と賞賛する度に、目尻を下げて大きなお腹を揺らして「うんうん、そうかそうか」と頷く父。自分の料理を誉められるよりも、愛娘の料理を誉めてもらう方が100倍嬉しいんだろうなぁっていう、良いお顔。料理も素晴らしかったけど、このアルザック・父のとびっきりの笑顔もご馳走の一部となりました!

   それにしても料理にも「英才教育」ってあるんですね。この父娘の活躍ぶりを見ていると実感します。


「こりゃあヨーロッパの懐石だな。」とは我が父の弁。義両親との食事会もここでした。緊張場面でこそ、おいしい食の話題で盛り上がれる場所が必要ということで。

Arzak
alto de Micracruz 21
tel 943 278465
fax 943 272753
要予約

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「男バスク」の食道楽、まずはピンチョスから

   以前、『クウネル』で2号にわたってバスク特集記事がありました。ご覧になった方いますか? 前編スペイン側、後編フランス側という構成で、ナビゲーターは長尾智子さん。読み応えありました。でも、私が「さすが『クウネル』だ……」と唸ったのは内容よりもむしろ、その命名の仕方! スペイン側を「男バスク」、フランス側を「女バスク」と銘打っていたんです。名付け親は長尾さんか、編集の方か? どなたにせよ、思わず膝をぽんと打ちたくなる気分でした。

   「バスクってフランス側、スペイン側で雰囲気違うわけ?」という質問を時々受けますが、以来この『クウネル』式を拝借して「男」「女」呼ばわりさせてもらってます。だって、あーだこーだ説明するよりもたった一語にして的を射ているので。

   要はスペイン側バスクは何だか全体的に男クサいんです。必然、女側に住んでいるとこの異性臭にフラフラっとなり懐に飛び込んでいきたくなります。逆に、男バスクに住む人は時々女の匂いを嗅ぎにこっちへ遊びにやって来ます。女に飽きたら男へ、男に飽きたら女へ。とっても便利な地方です。

   食に関しても、女と男を行き来できるのはとっても好都合なわけでして。女側で小奇麗な料理ばかり口にすると、ガツンと男っぽい味が恋しくなる→サン・セバスチャンへ出かける→「バール」に駆け込む→ビールを飲む→「ピンチョス」を頬張る→何だか気分晴れやか!という、非常に単細胞な私です。


モテギ氏撮影その1。サンセバスチャンの居酒屋横丁、Fermin Calbeton通り。ピンチョス・パラダイスです。

   バールは日本で言うところの立ち飲み居酒屋、ピンチョスは小料理、つまみ料理。さらに細かく言うとピンチョスはバスクの方言。スペインのほかの地方では「タパス」が標準語です。

   食文化豊かなサン・セバスチャンのタパスのレベルが、スペインの中でも群を抜いているのは知られた話。新鮮な魚介類をベースに、オリーブオイルとニンニクがベースの小料理は、どれもビールがどんどん進む味です。日本の居酒屋が恋しくたってなんのその! 私にはサン・セバスチャンがあるさっと、叱咤激励してくれる力強い存在です。

   ピンチョスの楽しい話題は、し始めるとキリがないので今回はこの辺で。またいつか取り上げたいと思います。お楽しみに。


モテギ氏撮影その2。男臭さがよく出ていて大好きな写真。


モテギ氏そ撮影その3。まずはハモンもオーダー。カウンターの下で子どもが2人楽しそうに遊んでます、心霊写真ではありませんっ。乳母車、小さな子連れでも平気な健康的な酒場風景。


モテギ氏撮影その4。干し鱈のトルティーヤ、懐かしいほど日本人好みの味。こうしてカウンターの片隅を陣取って、仲良く突付きあって食べると尚更おいしい。ちなみにピンチョスはスペイン人にとっては単なる食欲増進のためのアペリティフ。この後レストランへ行って、前菜メインをガツンと食べると腹16分目になる。スペインの胃袋、おそるべし!

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バスクの宝石みたいな街、サンセバスチャン

   「もしこの街が存在しなかったら、私はバスクという土地をここまで好きにならなかっただろう」。そんな感謝の念を込めた仮定文を書きたくなるほど、私はこの街が好きです。近所にあってくれてありがとう! 街に対して愛情を覚えるというのは、これが初めての感覚。

   人と人と同じく、人と街にも相性ってありますよね。Aさんにとっては素敵な街でも、Bさんにとってはちっとも魅力が感じられない街。個性が強ければ強いほどその相性の差がしっかり出てくると思うのですが。

   サンセバスチャンという街の素晴らしさ、懐の深さは、そんな相性を飛び越えて、10人中ほぼ10人の人が人見知りせずに親近感を感じるところ。個性たっぷりな、かなり独特な街であるにも関わらず。


広場にはカフェがたくさん並ぶ。道行く人をジロジロ眺めながらコーヒーをすすっているような人はこの街にはいない。みんなが自意識から解き放たれて、心から寛げる街だから。


旧市街の建物。この壁の色が好きです。


   今までいろいろな国のいろいろな人とこの街を訪れました。日本、フランスの人は言わずもがな、夫の仕事関係のアメリカ、イギリス、ドイツ、スーダン、イラン、サウジアラビア、中国の人。ヴァカンスで来た人、商用の人、都会の人、田舎の人。そして旅行経験の少ない人、多い人。

   皆さん、テンデバラバラな人達なのに、この街に連れて来ると皆同じレベルで、楽しそうに街を歩き、目を輝かせながら食事を堪能し、大きな声でおしゃべりが弾む。そして「連れてきてくれてありがとう」と本気なお礼を言ってもらえる。数年経った後でも「サンセバ、良かった……」って想い出してくれている。私たちが偉いのではなく、サンセバスチャンという街が偉いのに!お連れするだけでエラく喜んで頂けるという、接待する側にとってこれほど有り難い街はありません。


ラコンチャ湾に広がる真っ青な大西洋。切り取った景色しかお見せできなくて残念ですが、かなりパノラミックな景色が望めます。

   バスク地方に来てこの街に立ち寄らずに帰ることほど残念なことはありません! 遠くから遥々日本の関西旅行に出かけながら、京都に触れずにスっと飛ばして帰ってしまうようなもんです。その地方のエッセンスが凝縮した街文化は、必見です。

   次回へ続く。もちろんエッセンスの大事なパーツ、サンセバスチャンの食の話題です!


海老、蟹、ホタテのオンパレード。歩いていると、何処からともなくオリーブオイルとニンニクの香りが漂ってきてお腹の虫が騒ぐ。


スペイン屈指の裕福な街なので、マダム達の服装はフランス側バスクよりも派手気味。貫禄あります。

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スフレ事始にぴったり、「真っ黒な丸ごとバナナ・スフレ」

   春到来ですね! 気温が上がり、陽射しもすっかり暖かくなりました。「ひょっとしたら、ひょっとして……」の淡い期待を抱きつつ4月最初の土曜の朝市に出かけてみましたが、「あと2週間待ってね」と言われてがっくり。春の野菜は続々とお目見え中ですが、春の果物はまだお預け状態でした。嗚呼、イチゴが待ち遠しいです。


日本の桜が拝めないせめてもの慰めに、と買ってきたのは枝つきの花。couronne de mariée「花嫁の冠」という可憐な名前。

   そんなわけで今回、バナナを使ったお菓子をご紹介します。イチゴが登場したら、多分見向きもしなくなってしまう果物なので……。

   前回ご紹介した「オレンジ・コンフィのスフレ」にひき続いて、またスフレです。あちらはカスタードソースを使いましたが、バナナだったらピュレをベースに出来るので、さらにお手軽に。皮を器に仕立てれば、スフレ型だって不要。スフレは初めて、というデビュタントの方にもおすすめです!


バナナの皮は焼くと真っ黒に仕上がります。

●「丸ごとバナナ・スフレ」作り方
(バナナ型6個分、または大きめなグラタン皿1個分)

バナナ(よく熟したもの)……3本
レモン汁……大さじ1
バター……15g
グラニュー糖……25g
バニラシュガー……10g
ラム酒……大さじ1~2
卵……2個

1. オーブンを180度に予熱する。バナナを縦半分にカットして、中身をくりぬく。バナナとレモン汁をミキサーにかけてピュレにする。
2. バナナのピュレ、バター、グラニュー糖、バニラシュガー、ラムを小鍋に入れて弱火にかける。混ぜながら3分ほど火を通す。火から下ろし、卵黄を加えてかき混ぜる。
3. 卵白を泡立て、メレンゲを作る。1/3量をに加えてきれいに混ぜ合わせたら、残りも加えてふんわりと混ぜる。
4. 1の型に入れて天板にのせ、10分ほど焼く(途中でオーブンの扉を開けないこと!)。
5. 粉砂糖とココア(ともに分量外)をふり、あつあつをサーブする。

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バックナンバー
満足感は苺のショートケーキ並、な苺のデザート (4月28日)
おばあちゃんの得意技、
コーンスターチ使いのカトルカール
(4月25日)
只今じっくり解読中、おばあちゃんの古い料理本&大昔のレシピノート (4月21日)
春の香りたっぷり、ホワイトアスパラガス (4月18日)
スペイン料理界を牽引するこの街には星が14個も! (4月14日)
「男バスク」の食道楽、まずはピンチョスから (4月11日)
バスクの宝石みたいな街、サンセバスチャン (4月07日)
スフレ事始にぴったり、「真っ黒な丸ごとバナナ・スフレ」 (4月04日)


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