更新日:2005年5月31日

バスク地方は、フランス南西部~スペイン北部に広がる緑と水のゆたかな土地。お菓子とおいしいものが大好きなマテスク里佐さんのオーブンからは、今日も甘くて香ばしいいい匂いが立ち上っています。里佐さんがバスクで出会い・学んだお菓子やお料理、そして人々の暮らしの様子について、レシピとともにお届けします。

文=マテスク里佐
   

フランス家電事情・その1

冷蔵庫、オーブン、炊飯器などなど。その国の食卓事情やデザインセンスを覗き見るには、家電製品をチェックしてみることが一番手っ取り早いと思う。いつも見慣れている電化製品も、違うお国のものとなると全く違ったモノに見えて興味深いものです。

我が家に遊びにやって来る日本からの友人たちも、台所に集まっては「へー」だとか「ふーん」だとか、ヨーロッパ家電製品チェックに余念がない。私も逆に日本へ里帰りした際に、日本の電化製品を見たり使ったりするだけで、あー日本にいるのねぇと思えてくる。

そんな訳で我が家にある家電製品をちょこちょことご紹介していきながら食卓文化について考察していこう(ンな大げさな)なんて考えました。今回はこちらで普通に使われている「電気湯沸かし器」です。夫が独身時代から使っていたものですが、今や私にとってもなくてはならない「やかん」です。1.5リットルの水をわずか1分以内に沸騰させる瞬発力がすごい。待つことなくお茶やコーヒーを入れたりお料理の準備に取りかかれるスグレモノなのです。


ティファール製の電気「やかん」。お茶道具を用意しているそばからお湯が沸いてくれます。

もちろん、240Vというヨーロッパの高電圧あってこその電化製品ではあります。少々パワフルすぎて、これでお茶をすぐに入れると舌をやけどしてしまうというのが難点といえば難点……。おいしい温度が60~80度という日本茶を入れるにはちょっと高温すぎてしまいます。

さてバスクという土地柄、家電製品一つ買う場合でもスペイン側へも物色しに行く環境ですが、お隣スペインの家電製品コーナーもなかなか特色があって興味深いのです。何よりも一番目につくのはすごい種類の「揚げ物機」! 魚介のフライやコロッケがおいしいお国ならではのラインアップです。日本の炊飯器ほどのサイズの機械の中に食材を入れスイッチをまわせば熱々のフライが揚がる仕組みになってるようです。うーん使ってみたいーっ、と思ってすでに4年越しですが、躊躇します。だって手軽な揚げ物のおいしさにはまってしまう自分が恐いですから……!


ズラリ一列に並んでいる愛用の家電製品たち。

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フランス人と日本人の「おいしい」は違う?

今日は友人宅への手土産にお菓子を焼きました。毎度毎度のシュークリーム。でもこのお菓子はほんとに貴重なのです、なぜって子どもと大人、そして日本人とフランス人、世代と国籍を飛び越えて気に入ってもらえるお菓子なのですから。


絞り出したシュー生地には、上火のあたりをやわらげてふっくら膨らませるために、霧吹きまたは手水をふりかけます。ツンツンとしたツノも指で軽く押さえて形を整えます。

私はこちらでお菓子を作るとき、食べる人がフランス人なのか日本人なのかで全く作るものを変えています。フランス人のほうがかなり甘党……とはいえただ砂糖の分量を増やしたところでフランス人仕様になるかと言えばそうでもないのでありまして。

今の季節、日本人だったら苺ロールケーキでふわふわ気分ってなときでも、フランス人にだったらアーモンドクリームをしっかり敷いた苺のタルトで勝負するべし、という感じでしょうか。


粉砂糖のおしろいをはたいてあげて、完成です。

似ているようで、お互い共感できるようでいて、お菓子に関しての味覚の微妙な違いは確実にあるというのが実感です。フランスのお菓子屋さんと日本のお菓子屋さんで食べ比べてみればその差は歴然としていますよね。でも、だからといってどちらがおいしいかとジャッジを下すのは難しい。大事なのは自分の「おいしい」を持っているかどうかのはず。

みなさんにとってのおいしいお菓子は何ですか?


カスタードを作るため、バニラ(右端にちょこっと見えている黒くて細い棒のようなもの)をミルクに浸しています。バニラも一種の乾物。だから、ゆっくり浸してあげることでじわじわと香りが移るのです。

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桜前線ならぬ、ミモザ前線

いよいよ春たけなわ! 桜前線こそありませんが、バスクは黄色いお花前線の真っ只中です。第一陣のミモザ前線が去り、道端に咲き乱れるタンポポやら小さな野花の黄色もまぶしくなってきました。


春の到来を告げるミモザ。でも、家の中に飾るとやたらにクシャミが……!

花の名前のフラ語がからっきし苦手な私は(花に限らず全ジャンル苦手ですけど……)、「この春こそ花の名前のボキャブラリーを増やしてみようじゃないか」と思い立ち、いよいよ春らしく賑わってきたマルシェのお花屋さんを、実践学習の場とすることにしました。

旬のお花を積極的に買うようにする、そして買うときに必ず「コノオハナ、ナンテイウナマエデスカ?」と語学番組の練習シーンみたいな単純な疑問文を投げかけてみる。たったそれだけの事だけど、それでも辞書で学ぶよりよっぽど頭に残るのですね、これが。それに、一度でもフランスに来た方なら痛感されたと思いますが、フランス人ってフランス語を学ぼうとしている外国人には親切に教えてくれるものです。


朝市にて。いかにも新鮮そうな水仙がぎっしり。よく見ると、右の女性のスカーフも黄色いお花づくしでした!

今週は、鮮やかな黄色が美しく目立っていた水仙がターゲットです。あちこちのスタンドでバケツに入ってたくさん売られていました。フラ語名を聞いておっとびっくり、「Narcisse(ナルシス)」だって。水面に映った自分に恋するあまり死んでしまった青年ナルシスが花になったというギリシア神話で有名なあの花だ……!とすると男性名詞か。

可憐な花のイメージだったのに、ナルシスという名前を聞いた途端にプライドのお高い花に見えてきてしまうから、名前って不思議です。とりあえずスイセン→ナルシシストと頭の単語帳にしかと書き込みを済ませ、本日のお買い物を終了しました。


競うように咲く野の花も、こんなにきれい。こういうお花の名前も覚えたい!

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「幸せの黄色いお菓子 その2」レモンクリーム(レシピ付)

前々回でご紹介したカトルカールに引き続きまして、幸せ色のレモンを使ったお菓子をご紹介します。こうして見ると、レモンって応用のきくお菓子素材だなあと思います。苺のタルトを作るぞ、というと何となく気構えてしまう人でも、レモンの汁をちょこっと使うお菓子くらいなら割と気楽に作れるのではないでしょうか。

このレモンクリームは、レモンパイのフィリングとして教わったものです。以来気に入ってあれこれ応用させてもらっている大好きなレシピです。余ったらヨーグルトやバニラアイスクリームにのっけて白と黄色の南欧色を楽しんでください。

ビスキュイ生地をたくさん焼いたらレモンクリームをぺたぺたと塗って2枚づつ重ねるだけ。お茶時間のフィンガー菓子にどうぞ!


おおきくてゴツゴツしている、地元の無農薬レモン。


材料を順に混ぜて煮上げるだけのレモンクリーム。火を通すと鮮やかな黄色に!

●「レモンクリーム」作り方
生クリーム……50cc
卵(小)……2個
グラニュー糖……50g
コーンスターチ……4g
レモン果汁……40cc
レモン皮すりおろし(200/5/13日記事参照)……1個分

1.生クリームの中に、卵を溶きほぐしたものを1個分づついれて、泡だて器でかき混ぜる。
2.グラニュー糖、コーンスターチをふるい入れてかき混ぜる。
3.レモン果汁を入れてよく混ぜてから、小鍋に漉し入れる。レモンの皮のすりおろしを加える。
4.中火で煮る。焦げないように注意して、底からくるくると混ぜながら熱を通していく。ぷつぷついってきたら火を止めてボウルにあけて、冷ます。


お砂糖、粉、卵たったの2個で、大量のビスキュイが焼き上がります。


レモンクリームをペタペタ塗って、せっせと重ねる。無心になれる単純作業。

●「ビスキュイ」作り方
卵……2個
グラニュー糖……50g
薄力粉……35g
コーンスターチ……10g
粉砂糖……適量

1.オーブンを180度に予熱する。卵を卵黄と卵白に分ける。卵黄とグラニュー糖の半量を合わせ、白っぽくなるまで泡立てる。
2.卵白を溶きほぐし、残りのグラニュー糖を3回に分け入れながら泡立てる。つやのあるしっかりしたメレンゲを作る。
3.2の1/3量を1に加え、ざっくりとへらで混ぜ合わせる。粉とコーンスターチ(あらかじめ混ぜてふるっておく)を入れ、粉が見えなくなるまで丁寧にへらで混ぜ合わせる。
4.3を2の残りのメレンゲの中に加え、へらで丁寧に混ぜ合わせる(泡をつぶさないように)。
5.丸口金(直径1~1.5cm)の絞り袋に入れ、5cm長さほどに絞り出す。
6.オーブンに入れて15分程焼き、焼き終わったら火を止めたまま、そのままオーブンに15分程入れたままの状態で乾燥させる。

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扉を開ければ、みんな食べてる食べてる!

バスクには、海の幸・山の幸がどっさりあります。結果、大食漢がいっぱい。真剣な面持ちで、とてつもなくおいしそうに食べる彼らの体からは、大食漢ウィルスが撒き散らされるのか、こちらまでかなりの大食らいになってしまうのです。

食欲は、一緒にご飯を食べる相手から大いに伝染するものとはいえ、食の細い人がバスクで連日連夜食事に出かけるのはあまりお薦めできません。お腹が苦しいとき、隣でバクバク食べている人を見るのはあまり気持ちのいいものではないはず。

でもこれだけは言えます! おいしいものを目前にすると「もう体重なんてどうでもいいっ!」となる意志薄弱な人、「今ここで食い倒れても構わない!」と自暴自棄になってしまえる人、そして何はともあれ胃腸の強さに自信あり!という人にとって、バスクはちょっとした極楽であるってこと。


Pasajes de San Juanの港の風景。釣り人のボートがいっぱい並んでいました。

先日とてもいい感じのお魚レストランに巡り合いました。それはスペイン側のバスク地方、パサヘス・ド・サン・ジョアンという、旅情を誘う素敵な名前の小さな漁村。港の町を歩けば、必ずや1~2軒ローカル臭ぷんぷんな素朴な魚のレストランが見つかるもの。日本だったら「お魚定食屋さん」とでもいうような、とにかくお魚料理が目的のレストラン。


同じバスクでも、スペイン側の盛り付けは、フランス側よりも鷹揚としていて肩の力が抜けています。これは前菜の「本日の魚介の盛り合わせ」。

扉を開ければ、みんな食べてる食べてる 。気合を入れて「地元民と同じものをおいしく元気に食べる」。外国ステイを楽しむためのこのコツは、バスクではなおさら大切な事だって思うのです。なーんて偉そうに書いてはおりますが、日本人ですもの、ときどきお寿司が恋しくなったりもしていますけど……! それでも、やっぱり海がある地方で良かったと思わずにはいられない、そんなお魚レストランに感謝感謝なのであります。

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「幸せの黄色いお菓子」カトルカール(レシピ付)

今年の春は、バスクでは暖かいお天気が続いています。そのせいか、例年よりもだいぶ早くレモンの実が完熟し始めたようです。知らせを受けて、いそいそと収穫しに行きました。淡く優しい黄色は、まさに春の色と呼ぶにふさわしい!


細くてか弱そうな枝からも、まん丸に太った実がぶら下がっています。

というわけで、当連載初めてご紹介するお菓子は、レモンが名脇役をつとめてくれるお菓子に決定。レモンは、果汁よりもむしろその皮の中に本来の香りがぎゅっと凝縮されているのをご存知ですか? 表面のごく薄い、黄色い部分をすりおろすと、途端にぱぁ~っと爽やかな香りが鼻をくすぐります。果汁だけを使って皮をポイしてしまうのはちょっともったいない。無農薬のレモンが手に入ったときは、躊躇することなくその皮を満喫してあげましょう。


備えあれば憂いなし。このように冷凍庫で丸ごと保存しておいて、使う度にささっと皮を削るのも便利です。果汁なしでもその香りを充分に楽しむことができます。

さて、レモンの香り漂うカトルカールです。とってもスタンダードなお菓子なのですが、だからこそ何度でも作りたくなるというか。控えめなレモンの香りが品がよく、乙女心をくすぐる(?)お菓子です。新鮮な地鶏卵を使えばより一層ふんわりしっとり。おいしそうな卵色のお菓子が焼き上がります。


これぞ卵色!な黄色いお菓子。香ばしい焼き目がお好きな方は、型にバターと粉をはたいて。または型に紙を敷いて焼くと、紙をつるりと剥がせば、サイドも黄色くカステラチックに仕上がります。

レシピはとってもシンプル。カトルカール、つまり「quatre quart(4x1/4)」の意味通り、卵・砂糖・粉・バターが4分の1ずつ入ります。

卵を割って正味の重さを量ったら、他の3つの材料を同量計量します。20センチパウンド型で卵2個が適量ですが、型のサイズによって量を微調整してみてください。後はスポンジケーキの要領で。卵と砂糖をふっくら泡立てた中に粉、そして溶かしたバターを混ぜていきます。

スポンジケーキに比べて粉とバターの配合が多いので、じっくり丁寧に混ぜ合わせることが、キメの細かい生地を作るポイントです。いちばん最後にレモンの皮のすりおろし1個分と果汁大さじ1~2を投入して混ぜ、180度で40分程焼き上げます。焼きたてよりも翌日頃が、しっとり味がなじんで食べごろ。作るのはもちろん、持ち運びも簡単なこのお菓子、春の香りを届けるとっておきのプレゼントにいかがですか?

●「レモンのカトルカール」分量
卵……全重量の1/4(20cmパウンド型なら2個が目安)
砂糖……卵と同重量(全量の1/4)
小麦粉……卵と同重量(全量の1/4)
バター……卵と同重量(全量の1/4)

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まずはバスク地方についてご紹介します

カフェグローブ読者のみなさま、はじめまして。

フランスは南の西の端っこから、バスク時間がゆるゆると流れる田舎の暮らし、思わずにっこり頬が緩むおいしい話題、そしてふらふらっと気ままに作るお菓子のレシピなどをお届けして参ります。どうぞよろしくお付き合いください!

バスクって何処ぞや? という方もたくさんおられると思うので、初回の本日まずは軽ーく地方のご紹介から。マニキュアを塗り終わったときにするみたいに、手の甲をぱっと広げて見て下さい。右手でお願いしますね。日本は弓形、イタリアはロングブーツと来て、フランスの国土は手の形をしています(フランス人が場所を人に説するときによくやってるジェスチャーなのです)。するとパリは中指の第二関節の辺り、そしてバスクは手首上の親指の付け根部分。親指の左外側は海、大西洋が広がっています。

さて、みなさんの住む街はどんな色をしていますか?

東京はまるで無秩序な色の点々が集まったモザイクカラーだし、パリは白と黒が基調のモノトーンが美しい。どちらもその色のトーンこそが東京をより「トーキョー」らしく、パリを一層「巴里」っぽく見せているのだと思います。

そしてここバスクを「BASQUE」的に見せている色彩は、まるでお絵かきクレヨンを並べたような原色4色。真っ白な壁。屋根の赤。真っ青な空、海。そして濃くて深い緑。4色の強烈なコントラストによって塗り覆われているのがバスクの色彩イメージです。


丘の上から眺めるとまるでミニチュア世界みたいな風景が。山バスクのSt-Jean Pied de Portというかわいい村です。

そしてもう一つ忘れてならないバスクの色、それは輝く太陽の光の色! 南仏らしい明るい光があってこそ、白赤青緑の4色が原色らしくぱきっと見栄えするのです。

いつか皆さんがバスクを訪れる日にはバスクカラーが冴え渡る美しい日でありますように!


深くて濃い空の青はバスクの宝もの!


白壁に影をくっきりとつくる光の強さ。ひらひらはためくのはバスクの旗の色、緑と赤。友人モテギ氏撮影。

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バックナンバー
フランス家電事情・その1 (5月31日)
フランス人と日本人の「おいしい」は違う? (5月26日)
桜前線ならぬ、ミモザ前線 (5月24日)
「幸せの黄色いお菓子 その2」レモンクリーム(レシピ付) (5月19日)
扉を開ければ、みんな食べてる食べてる! (5月17日)
「幸せの黄色いお菓子」カトルカール(レシピ付) (5月13日)
まずはバスク地方についてご紹介します (5月10日)


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